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英語脳をつくる!~日本人はいかに効率良く英語を学べるか~

英語学習に関する事いろいろです。日本人がいかにすれば実用英語を身に付けられるか、その最短距離を考察!

英語学習法(104)

2005年11月08日 | 変形
EG23の続きです。‘easy’構文における通行禁止エリアです。以下、見ましょう。

(1)It is impossible to take care of John. (〇) (ジョンの面倒をみるなんて、不可能だね。)
(2)John is impossible to take care of _. (〇) (訳同上)

(1)をもとにして、‘John’が、(2)にあるように、文の先頭まで移動しています。 (かわりに、‘it’には退場してもらいます。) この構文の特徴は、(1)の‘to’不定詞の中にある「目的語」が、そのまま、‘be impossible’「不可能だ、無理だ」、の主語位置に現れて、不定詞内における、本来、目的語があるべき位置が、空家 (空所) になってしまうところにあります。 (EG23、参照。)

(3)It is impossible to take pictures of John. (〇) (ジョンの撮影は、無理だね。)
(4)John is impossible to take pictures of _. (〇) (訳同上)

もちろん、(1)から(2)の変形が、OKになるのと同じように、(3)から(4)の変形も、OKになります。(3)における‘of ~’の目的語‘John’を、(4)では、‘be impossible’の主語位置まで移動したのですから、当然、OKですよね。

ところで、今回は、‘take care of ~’「~ の面倒をみる、世話をする」や、‘take pictures of ~’「~ の写真を撮る」、といった表現が使われていますが、こういった表現は、学校などでは、よく、1つのまとまった慣用表現として覚えるように習うことが多いと思います。しかし、‘take pictures of ~’の場合、別の解釈として、「~ の写真をもっていく」というような、単純な意味に取っても構いません。

(5)It is impossible to take pictures of John. (〇)
  (ジョンの写真をもっていくのは、無理だね。)
(6)John is impossible to take pictures of _. (×) (訳同上)

ん?(6)はアウト?ナンデですか?そうですね。(5)からの変形である、(6)はアウトになってしまいました。これはどういうことなんでしょうか。ここで注意して欲しいのは、(4)と(6)は、英語としての姿カタチは、全く同じである、ということです。しかし、ただ、解釈は異なっている、ということなんですね。

つまり、解釈の変化が、‘easy’構文の移動の可否に影響を及ぼす、ということらしいのですが、これをどう見るべきなんでしょうか。そこで、‘take care of ~’のような表現は、カタチの上では、「動詞+名詞+前置詞」という姿をしています。ですので、こういった点に着目するならば、他の表現にも、同じカタチをしているものは、いくらでもありますね。

(7) a. It is impossible to give a big house to John. (〇)
    (ジョンにデカイ家を与えるのは、無理。)
   b. John is impossible to give a big house to _. (〇) (訳同上)

(8) a. It is impossible to buy a present for John. (〇)
    (ジョンにプレゼントを買ってやるのは、無理。)
   b. John is impossible to buy a present for _. (〇) (訳同上)

(7a)から、(7b)における変形では、‘to’不定詞の部分に、‘give A to B’「A を B に与える」、が使われています。そして、その変形は、OKです。一方、(8a)から、(8b)における変形では、‘to’不定詞の部分に、‘buy A for B’「A を B に買ってやる」、が使われています。そして、その変形も、OKです。これらは、いずれも、「動詞+名詞+前置詞」、という姿をしています。

(9) a. It is impossible to give pictures of John. (〇)
    (ジョンの写真をあげるのは、無理。)
   b. John is impossible to give pictures of _. (×) (訳同上)

(10) a. It is impossible to buy pictures of John. (〇)
    (ジョンの写真を買うのは、無理。)
   b. John is impossible to buy pictures of _. (×) (訳同上)

今度は、(9a)から、(9b)における変形ですが、‘to’不定詞の部分が、‘give pictures of ~’「~ の写真を与える」になっています。そして、その変形は、アウトです。一方、(10a)から、(10b)における変形では、‘to’不定詞の部分に、‘buy pictures of ~’「~ の写真を買う」、が使われています。そして、その変形も、アウトです。

(7a-b)~(10a-b)の共通点は、いずれも、‘to’不定詞の部分が、「動詞+名詞+前置詞 ~」、という姿をしていることです。しかし、異なっている点は、(7a)では、‘to John’が、‘a big house’にかかる表現ではなく、同様に、(8a)でも、‘for John’が、‘a present’にかかる表現ではない、ということである一方、(9a)においても、(10a)においても、共に、‘pictures of John’「ジョンの写真」は、1つのまとまった名詞句であり、つまり、‘of John’が、‘pictures’にかかっている、ということです。

ここから、1つの結論として言えることは、‘easy’構文においては、‘to’不定詞内の目的語が、名詞句の一部になっている場合、例え、「目的語」というステイタスをもっていたとしても、移動の対象とすることは不可能である、ということです。

この結論を踏まえて、(6)が、なぜ、アウトになるのかを考えると、やはり、「~ の写真をもっていく」、の解釈になる場合、「動詞 (take)+名詞句 (pictures of ~)」、のような成り立ちが原因である、と考えるのが、妥当であることがわかると思います。

一方、(2)や(4)が、なぜ、OKになるのかは、おそらく、‘take care of ~’「~ の面倒をみる、世話をする」や、‘take pictures of ~’「~ の写真を撮る」、といった表現が、慣用的に1つのまとまった、いわゆる、イディオムとして見なされて、「動詞+名詞句」、の成り立ちを、キャンセルしているためだと思われます。

つまり、名詞句という成り立ちを無視して、「動詞+名詞+前置詞 ~」、という、単語の並びのみから、その中身 (「名詞+前置詞=名詞句」という成り立ちになっているか否か) を問うことなく、即座に、慣用表現としての意味をつくり上げていると判断されるケースに該当するためである、と言えそうです。

(11)Pictures of John are impossible to take _.
(12)a. ジョンの撮影は、無理だね。 (×)
   b. ジョンの写真をもっていくのは、無理だね。 (〇)

(11)では、本来、‘take’の後にあるはずの、‘pictures of John’が、‘be impossible’の主語位置にありますが、この場合、(12a)の解釈がアウトであり、一方、(12b)の解釈ならば、OKであることから、やはり、‘pictures’+‘of’+‘John’のつながりが、1つの名詞句として、見なされるか否かがポイントであることがわかります。

今回のポイントは、‘easy’構文において、その移動をブロックする環境です。‘easy’構文の移動は、‘to’不定詞の中に名詞句がある場合、その名詞句内の目的語は、移動が不可能であることがわかりました。これまで、他でも見てきたようなことから、考え合わせると、‘easy’構文は、ちょっと神経質なところがありますね。 (EG83、EG99参照。)

■注 :‘take pictures of John’「ジョンの写真を撮る」の場合は、イディオムとして見なされることが多いのですが、一方、類似した意味の、‘take John's pictures’は、‘John's pictutes’の部分を、1つのカタマリと見なして、名詞句ととらえる傾向があります。ですので、(11)を、‘John's pictures are impossible to take.’、と言いかえると、(12a)の解釈を、OKにし易くなります。

●関連: EG23EG83EG99

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英語学習法(103)

2005年11月06日 | 変形
EG83と、EG102の続きです。EG102で示した移動の性質とは、異なるものについてです。では、以下、見ましょう。

(1)John seems _ to be said _ to be hated _ by Mary. (〇)
  (ジョンはメアリーに嫌われていると、言われているみたいだね。)

(1)では、‘John’が、‘seem’の主語になっています。しかし、これは、もともと、‘seem’が、直接的に‘John’を主語に指定いるわけではありません。むしろ、‘John’は、‘seem’の後にある‘to be said’によって、「ジョンは ~ と言われている」、という、意味関係から選ばれた表現であると言えます。

しかし、今度は、‘John’が‘to be said’から、直接的に指定された表現かというと、そうではなく、‘John’は、そのさらに後にある‘to be hated’から選ばれたものであり、「ジョンが嫌われている」、という意味関係が、本来、基本となる表現です。そして、もっと言えば、受身文のもともとのカタチは、能動文なので、‘John’は、‘hate’の目的語だった、と言えます。

ですので、(1)での‘John’の解釈は、‘seem’の主語でもあり、また、‘be said’の主語でもあり、そして、また、‘be hated’の主語でもある (‘be hated’を能動文にするなら、‘hate’の目的語)、ということになります。こういったことが起こってしまうのは、英語の文法には、移動から移動によって成り立つ「連鎖」があるためです。 (EG102、参照。)

(2)I think [ (that) Mary hates John ]. ([ メアリーはジョンを嫌っている ] と思う。)

(3)Who do you think [ _ hates John ] ? ([ 誰がジョンを嫌っていると ] 思う?)
(4)Who do you think [ (that) Mary hates _ ] ? ([ メアリーは誰を嫌っていると ] 思う?)

しかし、一方、英語には、そのような規則性を示さない移動もあります。(2)をもとにして、(3)と(4)のような疑問詞‘who’を使った疑問文がつくれます。(2)は、‘that’節内の主語‘Mary’と、目的語‘John’が、(3)と(4)のように、‘who’で置きかえることができます。そして、その‘who’は、文の先頭まで移動しています。 (疑問詞の移動に関しては、EG47、参照。また、(3)における、‘that’が消去されなければならない条件に関しては、EG59、参照。)

こういった移動は、EG102で見たような、予め、もとの位置と移動先を、ガッチリ指定している構文 (受身文、‘seem’の構文、‘easy’構文、など) における移動とは、明らかに性質が違うものです。つまり、疑問詞の移動は、どの位置からであろうと、必要とあらば、何らかの疑問の対象となるものを疑問詞に変えて、一足飛びに、文の先頭にもっていくことができる、という点で、かなり自由度が高い移動である、と言えます。 (ただし、移動を妨げるような要因もあります。EG49など、参照。)

(5)It seems [ (that) everyone says [ (that) Mary hates John ] ]. (〇)
  ([ 皆は、[ メアリーはジョンを嫌っていると ] 言っている ] みたいだね。)

(6)Who does it seem [ (that) everyone says [ (that) Mary hates _ ] ] ? (〇)
  ([ 皆は、[ メアリーが誰を嫌っていると ] 言っている ] 様子なのさ?)

(5)をもとにして、‘John’を疑問詞‘who’に変えて、(6)のように、文の先頭にもっていった疑問文はOKです。(6)の移動は、(1)の移動とは明らかに違っていて、文の末尾から先頭まで、一発で移動しています。そして、‘that’節から‘to’不定詞への書きかえも必要ありません。

(7)a boy [ who it seems [ (that) everyone says [ (that) Mary hates _ ] ] ] (〇)
  ([ [ 皆は、[ メアリーが _ 嫌っていると ] 言っている ] 様子の ] 少年)

今度は(7)ですが、‘who’以下が関係節となって‘a boy’にかかっている例です。関係節が長いんで、ちょっと解釈がややこしいんですが、基本的にはOKです。(7)の場合も、関係代名詞‘who’が、関係節の末尾から先頭まで、一発で移動してきたと考えられます。この点、疑問詞の移動と、関係詞の移動は、よく似た性質をもっていると言えますね。

ここで、疑問詞と関係詞は、EG83では、「‘wh-’表現」として、ひとまとめにされたのを思い出してほしいのですが、「‘wh-’表現」は、‘that’節内からであっても、その外に自由に移動できるほどの力がある、「強い移動」として扱われました。

一方、予め、もとの位置と移動先を、ガッチリ指定している構文 (受身文、‘seem’の構文、‘easy’構文、など) は、‘that’節の中から、直接、外に飛び出す力がないので、‘that’節内から移動の際は、‘to’不定詞への書きかえがなければ、アウトになってしまう、という点で、「弱い移動」として扱われました。

こういった分類に加えて、今回扱った移動の性質の違いからも、やはり、「‘wh-’表現」という、ひとまとめの扱いは妥当である、ということになります。つまり、移動の「連鎖」が、どうしても必要である特定の構文と、一方、移動の「連鎖」など必要とはしない、「‘wh-’表現」の違いです。

(8)Who seems _ to be said _ to be hated _ by Mary ? (〇)
  (誰がメアリーに嫌われていると、言われている様子なの?)

(8)の場合、OKですが、ここでは、‘who’が、直接的に、‘hated’の後から移動しているというわけではありません。(1)の‘John’が、ただ、‘who’に置きかわっただけです。そこで、「‘wh-’表現」の移動は、特定構文の移動の「連鎖」が混じっている場合、その構文の連鎖が、全て完了してから、適用されるもので、それは、以下の例からも明らかです。

(9)It seems [ (that) everyone says [ (that) John is hated _ by Mary] ]. (〇)
  ([ 皆は、[ ジョンはメアリーに嫌われていると ] 言っている ] みたいだね。)

(10)Who does it seem [ (that) everyone says [ _ is hated _ by Mary ] ? (〇)
  ([ 皆は、[ 誰がメアリーに嫌われていると ] 言っている ] 様子なの?)

