EG24、EG25、EG26、EG27の続きです。関係節と同格節の共通した特徴です。以下、見ましょう。
(1)The rumor [ that John talked about the scandal ] is going around.
([ ジョンがそのスキャンダルを話題にしたという ] うわさが広まっている。)
(2)The rumor [ which John talked about _ ] is going around.
([ ジョンが _ 話題にした ] うわさが広まっている。)
(1)のカギカッコ内は同格節であり、一方、(2)のカギカッコ内は、関係代名詞の‘which’を用いた関係節です。ポイントは、(1)のように、同格節内には、‘rumor’「うわさ」に該当するような空所がなく、一方、(2)のように、関係代名詞による関係節内には、‘rumor’に該当する空所がある、ということです。
その意味としては、(1)では、ジョンが、あるスキャンダルをキャッチして話題にしたら、その行為がうわさとなって、周囲の人々を通して広まっている、と言っているのに対し、一方、(2)では、例えば、ジョンやトムが、それぞれ聞きつけたうわさがあるが、ジョンの聞きつけて話題にしたうわさの方は、特に広まってしまった、というようなケースです。
(3)The rumor is going around [ that John talked about the scandal ]. (〇) (訳同(1))
(4)The rumor is going around [ which John talked about _ ]. (〇) (訳同(2))
そこで、(3)と(4)ですが、(1)に対応しているのが(3)で、一方、(2)に対応しているのが(4)です。それらのカタチとしては、(1)の同格節が文の末尾に位置しており、一方、(2)の関係節も、同様に、文の末尾に位置しています。そして、(3)も(4)も、共にOKとなっています。
そこで、(1)の同格節であれ、(2)の関係節であれ、‘rumor’にかかる節であることに違いはないわけですから、(1)や(2)のように、‘rumor’にピッタリとくっ付いて合体している状態が原則なんですが、(3)や(4)のように、共に、‘rumor’から切り離して用いてもOKになる場合がある、ということなんですね。これは一体どういうことなんでしょうか。
(5)The rumor [ which is going around ] is denied by Mary. (〇)
([ 広がっている ] そのうわさは、メアリーには否定されている。)
(6)The rumor is denied by Mary [ which is going around ]. (×)
(訳同(5))
そこで、(5)の関係節を、(6)のように、文の末尾に移動してみましたが、今度は、何とアウトになってしまいました。 関係節は、(2)から(4)のような変形は、確かに、OKになるんですが、一方、同じ性質であるハズの(5)から(6)の変形はアウトになってしまうわけですね。
つまり、関係節を文の末尾に移動する変形には、それをOKにしたりアウトにしたりする、何らかの制約が存在すると見なければなりません。そこで、‘rumor’「うわさ」という単語の意味に注目してみたいと思います。一般に、「うわさ」は、人から人へと伝えられていくものです。ですので、主語‘the rumor’に対して、‘is going aroud’「広がる」という述語が選ばれるのは、別に意外性も何もない、ということになります。
しかし、うわさが否定されるということは、広がって当然のはずのものに歯止めをかける何かが存在するという、言わば、意外性のある情報の存在を示唆することになりますから、これは、聞き手にとっては、反応度の高い関心事になる可能性が十分にあります。
こういった視点から、(6)がアウトになるのを考えると、「うわさの否定」は、情報としての価値が高いと思われるのに、‘is denied by Mary’「メアリーに否定される」という述語を飛び越えて、相対的に情報としての価値が低い‘which is going around’「広がっている」が、文の末尾に移動したからだ、と言えるのではないかと考えられます。
つまり、(5)から(6)の変形が阻止されるのは、情報としての価値に重点が置かれるものと、そうでないもののバランスが、位置関係としておかしいと判断されることに起因しているものと思われます。そこで、(2)から(4)の変形がOKになっているのは、‘the rumor’に対して、‘John talked about’「ジョンが話題にした」という関係節が、誰が取り上げた話題なのかという点で関心事になり得るし、かつ、それが‘going around’よりも情報的価値が高いと見なされているからだと言えます。
そして、(2)と(4)は両方ともOKであることから、関係節の基本的なカタチを守った(2)のような文の場合は、特に、情報的価値うんぬんとは関係なく、OKになるということですね。ですので、(5)は、基本的なカタチのままで、情報的価値のある‘is denied by John’が文の末尾にあるので、わざわざ、その基本形を破壊してまで、変則的な(6)のような移動変形を施す必要はない、ということになります。
(7)The rumor [ that John talked about the scandal ] is denied by Mary. (〇)
([ ジョンがそのスキャンダルを話題にしたという ] うわさは、メアリーには否定されている。)
