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英語脳をつくる!~日本人はいかに効率良く英語を学べるか~

英語学習に関する事いろいろです。日本人がいかにすれば実用英語を身に付けられるか、その最短距離を考察!

英語学習法(99)

2005年08月30日 | 変形
EG23の続きです。‘easy’構文の特徴についてです。

(1)It is easy to drive this car. (このクルマを運転するのは簡単だね。)
(2)This car is easy to drive _. (訳同上)

‘easy’構文の特徴は、(1)のような文の、‘to’不定詞の中にある、目的語‘this car’を、 (‘it’を外して) ‘be easy’の主語位置まで移動させることで、(2)のような文を派生させる、ということでした。今回は、この移動に関して、さらなる確認です。

(3)It is difficult (for John) to deal with this problem. (〇)
  (この問題は (ジョンには) 扱うのは困難だろうね。)

(4)This problem is difficult (for John) to deal with _. (〇) (訳同上)

(3)から(4)への変形も、OKです。‘difficult’「困難だ」も、‘easy’構文と同タイプの変形を許す仲間です。ポイントは、この構文の特徴として、‘for John’「ジョンには」が、オプションとして、参加することができる、ということと、‘deal with ~’「~ を扱う」などの前置詞の目的語でも、とにかく、目的語なら、移動がOK、ということですね。ただし、油断は禁物です。それは、以下のような場合があるからですね。

(5)It is easy (for Tom) to imgine [ (that) John loves Susan ]. (〇)
  ((トムには) [ ジョンがスーザンを愛している ] なんて、想像するのは簡単だよ。)

(6)Susan is easy (for Tom) to imgine [ (that) John loves _ ]. (×) (訳同上)

(5)はOKですが、(6)は、アウトになります。つまり、目的語なら、何でも移動して、OKにできるか、というと、‘that’節の中にある目的語の場合は、ダメなんです。しかし、これは、特定の移動変形 (疑問詞や、関係詞のような、いわゆる、‘wh-’表現以外の移動) の場合、ただ単に、‘that’節の中から、その外へは移動できない、という、別個に独立したルールがあるためです。 (EG83、参照。)

(7)It is impossible (for me) to persuade Mary to drive this car.
  ((ボクには、) メアリーに、このクルマを運転するように説得するなんて無理ですよ。)

(8)Mary is impossible (for me) to persuade _ to drive this car. (〇) (訳同上)

(9)This car is impossible (for me) to persuade Mary to drive _. (〇) (訳同上)

今度は、(7)をもとにして、(8)や(9)のように、変形させてみましたが、(8)と(9)、両方とも、OKです。‘impossible’「不可能だ」も、やはり、‘easy’構文と同タイプの述語です。(7)のような、「動詞+目的語+‘to’不定詞」の構文においても、目的語の移動は、OKです。(8)では、目的語の‘Mary’が移動の対象となっていますね。

そして、(7)の‘this car’も、一応、‘drive’の目的語です。そして、ちょっと、‘be impossible’の主語位置から、遠く離れてはいますが、‘that’節の介在がなく、単純に、‘to’不定詞の中からの移動になりますので、(9)のような文にしても、OKにすることができます。こういった観察からも、やはり、‘to’不定詞内における「目的語」というステイタスが、‘easy’構文にとっては、重要であることを示していますね。

(10)It is easy (for me) to cut a big tree with this sword.
  ((オレ様には、) この剣なら、大木だってブッタ切るのは簡単さ。)

(11)A big tree is easy (for me) to cut _ with this sword. (〇)

(12)This sword is easy (for me) to cut a big tree with _. (〇)

今度も、やはり、‘easy’構文における、‘to’不定詞の中からの目的語の移動を示す例ですが、(10)の‘cut a big tree with this sword’「剣で大木を切る」は、他動詞‘cut ~’の目的語‘a big tree’と、前置詞‘with ~’の目的語‘this sword’という、2つの目的語をもっています。

と言うことは、(7)から、(8)と(9)の2つが派生されるのと同様に、(10)からも、2種類の移動が可能ということですね。まず、(11)では、‘a big tree’が、移動の対象として選ばれていますが、もちろん、OKです。一方、(12)では、‘this sword’が、移動の対象として選ばれていますが、これも、何の問題もなく、OKになります。

(13)It is unpleasant for Mary to drive this car.
  (メアリーには、このクルマを運転することは不愉快だ。)

(14)This car is unpleasant for Mary to drive _. (〇) (訳同上)

今度は、(13)から(14)への変形ですが、‘unpleasant’「不愉快だ」は、‘easy’構文としての述語の仲間ですので、‘to’不定詞‘to drive this car’の中からの目的語‘this car’の移動は、当然、OKですね。では、以下は、どうでしょうか。

(15)It is unpleasant for John for Mary to drive this car.
  (ジョンにとって、メアリーがこのクルマを運転するなんて不愉快だ。)

(16)This car is unpleasant for John for Mary to drive _. (×) (訳同上)

ん?(16)は、アウトになるんデスカ?そうですね。まず、(15)を見ると、‘for John for Mary’というように、‘for’が、2つ並んだカタチになっています。この‘for’は、それぞれ、文法的なステイタスが違っていて、‘for A for B’の語順で見た場合、必ず、‘for A’の方が、「A にとって」の解釈になりますが、一方、‘for B’の方は、「B が」という解釈になります。 (EG43、参照)

このように、‘for A for B’のように、‘for ~’が、2つ現れるケースにおいては、‘easy’構文の移動は阻止される、ということなんです。そこで、とりあえず、(16)の例からは、そういったことが言えるんですが、しかし、もうちょっと、他のケースも、考えてみたいと思います。

(17)Oh! It snows in June. (オオ!6月に雪が降るとは。)

(18)It is impossible for it to snow in June. (6月に雪が降るなんて、アリエナイ。)

(19)June is impossible for it to snow in _. (×) (訳同上)

(17)のような文をもとにして、(18)では、‘for it to snow’というように、「主語・述語」の関係を表現しています。そこで、(18)から、(19)の変形ですが、何と、アウトなんです。もちろん、注目すべきポイントは、(18)で、別に、‘for A for B’「A にとって B が ~」のように、‘for ~’が、2つ現れているわけではないし、‘June’「6月」は、前置詞‘in ~’の目的語なので、‘June’の移動は、可能であるはずなんですが、やはりアウトなんです。これは、一体、どういうことなんでしょうか。

そこで、(18)と(19)における、‘for it’の意味に着目してもらいたいのですが、これは、もちろん、もととなった、(17)の‘it snows.’「雪が降る」の主語‘it’は、単純に、代名詞の‘it’「それ」というわけではなく、特に、何かを指して、具体的な意味内容をもっているわけではありません。

ただ単に、‘snow’という動詞は、無条件に、‘it’を主語に置く、という約束ごとが最初にあるから、そうしているにすぎないわけです。ですので、このような‘it’は、全く文脈など必要とせず、いきなり現れても、一向に構わない、いわゆる、単純な「代名詞」とは異質な、主語専用の‘it’なんですね。

この‘it’は、もちろん、‘for it’「‘it’にとって」などとしても、意味不明です。つまり、「~ にとって」とは、解釈できないわけです。でも、だからと言って、「‘it’が」としても、やはり、同様に、意味不明ではあるのですが、しかし、少なくとも、機能的な面から考えて、動詞‘snow’に対する、「主語」としてのステイタスは保持している、とハッキリ言えると思います。さらに、以下も見ましょう。

(20)There are many flies in the kitchen. (その台所には、ハエがいっぱいいる。)

(21)It is unpleasant for there to be many flies in the kitchen.
   (その台所に、ハエがいっぱいいるなんて不愉快だな。)

(22)The kitchen is unpleasant for there to be many flies in _. (×) (訳同上)

やはり、(20)をもとにした(21)から、(22)を派生する変形も、アウトになりました。これは、もちろん、‘there’構文の‘there’は、主語専用の表現であり、かつ、‘for there’「‘there’にとって」の解釈は、意味不明だから、ということのようですね。 (‘there’構文については、EG31、EG74、参照。)

そこで、(15)や(16)にもどって考えると、‘for A for B’「A にとって B が ~」のように、2つの‘for’が並んだ場合、必ず、‘for A’は、「~ にとって」の解釈になり、一方、‘for B’は、真の意味で、‘to’不定詞の主語としてのみ、はたらくことを強制されるわけですから、いわゆる、これら2つの‘for’は、それぞれ、「~ にとって」でも、「~ が」でも、どちらにでも、好き勝手に解釈できるような‘for’ではありません。