(9)はOKですが、最も小さな‘that’節内で、受身文による‘John’の移動があるだけです。そして、移動はそこまでで終了していても、‘John’が、それ以降、‘say’の受身文や、‘seem’による特定構文の移動をされていないならば、もちろん、「連鎖」はストップしていても構いません。

ですので、この場合、(9)における「連鎖」は、最も小さな‘that’節内で完了している、と考えてもよいわけですから、(9)における‘John’は、(10)のように、‘who’になって、「‘wh-’表現」として、一発で文の先頭まで移動できるわけですね。

今回のポイントは、英語における移動の性質を考えていくと、どうやら、2種類の移動に分類できそうだ、ということです。長距離の場合、目的地にたどり着くまでに、通過点でのチェックを受けてからでないと、先に進めない移動と、一方、長距離であっても、寄り道などせずに、一発で、行きたい場所に行ける移動がある、ということです。

前者の特徴は、特定構文の移動をうながすようにするために、1つ1つ移動を進めていかなければならないのですが、後者の特徴は、基本的には、どこからでも行きたいところに一発でたどり着ける、という点にあるので、前者のほうが、はるかに手続きがややこしい、と言えます。

ですので、これら2種類の移動が混じっている場合は、前者の方が規則正しく行われているかを確かめてから、後者の移動を適用する方が、間違いなく、正しい英語をつくる上でのコツと言えますね。

●関連 :EG47EG49EG59EG83EG102

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英語学習法(102)

2005年10月31日 | 変形
英語によく見られる、移動の性質についてです。以下、見ましょう。

(1)It seems [ that Mary hates John ].
  ([ メアリーは、ジョンを嫌っている ] みたいだね。)

(2)Mary seems _ to hate John. (訳同上)

(1)の文は、いわゆる、‘seem’の構文ですが、‘that’節内の主語を、‘seem’の主語位置に移動させることができますね。この場合、(1)の‘Mary’が、‘that’節内の主語ですから、それを‘seem’の主語位置に移動させると、(2)のようになります。 (‘seem’の構文については、EG62、参照。)

(3)John seems [ (for) Mary to hate _ ]. (×) (訳同(1))

ところで、(3)にあるように、(1)の目的語‘John’は、‘seem’の主語位置には、直接的には移動が不可能です。しかし、‘John’の移動が、全く不可能かというと、そうでもなく、「‘that’節内の主語」が移動の対象となる、という条件さえ守られていれば、移動は可能となります。以下を見ましょう。

(4)It seems [ that John is hated _ by Mary ]. (〇)
  ([ ジョンは、メアリーに嫌われている ] みたいだね。)

まず、(4)では、(1)の‘that’節内の能動文を、受身文にしてみました。受身文というのは、もちろん、能動文の目的語を、主語位置に移動させる変形です。(4)では、‘that’節内で‘John’が、目的語の位置から、主語位置に移動しています。 (受身文については、EG35、参照。)

(5)John seems _ to be hated _ by Mary. (〇) (訳同上)

そこで、(1)が、(4)の状態になった時点で、‘John’が、that’節内の主語位置にあることが確定していますので、(5)のように、‘John’を、‘seem’の主語位置まで移動しても、OKになります。つまり、この場合、受身文にする、という移動変形が、たまたま、‘seem’の構文における移動を可能にする状態をつくりあげた、と言ってもよいでしょう。

(6)It seems [ that it is easy to deceive John ]. ([ ジョンを騙すのは簡単 ] そうだな。)

今度は、(6)の文です。‘seem’の構文の‘that’節内が、いわゆる、‘easy’構文になっています。この‘easy’構文を、‘seem’の構文とからめて使った場合は、ちょっと、ややこしいことが起こります。 (‘easy’構文については、EG23、参照。)

(7)It seems _ to be easy to deceive John . (〇) (訳同(6))

(7)はOKです。(6)と比較して、パッと見た感じ、‘it seems’の部分には、何ら変化がないように見えますが、一方、(6)では‘that’節だった部分が、(7)では、‘to’不定詞に変化しています。そこで、‘seem’の構文は、‘that’節内の主語が、‘seem’の主語位置に移動した場合、‘to’不定詞への変化がある、と考えるわけですから、(7)の‘it seems’の部分は、実は、‘it is easy ~’の‘it’が、移動によって、‘seem’の主語位置に移ったと考えるのが、妥当であることがわかります。 (移動前と後のニュアンスの違いについては、EG90、参照)

そこで、(6)のようなカタチは、‘seem’と、その主語である‘it’の組み合わせを、予め知っておくことが肝要ですが、一方、(7)のようなカタチでは、‘it’と‘seem’の組み合わせではなく、むしろ、‘it’と‘easy’の組み合わせがもとにあるのを、予め知っておくべきで、‘it seems to be ~’というカタチを、ガッチリ固めて、暗記構文のようにして覚えていても、正しい英語を使えるようになる保証には一切ならず、何ら、本質的な理解に到達できないことは、明らかです。

(8)It seems [ that John is easy to deceive _ ]. (訳同(6))
(9)John seems _ to be easy to deceive _. (〇) (訳同(6))

そこで、今度は、(8)ですが、(6)との違いは、もちろん、‘deceive’の目的語である‘John’が、‘is easy’の主語位置まで移動している、ということです。そしてさらに、(8)があると、今度は、(9)のように、‘John’を‘seem’の主語位置まで移動させることが可能となります。

(10)John seems [ that it is easy to deceive _ ]. (×) (訳同(6))

念のため、(10)のように、‘that’節内の目的語‘John’を、直接的に、‘seem’の主語位置に移動させてみましたが、やはりアウトになりました。そこで、今回の話の流れから、確実に言えそうなことは、ある構文における移動が、他の異なる構文においての移動を可能にする環境をつくりあげる、ということです。

これを言いかえると、ある移動が他の移動をうながすという、移動の「連鎖」とでも言うべき現象が英語にはあり、それは、ある一定の文法の法則にもとづいて保証されている、ということです。こういったことは、ある特定の構文における変形の特徴を知っておきさえすれば、あとは、ルールにしたがって各構文をつないでいくだけですから、でき上がった文が、正しい「連鎖」であるかどうかは、自分で判断することができます。

ですので、問題は、その各構文の変形の特徴を、予め知っておく、ということが、労力として支払うべき代償ではあるものの、組み合わせのやり方、つまり、比較的長い文をつくること自体は、それほど難しいことではない、ということなんです。

(11)It seems [ that everyone says [ that Mary hates John ] ]. (〇)
  ([ 皆は、[ メアリーはジョンを嫌っていると ] 言っている ] みたいだね。)

(12)It seems [ that everyone says [ that John is hated _ by Mary] ]. (〇)
  ([ 皆は、[ ジョンはメアリーに嫌われていると ] 言っている ] みたいだね。)

(13)It seems [ that John is said (by everyone) _ to be hated _ by Mary ]. (〇)
  ([ ジョンはメアリーに嫌われていると (皆から) 言われている ] みたいだね。)

(14)John seems _ to be said (by everyone) _ to be hated _ by Mary. (〇)
  (訳同(13))

今度は、3回のステップで移動する例を見てみます。まず、(11)からスタートして、(12)では、最も小さな‘that’節内で、‘John’が、‘hate’の目的語から、主語位置に移動していますが、これは、単純な受身文ですね。次に、(12)から(13)ですが、やはり‘John’は、that節内の主語位置から、‘be said’の主語位置に移動が可能です。 (EG83、参照)

そして、もちろん、(13)から(14)では、‘seem’の構文における移動ですから、(13)で、‘seem’に続く‘that’節内の主語位置に‘John’があれば、‘John’は、‘seem’の主語位置に移動が可能なわけですね。このように、英語の移動には、順にステップを踏んで、最終的には、かなり遠くまで行くことができるという性質があります。

今回のポイントは、英語には、規則的な手順を踏まえて移動を繰り返すことで、1つの要素が、ある構文から他の構文へとまたがって、かなり遠くまで移動することができる、ということです。これを言いかえれば、どうしても正しい表現を身に付けるには、移動の出発地点から最終地点まで、どうやってたどり着いたのかをチェックできるだけの知識が必要、ということになります。

つまり、ある表現の上に、別の表現を、ただ単純に付けたすと考えるだけでは、豊かな表現力を身に付ける上では、片手落ちで、そのつながり方、つまり、「連鎖」も見ておかなければならないということです。

実は、英語では、大半の場合、こういったやり方で複雑な意味を表現する文がつくられているわけですから、「英語脳」的には、見たまんまそのとおり、文の丸暗記だけでやっつける方法では、かなりツライことがわかります。逆に今回のような法則性を見抜いてしまえば、複雑な意味をもった文を表現することは、案外やさしいことだな、とわかります。今回の話は、多様な表現力を身につける上では、かなり要に位置するものになりますが、まだ話すべきことはありますので、そのときまで。

■注 :(12)から(13)のような、‘say’の‘that’節内にある主語が、その外に移動する際に、‘that’節は、‘to’不定詞にならなければならないのですが、これは、‘seem’の構文と、共通した特徴であると言えます。この条件に関しては、EG83を参照して下さい。

●関連: EG23EG35EG62EG83EG90

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英語学習法(99)

2005年08月30日 | 変形
EG23の続きです。‘easy’構文の特徴についてです。

(1)It is easy to drive this car. (このクルマを運転するのは簡単だね。)
(2)This car is easy to drive _. (訳同上)

‘easy’構文の特徴は、(1)のような文の、‘to’不定詞の中にある、目的語‘this car’を、 (‘it’を外して) ‘be easy’の主語位置まで移動させることで、(2)のような文を派生させる、ということでした。今回は、この移動に関して、さらなる確認です。

(3)It is difficult (for John) to deal with this problem. (〇)
  (この問題は (ジョンには) 扱うのは困難だろうね。)

(4)This problem is difficult (for John) to deal with _. (〇) (訳同上)

(3)から(4)への変形も、OKです。‘difficult’「困難だ」も、‘easy’構文と同タイプの変形を許す仲間です。ポイントは、この構文の特徴として、‘for John’「ジョンには」が、オプションとして、参加することができる、ということと、‘deal with ~’「~ を扱う」などの前置詞の目的語でも、とにかく、目的語なら、移動がOK、ということですね。ただし、油断は禁物です。それは、以下のような場合があるからですね。

(5)It is easy (for Tom) to imgine [ (that) John loves Susan ]. (〇)
  ((トムには) [ ジョンがスーザンを愛している ] なんて、想像するのは簡単だよ。)

(6)Susan is easy (for Tom) to imgine [ (that) John loves _ ]. (×) (訳同上)

(5)はOKですが、(6)は、アウトになります。つまり、目的語なら、何でも移動して、OKにできるか、というと、‘that’節の中にある目的語の場合は、ダメなんです。しかし、これは、特定の移動変形 (疑問詞や、関係詞のような、いわゆる、‘wh-’表現以外の移動) の場合、ただ単に、‘that’節の中から、その外へは移動できない、という、別個に独立したルールがあるためです。 (EG83、参照。)

(7)It is impossible (for me) to persuade Mary to drive this car.
  ((ボクには、) メアリーに、このクルマを運転するように説得するなんて無理ですよ。)

(8)Mary is impossible (for me) to persuade _ to drive this car. (〇) (訳同上)

(9)This car is impossible (for me) to persuade Mary to drive _. (〇) (訳同上)

今度は、(7)をもとにして、(8)や(9)のように、変形させてみましたが、(8)と(9)、両方とも、OKです。‘impossible’「不可能だ」も、やはり、‘easy’構文と同タイプの述語です。(7)のような、「動詞+目的語+‘to’不定詞」の構文においても、目的語の移動は、OKです。(8)では、目的語の‘Mary’が移動の対象となっていますね。

そして、(7)の‘this car’も、一応、‘drive’の目的語です。そして、ちょっと、‘be impossible’の主語位置から、遠く離れてはいますが、‘that’節の介在がなく、単純に、‘to’不定詞の中からの移動になりますので、(9)のような文にしても、OKにすることができます。こういった観察からも、やはり、‘to’不定詞内における「目的語」というステイタスが、‘easy’構文にとっては、重要であることを示していますね。

(10)It is easy (for me) to cut a big tree with this sword.
  ((オレ様には、) この剣なら、大木だってブッタ切るのは簡単さ。)

(11)A big tree is easy (for me) to cut _ with this sword. (〇)

(12)This sword is easy (for me) to cut a big tree with _. (〇)

今度も、やはり、‘easy’構文における、‘to’不定詞の中からの目的語の移動を示す例ですが、(10)の‘cut a big tree with this sword’「剣で大木を切る」は、他動詞‘cut ~’の目的語‘a big tree’と、前置詞‘with ~’の目的語‘this sword’という、2つの目的語をもっています。

と言うことは、(7)から、(8)と(9)の2つが派生されるのと同様に、(10)からも、2種類の移動が可能ということですね。まず、(11)では、‘a big tree’が、移動の対象として選ばれていますが、もちろん、OKです。一方、(12)では、‘this sword’が、移動の対象として選ばれていますが、これも、何の問題もなく、OKになります。

(13)It is unpleasant for Mary to drive this car.
  (メアリーには、このクルマを運転することは不愉快だ。)

(14)This car is unpleasant for Mary to drive _. (〇) (訳同上)

今度は、(13)から(14)への変形ですが、‘unpleasant’「不愉快だ」は、‘easy’構文としての述語の仲間ですので、‘to’不定詞‘to drive this car’の中からの目的語‘this car’の移動は、当然、OKですね。では、以下は、どうでしょうか。

(15)It is unpleasant for John for Mary to drive this car.
  (ジョンにとって、メアリーがこのクルマを運転するなんて不愉快だ。)

