みやこびと いかがととはば やまたかみ はれぬくもゐに わぶとこたへよ
都人 いかがと問はば 山高み 晴れぬ雲居に わぶとこたへよ
小野貞樹
都の人が、あの男はどうしていると尋ねたならば、山が高いので雲が晴れない場所で、心も晴れずに暮らしていると答えてください。
詞書には「甲斐守にはべりける時、京へまかり上りける人につかはしける」とあります。甲斐国の長官として赴任していた際に京へ行く人に託したということですから、「山が高くて雲が晴れない場所」とは甲斐国のこと。そこでの暮らしも「わぶ」ということですから、甲斐への赴任は心ならずのものだったのかもしれません。
作者の小野貞樹(おの の さだき)は小野小町の夫とも言われている人物で、その小町との間の贈答歌が 0783 に採録されています。古今集への入集はこの二首ですね。