今回、「同格節」というものを扱います。以下、見ましょう。
(1)John denies the rumor. (ジョンは、そのうわさを否定している。)
(1)の文では、‘rumor’「うわさ」という単語が使われていますが、「うわさ」は、抽象名詞であり、それが、どのような内容をもったうわさであるのかは、それ自体からは不明です。そこで、その「うわさ」に対して、具体的な内容を補足する方法があります。
(2)John denies the rumor [ that Mary dated Tom ] .
(ジョンは、[ メアリーがトムとデートしたという ] うわさを否定している。)
(2)のように、‘rumor’の直後に‘that’を置いて、その後で、‘rumor’の具体的内容として、‘Mary dated Tom’「メアリーがトムとデートした」、というような文を付け足す、というやり方です。つまり、「‘that’節」と呼ばれるものが、具体的な内容を要する抽象名詞の直後に続くだけなので、単純と言えば単純です。 (‘that’節については、EG41、参照。)
この具体的内容の‘that’節は、一般に、「同格節」と呼ばれており、それが補足すべき相手となる抽象名詞にピッタリとくっついていることが基本となるので、例えば、(2)の‘rumor’が、移動変形などによって、どこか別の場所に位置変更したとしても、そのまま付いていくことになります。
(3)The rumor is denied by John. (そのうわさは、ジョンには否定されている。)
(4)The rumor [ that Mary dated Tom ] is denied by John.
([ メアリーがトムとデートしたという ] うわさは、ジョンには否定されている。)
(3)は、(1)の受身文ですが、(1)で、‘deny’「~ を否定する」の目的語だった‘rumor’が、(3)では主語になっています。そこで、‘that Mary dated Tom’のような具体的内容の‘that’節、つまり、同格節は、やはり、‘rumor’の直後に置かれますので、結果として、主語位置に置かれることになります。
要するに、抽象名詞と、その具体的内容を補足する同格節は、1つに合体しているとも言える状態であり、それは意味的な面からも考えても、自然なものと思われます。ただし、1つに合体しているとは言っても、その文法的な主導権は、抽象名詞の側にあります。
(5)John talked about the rumor [ that Mary dated Tom ]. (〇)
(ジョンは、[ メアリーがトムとデートしたという ] うわさについて話した。)
(6)John talked about the rumor. (〇)
(ジョンは、そのうわさについて話した。)
(7)John talked about [ that Mary dated Tom ]. (×)
(ジョンは、[ メアリーがトムとデートしたこと ] について話した。)
まず、(5)ですが、「抽象名詞+同格節」である、‘the rumor that Mary dated Tom’が、前置詞‘about ~’の目的語になっており、OKである、という事実を踏まえて、(6)と(7)のコントラストを考えてみます。そこで、(6)はOKですが、一方、(7)はアウトです。
一般に、単なる名詞や名詞句は、前置詞の目的語となることが可能なので、名詞句‘the rumor’が、前置詞‘about ~’の目的語である(6)がOKになるのは、当然ということになります。一方、‘that’節は、特殊なケースを除いて、前置詞の目的語になることが不可能とされていますので、‘that Mary dated Tom’が、前置詞‘about ~’の目的語である(7)がアウトになることも、また、当然と言えます。
ここで、(5)がOKになるのは、「抽象名詞+同格節」である、‘the rumor that Mary dated Tom’では、名詞句‘the rumor’が、主導権を握っているからであり、故に、前置詞‘about ~’の目的語として適合する、という考え方が成り立ちます。
これを言いかえれば、「かかるもの (従)」と「かかられるもの (主)」という依存関係が、「抽象名詞+同格節」の中には存在していて、抽象名詞の側が、「かかられるもの (主)」であり、一方、同格節の側が、「かかるもの (従)」、という関係になっていると言えます。つまり、「抽象名詞+同格節」は、1つに合体して、それ全体が抽象名詞を核とした名詞句になっている、と考えられます。 (名詞句については、EG19、参照。)
ところで、同格節は、名詞にかかる、という性質をもっていることから、よく、同様に、名詞にかかる性質をもった関係節との類似性が問題になったりしますが、一応、文法的には、同格節は、関係代名詞を用いた関係節とは、決定的に異なる点があります。 (関係代名詞の基本については、EG24、EG26、参照。)
