EG02、EG03に続いて品詞です。今回、日本語にはない品詞で、前置詞と呼ばれるものです。以下、見ましょう。
(1)a book of poems (詩の本)
(1)の‘of poems’の部分は、「詩の」、という意味で使われています。そこで、単純に考えると、‘of ~’は、日本語で、「~ の」に当たる表現だな、とわかります。日本語の文法では、「~ の」という表現を、助詞と呼んでいますが、一方、英語では、‘of ~’を、「前置詞」と呼んでいます。
この前置詞という呼び名の理屈は単純で、(1)の‘poems’「詩」のような名詞の前に置いて使うという、文法上の機能を言い表しています。ポイントは、名詞の前に置くのが約束となっているということで、「前置詞+名詞」の使い方が基本です。ですので、原則として、他の品詞の前には置けません。
(2)I go to Japan (日本に行く)
(3)の‘to ~’「~ に」もまた、前置詞であり、‘Japan’「日本」という名詞の前に置かれています。そこで、(3)の英語‘to’+‘Japan’のカタチが、日本語の、「日本」+「に」のカタチに対応していることから、前置詞の機能を感覚的にとらえるとしたら、やはり、日本語の助詞みたいなもの、という感じが一見するんですが、実は、前置詞の概念は、助詞の概念とは、ちょっと異質のものです。
(3)I have a book in my bag. (バッグの中に本をもっています。)
(3)の前置詞‘in ~’は、「~ の中に」に対応しています。このケースを、単純に一字一句考えると、‘in ~’は、日本語の、「の (助詞)」+「中 (名詞)」+「に (助詞)」という、3つの単語に、一度に対応していると言えますから、意味的には、日本語の助詞よりも、やや濃い内容を表現している、と言えそうです。
あと、‘over ~’「の上に」、‘under ~’「~ の下に」、‘by ~’「~ のそばに」、‘beside ~’「~ の横に」などと言った前置詞も、同じ感覚で考えていくと、日本語の助詞よりも、やや意味内容が濃い、と思われます。つまり、英語の前置詞は、日本語の助詞ほどには、文法上の機能優先型とは言えず、意味内容の面からも、豊かさを感じさせる品詞であると言えます。例えば、前置詞‘on ~’も、通常、「~ の上に」という日本語がよく当てられますが、以下の例からは、どうでしょうか。
(4)a fly on the table (テーブルにとまっているハエ)
(5)a fly on the ceiling (天井にとまっているハエ)
(6)a fly on the wall (壁にとまっているハエ)
よく解説書で説明されることがあるように、「空間」に関する認識では、前置詞は、対応する日本語訳よりも、概念的な理解の方が重要である、とよく言われています。例えば、(4)~(6)の前置詞‘on ~’ですが、この場合、全ての‘on ~’に、「~ にとまっている」、という日本語訳が与えられています。しかし、だからといって、「~ にとまっている」という日本語訳も、「~ の上に」という日本語訳とあわせて共に暗記しろ、と言っているわけではありません。
そんなことよりも、むしろ、‘on ~’が言い表している基本概念としての内容は、「接触」であり、(4)のように、ハエが上を向いていようが、(5)のように、下を向いていようが、(6)のように、横を向いていようが、とまっている場所に、ピタッと触れていることが重要で、それにそった日本語訳が、たまたま、「~ の上に」となったり、「~ にとまっている」、となったりするだけのことなんですね。
というわけで、前置詞は、その意味内容としては、割と情報量がある表現なので、その分だけ、扱いは複雑なものになります。(4)~(6)では、‘on ~’の「空間」に関する認識だったわけですが、しかし、別に、‘on ~’は、空間について表現するための専用表現というわけでもありません。もっと抽象的な概念についても、よく使われます。
(7)I leave my message on the answering machine. (留守番電話に伝言を残しますね。)
(8)I am on the soccer team. (サッカーチームに所属しています。)
(9)The CD is now on sale. (そのCDなら、今発売中ですよ。)
(7)~(8)では、‘on ~’が、空間的にどうのこうの、というようなものではありません。ただ何となく、(7)では、留守番電話に、ペタッとメッセージがくっ付いている、というような感じかな、とも思えるし、(8)では、サッカーチームという1つの枠に、そのメンバーがくっ付いている、ということかな、とも取れます。さらに、(9)では、特定の売り出し期間があって、それにCDがくっ付いているのだろう、と解釈するわけですね。
(10)a. I arrived on Japan (×) (日本に到着しました。)
b. I arrived in Japan (〇) (訳同上)
(11)a. I got lost on the mountain. (×) (山で迷子になりました。)
b. I got lost in the mountain. (〇) (訳同上)
(12)a. I persist on my belief. (×) (信念を貫きます。)
b. I persist in my belief. (〇) (訳同上)