(8)The rumor is denied by Mary [ that John talked about the scandal ]. (×) (訳同(7))
今度は、同格節になりますが、(7)では、‘the rumor’の具体的補足をカギカッコ内の同格節が担っています。同格節の場合、関係節とは違って、どんな名詞でも、かかる相手にすることができるというわけではなく、抽象名詞に限られますので、例えば、「うわさ」のような抽象名詞は、もともと、具体的な補足を前提としている名詞と言えます。
つまり、かかる相手となる抽象名詞からすれば、もともと、同格節の存在そのものは、当然の前提となっているので、同格節が表す内容は、関係節の表す内容ほどにはバラエティに富むものではなく、情報的価値が高いものではないという傾向があります。 (もちろん、関係節は、表せる内容に自由度がある分だけ、その情報的価値は、ピンからキリまである、ということになり、(4)と(6)のようなコントラストが発生します。)
そこで、(3)のように、‘the rumor’のような主語に対して、‘is going around’のような述語なら、同格節の具体的内容にも相対的に情報的価値が発生して、文の末尾に移動しても、OKになりますが、しかし、一方、(8)のように、「うわさの否定」ということになると、やはり、そのうわさの内容よりも、否定されているという事実の方が情報的価値が高いと見なされますので、文の末尾に同格節が移動するとアウトになります。
今回のポイントは、関係節と同格節の共通点として、かかる名詞からの切り離しが可能であるという点と、その容認可能性が、同一の制約から導き出されるということです。その制約の本質とは、相対的な「情報的価値」という、通常の文法的な法則とは極めて異質な概念によるものです。
英語において、カタチが変化するという文法現象が、時として複雑に思えるのは、こういった純粋に文法上の制約とは考えられないような概念に強く縛られているケースがあるからです。こういった概念の存在は、よく、その本質が理解されず、誤解されたままで、解説本などの話題の出しに使われがちなので、実用に耐え得るカタチでは、なかなか一般には浸透していないようです。また機会があったら扱ってみたいと思います。
■注 :今回扱った、名詞 (句) からの節の切り離し現象に関して、よくある解説としては、一般には、「文末重点原理」であるとか何とかいった解説のものが大半ですが、「~ 原理」などと、大仰な呼び方を紹介するだけで、その割には、(6)や(8)のような例とのコントラストを全く無視した解説が多く、何でもかんでも、(3)や(4)のように文末に移動できるとカン違いしている解説本やサイトがあるので、要注意です。
●関連: EG24、EG25、EG26、EG27
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(1)The rumor [ that John talked about the scandal ] is going around.
([ ジョンがそのスキャンダルを話題にしたという ] うわさが広まっている。)
(2)The rumor [ which John talked about _ ] is going around.
([ ジョンが _ 話題にした ] うわさが広まっている。)
(1)のカギカッコ内は同格節であり、一方、(2)のカギカッコ内は、関係代名詞の‘which’を用いた関係節です。ポイントは、(1)のように、同格節内には、‘rumor’「うわさ」に該当するような空所がなく、一方、(2)のように、関係代名詞による関係節内には、‘rumor’に該当する空所がある、ということです。
その意味としては、(1)では、ジョンが、あるスキャンダルをキャッチして話題にしたら、その行為がうわさとなって、周囲の人々を通して広まっている、と言っているのに対し、一方、(2)では、例えば、ジョンやトムが、それぞれ聞きつけたうわさがあるが、ジョンの聞きつけて話題にしたうわさの方は、特に広まってしまった、というようなケースです。
(3)The rumor is going around [ that John talked about the scandal ]. (〇) (訳同(1))
(4)The rumor is going around [ which John talked about _ ]. (〇) (訳同(2))
そこで、(3)と(4)ですが、(1)に対応しているのが(3)で、一方、(2)に対応しているのが(4)です。それらのカタチとしては、(1)の同格節が文の末尾に位置しており、一方、(2)の関係節も、同様に、文の末尾に位置しています。そして、(3)も(4)も、共にOKとなっています。
そこで、(1)の同格節であれ、(2)の関係節であれ、‘rumor’にかかる節であることに違いはないわけですから、(1)や(2)のように、‘rumor’にピッタリとくっ付いて合体している状態が原則なんですが、(3)や(4)のように、共に、‘rumor’から切り離して用いてもOKになる場合がある、ということなんですね。これは一体どういうことなんでしょうか。
(5)The rumor [ which is going around ] is denied by Mary. (〇)
([ 広がっている ] そのうわさは、メアリーには否定されている。)
(6)The rumor is denied by Mary [ which is going around ]. (×)
(訳同(5))