(8)the rumor [ that John talked about the scandal ] (〇)
([ ジョンが、そのスキャンダルを話題にしたという ] うわさ)
(9)the rumor [ that John talked about _ ] (〇)
([ ジョンが _ 話題にした ] うわさ)
(8)は、カギカッコ内の‘that John talked about the scandal’が、同格節となっていますが、一方、(9)では、カギカッコ内の‘that John talked about _’が関係節となっています。これら両方の節における違いは、一目瞭然で、前置詞‘about ~’の目的語が、あるかないかです。 (前置詞をともなう関係代名詞については、EG54、参照。)
そこで、(8)の同格節は、主語も目的語もしっかりそろっていて、特に、空家 (空所) となるような箇所はありませんが、一方、(9)の関係節は、前置詞‘about ~’の目的語が欠けており、不完全な文になっています。これは、関係節 (カギカッコ内) の先頭に位置する関係代名詞と、下線部の位置 (つまり、目的語の位置) のような空家が、密接なつながりをもっているためです。
(9)の場合は、‘that’が使われていますが、一般に、関係代名詞 (‘who’、‘which’、など) は、文の中の、ある要素が、それに置きかわって関係節の先頭まで移動することがルールとなっていますので、その結果として、当然、関係節の中には、どこかにその空所が残されることになっています。これが、関係代名詞による関係節が不完全な文となる原因です。
この場合、関係代名詞に置きかえられたもとの表現は、関係節によって「かかられるもの」 (一般に、「先行詞」と呼ばれているもの) に該当する表現であるのが通例ですので、(9)の場合、もともと下線部の位置を占めていた表現は、‘rumor’に相当する表現であったことは簡単にわかります。つまり、おおよそ、(6)のような文が変形して、(9)の関係節がつくられた、ということになります。
ですので、(8)の場合、‘about ~’の目的語が‘the scandal’なのに対して、一方、(9)の場合、‘about ~’の目的語は、もともと、‘scandal’とは違うものである、ということになり、空所とその空所を補う表現を見つけるプロセスの分だけ手間がかかりますので、関係節の方が、いくぶん、ややこしい成り立ちになっています。
同格節と関係節の間には、このように、空所の有無といった違いはあるものの、しかし、共通点としては、どちらも、名詞にかかるという性質があるわけですから、かかられる側の名詞を含めて全体的には、同格節と関係節は、共に名詞句である、と言えます。
今回のポイントは、抽象名詞の具体的内容を補足説明するために、‘that’節が、特別に、その抽象名詞にかかることが可能になるケースがある、ということです。このような‘that’節は、「同格節」と呼ばれ、(9)のような関係節とは、空所の有無に関して、文法上、決定的な違いがあるものの、かかられる側の名詞を含めて全体的には、どちらも名詞句としての扱いになる点は同じです。
今回は、同格節に関しての初歩ということで、基本的な解説しかしていませんが、もう少し他の変種も扱う必要がありそうなので、別の機会にでも、扱ってみたいと思います。
■注1 :同格節の厄介な点は、抽象名詞ならば、何にでもかかることができる、というわけではない、という点です。例えば、‘tendency’「傾向」という抽象名詞の場合、‘John has a tendency [ that he talks too much ].’「ジョンは、おしゃべりが過ぎる傾向がある。」、というような表現はアウトで、その代わりに、‘John has a tendency to talk too much’というように、‘that’節以外の同格表現を使わなければなりませんので、‘that’節の同格節が使える抽象名詞かどうか、逐一、調べてから使うようにすることをお奨めします。
■注2 :同格節も、関係節も、共に、名詞にかかっている、という点からは、形容詞のように機能している節、ということになりますから、どちらも、「形容詞節」という呼び方もあります。
●関連: EG19、EG24、EG26、EG41、EG54
★みんなの英会話奮闘記★ ★英語・人気blogランキング★
(1)John denies the rumor. (ジョンは、そのうわさを否定している。)
(1)の文では、‘rumor’「うわさ」という単語が使われていますが、「うわさ」は、抽象名詞であり、それが、どのような内容をもったうわさであるのかは、それ自体からは不明です。そこで、その「うわさ」に対して、具体的な内容を補足する方法があります。
(2)John denies the rumor [ that Mary dated Tom ] .
