EG75の続きです。分詞構文です。以下、見ましょう。
(1)<Shocked at the news>、Lucy passed out.
(<その知らせにショックを受けて>、ルーシーは気絶してしまった。)
(1)は、‘shocked at ~’の表現が、「~ にショックを受けて」、という意味になって、‘Lucy passed out’「ルーシーは気絶してしまった」、にかかっています。この‘shocked’は、過去形、過去分詞のどちらか、ということになるんですけど、結論から言うと、過去分詞です。
(2)Lucy was shocked at the news. (ルーシーは、その知らせにショックを受けた。)
(2)にあるように、「ショックを受ける」という表現は、‘A is shocked’というカタチで表して、「A はショックを受ける」という意味になります。本来、‘shock’という動詞は、‘shock A’で、「A にショックを与える」という意味になる他動詞なので、‘A is shocked’という、受身文のカタチにして、「A はショックを与えられる」、としてから、その平たい日本語の言いかえとして、「Aはショックを受ける」となるわけですね。
そこで、(1)の‘shocked at the news’の部分と、(2)の文を見比べてみると、‘Lucy was ~’の表現を除けば、同じ表現であることがわかると思います。ですので、受身文から、「主語+‘be’動詞」を取り除いて、いきなり‘-ed’から始まるカタチにしてやると、(1)のような使い方ができるんですね。(1)の‘shocked’が、過去分詞であると言ったのは、そういった経緯によるものです。類似した文として、以下の例を見ると、それがハッキリとわかると思います。
(3)<Beaten by a bank robber>、Lucy passed out.
(<銀行強盗に打ちのめされて>ルーシーは気絶した。)
(3)では、‘beat-beat-beaten’「~ を打ちのめす」という活用をする動詞の過去分詞‘beaten’を用いていますが、構文的には、‘Beaten by a bank robber’の部分は、(1)の‘shocked at the news’と全く同じものです。ところで、(1)では、‘shocked at the news’が、‘Lucy passed out’にかかっている、と言いましたが、ということは、‘shocked at the news’は文の骨格にはならない表現である、ということになりますね。つまり、(1)の過去分詞は、副詞的な過去分詞であると言ってもよいでしょう。(3)の‘beaten’も、もちろん同様です。
そこで、EG75では、副詞的な‘-ing’のカタチである、分詞構文を扱いましたが、実は、この副詞的な過去分詞も、分詞構文の仲間なのです。つまり、分詞構文とは、基本的には、現在分詞‘-ing’や、過去分詞‘-ed’といった分詞を、副詞として使用する表現方法なのです。
さらに、EG75では、‘-ing’の分詞構文には、カタチとなって現れている主語がないので、それがかかる他の文の主語にその主語を求める、といった決まりごとがあるのを見ました。過去分詞の分詞構文もそれと同じルールに従います。
まず、(1)の文では、ショックを受けたのはルーシーですが、気絶したのもルーシーですね。つまり、(1)の‘shocked’は、(2)にあるように、本来、‘Lucy’を主語としている文がもとになっている、と考えてもよいと思います。(3)の文でも、銀行強盗に打ちのめされたのはルーシーですが、気絶したのもルーシーです。ですので、そこから、(3)の‘beaten’も、カタチとしては目に見えないけど、本来は、‘Lucy’を主語に取っていると解釈されるわけですね。
コトバは、述語があれば、必ず、その主語がある、と考えるのが普通ですので、まさに、分詞構文の特徴は、その本来あるはずの主語が、カタチとなって現れていないところにある、と言ってもよいでしょう。そこで、分詞構文の場合は、その目には見えない、カタチとなって現れてはいない主語を、どこか別の場所に求める、ということになっているのです。ですので、ここから、‘-ing’の場合と、過去分詞の場合とで、その主語として、どのようなものが可能であるかを、練習して慣れることが、英語脳的には重要となってきます。
(4)<この港から見ると>、あの船は小さな城にみえるね。
(5) a. <Seen from this harbor>、that ship looks like a small castle. (〇)
b. <Seeing from this harbor>、that ship looks like a small castle. (×)
(4)の日本語を分詞構文で表現するとします。そこで、英語としては、(5a)が正しく、(5b)が間違い、ということになります。この手の分詞構文は、よく、ペーパー試験の問題としても見かけることがありますが、英語の主語・述語の関係に、あまり慣れていない日本人の心理を巧妙に突いた問題と言えます。
まず、(4)の日本語から、「~ 見ると」となれば、日本語としては能動文ですから、あたかも、(5b)の‘seeing’の方が適格ではないのか、という印象があり、まさか、受身文をベースにした(5a)の過去分詞‘seen’が正しいなどとは考えないわけですね。
これは、日本語は、< >の表現がかかる相手となる文に対して、厳密に主語は主語として対応させるということに、特にこだわらないコトバだからであり、そして、(4)の場合、「この港から見られると」、というような受身文の日本語にしてしまうと、英語の受身文とは違って、「迷惑・被害」という余分な意味が出てしまい、「この港から見ると」という表現と比べて、不適切に感じられてしまうからです。