そこで、(5)の関係節を、(6)のように、文の末尾に移動してみましたが、今度は、何とアウトになってしまいました。 関係節は、(2)から(4)のような変形は、確かに、OKになるんですが、一方、同じ性質であるハズの(5)から(6)の変形はアウトになってしまうわけですね。
つまり、関係節を文の末尾に移動する変形には、それをOKにしたりアウトにしたりする、何らかの制約が存在すると見なければなりません。そこで、‘rumor’「うわさ」という単語の意味に注目してみたいと思います。一般に、「うわさ」は、人から人へと伝えられていくものです。ですので、主語‘the rumor’に対して、‘is going aroud’「広がる」という述語が選ばれるのは、別に意外性も何もない、ということになります。
しかし、うわさが否定されるということは、広がって当然のはずのものに歯止めをかける何かが存在するという、言わば、意外性のある情報の存在を示唆することになりますから、これは、聞き手にとっては、反応度の高い関心事になる可能性が十分にあります。
こういった視点から、(6)がアウトになるのを考えると、「うわさの否定」は、情報としての価値が高いと思われるのに、‘is denied by Mary’「メアリーに否定される」という述語を飛び越えて、相対的に情報としての価値が低い‘which is going around’「広がっている」が、文の末尾に移動したからだ、と言えるのではないかと考えられます。
つまり、(5)から(6)の変形が阻止されるのは、情報としての価値に重点が置かれるものと、そうでないもののバランスが、位置関係としておかしいと判断されることに起因しているものと思われます。そこで、(2)から(4)の変形がOKになっているのは、‘the rumor’に対して、‘John talked about’「ジョンが話題にした」という関係節が、誰が取り上げた話題なのかという点で関心事になり得るし、かつ、それが‘going around’よりも情報的価値が高いと見なされているからだと言えます。
そして、(2)と(4)は両方ともOKであることから、関係節の基本的なカタチを守った(2)のような文の場合は、特に、情報的価値うんぬんとは関係なく、OKになるということですね。ですので、(5)は、基本的なカタチのままで、情報的価値のある‘is denied by John’が文の末尾にあるので、わざわざ、その基本形を破壊してまで、変則的な(6)のような移動変形を施す必要はない、ということになります。
(7)The rumor [ that John talked about the scandal ] is denied by Mary. (〇)
([ ジョンがそのスキャンダルを話題にしたという ] うわさは、メアリーには否定されている。)
(8)The rumor is denied by Mary [ that John talked about the scandal ]. (×) (訳同(7))
今度は、同格節になりますが、(7)では、‘the rumor’の具体的補足をカギカッコ内の同格節が担っています。同格節の場合、関係節とは違って、どんな名詞でも、かかる相手にすることができるというわけではなく、抽象名詞に限られますので、例えば、「うわさ」のような抽象名詞は、もともと、具体的な補足を前提としている名詞と言えます。
つまり、かかる相手となる抽象名詞からすれば、もともと、同格節の存在そのものは、当然の前提となっているので、同格節が表す内容は、関係節の表す内容ほどにはバラエティに富むものではなく、情報的価値が高いものではないという傾向があります。 (もちろん、関係節は、表せる内容に自由度がある分だけ、その情報的価値は、ピンからキリまである、ということになり、(4)と(6)のようなコントラストが発生します。)
そこで、(3)のように、‘the rumor’のような主語に対して、‘is going around’のような述語なら、同格節の具体的内容にも相対的に情報的価値が発生して、文の末尾に移動しても、OKになりますが、しかし、一方、(8)のように、「うわさの否定」ということになると、やはり、そのうわさの内容よりも、否定されているという事実の方が情報的価値が高いと見なされますので、文の末尾に同格節が移動するとアウトになります。
今回のポイントは、関係節と同格節の共通点として、かかる名詞からの切り離しが可能であるという点と、その容認可能性が、同一の制約から導き出されるということです。その制約の本質とは、相対的な「情報的価値」という、通常の文法的な法則とは極めて異質な概念によるものです。
英語において、カタチが変化するという文法現象が、時として複雑に思えるのは、こういった純粋に文法上の制約とは考えられないような概念に強く縛られているケースがあるからです。こういった概念の存在は、よく、その本質が理解されず、誤解されたままで、解説本などの話題の出しに使われがちなので、実用に耐え得るカタチでは、なかなか一般には浸透していないようです。また機会があったら扱ってみたいと思います。
■注 :今回扱った、名詞 (句) からの節の切り離し現象に関して、よくある解説としては、一般には、「文末重点原理」であるとか何とかいった解説のものが大半ですが、「~ 原理」などと、大仰な呼び方を紹介するだけで、その割には、(6)や(8)のような例とのコントラストを全く無視した解説が多く、何でもかんでも、(3)や(4)のように文末に移動できるとカン違いしている解説本やサイトがあるので、要注意です。
●関連: EG24、EG25、EG26、EG27
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