(ジョンは、[ メアリーがトムとデートしたという ] うわさを否定している。)
(2)のように、‘rumor’の直後に‘that’を置いて、その後で、‘rumor’の具体的内容として、‘Mary dated Tom’「メアリーがトムとデートした」、というような文を付け足す、というやり方です。つまり、「‘that’節」と呼ばれるものが、具体的な内容を要する抽象名詞の直後に続くだけなので、単純と言えば単純です。 (‘that’節については、EG41、参照。)
この具体的内容の‘that’節は、一般に、「同格節」と呼ばれており、それが補足すべき相手となる抽象名詞にピッタリとくっついていることが基本となるので、例えば、(2)の‘rumor’が、移動変形などによって、どこか別の場所に位置変更したとしても、そのまま付いていくことになります。
(3)The rumor is denied by John. (そのうわさは、ジョンには否定されている。)
(4)The rumor [ that Mary dated Tom ] is denied by John.
([ メアリーがトムとデートしたという ] うわさは、ジョンには否定されている。)
(3)は、(1)の受身文ですが、(1)で、‘deny’「~ を否定する」の目的語だった‘rumor’が、(3)では主語になっています。そこで、‘that Mary dated Tom’のような具体的内容の‘that’節、つまり、同格節は、やはり、‘rumor’の直後に置かれますので、結果として、主語位置に置かれることになります。
要するに、抽象名詞と、その具体的内容を補足する同格節は、1つに合体しているとも言える状態であり、それは意味的な面からも考えても、自然なものと思われます。ただし、1つに合体しているとは言っても、その文法的な主導権は、抽象名詞の側にあります。
(5)John talked about the rumor [ that Mary dated Tom ]. (〇)
(ジョンは、[ メアリーがトムとデートしたという ] うわさについて話した。)
(6)John talked about the rumor. (〇)
(ジョンは、そのうわさについて話した。)
(7)John talked about [ that Mary dated Tom ]. (×)
(ジョンは、[ メアリーがトムとデートしたこと ] について話した。)
まず、(5)ですが、「抽象名詞+同格節」である、‘the rumor that Mary dated Tom’が、前置詞‘about ~’の目的語になっており、OKである、という事実を踏まえて、(6)と(7)のコントラストを考えてみます。そこで、(6)はOKですが、一方、(7)はアウトです。
一般に、単なる名詞や名詞句は、前置詞の目的語となることが可能なので、名詞句‘the rumor’が、前置詞‘about ~’の目的語である(6)がOKになるのは、当然ということになります。一方、‘that’節は、特殊なケースを除いて、前置詞の目的語になることが不可能とされていますので、‘that Mary dated Tom’が、前置詞‘about ~’の目的語である(7)がアウトになることも、また、当然と言えます。
ここで、(5)がOKになるのは、「抽象名詞+同格節」である、‘the rumor that Mary dated Tom’では、名詞句‘the rumor’が、主導権を握っているからであり、故に、前置詞‘about ~’の目的語として適合する、という考え方が成り立ちます。
これを言いかえれば、「かかるもの (従)」と「かかられるもの (主)」という依存関係が、「抽象名詞+同格節」の中には存在していて、抽象名詞の側が、「かかられるもの (主)」であり、一方、同格節の側が、「かかるもの (従)」、という関係になっていると言えます。つまり、「抽象名詞+同格節」は、1つに合体して、それ全体が抽象名詞を核とした名詞句になっている、と考えられます。 (名詞句については、EG19、参照。)
ところで、同格節は、名詞にかかる、という性質をもっていることから、よく、同様に、名詞にかかる性質をもった関係節との類似性が問題になったりしますが、一応、文法的には、同格節は、関係代名詞を用いた関係節とは、決定的に異なる点があります。 (関係代名詞の基本については、EG24、EG26、参照。)