(6) a. That ship is seen from this harbor. (あの船はこの港から見られる。)
b. We see that ship from this harbor. (私たちは、あの船をこの港から見る。)
(6a)は、受身文であり、‘that ship’「あの船」が主語になっています。一方、(6b)は能動文であり、‘that ship’が目的語になっています。ここから、(5a)の‘that ship looks like a small castle.’の主語が、‘that ship’であることを考えると、同じく、‘that ship’を主語に取っている(6a)が、分詞構文のベースとしては適格であることがわかります。一方、(6b)の主語は、‘we’「私たち」であり、もちろん、(5b)の主語‘that ship’と同じではないので、そこから、(5b)のような分詞構文をつくることはできず、不適格となります。以下も、類似した表現ですね。
(7)メアリーと比べると、ジョンはそれほど慎重ではないね。
(8) a. <Compared with Mary>、John is not so careful. (〇)
b. <Comparing with Mary>、John is not so careful. (×)
(8a)は、過去分詞‘compared’を使っていて、正しい英語ですが、一方、(8b)は、‘-ing’のカタチ‘comparing’を使っていて、間違いになります。これを正しく判断するのを妨げているのは、やはり、(7)の日本語で、「メアリーと比べると」の部分が能動文になっているからです。
(9) a. John is compared with Mary. (ジョンはメアリーと比較される。)
b. We compare John with Mary. (私たちは、ジョンをメアリーと比較する。)
(9a)は、受身文‘A is compared with B’「AはBと比較される」からつくられた文ですが、‘John’(=A)が主語になっていて、(8a)の、‘John is not so careful’の部分と主語が一致しますね。ですので、‘compared with Mary’の表現を使った(8a)は、適格なのです。一方、能動文‘X compare A with B’「Xは、AをBと比較する」からつくられた(8b)は、‘we’(=X)が主語なので、‘John is not so careful’の部分と主語が一致しませんから、不適格ということになります。
ここで、(9a)の日本語訳を見てほしいのですが、受身文として表現された日本語は、「ジョンは ~ される」となっていて、どこか、ジョンにとって、「迷惑・被害」の含意があるのが感じられます。ところが、(9a)の英語の受身文の場合、そのような含意はなく、ただジョンとの比較の対象が、メアリーであることが示されているにすぎません。
ですので、(9a)の日本語訳のような、余計な意味をもつ表現は、避けられるものなら避けたいので、(8a)の英語に対して、(7)のような日本語にした方が、「メアリーと比較されると」よりも、座りがよい表現になるわけです。(5a)の英語に対する、(4)の日本語も、やはり、同じことが言えます。
こういった日本語と英語のカタチの上での表現方法が、同じ解釈の中でブツかり合って、能動文(日本語)に対して、受動文(英語)というように、お互いに対応するカタチが取れない場合、英語はとても難しく感じられます。しかし、考え方として、一定の法則に従っていることが理解できさえすれば、それほど扱いは難しいものではありません。
今回のポイントは、過去分詞のカタチを取る分詞構文ですが、やはり、‘-ing’の分詞構文と同じく、副詞的なはたらきをもっている、ということと、依存する(かかる)他の文の主語に、その主語を求めるということです。この点は、お互いの共通点となります。
そして、過去分詞の分詞構文は、その成り立ちが、受身文からくるものなので、その点、性質が異なる日本語の受身文とは、対応する訳が、能動文・受身文で正反対になる傾向がある、ということです。おそらく、日本人にとっては、この点が、最大の注意点となるでしょうから、練習あるのみです。これで分詞構文の基本的な理解は終わったわけですが、他の派生的な分詞構文に関しては、また別の機会にでも。
■注1 :それほどあまり見かけることはないのですが、過去分詞のカタチをとる分詞構文は、受身文の性質をもっているので、そこから、「‘be’動詞+過去分詞」の分詞構文、‘being+過去分詞’となることもあります。つまり、単純に、過去分詞のアタマに‘being’が付加されている、とだけ理解しておけばよいものです。
■注2 :日本語の受身文、「~ れる、~ られる」は、ある程度、それ自体が、「迷惑・被害」を含意する傾向がありますが、英語の受身文は、それ自体で、「迷惑・被害」を表現するというようなことはなく、一般的な常識や、受身文の主語がどのような立場のものであるか、といった構文自体の性質とは違った観点から、「迷惑・被害」が表現されます。これに関しては、EG68を参照して下さい。
●関連: EG68、EG75
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(1)<Shocked at the news>、Lucy passed out.
(<その知らせにショックを受けて>、ルーシーは気絶してしまった。)
(1)は、‘shocked at ~’の表現が、「~ にショックを受けて」、という意味になって、‘Lucy passed out’「ルーシーは気絶してしまった」、にかかっています。この‘shocked’は、過去形、過去分詞のどちらか、ということになるんですけど、結論から言うと、過去分詞です。
(2)Lucy was shocked at the news. (ルーシーは、その知らせにショックを受けた。)
(2)にあるように、「ショックを受ける」という表現は、‘A is shocked’というカタチで表して、「A はショックを受ける」という意味になります。本来、‘shock’という動詞は、‘shock A’で、「A にショックを与える」という意味になる他動詞なので、‘A is shocked’という、受身文のカタチにして、「A はショックを与えられる」、としてから、その平たい日本語の言いかえとして、「Aはショックを受ける」となるわけですね。
そこで、(1)の‘shocked at the news’の部分と、(2)の文を見比べてみると、‘Lucy was ~’の表現を除けば、同じ表現であることがわかると思います。ですので、受身文から、「主語+‘be’動詞」を取り除いて、いきなり‘-ed’から始まるカタチにしてやると、(1)のような使い方ができるんですね。(1)の‘shocked’が、過去分詞であると言ったのは、そういった経緯によるものです。類似した文として、以下の例を見ると、それがハッキリとわかると思います。
(3)<Beaten by a bank robber>、Lucy passed out.
(<銀行強盗に打ちのめされて>ルーシーは気絶した。)
(3)では、‘beat-beat-beaten’「~ を打ちのめす」という活用をする動詞の過去分詞‘beaten’を用いていますが、構文的には、‘Beaten by a bank robber’の部分は、(1)の‘shocked at the news’と全く同じものです。ところで、(1)では、‘shocked at the news’が、‘Lucy passed out’にかかっている、と言いましたが、ということは、‘shocked at the news’は文の骨格にはならない表現である、ということになりますね。つまり、(1)の過去分詞は、副詞的な過去分詞であると言ってもよいでしょう。(3)の‘beaten’も、もちろん同様です。
そこで、EG75では、副詞的な‘-ing’のカタチである、分詞構文を扱いましたが、実は、この副詞的な過去分詞も、分詞構文の仲間なのです。つまり、分詞構文とは、基本的には、現在分詞‘-ing’や、過去分詞‘-ed’といった分詞を、副詞として使用する表現方法なのです。
さらに、EG75では、‘-ing’の分詞構文には、カタチとなって現れている主語がないので、それがかかる他の文の主語にその主語を求める、といった決まりごとがあるのを見ました。過去分詞の分詞構文もそれと同じルールに従います。
まず、(1)の文では、ショックを受けたのはルーシーですが、気絶したのもルーシーですね。つまり、(1)の‘shocked’は、(2)にあるように、本来、‘Lucy’を主語としている文がもとになっている、と考えてもよいと思います。(3)の文でも、銀行強盗に打ちのめされたのはルーシーですが、気絶したのもルーシーです。ですので、そこから、(3)の‘beaten’も、カタチとしては目に見えないけど、本来は、‘Lucy’を主語に取っていると解釈されるわけですね。
コトバは、述語があれば、必ず、その主語がある、と考えるのが普通ですので、まさに、分詞構文の特徴は、その本来あるはずの主語が、カタチとなって現れていないところにある、と言ってもよいでしょう。そこで、分詞構文の場合は、その目には見えない、カタチとなって現れてはいない主語を、どこか別の場所に求める、ということになっているのです。ですので、ここから、‘-ing’の場合と、過去分詞の場合とで、その主語として、どのようなものが可能であるかを、練習して慣れることが、英語脳的には重要となってきます。
(4)<この港から見ると>、あの船は小さな城にみえるね。
(5) a. <Seen from this harbor>、that ship looks like a small castle. (〇)
b. <Seeing from this harbor>、that ship looks like a small castle. (×)
(4)の日本語を分詞構文で表現するとします。そこで、英語としては、(5a)が正しく、(5b)が間違い、ということになります。この手の分詞構文は、よく、ペーパー試験の問題としても見かけることがありますが、英語の主語・述語の関係に、あまり慣れていない日本人の心理を巧妙に突いた問題と言えます。
まず、(4)の日本語から、「~ 見ると」となれば、日本語としては能動文ですから、あたかも、(5b)の‘seeing’の方が適格ではないのか、という印象があり、まさか、受身文をベースにした(5a)の過去分詞‘seen’が正しいなどとは考えないわけですね。
これは、日本語は、< >の表現がかかる相手となる文に対して、厳密に主語は主語として対応させるということに、特にこだわらないコトバだからであり、そして、(4)の場合、「この港から見られると」、というような受身文の日本語にしてしまうと、英語の受身文とは違って、「迷惑・被害」という余分な意味が出てしまい、「この港から見ると」という表現と比べて、不適切に感じられてしまうからです。