(16)This car is unpleasant for John for Mary to drive _. (×) (訳同上)

ん?(16)は、アウトになるんデスカ?そうですね。まず、(15)を見ると、‘for John for Mary’というように、‘for’が、2つ並んだカタチになっています。この‘for’は、それぞれ、文法的なステイタスが違っていて、‘for A for B’の語順で見た場合、必ず、‘for A’の方が、「A にとって」の解釈になりますが、一方、‘for B’の方は、「B が」という解釈になります。 (EG43、参照)

このように、‘for A for B’のように、‘for ~’が、2つ現れるケースにおいては、‘easy’構文の移動は阻止される、ということなんです。そこで、とりあえず、(16)の例からは、そういったことが言えるんですが、しかし、もうちょっと、他のケースも、考えてみたいと思います。

(17)Oh! It snows in June. (オオ!6月に雪が降るとは。)

(18)It is impossible for it to snow in June. (6月に雪が降るなんて、アリエナイ。)

(19)June is impossible for it to snow in _. (×) (訳同上)

(17)のような文をもとにして、(18)では、‘for it to snow’というように、「主語・述語」の関係を表現しています。そこで、(18)から、(19)の変形ですが、何と、アウトなんです。もちろん、注目すべきポイントは、(18)で、別に、‘for A for B’「A にとって B が ~」のように、‘for ~’が、2つ現れているわけではないし、‘June’「6月」は、前置詞‘in ~’の目的語なので、‘June’の移動は、可能であるはずなんですが、やはりアウトなんです。これは、一体、どういうことなんでしょうか。

そこで、(18)と(19)における、‘for it’の意味に着目してもらいたいのですが、これは、もちろん、もととなった、(17)の‘it snows.’「雪が降る」の主語‘it’は、単純に、代名詞の‘it’「それ」というわけではなく、特に、何かを指して、具体的な意味内容をもっているわけではありません。

ただ単に、‘snow’という動詞は、無条件に、‘it’を主語に置く、という約束ごとが最初にあるから、そうしているにすぎないわけです。ですので、このような‘it’は、全く文脈など必要とせず、いきなり現れても、一向に構わない、いわゆる、単純な「代名詞」とは異質な、主語専用の‘it’なんですね。

この‘it’は、もちろん、‘for it’「‘it’にとって」などとしても、意味不明です。つまり、「~ にとって」とは、解釈できないわけです。でも、だからと言って、「‘it’が」としても、やはり、同様に、意味不明ではあるのですが、しかし、少なくとも、機能的な面から考えて、動詞‘snow’に対する、「主語」としてのステイタスは保持している、とハッキリ言えると思います。さらに、以下も見ましょう。

(20)There are many flies in the kitchen. (その台所には、ハエがいっぱいいる。)

(21)It is unpleasant for there to be many flies in the kitchen.
   (その台所に、ハエがいっぱいいるなんて不愉快だな。)

(22)The kitchen is unpleasant for there to be many flies in _. (×) (訳同上)

やはり、(20)をもとにした(21)から、(22)を派生する変形も、アウトになりました。これは、もちろん、‘there’構文の‘there’は、主語専用の表現であり、かつ、‘for there’「‘there’にとって」の解釈は、意味不明だから、ということのようですね。 (‘there’構文については、EG31、EG74、参照。)

そこで、(15)や(16)にもどって考えると、‘for A for B’「A にとって B が ~」のように、2つの‘for’が並んだ場合、必ず、‘for A’は、「~ にとって」の解釈になり、一方、‘for B’は、真の意味で、‘to’不定詞の主語としてのみ、はたらくことを強制されるわけですから、いわゆる、これら2つの‘for’は、それぞれ、「~ にとって」でも、「~ が」でも、どちらにでも、好き勝手に解釈できるような‘for’ではありません。

これに対して、OKである、(4)、(8)、(9)、(11)、(12)、(14)の例では、全て、‘for ~’の部分が、‘to’不定詞の主語として機能しながらも、一方、「~ にとって」の意味に解釈することも可能です。ですので、どうやら、‘for ~’が、こういった、「~ にとって」の解釈に逃げ込む余地がない、というような状況が、(16)、(19)、(22)を、アウトにする決め手となるようです。

(23)「~ にとって」の意味に解釈できないような、‘for ~’ (完全に
   ‘to’不定詞の主語としか解釈できないような‘for ~’) がある
   場合、‘easy’構文における‘to’不定詞内の目的語は、移動させ
   ることができない。

今回のポイントは、‘easy’構文の特徴である、‘to’不定詞の中にある目的語の移動が、不可能になるような障壁の存在です。「‘for’~‘to’不定詞」のカタチにおける‘for’が、明らかに、「~ にとって」と解釈できない場合、こういった移動をブロックする環境が形成される、ということです。

普通、この‘for ~’は、「~ にとって」でも、「~ が」でも、どちらにでも、好き勝手に解釈できる場合が、多いのですが、今回示したように、そうはいかない場合もあるので、明らかに、「~ にとって」の意味に解釈できないような、‘for ~’ (完全に‘to’不定詞の主語とだけしか解釈できないような‘for ~’) であるかどうか、考えて、移動の可否を決定するようにして下さい。

●関連 :EG23EG31EG43EG74EG83

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英語学習法(90)

2005年08月07日 | 変形
一般には、「省略」として扱われている現象についてです。以下、見ましょう。

(1)It seems that Jack is a good teacher. (ジャックは良い教師のようだね。)
(2)Jack seems to be a good teacher. (訳同上)

(1)と(2)は、ほぼ同じ意味をもっていると思われます。加えて、(1)と(2)の関係は、(1)の‘that’節内の主語‘Jack’「ジャック」が、(2)では、‘seem’の主語位置に移動する、という、「変形」によって、結び付けられる表現であることも、確立されているものと思われます。 (EG62、参照)

(3)Jack seems a good teacher. (〇) (訳同(1))

ところで、(2)から、さらに、(3)のような文にすることもできます。見て、おわかりの通り、(2)から、‘to be’を消去しているわけですね。実は、英語には、特定の構文において、よく、‘to’不定詞が‘to be’の場合、その‘to be’を消去する、といったことがあるんです。しかし、日本語訳は、(1)~(3)まで、全て同じですから、ただ、カタチが変化しただけで、意味には、違いがない、ということになりますね。

じゃ、カタチばっかり変わっていて、意味に差がないなんて、英語はムダが多くて、エラく不経済なコトバだな、と感じるかも知れません。しかし、今回、英語は、こういったことに関しては、実際、そうでもなさそうだ、というお話をしてみたいと思います。まず、以下を見てみましょう。

(4)It seems that Jack is a teacher. (〇) (ジャックは教師のようだね。)

(5)Jack seems to be a teacher. (〇) (訳同上)

(6)Jack seems a teacher. (×) (訳同上)

(1)~(3)では、最後の表現に、‘a good teacher’を使っていたんですが、そこから、‘good’を消して、(4)~(6)では、‘a teacher’に変えてみました。すると、(4)と(5)は、OKのままなんですが、一方、何と、(6)がアウトになってしまいました。これは、どういうことなんでしょうか。

問題は、‘a good teacher’「良い教師」から、‘good’「良い」を消去したことで、発生したわけですから、もちろん、‘good’の有無に原因がある、と考えなければなりません。そこで、‘good’の有無には、どういった影響力が潜んでいるのか、ということですが、まず、以下の比較を見ましょう。

(7) a. very good teacher (〇) (とても良い教師)、
   b. pretty good teacher (〇) (かなり良い教師)、
   c. a little good teacher (〇) (ちょっと良い教師)

(8) a. very teacher (×) (とても教師)
   b. pretty teacher (×) (かなり教師)
   c. a little teacher (×) (ちょっと教師)、

(7a-b)の表現は、全てOKですが、一方、(8a-b)の表現は、対応する日本語に対しては、全てアウトです。 (違う意味でなら、OKになるものもあります。) ここから、明らかにわかるのは、「程度」の表現が適合するか、否か、です。‘good’は、どのくらい、「良い」といえるのか、‘very’「とても」や、‘a litttle’「ちょっと」、といった表現を付け足して、その「程度」を表すことが可能です。

しかし、一方で、‘teacher’「教師」という表現そのものは、「程度」を問題にすることが不可能で、「教師」でなければ、別の職種だな、となるだけのことなんですね。つまり、「教師」であるか否かは、誰が見ても一律に、「〇・×」式に、ハッキリと、判断が下せるわけです。つまり、‘teacher’は、「客観」表現と言ってもよいでしょう。

しかし、「程度」という概念は、誰が見ても、ハッキリとした明確な基準があり、線引きが可能な概念か、というと、そうでもありません。あるヒトからみれば、「とても良い」モノが、他人から見れば、何であんなモンが良いんか?となることは、よくあることですからね。つまり、‘good teacher’は、「主観」表現であると言えますね。

そこで、(3)と(6)に戻って、どうやら、(3)のような、‘seem’の直後に‘to be’がない文は、「主観」に依存する判断が好まれるようなのです。そこで、(6)がアウトである理由は、主観的な判断に依存しにくい文になっているためだ、と言えます。では、今度は、「客観」の側からの判断を考えてみます。

(9)It seemed that Jack was a good teacher、but it didn't seem
   that he was a good teacher. (×)
  (ジャックは良い教師に思われたが、そうではないようだった。)

そこで、今度は、(9)ですが、‘but’「しかし」を挟んで、前半と後半の文は、同じ、「‘it seems’+‘that’節」の構文を使っています。そして、(9)はアウトになっています。ここから、どういったことが言えるんでしょうか。その前に、以下の比較材料をみて下さい。

(10)It seemed that Jack was a good teacher、but he didn't seem
  (to be) a good teacher. (〇) (訳同(9))

(10)では、(9)の後半の文を、‘seem (to be) ~’の構文に変えて、OKになりました。つまり、(9)と(10)の可否から、「‘it seems’+‘that’節」の構文は、主観に強く依存する判断を好まない、と結論づけてよい、と言えます。

と言うのも、もし、「‘it seems’+‘that’節」の構文が、「主観・客観」の判断に対して、割と無頓着な構文であるなら、(9)は、前半の文と後半の文を、自由に、「主観的判断+‘but’+客観的判断」というようにしたり、逆に、「客観的判断+‘but’+主観的判断」というように、それぞれ、別々の解釈を与えれば、矛盾なく解釈できるはずだからです。

しかし、後半に主観的判断が好まれる、‘to be’消去タイプの‘seem a good teacher’を使った(10)の場合、OKになるわけですから、「‘it seems’+‘that’節」の構文は、客観的判断が好まれる、とするよりありません。

そして、さらに、‘seem to be ~’のタイプも、(10)では、OKであることからは、「‘it seems’+‘that’節」の構文と、矛盾を起こさない程度には、主観的である、と言えると思います。(もちろん、‘to be’消去タイプの方が、主観依存度が強いのは、(5)と(6)のコントラストから、明らかです。)

つまり、(10)の詳しい状況解釈は、ジャックの教師としての仕事ぶりに関して、何らかの調査が成されて、提出された調査結果を資料として見て、ジャックは良い教師である、と思っていたのに、実際、現場に出向いて、ジャックの仕事ぶりを見ていると、自分には、そうは思えない、という、「資料」という客観性の強い判断と、「自分の印象」という主観性の強い判断との間に、食い違いが起こっているような場面です。

今回のポイントは、(1)~(3)のような、関連性が高いと思われる構文には、「客観・主観」の段階性という、一連の流れがある、ということです。(1)は、客観性の強い判断であると思われるような場合に好まれ、一方、(3)は、主観性の強い判断であると思われるような場合に好まれます。

意味的には、どれも同じである、とは言っても、その「使用環境」に関しては、同じではない、ということなんですね。こういったことは、英語の様々な側面から見受けられることなので、また機会を改めて、いろいろと見ていきたいと思います。

●関連: EG62

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英語学習法(89)

2005年08月07日 | 変形
今回、変な英語をやっちゃう前に、その予防策です。以下、見ましょう。

(1)a picture of Mary (メアリーが写っている写真)

(1)のように、‘a picture of ~’「~ の写真」は、普通、「~ が写っている写真」、というような意味で、表現することができます。ですので、意外と単純で、あまり、ゴチャゴチャ考える必要がなくて、便利ですね。さらに、以下を見ましょう。

(2)John's picture of Mary (メアリーが写っているジョンの写真)

(2)では、所有格である、‘John's ~’「ジョンの ~」が、(1)の冠詞、‘a’に、置きかわっています。そして、その意味としては、「ジョンが持っているメアリーが写った写真」、とか、少し、余計に意味が付加されて、「ジョンが撮影したメアリーの写真」、というくらいの意味になります。

(3)Tom saw a picture of Mary. (トムは、メアリーが写っている写真を見た。)
(4)Tom saw John's picture of Mary. (トムは、メアリーが写っているジョンの写真を見た。)

そこで、(1)と(2)を使って、(3)と(4)のような、ごく普通の文にしてみたんですが、もちろん、全く問題なく、OKになります。ここまでは、大したことはありません。ところで、以下の日本語を、英語で表現すると、どうなるんでしょうか。

(5)トムは、誰が写っている写真を見たの?
(6)トムは、誰が写っているジョンの写真を見たの?