(8)the rumor [ that John talked about the scandal ] (〇)
([ ジョンが、そのスキャンダルを話題にしたという ] うわさ)
(9)the rumor [ that John talked about _ ] (〇)
([ ジョンが _ 話題にした ] うわさ)
(8)は、カギカッコ内の‘that John talked about the scandal’が、同格節となっていますが、一方、(9)では、カギカッコ内の‘that John talked about _’が関係節となっています。これら両方の節における違いは、一目瞭然で、前置詞‘about ~’の目的語が、あるかないかです。 (前置詞をともなう関係代名詞については、EG54、参照。)
そこで、(8)の同格節は、主語も目的語もしっかりそろっていて、特に、空家 (空所) となるような箇所はありませんが、一方、(9)の関係節は、前置詞‘about ~’の目的語が欠けており、不完全な文になっています。これは、関係節 (カギカッコ内) の先頭に位置する関係代名詞と、下線部の位置 (つまり、目的語の位置) のような空家が、密接なつながりをもっているためです。
(9)の場合は、‘that’が使われていますが、一般に、関係代名詞 (‘who’、‘which’、など) は、文の中の、ある要素が、それに置きかわって関係節の先頭まで移動することがルールとなっていますので、その結果として、当然、関係節の中には、どこかにその空所が残されることになっています。これが、関係代名詞による関係節が不完全な文となる原因です。
この場合、関係代名詞に置きかえられたもとの表現は、関係節によって「かかられるもの」 (一般に、「先行詞」と呼ばれているもの) に該当する表現であるのが通例ですので、(9)の場合、もともと下線部の位置を占めていた表現は、‘rumor’に相当する表現であったことは簡単にわかります。つまり、おおよそ、(6)のような文が変形して、(9)の関係節がつくられた、ということになります。
ですので、(8)の場合、‘about ~’の目的語が‘the scandal’なのに対して、一方、(9)の場合、‘about ~’の目的語は、もともと、‘scandal’とは違うものである、ということになり、空所とその空所を補う表現を見つけるプロセスの分だけ手間がかかりますので、関係節の方が、いくぶん、ややこしい成り立ちになっています。
同格節と関係節の間には、このように、空所の有無といった違いはあるものの、しかし、共通点としては、どちらも、名詞にかかるという性質があるわけですから、かかられる側の名詞を含めて全体的には、同格節と関係節は、共に名詞句である、と言えます。
今回のポイントは、抽象名詞の具体的内容を補足説明するために、‘that’節が、特別に、その抽象名詞にかかることが可能になるケースがある、ということです。このような‘that’節は、「同格節」と呼ばれ、(9)のような関係節とは、空所の有無に関して、文法上、決定的な違いがあるものの、かかられる側の名詞を含めて全体的には、どちらも名詞句としての扱いになる点は同じです。
今回は、同格節に関しての初歩ということで、基本的な解説しかしていませんが、もう少し他の変種も扱う必要がありそうなので、別の機会にでも、扱ってみたいと思います。
■注1 :同格節の厄介な点は、抽象名詞ならば、何にでもかかることができる、というわけではない、という点です。例えば、‘tendency’「傾向」という抽象名詞の場合、‘John has a tendency [ that he talks too much ].’「ジョンは、おしゃべりが過ぎる傾向がある。」、というような表現はアウトで、その代わりに、‘John has a tendency to talk too much’というように、‘that’節以外の同格表現を使わなければなりませんので、‘that’節の同格節が使える抽象名詞かどうか、逐一、調べてから使うようにすることをお奨めします。
■注2 :同格節も、関係節も、共に、名詞にかかっている、という点からは、形容詞のように機能している節、ということになりますから、どちらも、「形容詞節」という呼び方もあります。
●関連: EG19、EG24、EG26、EG41、EG54
★みんなの英会話奮闘記★ ★英語・人気blogランキング★
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます