漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0455

2021-01-27 19:25:08 | 古今和歌集

あぢきなし なげきなつめそ うきことに あひくるみをば すてぬものから

あぢきなし 嘆きなつめそ 憂きことに あひくる身をば 捨てぬものから

 

兵衛

 

 ただただ嘆いていても仕方がない。辛いことに遭うこの身を捨てることはできないのだから。

 「なげきなつめそ」は、複合動詞「なげきつむ」+柔らかい禁止を表す「な・・・そ」(副詞「な」と終助詞「そ」の呼応)で、「嘆くでないぞ」といった意。隠し題は、「あじきなし」「なげきなつめそ」「あひくるみをば」のところに「梨」「棗」「胡桃」が詠み込まれています。ひとつ前 0454 の「まつ」もそうですが、この歌の「なし」をもって物名歌とするならば、世に物名歌があふれかえってしまいますね ^^;;  ということは、これらが物名歌とされているのは、物名歌として詠んだということが作者自身によって宣言されているということなのでしょう。
 作者の兵衛(ひょうえ)は、平安時代前期の貴族藤原高経(ふじわら の たかつね)の娘とされる人物で、高経が右兵衛督(うひょうえのかみ)であったことから「兵衛」と称されているようです。生没年等詳細は不明。古今集には、0789 に再度登場します。なお、父高経も後撰和歌集に一首が採録されている勅撰歌人です。

 



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