EG109、EG110の続きです。比較の構文における対比要素‘as ~’と‘than ~’の共通点です。以下、見ましょう。
(1)Tom jumps very high. (〇) (トムは、とても高くジャンプする。)
(2)John jumps as high as Tom (does). (〇) (ジョンは、トムと同じくらい高くジャンプする。)
(1)の文をもとにして、(2)のような比較の構文をつくることができます。後半の‘as’以下では、‘Tom does’の‘Tom’が、主語としてはたらいているので、ちょうど、主語‘John’と、同じ主語同士ということになり、構文的なバランスがとれています。
ここから、接続詞‘as’によって、(1)の文を、(2)の中に、その一部としてつないだ後、動詞句‘jump very high’が消去された、と説明することができます。 (動詞句の消去、および、助動詞‘does’の出現に関しては、EG20、参照。)
(3)The world record jumps very high. (×) (世界記録がとても高くジャンプする。)
(4) a. John jumps as high as the world record does. (×)
(ジョンのジャンプは世界記録とタイだ。)
b. John jumps as high as the world record. (〇) (訳同上)
今度は(3)ですが、(3)は、意味不明でアウトです。ですので、当然、(4a)もアウトになるわけですが、一方、(4b)がOKになっています。(4a)は、‘the world record’「世界記録」が主語であることを示す‘does’が後に続いていますが、もちろん、動詞句‘jump very high’などの消去と考えても、(3)がもともとアウトなので、意味がありません。
そこで、(4b)のように、‘does’が続かない‘the world record’だけならば、OKにできるのですが、その理由は、‘as’には、接続詞としての用法以外に、前置詞としての用法もあるからだ、と考えなければなりません。そして、もちろん、接続詞としてだけではなく、前置詞としての用法があることは、‘than’にも共通しています。
(5) a. John jumps higher than Tom does. (〇)
(ジョンは、トムよりも高くジャンプする。)
b. John jumps higher than Tom. (〇) (訳同上)
(6) a. John jumps higher than the world record does. (×)
(ジョンは、世界記録よりも高くジャンプする。)
b. John jumps higher than the world record. (〇) (訳同上)
(5a-b)は、共にOKです。これは、(5a)の場合、(1)を手がかりにして、「‘than’(接続詞)+‘Tom’(主語)+‘does’(助動詞)」 (動詞句‘jumps very high’の消去) であると考えておけばよく、一方、(5b)の場合、さらに、‘Tom’の後にある助動詞‘does’が消去されていると考えれば、説明がつきます。
しかし、(6a)がアウトである一方、(6b)がOKです。(6a)の場合は、もちろん、アウトである(3)にもとづいた(4a)がアウトになることと理由は同じですが、その一方で、(6b)がOKになるわけですから、これは、もはや、(5a)から(5b)が派生されるようなケースとは同じではありません。
そこで、(6b)は、(6a)から‘does’が消去された、などと考えることはできず、やはり、‘than’も‘as’と同様、前置詞としての選択肢があるケースを認める以外に説明はつかない、という結論になります。
(7)John ate more oranges than Tom bought apples. (〇)
(ジョンが食べたミカンの数は、トムが買ったリンゴの数より多い。)
(8)More oranges than Tom bought apples were eaten by John. (×)
(トムが買ったリンゴの数よりも多いミカンが、ジョンによって食べられた。)
(7)と(8)は、共に、「‘than’(接続詞)+‘Tom bought apples’(文)」をもった比較の構文ですが、(7)はOKで、一方、(8)はアウトです。(7)の‘than Tom bought apples’は文の末尾に置かれていますが、一方、(8)の‘than Tom bought apples’は、受身文の主語の一部であり、‘More oranges than Tom bought apples’「トムが買ったリンゴの数よりも多いミカン」という1つのカタマリ (名詞句) となっています。
つまり、接続詞としての‘than’が後にしたがえる表現は、文の末尾に位置していなければ、OKにできず、名詞にかかることを強制されるような位置に置くことはできない、といった制約があるようです。しかし、前置詞としての‘than’というオプションもあることが、既に証明済みなので、この前置詞‘than’ならばどうか、ということになります。
(9)More oranges than apples were eaten by John. (〇)
(ジョンによって食べられたミカンの数は、リンゴの数より多い。)
(9)はOKです。‘more oranges than apples’「リンゴよりも多くのミカン」という表現は、主語位置にある1つのカタマリであり、その中の‘than apples’は、(8)にあるような‘than Tom bought apples’とは違って、別に文の末尾に位置している必要など、全くありません。
(10)John ate more oranges than Tom bought _. (〇)
(ジョンは、トムが買った数より多くのミカンを食べた。)
ところで、比較の構文には、(10)のように、目的語‘oranges’のみが、前半と後半の文での共通した語句であり、かつ、それのみが‘than’以下で表現されないようなものもあります。考え方としては、やはり、「‘than’(接続詞)+‘Tom bought oranges’(文)」のような表現から、‘oranges’の消去があった、というやり方でよいと言えます。ですので、(10)の下線部は、‘oranges’として解釈されるべき空所ということですね。
(11)More oranges [ than Tom bought _ ] were eaten by John. (〇)
([ トムが買った数より ] 多くのミカンが、ジョンによって食べられた。)
そこで、(11)ですが、何とOKです。(11)は、(10)にあるような、‘more oranges than Tom bought _’を、主語位置に置いた受身文ですが、これがOKであるとなると、一方で、(8)がアウトであるという事実に対して、ちょっとややこしい話になってきます。
なぜならば、「接続詞‘than’(または‘as’)+文」から、その文の中の要素を消去した結果、(4b)や(6b)といった比較の構文が派生されるわけではなく、むしろ、(4b)や(6b)は、「前置詞‘than’(または‘as’)+名詞」という、全く別の選択肢を取っているからだ、という結論が既に確定しているからです。
そこで、(11)を、再度、考え直してみると、その主語位置の‘than’以下は、あたかも、関係節のような成り立ちになっているのがわかります。つまり、‘than Tom bought _’を、関係代名詞‘than’と、その目的語の空所から成る関係節に見立てて、それが‘more oranges’にかかるようなカタチになっています。 (関係節の基本に関しては、EG24、EG26、参照。)
ここから、どうやら、比較の構文は、名詞 (句) にかかって、1つのカタマリと見なされるようなカタチになる場合は、他の構文と類似的な振る舞い方を許す、という考えが成立しそうです。つまり、「前置詞+名詞」のカタチは、名詞にかかることができるし、一方、関係節も、名詞にかかるカタチですので、比較の構文は、その2つの構文の性質を受け継ぐことが許されている、ということになります。
(12)As many oranges as apples were eaten by John. (〇)
(リンゴの数と同じだけのミカンが、ジョンによって食べられた。)
(13)a. John ate as many oranges as Tom bought _ . (〇)
(ジョンは、トムが買った数と同数のミカンを食べた。))
b. As many oranges [ as Tom bought _ ] were eaten by John. (〇)
([ トムが買った数と ] 同数のミカンが、ジョンによって食べられた。)
今度は、‘as ~ as ・・・’「・・・ と同じくらい ~ だ」の構文です。(12)では、やはり、‘as apples’が、「前置詞+名詞」と見なされて、‘as many oranges’にかかり、 OKになります。そして、(13a)は、目的語‘oranges’のみが、前半と後半の文での共通した語句であり、かつ、それのみが、後半の‘as’以下で表現されていません。
(13a)の場合、「‘as’(接続詞)+‘Tom bought oranges’(文)」のような表現から、下線部で示されているように、‘oranges’の消去があった、という考え方でよいと言えます。ですので、(13a)の下線部は、‘oranges’として解釈されるべき空所です。
(13a)からは、さらに、(13b)が派生可能と思われますが、これは、‘as John bought _’の部分が、関係代名詞‘as’と、その目的語の空所から成る関係節に見立てて、‘as many oranges’にかかるようなカタチになっていることから、偶然に、‘as many oranges [ as Tom bought _ ]’全体で、関係節がかかっている名詞句と見なせます。
今回のポイントは、比較の構文における‘as’や‘than’には、結構、様々な用法があるということです。接続詞としての使い方以外に、「前置詞」としての使い方もあったのですが、そこから、さらに、「関係代名詞」のような使い方もある、ということです。
これら「前置詞」や「関係代名詞」としての使い方は、接続詞としての使い方に不都合があるような場合に、可能な選択肢として機能します。主に、名詞にかかるような環境に置かれた場合は、必然的に、接続詞としての機能は放棄せねばならず、「前置詞」か「関係代名詞」のどちらかの用法を選ぶことになります。
比較の構文は、一通りの可能なカタチを押さえていくだけでも、結構、大変なんですが、今回までのものが一応の基本形となります。あとは、細かい派生を見ていくことになりますが、別の機会にでも。
●関連: EG20、EG24、EG26、EG109、EG110、
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(1)Tom jumps very high. (〇) (トムは、とても高くジャンプする。)
(2)John jumps as high as Tom (does). (〇) (ジョンは、トムと同じくらい高くジャンプする。)
(1)の文をもとにして、(2)のような比較の構文をつくることができます。後半の‘as’以下では、‘Tom does’の‘Tom’が、主語としてはたらいているので、ちょうど、主語‘John’と、同じ主語同士ということになり、構文的なバランスがとれています。
ここから、接続詞‘as’によって、(1)の文を、(2)の中に、その一部としてつないだ後、動詞句‘jump very high’が消去された、と説明することができます。 (動詞句の消去、および、助動詞‘does’の出現に関しては、EG20、参照。)
(3)The world record jumps very high. (×) (世界記録がとても高くジャンプする。)
(4) a. John jumps as high as the world record does. (×)
(ジョンのジャンプは世界記録とタイだ。)
b. John jumps as high as the world record. (〇) (訳同上)
今度は(3)ですが、(3)は、意味不明でアウトです。ですので、当然、(4a)もアウトになるわけですが、一方、(4b)がOKになっています。(4a)は、‘the world record’「世界記録」が主語であることを示す‘does’が後に続いていますが、もちろん、動詞句‘jump very high’などの消去と考えても、(3)がもともとアウトなので、意味がありません。
そこで、(4b)のように、‘does’が続かない‘the world record’だけならば、OKにできるのですが、その理由は、‘as’には、接続詞としての用法以外に、前置詞としての用法もあるからだ、と考えなければなりません。そして、もちろん、接続詞としてだけではなく、前置詞としての用法があることは、‘than’にも共通しています。
(5) a. John jumps higher than Tom does. (〇)
(ジョンは、トムよりも高くジャンプする。)
b. John jumps higher than Tom. (〇) (訳同上)
(6) a. John jumps higher than the world record does. (×)
(ジョンは、世界記録よりも高くジャンプする。)
b. John jumps higher than the world record. (〇) (訳同上)
(5a-b)は、共にOKです。これは、(5a)の場合、(1)を手がかりにして、「‘than’(接続詞)+‘Tom’(主語)+‘does’(助動詞)」 (動詞句‘jumps very high’の消去) であると考えておけばよく、一方、(5b)の場合、さらに、‘Tom’の後にある助動詞‘does’が消去されていると考えれば、説明がつきます。
しかし、(6a)がアウトである一方、(6b)がOKです。(6a)の場合は、もちろん、アウトである(3)にもとづいた(4a)がアウトになることと理由は同じですが、その一方で、(6b)がOKになるわけですから、これは、もはや、(5a)から(5b)が派生されるようなケースとは同じではありません。
そこで、(6b)は、(6a)から‘does’が消去された、などと考えることはできず、やはり、‘than’も‘as’と同様、前置詞としての選択肢があるケースを認める以外に説明はつかない、という結論になります。
(7)John ate more oranges than Tom bought apples. (〇)
(ジョンが食べたミカンの数は、トムが買ったリンゴの数より多い。)
(8)More oranges than Tom bought apples were eaten by John. (×)
(トムが買ったリンゴの数よりも多いミカンが、ジョンによって食べられた。)
(7)と(8)は、共に、「‘than’(接続詞)+‘Tom bought apples’(文)」をもった比較の構文ですが、(7)はOKで、一方、(8)はアウトです。(7)の‘than Tom bought apples’は文の末尾に置かれていますが、一方、(8)の‘than Tom bought apples’は、受身文の主語の一部であり、‘More oranges than Tom bought apples’「トムが買ったリンゴの数よりも多いミカン」という1つのカタマリ (名詞句) となっています。
つまり、接続詞としての‘than’が後にしたがえる表現は、文の末尾に位置していなければ、OKにできず、名詞にかかることを強制されるような位置に置くことはできない、といった制約があるようです。しかし、前置詞としての‘than’というオプションもあることが、既に証明済みなので、この前置詞‘than’ならばどうか、ということになります。
(9)More oranges than apples were eaten by John. (〇)
(ジョンによって食べられたミカンの数は、リンゴの数より多い。)
(9)はOKです。‘more oranges than apples’「リンゴよりも多くのミカン」という表現は、主語位置にある1つのカタマリであり、その中の‘than apples’は、(8)にあるような‘than Tom bought apples’とは違って、別に文の末尾に位置している必要など、全くありません。