しかし、前置詞の厄介なところは、意味に関する概念上の理解があれば、百発百中かというと、それほど単純なものではない、ということです。(10a-b)~(12a-b)の各(a)は、全て‘on ~’の使用がアウトです。これは、‘on ~’の「接触」という基本概念からは、よく問題点となりやすいものです。
まず、(10a)では、日本に到着したということは、すなわち、日本領土に足を踏み入れ接触したと言えるではないか、と考えられます。(11a)でも、山に足を付けて立っている以上、山に接触していると言えるではないか、と考えられます。(12a)でも、信念を貫く、ということは、信念にピッタリと貼りついている、と考えられます。しかし、それにもかかわらず、(10a-b)~(12a-b)の各(a)は、全て‘on ~’の使用がアウトです。
一方、(10a-b)~(12a-b)は、各(b)のように、全て‘in ~’を使えばOKになります。‘in ~’の基本概念は、「何かの中にある」、といった感じです。(10b)では、イメージとしては、日本領土の中に入る、といった感じのようです。(11b)では、山の中で迷う、といった感じで、(12b)では、自分の信念の中にいてそれを貫く、といった感じのようです。
つまり、(10a-b)~(12a-b)の可否が示しているのは、‘on ~’の基本となる「接触」の概念や、‘in ~’の基本となる「中にある」の概念のように、どちらも成り立ちそうな場合であっても、その両方ともが、常に正しい英語になるとは限らず、なぜか、一方しか選ばれない場合がある、ということなのです。日本人にとっては、間違いなく、この前置詞の選択は、最も難しいと感じられる文法項目の1つでしょう。
今回のポイントは、日本語の品詞にはない、英語独特の品詞で、前置詞という品詞です。特に、前置詞は、日本語の助詞に、直接的な対応があるような品詞かと思われやすいんですが、いろいろと意識して考えてみると、そうとは言えない側面があるのがわかったと思います。
そして、その使用や選択基準は、実に摩訶不思議であり、解説本などでも、何となく説明がなされることはよくあるのですが、結局は、百発百中の説明力を誇るものはなく、ある程度は、片っぱしから基本例文を覚えていって慣れる、ということに依存するより、他に方法がないと断言してもよいでしょう。
ただ、個々の前置詞がもっている固有のイメージは、全くもってデタラメなものではなく、拮抗する前置詞の候補の中から、最終的に選ばれる際の選択基準が恣意的で問題になる、ということなので、その点をわきまえるならば、その基本概念を知っておく価値は十分にあると思われます。前置詞は、様々な側面から考察すると、結構、面白い発見があったりしますが、それについては、またの機会にでも。
●関連: EG02、EG03
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(1)a book of poems (詩の本)
(1)の‘of poems’の部分は、「詩の」、という意味で使われています。そこで、単純に考えると、‘of ~’は、日本語で、「~ の」に当たる表現だな、とわかります。日本語の文法では、「~ の」という表現を、助詞と呼んでいますが、一方、英語では、‘of ~’を、「前置詞」と呼んでいます。
この前置詞という呼び名の理屈は単純で、(1)の‘poems’「詩」のような名詞の前に置いて使うという、文法上の機能を言い表しています。ポイントは、名詞の前に置くのが約束となっているということで、「前置詞+名詞」の使い方が基本です。ですので、原則として、他の品詞の前には置けません。
(2)I go to Japan (日本に行く)
(3)の‘to ~’「~ に」もまた、前置詞であり、‘Japan’「日本」という名詞の前に置かれています。そこで、(3)の英語‘to’+‘Japan’のカタチが、日本語の、「日本」+「に」のカタチに対応していることから、前置詞の機能を感覚的にとらえるとしたら、やはり、日本語の助詞みたいなもの、という感じが一見するんですが、実は、前置詞の概念は、助詞の概念とは、ちょっと異質のものです。
(3)I have a book in my bag. (バッグの中に本をもっています。)
(3)の前置詞‘in ~’は、「~ の中に」に対応しています。このケースを、単純に一字一句考えると、‘in ~’は、日本語の、「の (助詞)」+「中 (名詞)」+「に (助詞)」という、3つの単語に、一度に対応していると言えますから、意味的には、日本語の助詞よりも、やや濃い内容を表現している、と言えそうです。
あと、‘over ~’「の上に」、‘under ~’「~ の下に」、‘by ~’「~ のそばに」、‘beside ~’「~ の横に」などと言った前置詞も、同じ感覚で考えていくと、日本語の助詞よりも、やや意味内容が濃い、と思われます。つまり、英語の前置詞は、日本語の助詞ほどには、文法上の機能優先型とは言えず、意味内容の面からも、豊かさを感じさせる品詞であると言えます。例えば、前置詞‘on ~’も、通常、「~ の上に」という日本語がよく当てられますが、以下の例からは、どうでしょうか。
(4)a fly on the table (テーブルにとまっているハエ)
(5)a fly on the ceiling (天井にとまっているハエ)
(6)a fly on the wall (壁にとまっているハエ)
よく解説書で説明されることがあるように、「空間」に関する認識では、前置詞は、対応する日本語訳よりも、概念的な理解の方が重要である、とよく言われています。例えば、(4)~(6)の前置詞‘on ~’ですが、この場合、全ての‘on ~’に、「~ にとまっている」、という日本語訳が与えられています。しかし、だからといって、「~ にとまっている」という日本語訳も、「~ の上に」という日本語訳とあわせて共に暗記しろ、と言っているわけではありません。
そんなことよりも、むしろ、‘on ~’が言い表している基本概念としての内容は、「接触」であり、(4)のように、ハエが上を向いていようが、(5)のように、下を向いていようが、(6)のように、横を向いていようが、とまっている場所に、ピタッと触れていることが重要で、それにそった日本語訳が、たまたま、「~ の上に」となったり、「~ にとまっている」、となったりするだけのことなんですね。
というわけで、前置詞は、その意味内容としては、割と情報量がある表現なので、その分だけ、扱いは複雑なものになります。(4)~(6)では、‘on ~’の「空間」に関する認識だったわけですが、しかし、別に、‘on ~’は、空間について表現するための専用表現というわけでもありません。もっと抽象的な概念についても、よく使われます。
(7)I leave my message on the answering machine. (留守番電話に伝言を残しますね。)
(8)I am on the soccer team. (サッカーチームに所属しています。)
(9)The CD is now on sale. (そのCDなら、今発売中ですよ。)
(7)~(8)では、‘on ~’が、空間的にどうのこうの、というようなものではありません。ただ何となく、(7)では、留守番電話に、ペタッとメッセージがくっ付いている、というような感じかな、とも思えるし、(8)では、サッカーチームという1つの枠に、そのメンバーがくっ付いている、ということかな、とも取れます。さらに、(9)では、特定の売り出し期間があって、それにCDがくっ付いているのだろう、と解釈するわけですね。
(10)a. I arrived on Japan (×) (日本に到着しました。)
b. I arrived in Japan (〇) (訳同上)
(11)a. I got lost on the mountain. (×) (山で迷子になりました。)
b. I got lost in the mountain. (〇) (訳同上)
(12)a. I persist on my belief. (×) (信念を貫きます。)
b. I persist in my belief. (〇) (訳同上)
しかし、前置詞の厄介なところは、意味に関する概念上の理解があれば、百発百中かというと、それほど単純なものではない、ということです。(10a-b)~(12a-b)の各(a)は、全て‘on ~’の使用がアウトです。これは、‘on ~’の「接触」という基本概念からは、よく問題点となりやすいものです。
まず、(10a)では、日本に到着したということは、すなわち、日本領土に足を踏み入れ接触したと言えるではないか、と考えられます。(11a)でも、山に足を付けて立っている以上、山に接触していると言えるではないか、と考えられます。(12a)でも、信念を貫く、ということは、信念にピッタリと貼りついている、と考えられます。しかし、それにもかかわらず、(10a-b)~(12a-b)の各(a)は、全て‘on ~’の使用がアウトです。
一方、(10a-b)~(12a-b)は、各(b)のように、全て‘in ~’を使えばOKになります。‘in ~’の基本概念は、「何かの中にある」、といった感じです。(10b)では、イメージとしては、日本領土の中に入る、といった感じのようです。(11b)では、山の中で迷う、といった感じで、(12b)では、自分の信念の中にいてそれを貫く、といった感じのようです。
つまり、(10a-b)~(12a-b)の可否が示しているのは、‘on ~’の基本となる「接触」の概念や、‘in ~’の基本となる「中にある」の概念のように、どちらも成り立ちそうな場合であっても、その両方ともが、常に正しい英語になるとは限らず、なぜか、一方しか選ばれない場合がある、ということなのです。日本人にとっては、間違いなく、この前置詞の選択は、最も難しいと感じられる文法項目の1つでしょう。
今回のポイントは、日本語の品詞にはない、英語独特の品詞で、前置詞という品詞です。特に、前置詞は、日本語の助詞に、直接的な対応があるような品詞かと思われやすいんですが、いろいろと意識して考えてみると、そうとは言えない側面があるのがわかったと思います。
そして、その使用や選択基準は、実に摩訶不思議であり、解説本などでも、何となく説明がなされることはよくあるのですが、結局は、百発百中の説明力を誇るものはなく、ある程度は、片っぱしから基本例文を覚えていって慣れる、ということに依存するより、他に方法がないと断言してもよいでしょう。
ただ、個々の前置詞がもっている固有のイメージは、全くもってデタラメなものではなく、拮抗する前置詞の候補の中から、最終的に選ばれる際の選択基準が恣意的で問題になる、ということなので、その点をわきまえるならば、その基本概念を知っておく価値は十分にあると思われます。前置詞は、様々な側面から考察すると、結構、面白い発見があったりしますが、それについては、またの機会にでも。
●関連: EG02、EG03
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