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漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 732

2025-04-17 04:19:28 | 貫之集

わかれゆく ひとををしむと こよひより とほきゆめぢに われやまどはむ

別れ行く 人を惜しむと 今宵より 遠き夢路に われやまどはむ

 

旅立つ人との別れを惜しむ思いに、今宵から私も遠い夢路にまどうことだろう。

 

 この歌は、玉葉和歌集(巻第七「旅」 第1121番)に入集しています。
 詞書は 731 と共通です。
 「遠き夢路」というフレーズが印象的ですね。618 には「遠き夢見む」という表現もありました。

 

ちかくても あはぬうつつに こよひより とほきゆめみむ われぞわびしき

近くても 逢はぬうつつに 今宵より 遠き夢見む われぞわびしき

618


貫之集 731

2025-04-16 04:07:12 | 貫之集

旅人に幣やるとて

そめたちて いのれるぬさの おもひをば たむけのみちの かみやしるらむ

染め裁ちて 祈れる幣の 思ひをば 手向けの道の 神や知るらむ

 

旅人に幣を贈るとして詠んだ歌

布を染めたり裁ったりして幣を作り、道中の無事を祈る私の気持ちを、旅の安全を守ってくださる手向けの神もご存じのことでしょう。

 

 「手向けの神」は旅の道中の安全を守る神。712 にも出てきましたね。


貫之集 730

2025-04-15 04:40:23 | 貫之集

おなじ人のむまのはなむけ、太政大臣の白河殿にてさせたまふに、土器とりて

ひともみな とほみちゆけと くさまくら このたびばかり をしきたびなし

人もみな 遠道行けと 草枕 このたびばかり 惜しき旅なし

 

同じ人の旅立ちのはなむけの宴が、太政大臣の白河の別荘で催された際に、土器を手にとって詠んだ歌

他の人も遠くへ旅立つことはあるけれども、あなたさまの今回の旅立ちほど、名残りおしいものはありません。

 

 「太政大臣(おほきおとど)」は藤原忠平(ふじわら の ただひら)のこと。「白河殿」は京都の白河の地にあった藤原良房(ふじわら の よしふさ)の別荘で、忠平が譲り受けたのでしょう。694 の詞書にも出てきていました。
 第四句「たび」は「度」と「旅」の両義で、「草枕」は「旅」の方の枕詞ですね。第五句を「をしきたびかな」としている写本もあるようです。

 


貫之集 729

2025-04-14 04:11:51 | 貫之集

おなじ人のむまのはなむけに、橘助繩が装束おくるとて加へたる

たまぼこの みちのやまかぜ さむからば かたみがてらに きなむとぞおもふ

玉ぼこの 道の山風 寒からば かたみがてらに 着なむとぞ思ふ

 

同じ人の旅立ちのはなむけに、橘助繩が装束を贈るのに添えて読んだ歌

道中の山風が寒かったならば、私を思い出すよすがとしても、これを着てほしいと思います。

 

 橘助繩(たちばな の すけなは)は、687 から始まる七首の一連の歌の詞書にも出てきた人物。「たまぼこの」は「道」にかかる枕詞ですね。
 この歌は、新古今和歌集(巻第九「離別」 第857番)に入集しています。


貫之集 728

2025-04-13 04:30:07 | 貫之集

おなじ人のむまのはなむけにやるとて、兵衛督のよませたるに

とほくゆく きみをおくると おもひやる こころもともに たびねをやせむ

遠く行く 君をおくると 思ひやる 心もともに 旅寝をやせむ

 

おなじ人の旅立ちのはなむけに添えるとして、兵衛督の仰せで詠んだ歌

遠くへ行くのを見送るとして、あなたさまのことを思いやる私の心は、あなたさまとともに旅寝をすることでしょう。

 

 「兵衛督(ひょうえ の かみ)」は藤原時平の子、藤原顕忠(ふじわら の あきただ)のことと見られます。
 この歌は、風雅和歌集(巻第九「旅」 第899番)に入集しています。