(6) a. That ship is seen from this harbor. (あの船はこの港から見られる。)
b. We see that ship from this harbor. (私たちは、あの船をこの港から見る。)
(6a)は、受身文であり、‘that ship’「あの船」が主語になっています。一方、(6b)は能動文であり、‘that ship’が目的語になっています。ここから、(5a)の‘that ship looks like a small castle.’の主語が、‘that ship’であることを考えると、同じく、‘that ship’を主語に取っている(6a)が、分詞構文のベースとしては適格であることがわかります。一方、(6b)の主語は、‘we’「私たち」であり、もちろん、(5b)の主語‘that ship’と同じではないので、そこから、(5b)のような分詞構文をつくることはできず、不適格となります。以下も、類似した表現ですね。
(7)メアリーと比べると、ジョンはそれほど慎重ではないね。
(8) a. <Compared with Mary>、John is not so careful. (〇)
b. <Comparing with Mary>、John is not so careful. (×)
(8a)は、過去分詞‘compared’を使っていて、正しい英語ですが、一方、(8b)は、‘-ing’のカタチ‘comparing’を使っていて、間違いになります。これを正しく判断するのを妨げているのは、やはり、(7)の日本語で、「メアリーと比べると」の部分が能動文になっているからです。
(9) a. John is compared with Mary. (ジョンはメアリーと比較される。)
b. We compare John with Mary. (私たちは、ジョンをメアリーと比較する。)
(9a)は、受身文‘A is compared with B’「AはBと比較される」からつくられた文ですが、‘John’(=A)が主語になっていて、(8a)の、‘John is not so careful’の部分と主語が一致しますね。ですので、‘compared with Mary’の表現を使った(8a)は、適格なのです。一方、能動文‘X compare A with B’「Xは、AをBと比較する」からつくられた(8b)は、‘we’(=X)が主語なので、‘John is not so careful’の部分と主語が一致しませんから、不適格ということになります。
ここで、(9a)の日本語訳を見てほしいのですが、受身文として表現された日本語は、「ジョンは ~ される」となっていて、どこか、ジョンにとって、「迷惑・被害」の含意があるのが感じられます。ところが、(9a)の英語の受身文の場合、そのような含意はなく、ただジョンとの比較の対象が、メアリーであることが示されているにすぎません。
ですので、(9a)の日本語訳のような、余計な意味をもつ表現は、避けられるものなら避けたいので、(8a)の英語に対して、(7)のような日本語にした方が、「メアリーと比較されると」よりも、座りがよい表現になるわけです。(5a)の英語に対する、(4)の日本語も、やはり、同じことが言えます。
こういった日本語と英語のカタチの上での表現方法が、同じ解釈の中でブツかり合って、能動文(日本語)に対して、受動文(英語)というように、お互いに対応するカタチが取れない場合、英語はとても難しく感じられます。しかし、考え方として、一定の法則に従っていることが理解できさえすれば、それほど扱いは難しいものではありません。
今回のポイントは、過去分詞のカタチを取る分詞構文ですが、やはり、‘-ing’の分詞構文と同じく、副詞的なはたらきをもっている、ということと、依存する(かかる)他の文の主語に、その主語を求めるということです。この点は、お互いの共通点となります。
そして、過去分詞の分詞構文は、その成り立ちが、受身文からくるものなので、その点、性質が異なる日本語の受身文とは、対応する訳が、能動文・受身文で正反対になる傾向がある、ということです。おそらく、日本人にとっては、この点が、最大の注意点となるでしょうから、練習あるのみです。これで分詞構文の基本的な理解は終わったわけですが、他の派生的な分詞構文に関しては、また別の機会にでも。
■注1 :それほどあまり見かけることはないのですが、過去分詞のカタチをとる分詞構文は、受身文の性質をもっているので、そこから、「‘be’動詞+過去分詞」の分詞構文、‘being+過去分詞’となることもあります。つまり、単純に、過去分詞のアタマに‘being’が付加されている、とだけ理解しておけばよいものです。
■注2 :日本語の受身文、「~ れる、~ られる」は、ある程度、それ自体が、「迷惑・被害」を含意する傾向がありますが、英語の受身文は、それ自体で、「迷惑・被害」を表現するというようなことはなく、一般的な常識や、受身文の主語がどのような立場のものであるか、といった構文自体の性質とは違った観点から、「迷惑・被害」が表現されます。これに関しては、EG68を参照して下さい。
●関連: EG68、EG75
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