これは簡単。もう、おわかりでしょうが、まず、(3)を手掛かりにして、(5)を考えれば、よいわけですね。そして、同様に、(4)を手掛かりにして、(6)を考えれば、よいわけですね。どうやら、‘Mary’「メアリー」が、疑問詞‘who’になるような疑問文をつくってやれば、よいみたいです。では、最初に、(5)を、英語にしてみましょう。

(7)Who did Tom see a picture of _ ? (〇) (訳同(5))

(7)は、(3)の‘Mary’を、‘who’に変えて、文の先頭まで移動しました。こういった、疑問詞を使った疑問文は、英語では、日本語とは違って、その移動がルールとして決まっているので、それに従って、そのまま、(7)のように、文の先頭まで‘who’「誰」を移動しただけです。そして、それは、何も問題ありません。では、今度は、(6)を、英語にしてみましょう。 (疑問詞の移動に関しては、EG47、参照)

(8)Who did Tom see John's picture of _ ? (×) (訳同(6))

ん?アウト?何でデスカ?そうですね。やっぱり、(8)は、アウトなんだそうです。これは、かなり悪い英語なんだそうで、もう諦めるより仕方ありません。そこで、(7)との比較になるんですが、その違いは、‘picture’の前にある、‘a’か、‘John's’か、でしかないわけで、そこに原因を求めるしか、他に方法はありません。ところで、以下もあわせて、比較してみましょう。

(9)Tom saw the picture of Mary. (〇)
  (トムは、メアリーが写っているその写真を見た。)

(10)Who did Tom see the picture of _ ? (×)
  (トムは、誰が写っているその写真を見たの?)

OKである(9)から、(10)の疑問文をつくってみましたが、(10)は、ちょっと、おかしく感じるらしく、アウトです。そこで、(3)は、‘a picture ~’、(4)は、‘John's picture ~’となっていましたが、一方、(9)では、‘the picture ~’というように、定冠詞‘the’になっていますね。

そこで、(8)と(10)を比較してみて、両方とも、アウトになってはいますが、実は、(8)が、かなり悪い、と判断される一方で、(10)は、おかしく感じられる、といった程度の判断を受けるので、アウトである、とは言っても、同じ程度でアウトになる、とは言えません。ですので、(10)は、(8)ほどには、悪くはない、と言えそうです。そこで、さらに、以下の比較材料を、見てみましょう。

(11)Tom saw that picture of Mary. (〇)
  (トムは、メアリーが写っているあの写真を見た。)

(12)Who did Tom see that picture of _ ? (×)
  (トムは、誰が写っているあの写真を見たの?)

今度は、(11)ですが、‘that picture ~’「あの ~ 写真」としてみました。ここでも、やはり、‘Mary’を、‘who’に変えてから、文の先頭に移動させて、(12)のようにしてみました。そこで、(12)も、結果はアウトですが、その判断の中身としては、(8)よりは、マシだが、(10)よりは悪い、ということになるようです。では、以下に、(7)、(8)、(10)、(12)の文法性に関する要点を、まとめてみます。

(13)不定冠詞‘a’ > 定冠詞‘the’ > 指示代名詞‘that’ > 所有格‘John's’

(13)では、‘a’>‘the’>‘that’>‘John's’の順番に、単語を並べてありますが、最も左がOKで、そこから右に行くにしたがって、悪いと判断される度合いが、強くなっています。そこで、ハッキリ言えるだろうこととして、「定・不定」の度合いに、強弱がある、ということですね。

つまり、不定冠詞‘a’よりも、定冠詞‘the’の方が、名詞を特定する力が強いのは、もちろん、当たり前なんですが、一方で、その‘the’よりも、‘that’の方が、特定する力は強いのです。例えば、ただ、話の中に出てきた、「その写真」、よりも、具体的に、目で見て、指差しながら、「あの写真」、という場合の方が、特定している感じが強い、と言えますね。

そして、これが、‘John's’、ともなると、直接、そのまま、誰であるか (何であるか) を指していますから、「特定」感が、最も強い、ということになるわけですね。つまり、こういった「特定」感が、強ければ強い名詞ほど、その中からの要素の移動に対して、障壁となりやすい、というようなことが、英語にはあるんです。 (「特定」の詳細は、EG72、参照)

今回のポイントは、英語の疑問詞の移動と、「特定」の概念との関わり合いです。英語の疑問詞は、移動しなくてはならない、というルールがあるクセに、その一方で、それを妨げるような要因も、同時に内在しているという、何だか、ヘソ曲がりなところのあるコトバなんですが、学校では習わない、こういったことは、実用英語の世界では、重要と思われます。

英語の名詞は、不定冠詞‘a’が付いたり、定冠詞‘the’が付いたりして、よく、「不定」か「定」か、を問題にしやすい傾向がありますので、面倒ではありますが、多少は、こういったことにも、注意しておかなければならない場合があります。

特に、英語に特有の、「疑問詞の移動」は、意外にも、そういった、「特定」感の強さに影響を受ける、といった側面があることが、今回、明らかになりました。疑問詞を使った文を練習する際には、こういったことも考えながら、変な文にならないように、注意して下さいませ。

●関連: EG47EG72

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英語学習法(83)

2005年05月07日 | 変形
今回は、英語の移動現象に関してです。EG62の、‘seem’の構文から、以下、見ましょう。

(1)It seems [ that Tom loves Susan ]. ([ トムは、スーザンが好きな ] ようだね。)
(2)Tom seems to love Susan. (訳同上)

EG62では、(1)の‘Tom’は、移動によって、(2)にあるように、‘seem’の主語位置まで移動してくる、ということを見ました。しかし、それには、条件があって、(2)にあるように、(1)の‘that’節から、‘to’不定詞への書きかえが必要であり、以下のようなカタチでの移動は禁止されていました。

(3) Tom seems [ (that) _ loves Susan ]. (×) (訳同(1))

(3)は、‘to’不定詞への書きかえなしで、(1)の‘that’節内から、‘Tom’を、‘seem’の主語位置に移動したのですが、結果はアウトです。これは、‘that’があっても省略されていても、結果は同じ、アウトになります。そこで、(1)から(2)への書きかえは、暗記してすませるようなこととして教えられることが一般的になっていて、普通、(3)のようなことまで考える、ということは、まずありません。さらに、以下を見ましょう。

(4)It is easy (for Tom) to deceive Susan. ((トムには)スーザンを騙すなんて簡単だよ。)
(5)Susan is easy (for Tom) to deceive _ . (訳同上)

今度は、(4)から(5)への書きかえですが、これは、EG23の、‘easy’構文です。(4)では、‘Susan’が、‘to’不定詞の目的語ですが、そこから、(5)にあるように、‘is easy’の主語位置まで、移動しています。‘easy’構文の重要なポイントは、「目的語の移動」、だったわけですが、以下のような場合は、どうでしょうか。

(6)It is easy (for Tom) to imgine [ (that) John loves Susan ]. (〇)
  ((トムには) [ ジョンがスーザンを愛している ] なんて、想像するのは簡単だよ。)

(7)Susan is easy (for Tom) to imgine [ (that) John loves _ ]. (×) (訳同上)

(6)の‘to’不定詞内に、‘that’節を置いてみましたが、その「目的語」を移動の対象に選んでみたわけですね。そこで、(7)ができ上がるわけですが、何と、アウトになってしまいました。‘easy’構文は、その‘to’不定詞内部の目的語が、移動の対象となることは、EG23で既に確認済みです。しかし、‘to’不定詞内に、‘that’節を置いた場合、その中では、いくら目的語と言えども、移動の対象として選んではいけない、ということらしいのです。続けて、以下を見ましょう。

(8)It is said [ (that) Tom is smart ]. (〇) ([ トムは頭が良いと ] 言われている。)

(9)Tom is said _ to be smart. (〇) (訳同上)

(10)Tom is said [ (that) _ is smart ]. (×) (訳同上)

今度は、他でもよく解説されているように、(8)から(9)への書きかえパターンですが、もちろん、OKですね。この構文の特徴は、‘that’節内の主語が、必ず、移動の対象として選ばれる、ということです。そして、ポイントは、移動の際に、(8)の‘that’節が、(9)では、‘to’不定詞に変わっていることです。ですので、これらの点を踏まえると、‘seem’の構文と、同タイプの変形パターンと言えます。

そこで、(8)の‘that’節内から、‘to’不定詞に変えずに、そのまま、(10)のように、‘Tom’を移動させた場合は、アウトになります。(‘that’節の‘that’の直後にある要素は移動できない、という、別個に独立したルールがありますが、that’があろうと、省略されていようと、アウトです。(EG59参照))

こういったことから、どうやら、‘that’節には、その内部から外への移動を妨げるような要因がある、と言えそうです・・・。って、ちょっと待った!EG47の、「疑問詞の移動」はどうするんじゃい!そ、そうでした。以下も見てみましょう。

(12)John says [ (that) Tom saw Mary ]. (〇)
   (ジョンは [ トムはメアリーを見た ] と言ってるよ。)

(13)Who does John say [ (that) Tom saw _ ] ? (〇) 
   (ジョンは [ トムは誰を見たと ] 言ってるかい。)

そうなんですね。「疑問詞の移動」に関する例を見る限り、‘that’節には、その内部から外への移動を妨げるような要因がある、とは言えないんです。それに加えて、関係節の例もありますね。

(14)Susan thinks [ the boy bought bread ]. (〇) 
  (スーザンは [ 少年はパンを買ったと ] 思っている。)

(15)the boy [ who Susan thinks [ _ bought bread ] ] (〇)
  ([ スーザンが [ _ パンを買ったと ] 思っている ] 少年)

一般的に、関係節をつくる場合、(14)のような文を基にすると、(15)のように、‘the boy’は、関係代名詞‘who’に変化してから、関係節の先頭まで移動していく、と考えられています。この場合、‘that’節は、‘to’不定詞などへの書きかえはありません。

ですので、関係節の場合も、‘that’節には、その内部から外への移動を妨げるような要因がある、とは言えません。(that’は意図的に省略してあります。既に述べたように、‘that’節の‘that’の直後にある要素は、その外に移動できない、という、別個に独立したルールがあるためです。(EG59参照))

そこで、疑問詞や関係詞の移動、と言った問題は残っていますが、とりあえず、これらの疑問詞や関係詞を、「‘wh-’表現」、として、ひとまとめにしておき、ここでは、アウトである、(3)、(7)、(10)に対する例外として扱っておきます。とは言え、見方によっては、今回の議論の利点は、移動の種類は、実は、大きく、2通りに分類可能ではないか、という示唆があったということです。

つまり、‘that’節という、1つの基準を置いてみることで、その内部から外への移動が可能か否かで、移動には、「弱い移動」と、「強い移動」が、ありそうだ、ということです。「弱い移動」とは、実質的に、意味を変えずに、ただ、カタチが変わるだけの変形をするような移動で、‘seem’構文、‘easy’構文、受身文、といった類の構文で、‘that’節内の、移動対象とされる要素を、その外に移動させるだけの力はありません。

「強い移動」とは、「‘wh-’表現」の移動であり、肯定文から疑問文への意味的変化や、関係節という、文の一部として、他にかかる要素となる、文法的役割の変化が伴う構文において起こる移動のことです。‘wh-’表現は、‘that’節内から、その外に飛び出す力をもっています。

今回のポイントは、‘that’節を1つの基準として、英語には、やたらと多い移動現象の分類分けを試みた、ということです。とりあえず、今回、明らかになったのは、‘seem’構文、‘easy’構文、受身文、といった類の移動構文は、‘that’節内からの移動が起こると、アウトになってしまう、ということです。

疑問詞や関係詞の移動、つまり、「‘wh-’表現」の移動は、今回、その例外扱いとされましたが、実は、‘that’節から、その外の移動を、全く、ものともしないとは、完全には言い切れない証拠も、他にあるのです。この点に関しては、機会を改めて考えることにします。

■注1 :‘easy’構文の場合、‘It is easy [ that Tom deceive Susan ].’「[ トムにはスーザンを騙すなんて ] 簡単だよ。」、というような、「it ~ ‘that’節」のカタチは、もともとアウトで、必ず、it ~‘to’不定詞、のように、‘to’不定詞を取ることになっています。そこで、あえて、OKである‘that’節内からの移動テストをするため、(6)、(7)のように、to’不定詞内の動詞が‘that’節を取っているカタチの例にしてみました。

■注2 :受身文は、普通、‘John loves Mary.’「ジョンはメアリーを愛している。」、のような、‘Mary’を目的語とする能動文から、‘Mary is loved by John.’「メアリーはジョンに愛されている。」、というように、目的語が、主語位置に移動することで生成される、と定義されています。しかし、(9)に対応する能動文と考えられる、‘Someone says Tom to be smart.’自体が、アウトである、という事実があるので、必ずしも、(9)は、‘Someone says that Tom is smart.’が、‘Someone says Tom to be smart.’、というカタチになる、というように、‘that’節内の主語‘Tom’が目的語になる、という派生を受けてから、受身文になったのだ、という確証はありません。そこで、(9)を生成する他の可能性として、「主語」、というステイタスも、受身文の主語位置に、直接、移動する対象であると、一度、考えてみる必要があります。そうなると、(10)がアウトになる原因は、目的語の移動ではないから、というよりも、むしろ、‘that’節内から、その外に移動させたから、という可能性も十分に考慮できると思われます。ですので、この場合、(9)の‘to’不定詞は、‘Tom’の移動が起こった後で、(10)のままでは、アウトになるため、これを避けるために変化が起こったカタチである、と説明されることになります。


●関連: EG23EG47EG59EG62

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英語学習法(62)

2005年03月07日 | 変形
EG23の続きです。以下、見ましょう。

(1)It seems [ that Tom loves Susan ]. ([ トムは、スーザンが好きな ] ようだね。)
(2)Tom seems to love Susan. (訳同上)

‘seem’「~ ようだ」は、「様子」を述べる述語として用いられます。使い方は、ちょっとクセがあって、(1)のように、‘It seems that 主語+動詞 ~’となるように、‘it’を、‘seem’の主語に立てて用いるところです。そして、(2)のような構文でも、‘seem’は使えます。ところで、(1)と(2)は関係が深い、とよく言われています。

ポイントは、①・(1)の‘that’節の主語‘Tom’「トム」が、(2)では、‘it’を外した後、‘seems’の主語になっているということ、②・その際、動詞‘love’は、‘to’不定詞にしなければならない、ということです。

(3) a. Tom seems [ that _ loves Susan ]. (×) (訳同(1))
   b. Tom seems [ _ loves Susan ]. (×) (訳同(1))

(1)の文から、(3a)と(3b)をつくってみましたが、両方ともアウトになっています。(3a)と(3b)は、共に、(1)の‘it’を外した後、‘that’節内の主語‘Tom’を‘seem’の主語にするべく、移動させました。(3a)に関しては、EG59のルール、「‘that’節内では、‘that’は、その直後に移動によって残された空所があってはならない」に違反してしていますので、アウトになるのは容易に予想がつきますが、かと言って、‘that’を消去した(3b)がOKになるわけでもありません。

(3a)や(3b)がアウトになる一方で、(2)がOKである、という事実から、①の移動を行う際には、②の条件は必須であることがわかると思います。ですので、そもそも、EG59のルールうんぬんとは無関係に、(2)は、‘that’節そのものが許されない、という性質をもっているわけですね。この部分は、EG47で見た、「疑問詞の移動」とは、少し異なる点なので、注意が必要です。それと、EG23の、‘easy’構文との差も、注意点となります。

(4)It is easy (for Tom) to deceive Susan. ((トムには)スーザンを騙すなんて簡単だよ。)
(5)Susan is easy (for Tom) to deceive _ . (訳同上)

(4)と(5)は、ほぼ同じ意味をもっていますが、ポイントは、(4)の不定詞内の‘deceive’「~ を騙す」の目的語‘Susan’が、(5)では、‘it’を外した後の、‘is easy’「簡単だ」の主語位置に移動している、ということです。ですので、その移動の結果として、当然のことながら、‘easy’構文である(5)では、‘deceive’「~ を騙す」は、他動詞であるにもかかわらず、その直後に目的語を取っていません。一方、‘seem’を用いた、(1)から(2)への書きかえでは、その目的語‘Susan’ではなく、主語‘Tom’の移動になっていますね。

(6) a. Susan seems [ that Tom loves _ ]. (×) (訳同(1))
   b. Susan seems [ Tom loves _ ]. (×) (訳同(1))
   c. Susan seems (for Tom) to love _ . (×) (訳同(1))

(6a-c)では、目的語‘Susan’を、あらゆるパターンで、‘seem’の主語位置に移動させてみましたが、全部アウトです。(6a)では、‘that’節内から、①の条件を無視して、目的語‘Susan’を‘seem’の主語位置に移動してみましたがアウトです。(6b)では、(6a)から‘that’節内の‘that’を消去してみましたが、やはりアウトです。(6c)では、(1)の‘that’節を、‘to’不定詞にしてから、目的語‘Susan’を‘seem’の主語位置に移動してみましたが、それでも、やはり、アウトです。

このことから、(1)から(2)への変形は、予め、(1)の‘that’節内の目的語ではなく、「主語」が移動する、と決められているようです。では、(4)から(5)のように、‘to’不定詞内の「目的語」が移動の対象となる変形タイプの、‘easy’構文ではどうなんでしょうか。

(7) a. Tom is easy for _ to deceive Susan. (×) (訳同(4))
   b. Tom is easy _ to deceive Susan. (×) (訳同(4))

‘to’不定詞の場合、「for A to 不定詞」のカタチになると、‘for A’が‘to’不定詞の主語になれることは、EG43で説明しました。そこで、(7a)では、‘to deceive Susan’の主語である、‘for Tom’の、’for’を残したままで、‘Tom’を移動してみましたが、アウトになっています。一方、今度は、(7b)では、(7a)から、‘for’を消去してみましたが、それでも、やはり、アウトです。どうやら、‘easy’構文を、決定的に特徴づけているのは、その‘to’不定詞内の「目的語」が、移動の対象として選ばれる、ということにつきるようです。

一方、‘seem’「~ ようだ」を用いる構文の特徴は、(1)のような文の、‘that’節内の「目的語」ではなく、「主語」が移動の対象として選ばれるということです。加えて、‘that’節内の主語が移動によって外へ出て行く際には、その‘that’節が、(2)の文のように、‘to’不定詞に変わっていなければならない、ということですが、ここで、ちょっと疑問に思うのは、(1)のような構文は、もともとが、‘seem’の後が、‘that’節ではなく、‘to’不定詞の構文じゃダメなのか、ということです。

(8)It seems (for Tom) to love Mary. (×) (訳同(1))

(1)を、(8)のような、「for A to 不定詞」の構文に変えてみましたが、アウトです。やはり、‘seem’を用いた構文では、‘it’を‘seem’の主語に立てる場合、‘it seems that 主語+動詞 ~’で記憶しておかなければならないようです。しかし、一方で、‘easy’構文の場合は、以下のように、もともと、‘that’節が取れません。

(9)It is easy [ that Tom deceives Susan ] . (×) (訳同(4))

以上、英語の場合、ある特定の述語には、決まったカタチで使われる、ということと、決まった変形のみを許すということで、タイプ分けされていることを見ましたが、補足的に、(1)から(2)へのカタチとなる「変形」を保証するような証拠となる例を見てみます。

(10)a. It seems [ that there are many books in the room ].
    ([ その部屋にはたくさん本がある ] ようだね。)
   
   b. There seem to be many books in the room. (訳同上)

(11)a. It seems [ that there is a book in the room ].
    ([ その部屋には本が一冊ある ] ようだね。)
   
   b. There seems to be a book in the room. (訳同上)

(10a)から(10b)、及び、(11a)から(11b)の変形では、‘there’構文 (EG31参照)、‘there are/is ~’の主語である、‘there’が移動していると思われます。ここで注目すべきポイントは、(10b)では、‘seem’のカタチが、‘seem’のままですが、一方、(11b)では、「三人称・単数・現在」のカタチ、‘seems’となっていることです。

(10a)から明らかなように、‘that’節内では、複数形‘many books’に対して、動詞が‘are’のカタチを取っていますし、一方、(11a)からも明らかなように、‘that’節内では、単数形‘a book’に対して、動詞が‘is’のカタチを取っています。こういった単数・複数に関する動詞との呼応関係が、そのまま、変形後の(10b)や(11b)にも持ちこされて、‘seem’に影響を与えているのです。さらに、以下を見ましょう。

(12)a. It seems [ that there is the book in the room ]. (×)
   b. There seems to be the book in the room. (×)

(12a)の‘that’節内では、‘book’に‘the’が付いて、‘there’構文、本来の「不定」解釈ではなく、「定」解釈となっているため、非文法的とされていますが、その非文法性が、(12b)でも、そのまま持ち越されてアウトになっています。これも、「変形」によって派生されたと考えれば、もとの文が悪いのだから、派生された文も悪い、ということになり、説明がつきます。次は、イディオムを使った証明です。

(13)The cat is out of the bag.
(14)a. そのネコは袋から出ている。 (通常の解釈)
   b. (うっかり)秘密が漏れている。 (イディオム解釈)

(15)The cat tried to be out the bag.
(16)a. そのネコは袋から出ようとした。 (〇)
   b. 秘密が漏れるよう試みた。 (×)

(13)の文は、普通に意味を解釈すれば、(14a)のようになりますが、一方、イディオムとしての解釈もあり、(14b)のように、「秘密が漏れている」という解釈も可能です。しかし、(15)のように、‘the cat’の部分を、動詞‘try’「試みる」の主語にして、その後に‘to be out of the bag’を続けた場合、(16a)のように、(14a)の通常解釈は、そのままOKですが、一方、(16b)のように、(14b)のイディオム解釈は不可能となります。そこで、‘seem’のような述語を用いて、同様のテストをするとどうなるかというと、以下のようになります。

(17)It seems [ that the cat is out the bag ].
(18)a. [ そのネコは袋から出ている ] ようだね。 (〇)
   b. [ 秘密が漏れている ] ようだね。 (〇)

(19)The cat seems to be out the bag.
(20)a. そのネコは袋から出ているようだね。 (〇)
   b. 秘密が漏れているようだね。 (〇)

(17)の解釈として、(18a-b)の両方とも可能で、同じく、(19)の解釈として、(20a-b)の両方が可能です。つまり、(17)と同様に、(19)でも、(13)における、2つの意味解釈、(14a)と(14b)がそのまま可能となっていて、特に注目すべきポイントは、(14b)のイディオム解釈が、(16b)では不可能だったのですが、(20b)では可能となっていることです。このことから、(1)のような構文から(2)のような構文への「変形」は保証されたものと言ってよいでしょう。

今回のポイントは、EG23の‘easy’構文とは異なる性質をもつ変形です。その特徴は、‘easy’構文のように、‘to’不定詞内の目的語が移動の対象となるのではなく、‘that’節内の「主語」が移動の対象となる、ということです。この性質をもった同種の述語としては、‘be likely to’「~ しそうな、~ ありそうな」、‘happen to’「たまたま、偶然 ~ する」、‘appear to’「(外見から) ~ に見える」などがあります。

■注1 :よくある説明として、(2)のような構文における、‘seem to’を、一種の「助動詞」として教える向きもありますが、‘Tom seems to me to love Susan.’「ボクには、トムはスーザンを好きのように思える。」のように、容易に、‘to me’のような語句を割り込ませることが可能なので、その点、「助動詞」として扱いは、説得力に欠ける説明となります。
■注2 :(1)は、‘[ That Tom loves Susan ] seems.’、と書きかえるのは不可能ですし、よく言われる、(1)の‘it’と、 ‘that Tom loves Susan’、の部分が、イコールで結ばれるような関係にある、ということも、特に証拠があるわけではありません。そこで、(1)の文は、学校で習うような、「基本5文型」のどれに該当するか、などと言うようなことを考えても、あまり意味はありません。
■注3 :(6c)は、‘Susan seems to be loved (by Tom).’のようなカタチでなら、‘Susan’を移動の対象にすることが可能です。この場合、‘It seems [ (that) Susan is loved (by Tom) ] .’のように、‘that’節内で、‘Susan’が主語になっている文が、基になっています。


●関連: EG23EG31EG43EG59

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英語学習法(59)

2005年02月26日 | 変形
EG47の続きです。EG41では、文を文の中に組み込むという仕組みを見ました。そのときに、組み込まれた側の文の先頭には、‘that’がくっ付く、という話をしましたが、今回は、その‘that’と疑問詞の移動の、ちょっとした関係に関するお話です。以下、見ましょう。

(1) a. I think [ that John loves Susan ]. ([ ジョンはスーザンが好きだと ] 思うよ。)
   b. Who do you think [ that John loves _ ] ? ([ ジョンは誰が好きだと ] 思う?)

(1a)の文をもとにして、疑問文(1b)をつくってみました。英語では、日本語とは違って、疑問詞(‘who’、‘what’、‘when’、‘where’、‘how’、など)を使った疑問文をつくる際には、その疑問詞が、文の先頭に位置するという特徴がありました。

(1b)は、「はい、いいえ」ではなく、‘who’「誰」に対して、例えば、「スーザンだよ。」というように、直接、疑問詞できかれた内容に、答えるような疑問文です。英語では、このような疑問文をつくる場合、疑問詞が、文の最も先頭に移動しますので、(1b)でも、そのようになっています。今回は、こういった現象に関して、もう少し例を足して、詳しく見てみましょう。

(2) I think [ that John studies English effectively ].
   ([ ジョンは英語を、効率よく、勉強してると ] 思うよ。)

(3) a. What do you think [ that John studies _ effectively ] ? (〇)
   ([ ジョンは何を、効率よく、勉強してると ] 思う?)
   
   b. How do you think [ that John studies English _ ] ? (〇)
   ([ ジョンは英語を、どう、勉強してると ] 思う?)

(2)の文をもとにして、(3a-b)という、2つの疑問文をつくってみました。(3a)では、(2)の、カギカッコ内(組み込まれた文)の目的語、‘English’「英語」が、‘what’「何」に変わって、文の先頭に移動しています。そして、OKになっていますね。一方、(3b)では、(2)のカギカッコ内にある、副詞の‘effectively’「効果的に、効率よく」が、‘how’「どう、どのように」に変わって、文の先頭に移動していますが、これもやっぱり、OKですね。以下、まだまだ、続きます。

(4) a. I think [ that John studied English yesterday ].
   ([ ジョンは英語を、昨日は、勉強してたと ] 思うよ。)

   b. When do you think [ that John studied English _ ] ? (〇)
   ([ ジョンは英語を、いつ、勉強してたと ] 思う?)