(10)John ate more oranges than Tom bought _. (〇)
(ジョンは、トムが買った数より多くのミカンを食べた。)
ところで、比較の構文には、(10)のように、目的語‘oranges’のみが、前半と後半の文での共通した語句であり、かつ、それのみが‘than’以下で表現されないようなものもあります。考え方としては、やはり、「‘than’(接続詞)+‘Tom bought oranges’(文)」のような表現から、‘oranges’の消去があった、というやり方でよいと言えます。ですので、(10)の下線部は、‘oranges’として解釈されるべき空所ということですね。
(11)More oranges [ than Tom bought _ ] were eaten by John. (〇)
([ トムが買った数より ] 多くのミカンが、ジョンによって食べられた。)
そこで、(11)ですが、何とOKです。(11)は、(10)にあるような、‘more oranges than Tom bought _’を、主語位置に置いた受身文ですが、これがOKであるとなると、一方で、(8)がアウトであるという事実に対して、ちょっとややこしい話になってきます。
なぜならば、「接続詞‘than’(または‘as’)+文」から、その文の中の要素を消去した結果、(4b)や(6b)といった比較の構文が派生されるわけではなく、むしろ、(4b)や(6b)は、「前置詞‘than’(または‘as’)+名詞」という、全く別の選択肢を取っているからだ、という結論が既に確定しているからです。
そこで、(11)を、再度、考え直してみると、その主語位置の‘than’以下は、あたかも、関係節のような成り立ちになっているのがわかります。つまり、‘than Tom bought _’を、関係代名詞‘than’と、その目的語の空所から成る関係節に見立てて、それが‘more oranges’にかかるようなカタチになっています。 (関係節の基本に関しては、EG24、EG26、参照。)
ここから、どうやら、比較の構文は、名詞 (句) にかかって、1つのカタマリと見なされるようなカタチになる場合は、他の構文と類似的な振る舞い方を許す、という考えが成立しそうです。つまり、「前置詞+名詞」のカタチは、名詞にかかることができるし、一方、関係節も、名詞にかかるカタチですので、比較の構文は、その2つの構文の性質を受け継ぐことが許されている、ということになります。
(12)As many oranges as apples were eaten by John. (〇)
(リンゴの数と同じだけのミカンが、ジョンによって食べられた。)
(13)a. John ate as many oranges as Tom bought _ . (〇)
(ジョンは、トムが買った数と同数のミカンを食べた。))
b. As many oranges [ as Tom bought _ ] were eaten by John. (〇)
([ トムが買った数と ] 同数のミカンが、ジョンによって食べられた。)
今度は、‘as ~ as ・・・’「・・・ と同じくらい ~ だ」の構文です。(12)では、やはり、‘as apples’が、「前置詞+名詞」と見なされて、‘as many oranges’にかかり、 OKになります。そして、(13a)は、目的語‘oranges’のみが、前半と後半の文での共通した語句であり、かつ、それのみが、後半の‘as’以下で表現されていません。
(13a)の場合、「‘as’(接続詞)+‘Tom bought oranges’(文)」のような表現から、下線部で示されているように、‘oranges’の消去があった、という考え方でよいと言えます。ですので、(13a)の下線部は、‘oranges’として解釈されるべき空所です。
(13a)からは、さらに、(13b)が派生可能と思われますが、これは、‘as John bought _’の部分が、関係代名詞‘as’と、その目的語の空所から成る関係節に見立てて、‘as many oranges’にかかるようなカタチになっていることから、偶然に、‘as many oranges [ as Tom bought _ ]’全体で、関係節がかかっている名詞句と見なせます。
今回のポイントは、比較の構文における‘as’や‘than’には、結構、様々な用法があるということです。接続詞としての使い方以外に、「前置詞」としての使い方もあったのですが、そこから、さらに、「関係代名詞」のような使い方もある、ということです。
これら「前置詞」や「関係代名詞」としての使い方は、接続詞としての使い方に不都合があるような場合に、可能な選択肢として機能します。主に、名詞にかかるような環境に置かれた場合は、必然的に、接続詞としての機能は放棄せねばならず、「前置詞」か「関係代名詞」のどちらかの用法を選ぶことになります。
比較の構文は、一通りの可能なカタチを押さえていくだけでも、結構、大変なんですが、今回までのものが一応の基本形となります。あとは、細かい派生を見ていくことになりますが、別の機会にでも。
●関連: EG20、EG24、EG26、EG109、EG110、
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