これに対して、OKである、(4)、(8)、(9)、(11)、(12)、(14)の例では、全て、‘for ~’の部分が、‘to’不定詞の主語として機能しながらも、一方、「~ にとって」の意味に解釈することも可能です。ですので、どうやら、‘for ~’が、こういった、「~ にとって」の解釈に逃げ込む余地がない、というような状況が、(16)、(19)、(22)を、アウトにする決め手となるようです。

(23)「~ にとって」の意味に解釈できないような、‘for ~’ (完全に
   ‘to’不定詞の主語としか解釈できないような‘for ~’) がある
   場合、‘easy’構文における‘to’不定詞内の目的語は、移動させ
   ることができない。

今回のポイントは、‘easy’構文の特徴である、‘to’不定詞の中にある目的語の移動が、不可能になるような障壁の存在です。「‘for’~‘to’不定詞」のカタチにおける‘for’が、明らかに、「~ にとって」と解釈できない場合、こういった移動をブロックする環境が形成される、ということです。

普通、この‘for ~’は、「~ にとって」でも、「~ が」でも、どちらにでも、好き勝手に解釈できる場合が、多いのですが、今回示したように、そうはいかない場合もあるので、明らかに、「~ にとって」の意味に解釈できないような、‘for ~’ (完全に‘to’不定詞の主語とだけしか解釈できないような‘for ~’) であるかどうか、考えて、移動の可否を決定するようにして下さい。

●関連 :EG23EG31EG43EG74EG83

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英語学習法(98)

2005年08月28日 | 動詞
EG93、EG94、EG97の続きです。以下、見ましょう。

(1) I believed Mary to respect Tom. (メアリーはトムを尊敬している、と信じていた。)

(2) I wanted Mary to respect Tom. (メアリーにトムを尊敬して欲しいと思った。)

(3) I persuaded Mary to respect Tom.  (メアリーにトムを尊敬するよう説得した。)

(1)~(3)まで、全て、「動詞+目的語+‘to’不定詞」のカタチです。(1)の‘believe’も、(2)の‘want’も、(3)の‘persuade’も、共通点は、「目的語+‘to’不定詞」の部分に、解釈上、‘Mary respects Tom.’「メアリーはトムを尊敬する。」、という、「主語・述語」の関係が成り立っている、ということです。

(4)Mary respects Tom. (メアリーは、トムを尊敬している。)
(5)Tom is respected by Mary. (トムは、メアリーから尊敬されている。)

ところで、(4)は、能動文であり、(5)のような受身文に書きかえることができます。ここで注意して欲しいのは、能動文(4)から、受身文(5)への書きかえにおいては、(4)では、‘Mary’が主語であり、一方、‘~ respects Tom’が述語です。しかし、(5)では、‘Tom’が主語であり、一方、‘~ is respected by Mary’が述語です。つまり、能動文から受身文への書きかえは、カタチの上での、「主語・述語」の変化、と言ってもよいでしょう。

そこで、EG97では、(1)~(3)の構文のうち、(1)の‘believe’と、(3)の‘persuade’は、共通した同タイプの動詞として、一括りにできそうだ、という根拠を示したわけですが、しかし、それにも関わらず、とりあえず、その結論は保留しました。それは、何故なんでしょうか。以下を見ましょう。

(6)I believed Tom to be respected by Mary.
  (トムはメアリーから尊敬されている、と信じていた。)

(7)I wanted Tom to be respected by Mary.
  (トムにはメアリーから尊敬されて欲しい、と思った。)

(8)I persuaded Tom to be respected by Mary.
  (トムを、メアリーから尊敬されるようにと説得した。)

(6)~(8)では、「目的語+‘to’不定詞」の部分に、受身文(5)の「主語・述語」の関係を、そのまま組み込んで表現してみました。そこで問題となるのは、(6)~(8)は、(1)~(3)と比較してみて、文全体の意味に何らかの変化が表れているかどうかです。

(6)は、(1)と比べて、特に、意味的な変化は感じられません。つまり、表現の仕方が、ただ単に変化しているだけで、大雑把には、(1)の全体的な意味は、(6)の全体的な意味に、ほぼ等しく、(1)=(6)の解釈になる、と言っても、差し支えないと思います。そして、(7)も同様で、(2)と比べて、表現の仕方が、ただ単に変化しているだけで、お互いの全体的な意味に違いはなく、大雑把には、(2)=(7)の解釈になる、と言っても、やはり、差し支えないと思います。

そこで、最後に、じゃ、(3)=(8)は成り立つか、ということになりますが、これは不可能でしょう。つまり、(3)と(8)は、そもそも、根本的に意味が違うということです。(3)では、説得する相手が、‘Mary’だったのですが、一方、(8)では、説得する相手が‘Tom’になっています。

つまり、‘persuade’という動詞の場合、説得の対象となる人物が、必ず、その目的語の位置 (つまり、‘to’不定詞にとっては、解釈上の主語位置) にくるという、意味的な制限があり、だから、目的語の位置にくるものが違うと、それがそのまま、文全体の意味に影響を与え、伝達内容の違いとなって表れるわけですね。

このようなことは、‘believe’や‘want’のような動詞には、見られない特徴で、‘believe’も、‘want’も、共に、「目的語+‘to’不定詞」全体 (つまり、解釈上の「主語・述語」の関係全体) を、ひとまとめにした、1つの意味単位、すなわち、意味解釈ユニットとして、直接的に捉えています。

ここから、‘persuade’のような動詞は、‘believe’や‘want’のような動詞とは、決定的に違った性質をもつ動詞であることは明らかです。そして、その一方で、‘believe’や‘want’のような動詞には、「目的語+‘to’不定詞」全体を、直接的に、1つのまとまった解釈ユニットとして捉えるという、共通点があるので、この観点からは、分類上、‘persuade’のような動詞とは違って、‘believe’と‘want’のような動詞は、共に仲間である、ということになってしまいます。

(9)I believed there to be a girl in the basement. (〇)
  (その地下室には少女がいると信じていた。)

(10)I wanted there to be a girl in the basement. (〇)
  (その地下室に少女がいて欲しいと思った。)

(11)I persuaded there to be a girl in the basement. (×)
  (その地下室に少女がいるとるようにと説得した。)

(9)~(11)では、それぞれ、‘there’構文の主語である、‘there’を目的語の位置に置いてみましたが、(9)の‘believe’や、(10)の‘want’は、‘there’の出現が許され、OKになります。しかし、その一方で、(11)の‘persuade’は、‘there’の出現が許されず、アウトになります。 (‘there’構文の特徴については、EG31、EG74、参照)

これは、もちろん、‘persuade’という動詞は、直接的に、「目的語+‘to’不定詞」全体を、ひとまとめにして、解釈ユニットと見なすのではなく、むしろ、直に、目的語に対して、「説得の対象」を指定する動詞だからです。だからこそ、‘persuade’は、目的語に‘there’がくると、その要求を満たさない単語なので、排除してしまうわけですね。

これを言いかえれば、‘persuade’に関しては、「目的語+‘to’不定詞」の間には、解釈上、「主語・述語」の関係があるとは言っても、まず最初に、制限された目的語を指定してから、後付けで、その支えとなる述語 (‘to’不定詞) をつなげることで、最終的に、「目的語+‘to’不定詞」の間に、「主語・述語」の関係が成立する、というプロセスを経ることになります。

では、そろそろ、この一連の議論を、まとめたいと思います。EG94では、‘believe’と‘want’の比較に始まり、まず、‘believe’を、何の変哲もない動詞であるかのような立場に立たせ、むしろ、‘for’を隠しもつ‘want’がクセ者であるかのような印象を与えました。そして、さらに、EG97では、‘believe’と‘want’の比較に、‘persuade’を参入させることで、あたかも、‘persuade’は、‘believe’の仲間であるかのような印象を与え、‘want’の特異性を、さらに際立たせました。

しかし、今回、新たな検証を行うことで、実は、‘persuade’にだって、それなりに際立った特徴があり、‘believe’とは、必ずしも仲間である、とは言い切れない部分があることが判明しました。そして、その検証のプロセスにおけるボーナス的効果として、今度は、‘believe’と‘want’にだって、共通点はあるのだ、ということも判明しました。

今回のポイントは、「動詞+目的語+‘to’不定詞」のカタチをもつ構文を、3タイプの動詞を使って、比較することで、それぞれの共通点と相違点が、少しずつ異なっていることが判明した、ということです。ある側面にスポットを当てると、‘believe’と‘persuade’は同タイプと言えるが、一方、違った側面にスポットを当てると、今度は、‘believe’と‘want’が同タイプと言えるようなこともあるんですね。

しかし、皆さんも、もう、お気づきのように、残された問題があります。つまり、‘believe’を仲間ハズレにするような、‘persuade’と‘want’の共通点は、特に発見されなかった、ということです。これを言いかえれば、‘believe’は、‘persuade’と‘want’の、それぞれがもつ特徴を、部分的に受け継いだ、「合いの子」のような存在である、ということです。

こうなってくると、最初は、何の変哲もない動詞としての印象が強かった‘believe’が、今度は、一変して、何らかの特異性を持つ動詞ではないか、という疑いに転じることになりますが、しかし、とりあえず、実用英語の範囲内では、「動詞+目的語+‘to’不定詞」の構文における、全体像の本来的な理解は、ここまででも、既に必要にして、かつ、十分なレベルに達しています。

今回の一連の議論に関する理解を主軸として、今後、(‘believe’タイプを含めて) 様々な変種的構文も扱っていきますが、今回のテーマは、欠かすことのできない本質の最重要ランクに位置しますので、手抜かりなく、ものにしておきましょう。

●関連: EG31EG74EG93EG94EG97

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英語学習法(97)

2005年08月26日 | 動詞
EG93、EG94の続きです。EG94では、「動詞+目的語+‘to’不定詞」のカタチを取る構文に対して、同じ条件でテストをした結果、動詞によっては、違いが見られる、ということでした。以下、見ましょう。

(1)John believed Mary to be in the basement.
  (ジョンは、メアリーが地下室にいると信じていた。)

(2)John persuaded Mary to be in the basement.
  (ジョンは、メアリーに地下室にいるよう説得した。)

(1)と(2)は、共に、「動詞+目的語+‘to’不定詞」のカタチです。(1)の‘believe’も、(2)の‘persuade’も、共通点は、「目的語+‘to’不定詞」の部分に、解釈上、‘Mary is in the basement.’「メアリーが地下室にいる」、という、「主語・述語」の関係が成り立っている、ということです。

(3)Mary was believed _ to be in the basement. (〇)
  (メアリーは、地下室にいると信じられていた。)

(4)Mary was persuaded _ to be in the basement. (〇)
  (メアリーは、地下室にいるよう説得された。)

そこで、(1)から(3)、(2)から(4)、というように、それぞれ、‘Mary’を主語位置に移動させて、受身文をつくってみましたが、共に、何の問題もなく、OKになります。(3)の‘believe’の受身文に関しては、既に、OKであることは、わかっていますね。 (EG94、参照) では、次にいきましょう。

(5)John believed himself to be in the basement. (〇)
  (ジョンは、自分が地下室にいると信じていた。)

(6)John persuaded himself to be in the basement. (〇)
  (ジョンは、地下室にいるよう自分で自分を説得した。)

今度は、(5)と(6)ですが、やはり、共にOKです。(5)も(6)も、目的語の部分に、再帰代名詞を置いてみたわけですが、共に、何の問題もなくOKですので、両者には、特に差は感じられませんね。続けて、以下も見ましょう。

(7)John believed strongly for Mary to be in the basement. (×) 
  (ジョンは、メアリーが地下室にいると、強く信じていた。)

(8)John persuaded strongly for Mary to be in the basement. (×) 
  (ジョンは、メアリーに地下室にいるよう、強く説得した。)

(7)と(8)の場合は、共にアウトになりました。どちらも、副詞‘strongly’を割り込ませて、‘for’を‘Mary’の前に置いてみたのですが、やはり、アウトということですね。この‘for’に関してですが、今度は、以下のような、違ったやり方で、見てみたいと思います。

(9)What John believed is for Mary to be in the basement. (×)
  (ジョンが信じていたのは、メアリーが地下室にいる、ということだ。)

(10)What John persuaded is for Mary to be in the basement.  (×)
  (ジョンが説得したのは、メアリーに地下室にいるように、ということだ。)

(9)と(10)の場合も、共にアウトです。(9)と(10)は、主語に関係節‘what ~’を使ってみましたが、‘be’動詞の‘is ~’から、後半の表現を、どちらも、‘for Mary to be in the basement’、として、目的語の前に、‘for’を置いてみました。やはり、両方ともアウトですから、特に差は感じられませんね。 (‘what’を使った関係節については、EG53、参照)

(11)John wanted Mary to be in the basement.
  (ジョンは、メアリーに地下室にいて欲しいと思っていた。)

(12)Mary was wanted _ to be in the basement. (×)
  (メアリーは、地下室にいて欲しいと思われていた。)

(13)John wanted himeself to be in the basement. (×)
  (ジョンは、自分が地下室にいたいと思っていた。)

(14)John wanted very much for Mary to be in the basement. (〇) 
  (ジョンは、とても、メアリーに地下室にいて欲しがった。)

(15)What John wanted is for Mary to be in the basement. (〇)
  (ジョンが望んでいたのは、メアリーが地下室にいる、ということだ。)

ここで、思い出して欲しいのですが、EG94では、「‘want’+目的語+‘to’不定詞」のタイプは、実は、「‘want’+‘for’+目的語+‘to’不定詞」のカタチがもとになっていて、普段は、(11)のように、表面上、‘for’を隠しているが、(14)や(15)のように、‘want’と目的語が隣りあわないように、お互いを遠ざけると、‘for’が、ヒョッコリ顔を出す、ということを確認しました。

そして、さらに、その‘for’を取る、という性質が原因となって、(12)の受身文や、(13)の再帰代名詞 が、アウトになるのではないか、ということを、想定したわけですね。

ですので、今回、新たに確認した、「‘persuade’+目的語+‘to’不定詞」の場合は、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」と、文法的に、同じ振る舞い方をする、つまり、「‘want’+目的語+‘to’不定詞」とは、逆の振る舞い方をするということなので、‘want’タイプの仲間ではなく、‘believe’タイプの仲間である、ということになります。

具体的に、「‘want’+目的語+‘to’不定詞」との相違点は、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」と、「‘persuade’+目的語+‘to’不定詞」は、共に、受身文の変形が可能で、再帰代名詞の出現も許すが、その一方で、動詞と目的語を切り離して遠ざけても、‘for’が現れない、という共通点があります。

そこで、こういった分類の背後にある考えは、‘want’タイプが、‘for’を隠しもつ、という性質に起因するもので、この点、‘believe’や‘persuade’が、同じタイプである、という結論には、説得力があります。つまり、‘believe’も、‘persuade’も、同様に、‘for’を取らない (‘for’を隠しもつことがない)、だから、受身文にすることや、再帰代名詞の出現が、可能なのだ、という説明を裏付けることになります。

今回のポイントは、「‘want’+目的語+‘to’不定詞」は、特殊な構文である、ということを、新たに、他の動詞を加えて比較してみることで、その確からしさを検証してみた、ということです。そこで得られた結論は、やはり、‘want’のような、本来的に、‘for’を取る (隠しもつ) タイプの動詞は、それが原因で、受身文への変形や、再帰代名詞の出現を許さない、といった説明が成り立つ、ということです。

その一方で、‘believe’や‘persuade’のような、本来的に‘for’を取らない動詞は、ごく普通に、受身文への変形や、再帰代名詞の出現を許す、といった、特に変則性のない、一般的な文法的振る舞いをする、ということですので、同じタイプの動詞として、一括りにできそうだ、ということです。

が、しかし、今さらですが、果たして、このような結論で終わってしまってもよいのでしょうか。まだ他に検証すべきことは残っていないのでしょうか。もう少し、結論は先にまわしてもよいような気がしますので、次回、またこのテーマを、掘り下げて、扱ってみたいと思います。

●関連: EG53EG93EG94

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【特報!】 「英語学習帳」 更新再開

2005年08月25日 | その他
【特報!】
久しく更新が滞っていた、あの、大人気サイト、「英語学習帳」が、パワーアップして帰ってきました!今後、作者は、イギリスの超難関大学院で、MBA取得に挑み、現場での生きた英語を報告してくれる予定です。皆で応援しよう!(あ、「英語脳!」も、ワスレナイデクダサイ・・・。)

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英語学習法(96)