(5) a. I think [ that John studied English in the room ].
   ([ ジョンは英語を、その部屋で、勉強してたと ] 思うよ。)

   b. Where do you think [ that John studied English _ ] ? (〇)
   ([ ジョンは英語を、どこで、勉強してたと ] 思う?)

(4b)では、(4a)の、カギカッコ内の副詞、‘yesterday’「昨日」が、‘when’「いつ」に変わって、文の先頭に移動しています。そして、OKになっていますね。一方、(5b)では、(5a)のカギカッコ内にある、副詞句の‘in the room’「その部屋で」が、‘where’「どこで」に変わって、文の先頭に移動しています。うん、これもやっぱり、OKですね。

以下、まだ、続きます・・・。って、もう、エエかげんにせんかい!おい、一体、何を考えとるんじゃい、ワリャ~。い、いや、ちょっと、待って下さい。もうちょっとだけ、付きあっていただけませんか。決して、損なお話しはいたしませんから。では、以下、見ましょう。

(6) a. I think [ that John studied English ].
   ([ ジョンは、英語を勉強してたと ] 思うよ。)

   b. Who do you think [ that _ studied English ] ? (×)
   ([ 誰が、英語を勉強してたと ] 思う?)

ん・・・?(6b)はアウト?おお!そう来たか!今回のオチはよくわかった。カギカッコ内(組み込まれた文)の、「主語」に相当するものだけは、その外に移動したらイカンということじゃな?ん・・・、まあ、(6b)からは、そういうことなんですけど、ちょっと、結論は、あとまわしにして、以下の例も、あわせて見てほしいんです。

(7) a. Nancy said [ that <fortunately> John had passed the exam ].
   (ナンシーは、[ <運良く>、ジョンは試験に受かったと ] 言った。)

   b. Who did Nancy say [ that <fortunately> _ had passed the exam ] ? (〇)
   (ナンシーは、[ <運良く>、誰が試験に受かったと ] 言ったんだい?)

ん?(7a)の文から、カギカッコ内の「主語」である、‘John’「ジョン」を、‘who’「誰」にかえて、その外、つまり、文の先頭に移動させると、(7b)のようになるんですが、何と、これが、OKなんですね。ですので、(6b)がアウトになった原因を、カギカッコ内の、「主語」に求める、というのは、ひとまず置いといて、ちょっと、他の要因を求めた方がよいのではないかと思うんです。

そこで、(7a-b)では、カギカッコ内の‘that’の直後に、副詞<fortunately>「運良く、幸運にも」、があることに注意してみて下さい。一方、(6b)では、‘that’の直後に、そういったものがありませんね。そこで、実は、英語には、以下のようなルールがあるんです。

(8)組み込まれた文(‘that’節)をつくる‘that’の「直後」には、
  移動によってつくられた空所(空家)があってはならない。

ルール(8)を意識して、(6b)を、もう一度、よく確認すればわかると思いますが、‘that’の直後に、‘who’が移動したあとに残された空所(空家)がありますので、ルール(8)に、もろに違反しています。一方、(7b)では、‘that’と空所の間に<fortunately>が、はさまっていますので、OKとなるわけですね。

つまり、カギカッコ内(‘that’節内)の「主語」が、その外に移動すること自体は、何も悪いことではなく、移動したあとに残された「形跡」、つまり、移動したあとの、主語位置の「空所が、‘that’と隣り合っている」、というのが、アウトになる本当の原因なんです。

じゃ、(6b)のかわりになるような意味の文は、どうやって表現すればいいんだ、ということになるんですが、それは意外と簡単で、要は、‘that’と移動による空所が、隣り合わせに、ならなければよいわけですから、(6b)から、‘that’を消去してやればいいんです。

(9) Who do you think [ _ studied English ] ? (〇) (訳同(6b))

(9)は(6b)のカギカッコ内から、‘that’を取り去った文ですが、OKになりました。やはり、ルール(8)は、確かに成り立つようですね。ここで、ちょっとした注意点になりますが、(7b)の例が、OKになっていることから、主語の疑問詞が移動したあと、‘that’の直後に、副詞があれば、ルール(8)をいつでも回避することができる、と勘違いしないようにして下さい。

(10)a. I think [ that the monster <completely>destroyed the city ].
    ([ あの怪物が<すっかり>街を破壊したんだと ] 思う。)

   b. Who do you think [ that _ <completely>destroyed the city ] ? (×)
    ([ どこのどいつが<すっかり>街を破壊したと ] 思ってるのよ?)

(10b)のような文では、‘that’の直後に副詞があってもアウトになります。これは、もうおわかりになるかと思いますが、副詞のもともとの位置が問題なんですね。<completely>「完全に、すっかり」のような副詞は、<fortunately>「運良く、幸運にも」のように、主語の前にあるものではなく、主語の後に置くのが、通常の使い方になるので、それだと、‘that’と、疑問詞の移動によって残された空所の間に、邪魔ものが割って入ったことにならないので、結局、‘that’と空所が、隣り合っていることになってしまい、アウトになってしまうんですね。

今回のポイントは、EG49のテーマと同様に、やはり、英語における、疑問詞の義務的な移動と、それを阻止しようとするもの、という、相反する要素が同居する、英語のヘソ曲がり性です。一見、組み込まれた文の、主語そのものに、アウトとなる責任があるかと思われがちな、‘that’節内からの移動現象は、実は、‘that’と移動後に残された空所との「位置関係」に、その、可能・不可能の原因があったという点で、意表を突くトリックが仕組まれていました。

しかし、この問題を回避する方法は、‘that’を消去してしまえば、あっさりと解決してしまう、という点で、扱い自体は、手のかかるものではなく、とても簡単に処理できるものです。この点、実用英語を学ぶ上では、一見、知っていなくても、さして問題とはならない現象のように見えるのですが、しかし、今回扱った内容は、実は、ここから端を発する、より大きな問題の伏線に過ぎません。続きは、またの機会になりますが、このことを、ちょっとだけアタマの片すみにでも置いておいて下さい。

●関連: EG41EG47EG49

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英語学習法(49)

2005年01月26日 | 変形
EG47では、英語の疑問詞は、文の先頭に位置する性質があることを見ました。今回は、その性質について、ちょっと発展的に見てみたいと思います。以下、見ましょう。

(1)<トムはメアリーを見たとき>、自分の母を思い出した。
(2)<トムは誰を見たとき>、自分の母を思い出したのかい?

日本語である、(1)から出発して、(2)では、「誰」という疑問詞を使って、その疑問文をつくってみました。(1)から、(2)の疑問文は、全く問題なくつくれます。日本語の場合、疑問詞を使って疑問文をつくるには、英語とは違って、移動する必要はなく、そのまま、もとの位置に留まっていてもよいわけですね。

(3)Tom remembered his mother <when he saw Mary>. (訳同(1))

今度は、英語(3)ですが、日本語(1)に対応しています。(1)の「メアリー」は、「~ を見た」の目的語になっていますね。ですので、(3)でも、‘Mary’が、‘saw’の目的語です。< >の表現は、例の、「副詞一族」の一味で、副詞節になっています。では、以上を踏まえて、日本語(2)に対応する英語をつくってみたいと思います。 (副詞節に関しては、EG44、参照。)

(4)Who did Tom remember his mother <when he saw _ >? (×) (訳同(2))

ん?どうやら、(4)はアウトになる、ということらしく、ちょっと意外な感じはあるんですが、英語には、「文を組み込む側」と、「文に組み込まれる側」という、違いはあるものの、意味に応じて、確かに、この二者、いずれかの文の先頭に疑問詞が移動する、というルールがありました。 (EG47、参照。)

まず、(2)の意味から考えると、それに対する答え方は、「はい」や、「いいえ」で答えるようなものではありません。「メアリーだよ」、というような、疑問詞に対して、直接答えるような感じの疑問文です。

ですので、(4)で、疑問詞‘who’が、文の最も先頭、つまり、‘Tom remembered ~’の先頭まで移動していても、「疑問詞に対して、直接答えることを要求するような疑問文の場合は、疑問詞が最も先頭に移動する (位置する)」、というルールに違反していることにはならないはずです。 (EG47の(13)、参照。)

では、(4)がアウトなのは、何が原因なんだ、ということになるわけですが、実は、英語には、疑問詞の移動とは、全く関係のないところで、(4)をアウトにしてしまうような、全く別個に独立したルールがあります。

(5)副詞節の内部からは、いかなる要素も、その外に移動してはならない。

と、まあ、こんな感じのルールが英語にはあるらしいんですね。つまり、疑問詞の移動そのものが、どうとかではない、ということです。(4)では、‘who’が、副詞節である、< >内から、その外に飛び出して、文の先頭に移動しています。つまり、(4)は、ルール(5)に、もろに違反しているので、アウトになってしまった、ということですね。

実は、このルールは、学校の英文法では、教わることがないものですので、普通に英語を学習している人が知らないのは当然なんです。では、ルール(5)が本当かどうか、他の例で検証してみましょう。

(6)Tom dated Cathy <before he dated Mary>.
   (<トムはメアリーとデートする前に>キャシーとデートした。)
  
(7)Tom dated Cathy <after he dated Mary>.
   (<トムはメアリーとデートした後>キャシーとデートした。)

(6)は、<before ~>「~ する前に」の副詞節をもつ文です。一方、(7)は、<after ~>「~ した後で」の副詞節をもつ文です。(6)と(7)の副詞節である、< >の内部から、‘Mary’を疑問詞‘who’に変えて、その外に移動させてみます。

(8)Who did Tom date Cathy <before he dated _ > ? (×)
   (<トムは誰とデートする前に>キャシーとデートしたんだろうか。)
  
(9)Who did Tom date Cathy <after he dated _ > ? (×)
   (<トムは誰とデートした後>キャシーとデートしたんだろうか。)

やはり、ルール(5)の予測する通り、(8)も(9)もアウトになってしまいました。やはり、ルール(5)は、英文法のルールとして、成立するみたいですね。

特に、日本語の感覚で考えていると、(2)のような日本語や、(8)や(9)の日本語訳のような文は、日常的に自然に発話しているんで、こういった日本語を、学校の英文法で習った範囲内で英語にすると、どうしても、(4)、(8)、(9)といった英語をやってしまうと思います。

今回のポイントは、英語には、語句の移動を妨げるような「障壁」、とでもいうべきエリアが存在することです。こういった、移動に対する障害要因は、実は、英語には数多く存在していて、ルール(5)のような規則は、ほんの一例にすぎません。

日本語の場合だと、文の中の特定の要素を移動する、というのは、比較的、オプションとしてのものが多いので、移動させてはいけない、となれば、動かさずに、ジッとしていればよい、ということになるだけですが、英語の場合、疑問詞のように、動かすこと自体が、ルールとして定められていることがあるので、とにかく、移動させないと、何も始まらないことがあるんですね。

しかし、その一方で、ルール(5)のような、移動を妨げる、「障壁」となるエリアが存在するわけですから、英語は、相反する要素を兼ね備えた、実にヘソ曲がりな言語である、と言えます。こういった、英語のヘソ曲がり性は、実用的な英語を学ぶ上では、絶対に知っておく必要がありますので、「英語脳」的には、重要な概念と見なします。もちろん、今後も、英語に内在している、この「障壁」の概念を扱っていきますので、確実にものにしていきましょう。

● 関連: EG44EG47

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英語学習法(48)

2005年01月23日 | 変形
EG47の続きです。疑問詞の移動と口語英語に関するお話です。以下、見ましょう。

(1)I want to kiss Lucy. (ルーシーにキスしたい~。)
(2)I wanna kiss Lucy. (訳同上)

口語英語では、(1)の、‘want to’「~ したい」が、(2)のように、‘wanna’(「ゥワナ」という感じの発音) という、1語に縮約されてしまうことが、よくあります。これを、「‘wanna’縮約」と呼ぶことがありますが、こういった表現は、誰でも、割と簡単に覚えてしまいますので、英語を使い慣れてくると、自然と口をついてでてくるようになります。ところで、以下の文を見てみましょう。

(3)Who do you wanna kiss Lucy? (×) (誰にルーシーとキスして欲しいの?)

ん?(3)はアウトですか?ちょっと意外ですが、確かに、英会話などでは、‘want to’は、‘wanna’になることが、よくあるので、(3)は、もとのカタチが、‘want to’ではない、何か別の単語ではないか、と疑ってみたくなりますが、別に、(3)の‘wanna’は、もとのカタチが、‘want to’とは別物ということではありません。

(4)Who do you want to kiss Lucy? (〇) (訳同(3))

(4)は、(3)と同じ意味で、OKになります。ですので、(3)がアウトになった原因は、(3)の‘wanna’は、もとのカタチは、‘want to’ではない、ということではなく、(4)から(3)に移る過程で、‘want to’→‘wanna’という、縮約がおこったためだ、ということになります。

ここで、(4)が、疑問詞‘who’を使った、疑問文であることに着目したいと思います。EG47では、日本語と違って、英語の場合、疑問詞による疑問文をつくるには、その疑問詞が、文の先頭に移動していなければならないことを見たわけですが、まず、以下の文を見ましょう。

(5)I want John to kiss Lucy. (私は、ジョンにルーシーとキスして欲しいのよ。)

まず、(4)の疑問文に対して、(5)のような答え方をしたとします。この文では、‘John’という表現が、‘want’と‘to’の間にはさまっていますね。ここで、簡単にわかると思いますが、(5)は、以下のような‘wanna’を使った縮約文に変えることはできません。

(6)I wanna John kiss Lucy. (×) (訳同(5))

ここから、(6)の、「‘wanna’縮約」がアウトなのは、‘John’という表現が、‘want’と‘to’の間にはさまっているからだと、ハッキリ言えると思います。そこで、再び、(4)に戻って、(4)の‘who’が、どこから文の先頭に移動してきたのか考えてみます。

(7)Who do you want _ to kiss Lucy? (〇) (訳同(3))

(7)は(4)と同じ文ですが、(4)の‘who’が、どこからやってきたのかを示す下線が加えてあります。この下線部は、(5)の‘John’が、‘want’と‘to’の間にはさまっているのと同様に、‘want’と‘to’の間にはさまっていますね。

これで、もう、(3)がアウトになった原因がおわかりですよね。注意点は、(5)の文は、‘want to 不定詞’「~ したい」の構文ではなく、‘want A to 不定詞’「A に ~ して欲しい」の構文を使っているということです。この構文での、Aにあたる疑問詞‘who’の移動によって、(4)は、表面上、‘want to’のカタチをした構文を使っているように見えているだけなんです。

つまり、(7)からハッキリわかるように、例え、‘want’と‘to’の間に何もないように見えていたとしても、そこに、もともとは何かがあった「形跡」が感じ取られるような場合は、「‘wanna’縮約」はおこってはならない、ということになります。英語には、こういったワナがしかけられていることがあるのです。(← く、クダらん・・・。) ついでに、以下も確認しておきましょう。

(8)Who do you wanna kiss _ ? (〇) (アンタ、誰にキスしたいの?)

(8)の「‘wanna’縮約」は、OKですが、これは、もちろん、‘want A to 不定詞’「A に ~ して欲しい」の構文ではなく、‘want to 不定詞’「~ したい」の構文が使われていて、‘want’と‘to’の間には、もとから、何もないからですね。‘who’は、もとは、他動詞である、‘kiss ~’「~ にキスする」の目的語の位置から、文の先頭に移動しています。

今回のポイントは、実は、「‘wanna’縮約」 (‘want to’→‘wanna’) という、会話英語によくおこる現象を、疑問詞の移動という、文法現象と絡めて考えてみることによって、英文法と口語英語の、切っても切り離せない接点を語ることにあります。

(3)のような文において、「‘wanna’縮約」がおこってはならない、という知識は、文法の学習以外によって得ることは不可能なわけで、会話英語の重要性を主張する場合、それに反比例する形で、文法の学習をないがしろにしていたのでは、どうしても片手落ちになるという、恰好の材料として、(3)のような現象を扱ってみたのです。

口語表現は、丸暗記で対処するのがベストだと、よく言われているし、また、そのように簡単に納得しがちですが、ちょっとした文法が絡んで、そのまま使うことができなくなることも、よくあります。特に英語は、移動などの変形が関わってくると、そこら辺りにアウトになる原因が集中しやすくなります。上手な英会話を習得するためにも、慎重になるべきところですね。

●関連: EG47

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英語学習法(47)

2005年01月19日 | 変形
疑問詞を使った文を扱います。以下、見ましょう。

(1)Tom saw Mary (トムはメアリーを見た。)
(2)Who saw Mary? (誰がメアリーを見たの?)
   
(1)からつくられた疑問文(2)ですが、簡単ですね。ただ、主語の‘Tom’を、‘who’に変えただけです。これで(2)が完成しますので、ただ単に、単語の入れ換えだけで、疑問詞‘who’を使った疑問文が完成します。ところで、(2)と比べると、ちょっとした変化はあるものの、以下も簡単ですね。

(3)Who did Tom see? (トムは誰を見たんだい?)

今度は、目的語の‘Mary’を‘who’に変えて疑問文をつくってみましたが、過去形だった‘saw’「~ を見た」が、原形の‘see’になってしまいました。代わりに、過去の助動詞‘did’が、現れて、‘Tom’の前にきています。これは過去形の動詞‘saw’が、過去を表す要素‘did’と分離をおこして、もとの原形動詞‘see’にもどった(‘saw’ → ‘did’+‘see’)、と考えてよいでしょう。

そして、(2)と同じく、(3)でも文の先頭に‘who’がきています。(3)が、(2)とちょっと違っているところは、目的語の‘Mary’が‘who’になったあとで、文の先頭に移動する、という操作がプラスされているところですね。

このように、ざっと見た感じでは、(1)のように、主語 (Tom) と目的語 (Mary) をもつ文から、それぞれを疑問詞にして、疑問文をつくると、必ず、その疑問詞は文の先頭にこなければならないことがわかります。主語の疑問詞の場合は、そのまま、主語を疑問詞に置き換えれば、疑問文が完成し、一方、目的語の場合は、動詞と助動詞の分離に加えて、わざわざ、その目的語を文の先頭まで移動させることをしなければなりません。

実は、これは、日本語との大きな違いです。日本語はそんな目的語の移動などなくても自然な疑問文はつくれます。(1)の日本語と比較して、(2)の主語疑問詞の日本語をつくる場合でも、(3)の目的語疑問詞の日本語をつくる場合でも、ただ単に、「誰」に置き換えをしただけで、語順に変更はおこっていませんね。ここで、ちょっと発展的に、以下を見ましょう。

(4)John thinks [ that Tom saw Mary ]. 
   (ジョンは、[ トムはメアリーを見たと ] 思ってるよ。)

(5)John knows [ that Tom saw Mary ]. 
   (ジョンは、[ トムはメアリーを見たの ] 知ってるよ。)

EG41では、「文を文の中に組み込む」やり方を学びました。(4)と(5)では、カギカッコの表現が、それぞれ、‘I think ~’と、‘I know ~’の中に組み込まれているわけですね。そこで、英語の疑問詞は、文の先頭に常に位置するという現象が本当かどうか見てみたいと思います。

(6) Who does John think [ that Tom saw _ ] ? (〇) 
   (ジョンは、[ トムは誰を見たと ] 思ってるのかな。)

うん、やっぱり、‘Mary’を‘who’に変えた場合、それを文の先頭に移動した(6)がOKですね。ここで注意してほしいのは、英語の場合、文を文の中に組み込むときには、「組み込まれた側」の中では、通常、動詞と助動詞の分離(‘saw’ → ‘did’+‘see’)はおこらないということです。代わりに、「組み込んだ側」で、動詞と助動詞の分離(‘thinks’ → ‘does’+‘think’)がおこります。次を見ましょう。

(7)Who does John know [ that Tom saw _ ] ? (×) 
   (ジョンは、[ トムは誰を見たか] 知ってるのかな。)

ん?‘think’が‘know’に換わったら、今度はダメになってしまいました。これは、なぜなんでしょうかね。ここで、ちょっと、(6)と(7)の疑問文の意味を考えてみたいと思います。(6)に対して答えるときは、どんな答え方になるかと言えば、「メアリーだよ。」というような、‘who’に対して、直接答える感じになると思います。

しかし、一方、(7)の場合は、‘Yes、he does.’「うん、知ってるさ。」や、‘No、he doesn't.’「いや、知らんだろ。」、はOKですが、「メアリーだよ。」、と、‘who’に対して、直接答えるような感じにはならないと思います。このような場合、以下のような疑問文でなければOKになりません。

(8)Does John know [ who Tom saw _ ] ? (〇) (訳同(7))

(8)では、組み込まれた文の中で、‘who’が移動していますね。このとき、疑問詞は、‘that’の位置に割り込むカタチを取りますので、‘that’には消えてもらうことになっています。このように、「はい」か、「いいえ」で答える疑問文では、疑問詞が文の先頭に移動できず、組み込まれた側の文の中で、その先頭に移動するに留まります。逆に、「はい」や、「いいえ」で答えることができない疑問文では、疑問詞が文の先頭(組み込んだ側の先頭)まで移動してこなければなりません。

(9)Does John think [ who Tom saw _ ] ? (×) (訳同(6))

(6)はOKでしたが、やはり、組み込まれた文の中で、‘who’が移動している(9)はダメですね。ポイントはやはり、「はい」か、「いいえ」で答えるのか、それとも、疑問詞に対する直接的な答えになるのかです。ところで、これまで見た例以外に、どちらでもOKな場合もあります。今度は、「組み込む側」の動詞に、‘say’を使ってみましょう。

(10)John says [ that Tom saw Mary ]. 
   (ジョンは [ トムはメアリーを見た ] と言ってるよ。)

(11)Who does John say [ that Tom saw _ ] ? (〇) 
   (ジョンは [ トムは誰を見たと ] 言ってるかい。)

(12)Does John say [ who Tom saw _ ] ? (〇) 
   (ジョンは [ トムは誰を見たか ] 言ってるかい。)

(11)は、「メアリーだよ。」と答えればOKですね。一方、(12)は、「うん、言ってるよ。」か、「いや、言ってない。」というような答え方になると思います。以上、見てきたように、英語の疑問詞は、移動することはするんですけど、その着地点としてどこを選ぶかは、その疑問文の意味によって変わってきますので、十分な注意が必要です。ここで、以下のようなルールが成立します。

(13)英語の場合、疑問詞(who、what、when、where、how、等)を用いた文では、
   「はい」か「いいえ」で答えるような疑問文ならば、疑問詞は、「組み込まれた側」
   の文の先頭にくる。一方、疑問詞に対して直接答えるような疑問文ならば、
   疑問詞は、「組み込んだ側」、つまり、文の最も先頭にくる。

ルール(13)は英語特有の規則で、これが、なかなか難しく感じられるのは、やはり、日本語の疑問詞は、基本的に移動しないということが原因なんですね。上で見てきた日本語訳を見ていただければわかると思いますが、「誰」の移動が全然ありません。

今回のポイントは、英語の疑問詞が、文の先頭に常に位置するかどうかをみたわけですが、文を文の中に組み込むというシステムがコトバにはあるから、「組み込まれた側」まで考慮に入れれば、その範囲内では、文の先頭に移動していると言ってもよいでしょう。つまり、英語の疑問詞は、「組み込む側」と「組み込まれた側」の、どこかの文の中では、常に先頭に位置していなければならないということですね。(これに関する、ちょっとした例外は、EC19を参照して下さい。)

● 関連: EC16EC19EG41

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英語学習法(28)

2004年12月11日 | 変形
EG24、EG25、EG26、EG27の続きです。関係節と同格節の共通した特徴です。以下、見ましょう。

(1)The rumor [ that John talked about the scandal ] is going around.
  ([ ジョンがそのスキャンダルを話題にしたという ] うわさが広まっている。)

(2)The rumor [ which John talked about _ ] is going around.
  ([ ジョンが _ 話題にした ] うわさが広まっている。)

(1)のカギカッコ内は同格節であり、一方、(2)のカギカッコ内は、関係代名詞の‘which’を用いた関係節です。ポイントは、(1)のように、同格節内には、‘rumor’「うわさ」に該当するような空所がなく、一方、(2)のように、関係代名詞による関係節内には、‘rumor’に該当する空所がある、ということです。

その意味としては、(1)では、ジョンが、あるスキャンダルをキャッチして話題にしたら、その行為がうわさとなって、周囲の人々を通して広まっている、と言っているのに対し、一方、(2)では、例えば、ジョンやトムが、それぞれ聞きつけたうわさがあるが、ジョンの聞きつけて話題にしたうわさの方は、特に広まってしまった、というようなケースです。

(3)The rumor is going around [ that John talked about the scandal ]. (〇) (訳同(1))

(4)The rumor is going around [ which John talked about _ ]. (〇) (訳同(2))

そこで、(3)と(4)ですが、(1)に対応しているのが(3)で、一方、(2)に対応しているのが(4)です。それらのカタチとしては、(1)の同格節が文の末尾に位置しており、一方、(2)の関係節も、同様に、文の末尾に位置しています。そして、(3)も(4)も、共にOKとなっています。

そこで、(1)の同格節であれ、(2)の関係節であれ、‘rumor’にかかる節であることに違いはないわけですから、(1)や(2)のように、‘rumor’にピッタリとくっ付いて合体している状態が原則なんですが、(3)や(4)のように、共に、‘rumor’から切り離して用いてもOKになる場合がある、ということなんですね。これは一体どういうことなんでしょうか。

(5)The rumor [ which is going around ] is denied by Mary. (〇)
  ([ 広がっている ] そのうわさは、メアリーには否定されている。)

(6)The rumor is denied by Mary [ which is going around ]. (×)
  (訳同(5))

そこで、(5)の関係節を、(6)のように、文の末尾に移動してみましたが、今度は、何とアウトになってしまいました。 関係節は、(2)から(4)のような変形は、確かに、OKになるんですが、一方、同じ性質であるハズの(5)から(6)の変形はアウトになってしまうわけですね。

つまり、関係節を文の末尾に移動する変形には、それをOKにしたりアウトにしたりする、何らかの制約が存在すると見なければなりません。そこで、‘rumor’「うわさ」という単語の意味に注目してみたいと思います。一般に、「うわさ」は、人から人へと伝えられていくものです。ですので、主語‘the rumor’に対して、‘is going aroud’「広がる」という述語が選ばれるのは、別に意外性も何もない、ということになります。

しかし、うわさが否定されるということは、広がって当然のはずのものに歯止めをかける何かが存在するという、言わば、意外性のある情報の存在を示唆することになりますから、これは、聞き手にとっては、反応度の高い関心事になる可能性が十分にあります。

こういった視点から、(6)がアウトになるのを考えると、「うわさの否定」は、情報としての価値が高いと思われるのに、‘is denied by Mary’「メアリーに否定される」という述語を飛び越えて、相対的に情報としての価値が低い‘which is going around’「広がっている」が、文の末尾に移動したからだ、と言えるのではないかと考えられます。

つまり、(5)から(6)の変形が阻止されるのは、情報としての価値に重点が置かれるものと、そうでないもののバランスが、位置関係としておかしいと判断されることに起因しているものと思われます。そこで、(2)から(4)の変形がOKになっているのは、‘the rumor’に対して、‘John talked about’「ジョンが話題にした」という関係節が、誰が取り上げた話題なのかという点で関心事になり得るし、かつ、それが‘going around’よりも情報的価値が高いと見なされているからだと言えます。

そして、(2)と(4)は両方ともOKであることから、関係節の基本的なカタチを守った(2)のような文の場合は、特に、情報的価値うんぬんとは関係なく、OKになるということですね。ですので、(5)は、基本的なカタチのままで、情報的価値のある‘is denied by John’が文の末尾にあるので、わざわざ、その基本形を破壊してまで、変則的な(6)のような移動変形を施す必要はない、ということになります。

(7)The rumor [ that John talked about the scandal ] is denied by Mary. (〇)
  ([ ジョンがそのスキャンダルを話題にしたという ] うわさは、メアリーには否定されている。)

(8)The rumor is denied by Mary [ that John talked about the scandal ]. (×) (訳同(7))

今度は、同格節になりますが、(7)では、‘the rumor’の具体的補足をカギカッコ内の同格節が担っています。同格節の場合、関係節とは違って、どんな名詞でも、かかる相手にすることができるというわけではなく、抽象名詞に限られますので、例えば、「うわさ」のような抽象名詞は、もともと、具体的な補足を前提としている名詞と言えます。

つまり、かかる相手となる抽象名詞からすれば、もともと、同格節の存在そのものは、当然の前提となっているので、同格節が表す内容は、関係節の表す内容ほどにはバラエティに富むものではなく、情報的価値が高いものではないという傾向があります。 (もちろん、関係節は、表せる内容に自由度がある分だけ、その情報的価値は、ピンからキリまである、ということになり、(4)と(6)のようなコントラストが発生します。)

そこで、(3)のように、‘the rumor’のような主語に対して、‘is going around’のような述語なら、同格節の具体的内容にも相対的に情報的価値が発生して、文の末尾に移動しても、OKになりますが、しかし、一方、(8)のように、「うわさの否定」ということになると、やはり、そのうわさの内容よりも、否定されているという事実の方が情報的価値が高いと見なされますので、文の末尾に同格節が移動するとアウトになります。

今回のポイントは、関係節と同格節の共通点として、かかる名詞からの切り離しが可能であるという点と、その容認可能性が、同一の制約から導き出されるということです。その制約の本質とは、相対的な「情報的価値」という、通常の文法的な法則とは極めて異質な概念によるものです。

英語において、カタチが変化するという文法現象が、時として複雑に思えるのは、こういった純粋に文法上の制約とは考えられないような概念に強く縛られているケースがあるからです。こういった概念の存在は、よく、その本質が理解されず、誤解されたままで、解説本などの話題の出しに使われがちなので、実用に耐え得るカタチでは、なかなか一般には浸透していないようです。また機会があったら扱ってみたいと思います。

■注 :今回扱った、名詞 (句) からの節の切り離し現象に関して、よくある解説としては、一般には、「文末重点原理」であるとか何とかいった解説のものが大半ですが、「~ 原理」などと、大仰な呼び方を紹介するだけで、その割には、(6)や(8)のような例とのコントラストを全く無視した解説が多く、何でもかんでも、(3)や(4)のように文末に移動できるとカン違いしている解説本やサイトがあるので、要注意です。

●関連: EG24EG25EG26EG27

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英語学習法(23)

2004年12月11日 | 変形
文が形式 (カタチ) を変えることで、意味自体はさして変わってもいないのに、やけに難解な印象を与える場合があります。以下、見ましょう。

(1)To drive this car is easy. (このクルマを運転するのは簡単だ。)
(2)It is easy to drive this car. (訳同上)

まず、(1)の‘drive this car’の部分ですが、動詞の‘drive’「~を運転する」は、他動詞で、目的語を取る動詞です。ですので、‘this car’「このクルマ」が目的語になっていますね。今度は、その直前にある‘to’も含めて考えると、‘to drive this car’全体で‘to’付きの不定詞のカタチになっています。これは、「名詞(的)用法」の不定詞 (EG38参照) になっていて、(1)の文では、この‘to drive this car’全体が主語の役割を果たしていると考えられます。

次に、(2)ですが、(1)とほぼ同じ意味をもつ文です。一般的には、(2)の先頭にある‘it’に‘to drive this car’が対応していると考えられています。言い換えれば、(1)で主語位置を占めていた‘to drive this car’が後に退いて、ポッカリと空いた空家の主語位置に‘it’を置くことで、空家を埋めたと考えてもいいでしょう。しかし、(1)から(2)へと、カタチが変わっても、意味が変わらないところが(1)と(2)のキモになっています。更に以下を見ましょう。

(3)This car is easy to drive. (訳同(1))

ん?またちょっとカタチが変わりましたね。(2)と(3)は、よく関係が深いと言われています。(2)の主語位置を占めている‘it’を消して空家を作り、その位置に‘this car’を移動して引越しをすると、(3)が完成するわけです。ですので、当然ながら、(3)では、他動詞 (目的語を取る動詞) の‘drive’「~を運転する」は、その直後にある目的語を、表面上は失ってしまいます。

ということは、(1)や(2)では、明らかに‘drive’は他動詞だったのに、(3)では自動詞 (目的語を取らない動詞) になってしまったという事か?いや、決してそういうわけじゃないんです。むしろ、構文(3)の性質自体が、表面上の他動詞の目的語を無効にする、と言うより、遠方に追いやった他動詞の目的語を、そのまま目的語として、なおも認めているはたらきがあると考えた方が良さそうです。以下、証拠を示します。

(4)This car is easy to drive it. (×) (訳同(1))
(5)This topic is easy to talk. (×) (この話題は話しやすいね。)

(4)では‘this car’の分身 (‘this car’を指す代名詞) として‘it’を置いてみたんですけど、絶対ダメらしいんです。‘drive’の直後に目的語が置けない。じゃ、やっぱり(4)では‘drive’は自動詞じゃんか、と言いたくなりますが、今度は(5)を見て下さい。(5)がダメなのは、以下の(6)と(7)の対比から明らかになります。

(6)John talked this topic. (×) (ジョンはこの話題を話した。)
(7)John talked about this topic. (〇) (訳同上)

(6)と(7)から分かるのは、‘talk’「話す」は普通、自動詞としての扱いを受ける動詞で、目的語を取るには前置詞の助けが必要なのです。だから、(7)で前置詞の‘about’を‘talked’の直後に入れてやると、あたかも、‘talked about’で、1つの他動詞であるかのようにはたらくことができます。だから、(7)がOKになるわけですが、これを踏まえて、(5)を見ると、確かに自動詞であるはずの‘talk’がきているのに、(5)はダメなんです。

そこで、この「自動詞+前置詞」である、‘talk about ~’「~のことを話す」の組み合わせで、もう一度、(2)と(3)の関係を考えてみたいと思います。

(8)It is easy to talk about this topic. (〇) (訳同(5))
(9)a. This topic is easy to talk about. (〇) (訳同(5))
   b. This topic is easy to talk about it. (×) (訳同(5))

(8)は、(2)の不定詞の部分である‘to drive this car’だけを、‘to talk about this topic’に入れ換えた構文です。(8)の主語位置を占めている‘it’を消して空家を作り、その位置に‘this topic’を移動して引越しをすると、(9a)が完成します。ここで、まさかと思うかも知れませんが、実は(9a)は、正しい英語になります。

(9a)では、‘talk about’「~のことを話す」は、その直後にある目的語を、表面上は失っています。しかし、これは、意味を変えずに、しかも文法的に正しい変形とされているのです。やはり、(9a)においても、遠方に追いやった不定詞内の目的語を、そのまま目的語として、なおも認めているはたらきがあると考えた方が良さそうです。(9b)で、‘this topic’の分身(‘this topic’を指す代名詞)である‘it’を置いてみましたが、これがダメであることが証拠となります。

やはり、(2)と(3)が関係が深いと言われているのはダテじゃなかったんです。似たような関係が(8)と(9a)にだって成立するんだから。特に(9b)があると、どうしても、不定詞内の「引越をした形跡」は残しておかなければならない事が分かります。(3)の‘drive’ように、一見したところ表面上は目的語がなく、あたかも自動詞のように見えていても、実は頑固に他動詞である事を主張している構文があるんですね。

今回のポイントは、英語には、ほぼ意味を変えずに、カタチだけを変えるような「変形」が存在するということです。英語の「変形」には様々なパターンがありますが、今回取り上げた変形パターンを許す構文は、かなり特殊なもので、その述語の性質によって、OKであるかダメであるかが決まっています。その述語の数はそれほど多くはなく、‘easy’「簡単な」、‘difficult’「難しい」、‘impossible’「不可能な」、等の述語に限られていますが、これに関する詳しい話は、また別の機会にでも。

●関連: EG38EG43

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英語学習法(22)

2004年12月11日 | 変形
どうしても変な英語をやっちゃう人がなかなか気付かないところ。自然な英語にするための小技です。以下、見ましょう。

(1)Tom told me the story <yesterday>. 
  (<昨日>、トムはボクにそのお話を語ってくれました。)

(2)Tom told me [ that the earth is round ]. 
  (トムは僕に [ 地球は丸いと ] 語りました。)

(1)では、動詞‘tell’の後に、目的語が2つ続いています。‘me’「ボクに」と、‘the story’「そのお話を」です。一方、(2)では、(1)の‘the story’の位置に、‘that the earth is round’がきています。これは、単純な入れかえですから、‘that the earth is round’だって目的語と言えます。そこで、‘that’節、つまり、「‘that’+主語+動詞 ・・・」 のカタチは、目的語そのものになれる、ということですね。 (‘that’節に関しては、EG41、参照。目的語を2つ取る動詞に関しては、EG60、参照。)

(3)Tom told me [ that the earth is round ] <yesterday>. (×) 
  (<昨日>、トムは僕に [ 地球は丸いと ] 語りました。)

ここで、(3)ですが、(1)の末尾に、‘yesterday’があるのと同様に、(2)の末尾にも、‘yesterday’を付けたいと思います。すると、(3)の‘yesterday’は、位置的には、(1)と同じ位置にきているはずなので、文法的には、おかしくないはずなんですけど、実際には、やっぱりおかしいそうです。じゃ、どうするんだってことになるんですが、実は、‘yesterday’の置き場所として、しっくりする位置は、‘that’節の前だそうです。

(4)Tom told me <yesterday> [ that the earth is round ]. (〇) 

ここで疑問なのは、なぜ、(3)がアウトで、(4)がOKになるのか、ということなんですが、問題は、目的語である、‘that’節の長さにあって、‘the story’よりも、‘that the earth is round’の方が、単語の数が多いので、長い、ということになります。

この長短の基準は、単純に、単語の数で決められているわけではなく、感覚的なものですが、とにかく、長い、と感じた時点で、そのような目的語は、極力、より後方に回ってもらうのが、キレイな英語なんだそうです。

それと、これには、もう1つ理由があって、‘yesterday’が、‘that the earth is round’の直後にあると、変な意味、つまり、「昨日は、地球が丸い」、に解釈されてしまうことがあるため、こういったことを避ける効果があります。

‘that’節 (=‘that’主語+動詞) の先頭に立てる‘that’には、その左側にある要素を、‘that’節の中の要素としてカウントしない、という、一種の阻止効果のはたらきがあります。 (ただし、‘Who do you think [ that John saw _ ] ?’「誰がジョンに会ったと思う?」のような、疑問詞の移動のような場合は除きます。)

今回のポイントは、英語には、重いと感じられる要素を、極力、文の後方にまわそうとする傾向がある、ということです。これは、英語のスタイル的な問題で、つまり、文のカタチを整えるための効果ですので、重いという理由で、後にまわしたものの、結果的に、文全体が整わないカタチになってしまった場合は、不適切となってしまうこともあります。

というわけで、何でもかんでも、後にまわせばよい、というものではありませんが、少なくとも、今回扱ったような、「動詞+目的語+<副詞> → 動詞+<副詞>+目的語」の交替形の例は、英語のスタイルを整えるための変形では、よく見かけるものなので、上手い英語表現のコツとしては、確実に一役買うと言えるでしょう。

■注 :今回出てきた、‘yesterday’は、名詞ではなく、副詞として扱われます。(副詞の文法的な役割に関しては、EG39、参照。加えて、一見、名詞に見える‘yesterday’のような副詞に関しては、EG40、参照。)

● 関連: EG39EG40EG41EG60

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