2005年08月17日 | 代名詞
EG95の続きです。再帰代名詞のルールと、他の規則との連携性についてです。以下、見ましょう。

(1)Tom wants Mary to protect herself. (〇)
  (トムは、メアリーに自分の身は自分で守って欲しいと思っている。)

(2)Tom deceived Mary to protect himself. (〇)
  (トムは、自分の身を守るために、メアリーを騙した。)

(1)は、‘Mary’=‘herself’で、OKとなり、一方、(2)は、‘Tom’=‘himself’で、OKとなる文です。そこで、(1)と(2)のような、再帰代名詞の現れ方は、基本的には、以下のルールにしたがう、という特徴がありました。 (EG95、参照)

(3)再帰代名詞と、‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じては
   ならない (再帰代名詞のみ、所有格も、不可)、②・最も近い主語
   (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、2つの条件を、
   同時に満たしていなければならない。

そこで、(1)は、「‘want’+A (目的語)+‘to’不定詞 (A に ~ して欲しい)」の構文ですから、‘Mary’と、‘to’不定詞‘to protect herself’の間には、「主語・述語」の関係があります。そこで、‘protect’から、目的格を与えられた‘herself’は、最も近い主語として、‘Tom’ではなく、‘Mary’を選びますが、これは、ルール(3)の、①も、②もクリアしているので、‘Mary’=‘herself’は、正しい解釈だとわかります。 (「‘want’+A (目的語)+‘to’不定詞 (A に ~ して欲しい)」の構文に関しては、EG94、参照)

一方、(2)では、‘to’不定詞‘to protect himself’が、単純に、副詞的用法の‘to’不定詞なので、‘to protect himself’は、その主語として、‘Mary’ではなく、‘Tom’を選びます。そこで、‘protect’から、目的格を与えられた‘himself’は、最も近い主語として、‘Mary’ではなく、‘Tom’を選んでいるわけですが、これも、ルール(3)の、①と②を、両方ともクリアしているので、‘Tom’=‘himself’が、正しく決定されています。 (ここでの‘to’不定詞に関しては、EG42、EG93、参照)

(4)It seems to Mary [ that Tom respects himself ]. (〇)
  (メアリーには [ トムが自分で自分を尊敬している ] ように見える。)

(5)Tom seems to Mary _ to respect himself. (〇) (訳同上)

そこで、再帰代名詞と、移動による変形との関わりあいを見てみたいと思います。(4)では、‘that’節内で、‘Tom’=‘himself’がOKですが、一方、(5)でも、‘Tom’=‘himself’が、そのまま成り立っていて、OKです。(5)は、(4)をもとにした、「変形」と考えられていますので、(4)の解釈が、そのまま、(5)でも、成り立っているわけですね。 (‘seem’の構文については、EG62、参照)

(6)It seems to himself [ that Tom respects Mary ]. (×)
  ([ トムはメアリーを尊敬している ] と、彼自身、そう思える。)

(7)Tom seems to himself _ to respect Mary. (〇) (訳同上)

今度は、(6)から、(7)への変形となりますが、ここで注目すべきは、何と、(6)がアウトであるにも関わらず、(7)がOKになる、ということです。しかし、そのことが、(7)は、(6)からの変形ではない、ということを、意味するものではありません。

(8)It seems to John [ that Tom respects Mary ]. (〇)
  (ジョンには、[ トムはメアリーを尊敬している ] ように見える。)

(9)Tom seems to John _ to respect Mary. (〇) (訳同上)

(8)と(9)は、‘seem’の直後が、‘to himself’ではなく、‘to John’となっていますが、 (8)から(9)への変形は、何の問題もなく、OKになります。ですので、(6)と(7)の間にある問題点は、むしろ、‘to himself’ の解釈が、正しく成り立つか否かにある、と見るのが正しく、‘seem’の構文における「変形」そのものと、再帰代名詞の解釈に関する問題は、それぞれ別個に独立している、と考えられます。

これを、もう少し、詳しく言うと、‘seem’の構文では、例えば、(4)から(5)の変形のように、‘that’節内の文法性は、そのまま、その一部である主語が‘seem’の主語位置に移動した変形後にも、影響を与える要因となりますが、一方、‘that’節の外にある要素は、もともと、‘seem’の構文における移動の対象ではないため、‘that’節内の文法性とは、直接的には、無関係です。

つまり、この場合、‘that’節の外にあり、かつ、正しい相手をもつことができずにアウトになる(6)の‘himself’は、(6)から(7)への変形によって、(7)のカタチになることで、偶然にも、ルール(3)に適合したために、救い出され、OKとなったと見るべきなので、やはり、‘seem’の構文における変形は、そのまま、保持した方がよい、と言えるでしょう。以下の例からも、この考えは支持される、と思われます。

(10)It seems to Mary [ that Tom respects herself ]. (×)
  (メアリーには [ トムが彼女を尊敬している ] ように見える。)

(11)Tom seems to Mary _ to respect herself. (×) (訳同上)

(10)と(11)は、両方とも、アウトです。これは、やはり、(10)がアウトになる原因が、that’節の外ではなく、‘that’節の中にあるからで、‘Tom’=‘herself’の解釈は、(‘Tom’という名前の女性、というケース以外は) 不可能です。

ですので、(11)がアウトである原因は、やはり、(10)の‘that’節内の文法性が、そのまま、(11)にも、持ちこされて、‘Tom’=‘herself’の解釈が不可能だから、というのが自然です。 そして、さらに、(10)と(11)は、両方とも、‘to Mary’があるにも関わらず、‘Mary’=‘herself’の解釈が成り立たない、ということが、ルール(3)の正しさを、同時に支持しています。

今回のポイントは、再帰代名詞の解釈と、特定の構文における「変形」との関わりあいです。再帰代名詞の解釈に関するルールは、‘seem’の構文のように、特定の変形が、正しく成立していると、それを基盤とした、密接なリンクによって、見通しのよいやり方で、比較的、広範囲にわたる説明を可能にします。

今回、示されたやり方が意味するのは、一見、複雑そうに見えて、何となく感覚的なフィーリングで理解する、という、どこにでも、ありがちではあるけども、しかし、どこか危なっかしい英語学習法が、実は単純な規則性とその連携性の理解において、飛躍的にステップアップする (精度を増す) ことを可能にするという、効率性の良さです。

コトバの学習は、何かと例外事項も多く、その扱いが面倒な側面もあるのですが、例外的なことを、極力、最小限に押さえ込み、実用性の高い部分ほど、秩序だった説明が可能になるならば、このやり方に依存しない手はありません。

実は、もっと複雑な例になってくると、再帰代名詞や‘each other’は、まだまだ、言うべきことがあるのですが、それは、かなり上級レベルの手法になってきますので、今後の機会を見計らい、改めて、ということにします。

●関連: EG42EG62EG93EG95

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英語学習法(95)

2005年08月13日 | 代名詞
今回、再帰代名詞です。以下、見ましょう。

(1)Tom saw himself in the mirror (トムは、鏡で自分を見た。)
(2)Mary saw herself in the mirror (メアリーは、鏡で自分を見た。)

(1)の‘himeself’や、(2)の‘herself’のように、‘-self’のカタチをもったものを、一種の代名詞と見なして、「再帰代名詞」と呼んでいます。今回、その基本的な特徴を、見てみたいと思います。

(3)Himself went there. (×) (彼自身、そこへ行った。)
(4)He went there. (〇) (彼は、そこへ行った。)

いきなり、(3)はアウトですが、一方、(4)はOKです。(3)は、‘himself’が主語になっているんですが、一方、(4)は、‘he’が主語です。どちらも、同じ代名詞なのに、この差は何なんでしょうか。もうちょっと、他の例も、見てみましょう。

(5)Tom believes [ that himself is popular ]. (×)
  (トムは [ 自分が人気者だと ] 信じている。)
(6)Tom believes [ that he is popular ]. (〇) (訳同上)

(5)はアウトで、一方、(6)がOKです。この場合も、やはり、(5)と(6)の違いは、‘that’節内の、‘himself’と‘he’でしかありません。ここでのポイントは、(5)は、(3)とは違って、同じ文中に、‘himself’の潜在的な相手として、‘Tom’があるのに、それでも、やはりアウトになる、ということなんです。じゃ、以下は、どうでしょうか。

(7)Tom believes himself to be popular. (〇) (訳同(5))

(7)のように、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」の構文でなら、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKにできる、ということなんですね。ここで、注意すべきは、(7)は、「目的語+‘to’不定詞」の間に、解釈上、「主語・述語」の関係が成立していて、意味的には、(5)と、ほぼ同じである、ということです。 (「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」の構文については、EG93、EG94、参照)

ほぼ同じ意味でも、カタチが違えば、文法性に差が出る。つまり、再帰代名詞の可否の問題は、単純に、意味の問題、というわけにはいかず、構文的な (つまり、カタチ的な) 問題が潜んでいる、ということになります。そこで、もう、気づいているヒトもいるかと思いますが、EG91と、EG92で扱った、‘each other’「お互い」、に関するルールを思い出して下さい。

(8)‘each other’は、独立して使うことができず、同一文中に、
   相手となるべき (イコール (=) 解釈となるような) 名詞表現を
   必要とする。

(9)‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じてはならない、
   ②・最も近い主語 (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、
   2つの条件を、同時に満たしていなければならない。

ルール(8)と(9)にある、‘each other’を、それぞれ、「再帰代名詞」に置きかえて、考えてみましょう。まず、(3)は、同一文中に、‘himself’の相手となる、名詞表現がありません。そして、かつ、主格を与えられる位置に生じているので、ルール(8)、または、ルール(9)の①、どちらによってでも、正しくアウトにすることが可能です。

次に、(5)ですが、同一文中に、‘himself’の相手となるべき名詞表現‘Tom’をもっていますので、ルール(8)はクリアするものの、その一方で、‘himself’が、主格が与えられる位置に生じているので、ルール(9)の①が、クリアできず、やはり、正しくアウトになります。

今度は、OKになる(1)と(2)ですが、(1)の‘himself’は、同一文中に、‘Tom’があるし、一方、(2)の‘herself’も、同一文中に、‘Mary’があるので、共に、ルール(8)をクリアします。そして、‘himself’も、‘herself’も、共に、目的格を与えられる位置に生じていて、ルール(8)の①もクリアします。さらに、最も近い主語は、‘himself’に対して、‘Tom’であり、一方、‘herself’に対して、‘Mary’なので、ルール(8)の②もクリアし、めでたく、‘Tom’=‘himself’、そして、‘Mary’=‘herself’が、共に、正しく決定されます。

(7)に関しても、‘himself’は、同一文中に、‘Tom’があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じ、かつ、最も近い主語は、‘Tom’なので、ルール(8)、ルール(9)の①と②、全てを満たして、‘Tom’=‘himself’が、正しく決定されます。ついでに、他の例も、検証しましょう。

(10)a. Mary believes [ that Tom hates himself ]. (〇)
    (メアリーは [ トムが彼自身を嫌いだ ] と信じている。)
   b. Mary believes Tom to hate himeself. (〇) (訳同上)

(11)a. Mary believes [ that Tom hates herself ]. (×)
    (メアリーは [ トムが彼女を嫌いだ ] と信じている。)      
   b. Mary believes Tom to hate herself. (×) (訳同上)

(10a-b)は、共に、正しく、‘Tom’=‘himself’と解釈され、OKです。一方、(11a-b)は、共に、‘Mary’=‘herself’と解釈しようとしても、アウトです。 (ついでですが、(11a-b)は、‘Tom’=‘herself’ (トムという名前の女性) という解釈なら、OKになります。)

そこで、(10a-b)ですが、‘himself’は、同一文中に、相手となる名詞表現があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じています。ここまでで、ルール(8)と、ルール(9)の①を、クリアします。そして、最も近い主語は、‘Mary’ではなく、‘Tom’ ((10b)では、解釈上の主語) なので、ルール(9)の②もクリアして、‘Tom’=‘himself’が、正しく決定されますね。

しかし、一方で、(11a-b)ですが、もちろん、‘herself’は、同一文中に、相手となる名詞表現があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じていて、ルール(8)と、ルール(9)の①を、クリアしてはいます。しかし、最も近い主語は、‘Mary’ではなく、‘Tom’ ((11b)では、解釈上の主語) なので、無理に、‘Tom’=‘herself’の解釈でなら、OKにできるのですが、‘Mary’=‘herself’の解釈では、ルール(9)の②をクリアできず、アウトになります。

(12)Tom likes pictures of himself. (〇) (トムは、自分の写真を気に入っている。)
(13)Mary was surprised at Tom's respect for himself. (〇)
  (メアリーは、トムの自尊心には、驚いた。)

あと、(12)でも、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKです。そして、(13)でも、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKです。(13)の場合、所有格‘Tom's ~’「トムの ~」が、解釈上の主語として、はたらいているため、‘Mary’は、「最も近い主語」にはなれず、himself’のかわりに、‘herself’を置くことは、できません。では、以下、注意点です。

(14)Tom likes himself's pictures. (×) (訳同(12))

(15)Tom thinks [ that himself's pictures will be popular ]. (×)
   (トムは [ 自分の写真は人気が出ると ] 思っている。)

(16)Tom thinks [ that pictures of himself will be popular ]. (〇) (訳同上)

(14)と(15)は、アウトですが、これは、‘Tom’=‘himself’が成り立たない、というわけではなく、むしろ、再帰代名詞自体が、どんな場合でも、所有格のカタチになれないからで、(14)は、(12)のように、目的格を与えられる位置に、‘himself’を置けば、OKになりますし、一方、(15)の‘himself's pictures’も、同様に、(16)の、‘pictures of himself’なら 、OKになります。では、これまでの再帰代名詞に関する文法性を、‘each other’のルールと合併して、まとめてみます。

(17)再帰代名詞と、‘each other’は、独立して使うことができず、
   同一文中に、相手となるべき (イコール (=) 解釈となるような)
   名詞表現を必要とする。

(18)再帰代名詞と、‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じては
   ならない (再帰代名詞のみ、所有格も、不可)、②・最も近い主語
   (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、2つの条件を、
   同時に満たしていなければならない。

今回のポイントは、意外にも、再帰代名詞と、‘each other’は、その大部分において、ほとんど同じ文法性をもつ、ということです。再帰代名詞は、「~ 自身」という意味が付加されるだけで、あとは、通常の代名詞‘he’や‘she’などと、似たようなものだろう、という印象があるんですが、じつは、代名詞とは、決定的に違った点がある、ということです。

再帰代名詞は‘each other’のルールとあわせて、ここまでが基本的な理解、ということになります。とは言え、実用性という観点からは、今回のルール(17)と(18)で、十分に役立つレベルに達していると思われますので、再帰代名詞や‘each other’の表現の際には、ルール(17)と(18)を、意識して使ってみて下さい。

●関連: EG91EG92EG93EG94

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英語学習法(94)

2005年08月11日 | 動詞
EG93の続きです。以下、見ましょう。

(1)John believes Mary to be honest. (ジョンは、メアリーを正直者だと信じている。)

(1)のように、‘believe’「~ 信じている」、のような動詞が使われている場合、「目的語+‘to’不定詞」の間に、「主語・述語」の関係がある、ということを、EG93で述べました。こういったカタチは、よく目にするので、個々の動詞ごとに、「動詞+目的語+‘to’不定詞」 (‘to’不定詞は、目的語を、解釈上の主語として取る) のカタチで使えるかどうかを、チェックして覚えてしまうのが、手っ取り早いんですが、今回、その注意点です。

(2)John wants Mary to be honest. (ジョンは、メアリーに正直であって欲しいと思っている。)

(2)のような、「‘want’+A+‘to’不定詞 (A に ~ して欲しい)」も、同様に、「A (目的語)+‘to’不定詞」の間に、「主語・述語」の関係があるので、この点、(2)は、(1)の仲間として扱ってもよく、そして、そう考えているヒトも、多いと思います。ただし、以下のような違いもあります。

(3)John believes himself to be honest. (〇)
  (ジョンは、自分を正直者だと信じている。)

(4)John wants himeself to be honest. (×)
  (ジョンは、自分が正直者でありたいと思っている。)

(3)と(4)は、それぞれ、再帰代名詞‘himeself’を、目的語に置いてみたのですが、(3)はOKで、一方、(4)はアウトです。そして、そういった文法性の可否が、逆になるケースもあります。以下を見ましょう。

(5)John believes to be honest. (×) (ジョンは、正直者だと信じている。)
(6)John wants to be honest. (〇) (ジョンは、正直者でありたいと思っている。)

(3)から、‘himself’を消去した(5)は、アウトになりますが、一方、(4)から、‘himself’を消去した(6)は、OKになります。つまり、(1)~(6)を、トータルで考えて、‘believe’は、どんな場合でも、目的語なしに、直接、‘to’不定詞をしたがえることができない動詞で、一方、‘want’は、主語と目的語が、イコール (=) の解釈になるときのみ、目的語が、消去されなければならない動詞、ということになります。

(7)Mary is believed _ to be honest. (〇)
  (メアリーは、正直者だと信じられている。)

(8)Mary is wanted _ to be honest. (×)
  (メアリーは、正直者であって欲しいと思われている。)

今度は、受身文ですが、(1)と(2)の目的語‘Mary’を、それぞれ、主語位置に移動させてみました。そこで、能動文(1)から(7)への受身文は、OKで、一方、能動文(2)から(8)への受身文は、アウトです。

ここから、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」の目的語は、勝手に消えたりせず、受身文の主語にもなれるので、比較的、素直な特性をもっている、と言えますが、一方、「‘want’+目的語+‘to’不定詞」の目的語は、消去しなければならない場合もあるし、受身文の主語にもなれないので、変則的である、と言えます。さらに、以下を見ましょう。

(9)John believes strongly for Mary to be honest. (×) 
  (ジョンは、メアリーを正直者だと、強く信じている。)

(10)John wants very much for Mary to be honest. (〇) 
  (ジョンは、とても、メアリーに正直であって欲しがっている。)

(9)は、(1)に、副詞‘strongly’を割り込ませて、‘for’を‘Mary’の前に置いてみたのですが、これは当然、アウトです。しかし、一方、(10)では、(2)に、副詞句‘very much’を割り込ませて、‘for’を‘Mary’の前に置いてみたのですが、何と、OKになりました。つまり、何らかの語句が、‘want’と目的語の間に割り込むと、‘for’が出現する、ということなんです。これは、ちょっと、意外な結果ですね。さらに、以下を見ましょう。

(11)What John believes is for Mary to be honest. (×)
  (ジョンが信じているのは、メアリーが正直者である、ということだ。)

(12)What John wants is for Mary to be honest. (〇)
  (ジョンが望んでいるのは、メアリーが正直者である、ということだ。)

今度は、(11)と(12)、共に、主語に関係節‘what ~’を使ってみましたが、‘be’動詞の‘is ~’から、後半の表現を、どちらも、‘for Mary to be honest’「メアリーが正直者である」、としてみました。そして、ここでも、‘believe’を使った(11)は、アウトで、一方、‘want’を使った(12)は、OKになります。 (‘what’を使った関係節については、EG53、参照)

ここで、学校で習う英文法では、誰でも、「‘want’+目的語+‘to’不定詞」のカタチを習うので、(10)のように、いきなり‘for’が現れると、何かの間違いではないか、と思ってしまうわけですが、(12)を見ても、やはり、‘for’が現れて、OKになっています。

どうやら、「‘want’+目的語+‘to’不定詞」のカタチは、こういったカタチで、圧倒的によく使うので、教える際には、そういうものだと、暗記させるようになっている、ということらしいですね。だから、(10)や(12)のように、‘want’を使った構文で、‘for’が現れるのは、意外に感じられるんですが、実は、‘want’の構文は、後に続く目的語が、‘want’から切り離されると、‘for’が出現するんです。

と言うよりも、むしろ、考え方としては、「‘want’+‘for’+目的語+‘to’不定詞」のカタチが、もともとのカタチであって、ただし、条件として、‘want’と‘for’が、隣り合ったままの場合、消去しなければならない、ということになっているらしいんですね。ですので、‘want’と‘for’が、隣り合ったままではない、というのなら、そのまま、‘for’は生かされる、ということなんです。

そこで、こういった特徴を利用して、例えば、潜在的に‘for’を隠しもっている構文の場合、それが、(4)のような再帰代名詞や、(8)のような受身文を、アウトにする原因である、と考えることも可能ではないか、と思われます。つまり、本来的なカタチが、「動詞+目的語+‘to’不定詞」の構文のみ、その目的語が、再帰代名詞の場合、主語と、イコール (=) の関係で結ばれることに、特に障害とはならず、また、受身文の主語として移動することもできる、としてもよいかと思います。

今回のポイントは、「目的語+‘to’不定詞」のカタチを後にともなう、という共通点をもった、‘believe’と‘want’の違いを調べてみたのですが、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」は、別に、特別、変わった様子はありませんでした。しかし、一方、「‘want’+目的語+‘to’不定詞」は、潜在的に、‘for’を隠しもっていることが原因で、随分と変則的な振る舞い方をする、ということが、明らかになりました。

確かに、「‘want’+‘for’+目的語+‘to’不定詞」のカタチが、もとにある、と言ったところで、実際は、‘for’なしで、「‘want’+目的語+‘to’不定詞」のカタチで使うことが、圧倒的に多いわけですから、‘believe’も‘want’も、同じで、「目的語+‘to’不定詞」のカタチの構文で使われる、と言ってしまいたくなるのは、わかるんですが、「英語脳」的には、やはり、少ない労力で、豊かな表現力を身に付けたいところなので、本当は、何が中核になっているのかを知る、ということが、どうしても必須になってきます。

今回のような、「動詞+目的語+‘to’不定詞」のタイプは、まだ言うべきことがありますが、とりあえず、また、別の機会です。

■注1 : ‘want’は、単独で使われる場合、‘You are wanted on the phone.’「電話が来てるよ。」、や、‘Wanted’「おたずね者」という、一種の、「決まり文句」、でなら、受身文は、OKとされますが、いずれにせよ、「決まり文句」、であり、あまり、生産的な受身文ではありません。

■注2 :略式で使われる場合、特に、‘want’と‘for’が、隣り合っている場合でも、必ずしも、‘for’が消去されなければならない、ということはありません。ちなみに、今回の、「動詞+‘for’+目的語+‘to’不定詞」という、‘want’タイプの動詞は、‘like’「好む」、‘prefer’「より好む」、‘hate’「嫌う」、といった、「感情」に関わる動詞、という共通点があります。


●関連: EG53EG93

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英語学習法(93)

2005年08月09日 | 動詞
今回、英語の基本構文の1つです。以下、見ましょう。

(1)John believes Mary. (ジョンは、メアリーを信じている。)
(2)John believes Mary to be rich. (ジョンは、メアリーを金持ちだと信じている。)

(1)は、‘believe’「~ を信じている」、という動詞が、目的語‘Mary’「メアリー」を取っています。そこで、(1)を、もっと具体的に言いたい場合、つまり、メアリーに関して、どんなことを信じているのか、を表現しようとすることもできます。それが、(2)です。

(2)は、見た目、‘to’不定詞‘to be rich’「金持ちだ」を、‘Mary’の後に続けているだけですから、簡単ですね。ですので、「‘believe’+A+‘to’不定詞」のカタチで、「A を ~ だと信じている」と覚えてしまっても構いません。ところで、(2)は、類似表現として、以下のようなものがありますね。

(3)John believes [ that Mary is rich ]. (訳同(2))

(3)は、‘believe’の目的語として、‘that’節を置いたカタチです。解釈としては、(2)も(3)も、似たようなものですから、学校の英文法では、よく、(2)と(3)の書きかえを習ったりします。 (‘that’節が目的語であることについては、EG41、参照。)

ここで、(2)の‘Mary to be rich’の部分は、(3)の‘that Mary is rich’と、ほぼ同じ意味で対応しているのがわかります。ですので、(2)の、‘Mary to be rich’の部分は、「主語・述語」の関係が成立している、ということになります。しかし、学校の英文法で、よく習うように、文法的に考えるならば、(2)は、‘Mary’のみが、目的語であり、一方、(3)は、‘that Mary is rich’全体が、1つの目的語と考えられています。

(4)John believes her to be rich. (ジョンは、彼女を金持ちだと信じている。)

(4)は、(2)の‘Mary’を、代名詞に置きかえてみましたが、そのカタチは、「目的格」‘her’となって現れます。このことから、目的語となるのは、「‘believe’+A+‘to’不定詞」の、A の部分だけであり、‘to’不定詞の部分は、目的語の一部とは見なされません。

これは、(3)の‘that’節全体が、目的語と見なされるのとは、大きな違いです。ですので、(2)の‘to’不定詞の部分は、文法的に、かなり特殊なステイタスをもっているのではないか、と思われます。ちなみに、以下のような文との比較では、明らかに、その違いがわかります。

(5)John deceived Mary to be rich. (ジョンは、金持ちになるために、メアリーをだました。)

(2)も(5)も、カタチは、「動詞+目的語+‘to’不定詞」と、違いがありません。しかし、両者の大きな違いは、(2)では成立していた、「目的語+‘to’不定詞」の、「主語・述語」の関係が、(5)では成立せず、むしろ、‘to be rich’の主語として解釈されるのは、‘Mary’ではなく、‘John’の方である、ということです。

つまり、(2)の‘to’不定詞は、目的語 (の一部) とはならないからと言って、即座に、(5)の‘to’不定詞ような、いわゆる、「副詞的用法」の不定詞と同じである、とは言い切れない部分がある、ということですね。 (不定詞の副詞的用法については、EG42、参照) さらに、以下を見ましょう。

(6)John believes Mary to be rich and Tom does so、too. (〇) 
  (ジョンは、メアリーを金持ちだと信じているし、トムだって、そう信じている。)

(7)John deceived Mary to be rich and Tom did so、too. (〇)
  (ジョンは、金持ちになるために、メアリーをだまし、トムも、そうした。)

(6)と(7)は、どちらも、OKの文ですが、それぞれ、後半の文を、‘do so’「そうする」によって、代用させたものです。(6)では、‘does so’が、‘believes Mary to be rich’の置きかえとして、使われています。一方、(7)では、‘did so’が、‘deceived Mary to be rich’の置きかえとして、使われています。

(8)John believes Mary to be rich but Tom does so to be poor. (×) 
  (ジョンは、メアリーを金持ちだと信じているが、トムは、貧乏だと信じている。)

(9)John deceived Mary to be rich but Tom did so to be president. (〇)
  (ジョンは、金持ちになるために、メアリーをだましたが、トムは、社長になるためにそうした。)

今度は、(8)と(9)ですが、注目すべきコントラストが表れています。(8)はアウトで、一方、(9)がOKです。(8)では、‘does so’が、‘believes Mary’のみの置きかえとして使われています。一方、(9)では、‘did so’が、‘deceived Mary’のみの置きかえとして使われています。

ここで、思い出してほしいのは、‘do so’が、かなり明確に、「前提」の概念にしたがう、特殊な代用表現である、ということです。(6)と(8)から明らかなことは、‘do so’は、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」のカタチ全体を、スッポリと、カバーしていなくてはならない、ということですから、‘believe’は、「目的語+‘to’不定詞」を、セットとして前提にしていることになります。 (‘do so’のもつ、特殊な性質については、EG81、EG82、参照)

つまり、‘believe’のような動詞は、(1)のように、目的語のみを、前提としている用法もあるし、一方、(2)のように、「目的語+‘to’不定詞」を、前提としている用法もある、ということですね。そういったことを認めるならば、確かに、‘believe’の後に続く、「目的語+‘to’不定詞」のカタチは、意味としては、(3)の‘that’節と、ほぼ同じ意味をもっているわけですから、動詞の要求する意味的な補完材料として、必須のものと言えるでしょう。

今回のポイントは、動詞が意味的に要求する (前提とする) 表現が、「目的語+‘to’不定詞」のカタチとなって表れ、かつ、そのカタチが、そのまま、「主語・述語」の関係を保っている場合がある、ということです。目的語になれない、ということが、動詞が意味的に要求していない (前提としていない) ということを、意味するわけではなく、そういった問題は、それぞれ、別個の問題である、ということが、また明らかになったと思います。

初歩的な手段としては、とりあえず、こういったカタチを要求する動詞があるんだな、と思って、そのまま覚えてしまうのが、手っ取り早いし、実用的ではあるのですが、実は、この種のカタチをもつ構文は、何かと、物議をかもし出す側面があり、また、それが興味深い発見につながっていく、という意味で、じっくりと見ていく価値はあると思いますので、また、次回にでも、続きをやりたいと思います。

■注 :今回、扱かった、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」、のカタチは、学校で習う英文法では、基本文型、‘S+V+O+C’、として扱われます。このタイプの文型は、‘O’と‘C’の間に、「主語・述語」の関係、または、イコール (=) の関係がある、という特徴があります。この場合、カタチとして、‘to’不定詞も、‘C’の部分に、1パーツとして、流用される、と知っておけばよいだけです。こういった特徴から、考えてみても、‘to’不定詞の、3つの用法、つまり、名詞的用法、副詞的用法、形容詞的用法のうち、どれに該当するかは、あまり考えても、意味はありません。

●関連 :EG41EG42EG81EG82

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英語学習法(92)

2005年08月09日 | 代名詞
EG91の続きです。‘each other’「お互い」は、意外と難敵でしたね。以下、見ましょう。

(1)Tom and Mary love each other. (〇) (トムとメアリーは、お互いにホレてます。)

(2)Tom and John drive carefully、so Mary loves each other. (×)
  (トムとジョンは運転が抜かりないから、メアリーは、お互いにホレてます。)

まず、基本的な確認です。(1)は、OKです。‘Tom and Mary’=‘each other’の解釈が成り立ちます。しかし、一方、(2)は、アウトです。前半の文に、‘Tom and John’を置き、そして、後半の文に、‘each other’を置いても、‘Tom and John’=‘each other’が成り立たず、アウトになっていますが、これは、EG91で立てた、‘each other’に関するルールから、導き出されることです。再度、確認しましょう。

(3)‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じてはならない、
   ②・最も近い主語 (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、
   2つの条件を、同時に満たしていなければならない。

(2)に関しては、ルール(3)の②があるため、アウトになる、ということですね。(2)で、「最も近い主語」は、‘Tom and John’ではなく、‘Mary’「メアリー」ですから、ルール(3)の②によれば、‘Mary’=‘each other’となってしまい、正しく、‘Tom and John’=‘each other’と解釈されず、意味不明な解釈となって、アウトになります。

(4)Tom and John think [ that each other will be popular ]. (×)
  (トムとジョンは、[ お互いが人気者になるだろうと ] 思っている。)

(5)Tom and John think [ that pictures of each other will be popular ]. (〇)
  (トムとジョンは、[ お互いの写真が人気が出るだろうと ] 思っている。)

今度は、アウトである(4)と、OKである(5)の比較ですが、まず、(4)は、ルール(3)の①によって、アウトとなります。‘each other’が、助動詞‘will’の主語位置にあり、「主格」を与えられることになりますからね。しかし、一方、(5)では、助動詞‘will’の主語位置にあるのは、あくまで、‘pictures of each other’「お互いの写真」であり、‘each other’そのものではありません。

そこで、(5)の‘each other’の「格」は、何かと言うと、‘pictures of each other’の中で、前置詞‘of ~’から、「目的格」を与えられている、という見方が正しいので、ルール(3)の①は、クリアしていることになります。それから、「最も近い主語」を探すと、‘Tom and John’があり、ルール(3)の②によって、‘Tom and John’=‘each other’が、成立しますので、結果として、OKになるわけですね。

ここで、‘each other’に、「最も近い主語」は、‘pictures’ではないか、という反論もあるかと思いますが、あくまで、助動詞‘will’の主語は、‘of each other’も含めた‘pictures of each other’全体なので、「最も近い主語」の対象とはしないことになります。今度は、以下を見ましょう。

(6)Tom and John wrote a long letter to criticize each other. (〇)
  (トムとジョンは、お互いを批判し合うために、長い手紙を書いた。)

(6)の場合、OKですが、通常、‘to’不定詞は、主語が表面に表れていなくてもよい動詞表現です。しかし、いわゆる、「一般の人」、とでも解釈されない限りは、どこかに、その動詞の主語を求めなければなりません。そこで、(6)では、‘criticize ~’「~ を批判する」の解釈上の主語は、もちろん、‘Tom and John’であり、そこから、結果的に、「最も近い主語」は、‘Tom and John’となりますので、ルール(3)の②によって、‘Tom and John’=‘each other’が正しく決定されます。 (‘to’不定詞の主語が、「一般の人」と解釈される場合に関しては、EG77、参照。)

(7)Her parents decided to help each other. (〇)
  (彼女の両親は、お互い助け合うことに決めた。)

(8)Mary was glad about her parents' decision to help each other. (〇)
  (メアリーは、両親がお互いを助け合うように決めてくれて、嬉しかった。)

(7)では、やはり、‘to’不定詞の動詞‘help ~’「~ を助ける」が、解釈上、‘her parents’「彼女の両親」を主語として取っていて、結果的に、「最も近い主語」は、‘her parents’ですから、ルール(3)の②によって、‘her parents’=‘each other’と、正しく決定され、OKです。

そこから、発展的に、(8)のような文では、‘her parents' decision to help each other’「彼女の両親の、お互いを助け合うという決定」という、いわゆる、「‘decide’(動詞)→‘decision’(名詞)」の変形 (品詞転換) が起こっています。

この場合でも、所有格になった、‘her parents' ~’「彼女の両親の ~」が、そのまま、‘decision’に対して、「解釈上の主語」としてのステイタスを保っています。そこで、ルール(3)の②で補足されている、「解釈上の主語」は、こういったケースにも、対応していることに注意して下さい。ですので、「最も近い主語」は、‘Mary’ではなく、‘her parents'’が選ばれ、‘her parents’=‘each other’と正しく決定されます。 ((7)のような、「動詞 → 名詞」の変形 (品詞転換) については、EG52、参照)

(9)Tom and John think [ that it is natural [ that pictures of each other will
   be popular ] ]. (〇)
  (トムとジョンは [ [ お互いの写真が人気が出るのは ] 当然だと ] 思っている。)

ここで、ちょっと、ルール(3)の②に関して、注意すべき問題点がありますので、補足しておきたいと思います。(9)はOKですが、その解釈は、‘Tom and John’=‘each other’です。しかし、‘each other’に対して、「最も近い主語」は、何かと言うと、実は、‘Tom and John’ではなく、‘it’なんですね。ですので、ルール(3)は、誤って、‘it’=‘each other’を予測してしまいますので、(9)は、ルール(3)の②に対する反例になります。

しかし、この場合は、‘it’が、「それ」という代名詞の意味ではなく、特に意味内容をもっていない、「形式主語」と呼ばれる‘it’であることからして、無視できる対象として扱ってもよいかと思われます。と言いますのも、大体のケースにおいて、‘be natural’のような構文では、本来的な主語は、‘that’節 (この場合、‘that pictures of each other will be popular’) であり、そのように考えるならば、やはり、「最も近い主語」は、‘Tom and John’になるからです。 (形式主語に関しては、EG84、参照)

今回のポイントは、EG91で定義した、‘each other’に関するルールを、さらに、他の例を加えることで、その確からしさを検証してみたわけです。変則的な例も含めて見ましたが、かなり、幅広い例を説明できるルールなので、‘each other’に関する実用英語を習得する上で、大いに役立つことは、間違いありません。是非、お試し下さい。

●関連: EG52EG77EG84EG91

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英語学習法(91)

2005年08月07日 | 代名詞
ちょっと変わった小ネタですが、‘each other’です。以下、見ましょう。

(1)トムとジョンは、お互いに話しかけた。

(1)の日本語は、「お互いに」、という表現を含んでいますね。これを英語にすると、普通、‘each other’という表現が、当てはまります。では、早速、この‘each other’を使って、(1)を英語にしてみましょう。

(2)Tom and John talked each other. (×) (訳同(1))
(3)Tom and John talked to each other. (〇) (訳同(1))

ん?(2)はアウトですね。そのかわりに、(3)ならば、OKにできるということなんですが、どうやら、これは、‘talk’「話す」が、自動詞であることに、注意しなければならないようです。(2)では、‘talk’の直後に、‘each other’が続いて、アウトになっている一方で、(3)では、「自動詞+前置詞」である、‘talk to ~’の直後に、‘each other’が続いて、OKになっています。

ですので、‘each other’は、実は、名詞なんですね。そこで、日本語で覚える際は、「お互いに」、ではなく、「お互い」、と覚えた方が、間違いがないものと思われます。こういった間違いは、よくあることらしく、‘each other’を、あたかも、副詞のようなものとして、「~ に」まで含めて使っているヒトは、結構、多いですね。これは、基本的な注意点です。

(4)Tom and Susan love each other. (トムとスーザンは、お互い愛しあっている。)
(5)They hate each other. (彼らは、お互いを憎みあっている。)
(6)They speak ill of each other. (連中は、お互いを罵りあっている。)

ところで、(4)~(5)の例を見ても、わかる通り、「お互い」という意味から、思い浮かぶのは、‘Tom and Susan’「トムとスーザン」や、‘they’「彼ら、連中」といった、何らかの複数のものが、前もって存在していることを要求する表現だな、ということです。

ですので、‘each other’は、そういった複数のものが、予め存在していて、初めて使えるのではないか、と思われます。そうなると、‘each other’は、見ようによっては、「代名詞」のようなもの、とも言えるでしょうね。

(7)Each other cannot be seen in the fog. (×) (霧の中では、お互いが見えない。)

(8)Tom and John thought [ that each other could not be seen in the fog ]. (×)
  (トムとジョンは、[ 霧の中では、お互いが見えない ] と思った。)

(7)は、文中に、‘each other’が指すと思われる表現がなく、アウトであることからは、やはり、‘each other’は、何らかの複数のものが、前もって存在していることを要求する表現だとわかります。しかし、今度は、(8)を見る限り、‘each other’に対して、‘Tom and John’がありますから、例え複数のものが、前もって存在していても、アウトになる場合がある、ということです。これは、どういうことでしょうか。

(9)Tom and John will criticize each other. (〇)
  (トムとジョンは、互いを批判しあうだろうね。)

(10)Each other will be criticized by Tom and John. (×)
  (トムとジョンに、お互いが批判されるだろうね。)

(11)Tom and John will be criticized by each other. (〇)
  (トムとジョンは、お互いから批判されるだろうね。)

そこで、今度は、OKである、能動文(9)から、受身文(10)をつくってみましたが、アウトです。(9)では、‘each other’が、目的語だったのですが、一方、(10)では、主語になっていますね。そして、(11)では、受身文のまま、‘Tom and John’を主語にして、‘each other’を、後に追いやったのですが、 OKになりました。

というわけで、ここから、アウトである、(7)、(8)、(10)を、トータルで考えて言えそうなことは、どうやら、‘each other’は、「主語」自体になれない、ということではないでしょうか。((8)も(10)も、アウトですから、‘Tom and John’と、‘each other’の前後関係、つまり、順序の問題が原因である、とは言えません。)

(12)Susan wants him to help Mary.
  (スーザンは、彼にメアリーを助けて欲しいと思っている。)

ところで、(12)のような、「‘want’+A+‘to’不定詞」のような構文では、Aが、カタチの上では、目的格‘him’になっていますので、‘want’の「目的語」なんですが、それと同時に、一方では、解釈上、‘to’不定詞‘to help Mary’の「主語」でもあって、ちょっと、Aが、「カタチ」と「解釈」の関係のはざまで、中途半端なステイタスを与えられているという構文です。 (「彼がメアリーを助ける、ということを、スーザンは望んでいる」、と解釈すれば、わかりやすいと思います。)

(13)Tom and John want each other to help Mary. (〇)
  (トムとジョンは、お互いがメアリーを助けて欲しいと思っている。)

そこで、(13)のように、「‘want’+A+‘to’不定詞」の構文のAに、‘each other’を置いてみましたが、OKになります。これは、どうやら、‘each other’が、主語になれない、とは言っても、「‘want’+A+‘to’不定詞」のような構文においては、解釈上ではなく、目的語としての (カタチとしての) ステイタスの方が優先されて、OKになるようなんです。

(14)Susan wants each other to help Tom and John . (×)
  (スーザンは、お互いがトムとジョンを助けて欲しいと思っている。)

(15)Susan wants Tom and John to help each other . (〇)
  (スーザンは、トムとジョンがお互いを助けあって欲しい、と思っている。)

じゃ、‘each other’が、‘want’の目的語なら、(14)にあるように、‘to’不定詞内にある、‘Tom and John’が指せるのか、というと、これがダメで、アウトになってしまうんですね。これは、ちょっと厄介ですね。

そこで、(14)の ‘each other’と‘Tom and John’の関係を、正しく結び付けられる位置は、(15)にあるように、それぞれ、逆の位置にもっていく、つまり、‘Tom and John’を、‘want’の目的語 (つまり、‘help’にとって解釈上の主語) にして、一方、‘each other’を、‘to’不定詞内にもっていかなくてはなりません。

まあ、ややこしい話なんですが、つまり、‘each other’を正しく使うには、その相手となる表現‘Tom and John’との、相対的な位置関係も考慮しなければならない、ということなんですね。「‘want’+A+‘to’不定詞」のような構文では、‘want’以外に、もう1つ、‘to’不定詞という、動詞が含まれます。そして、動詞は、普通、主語を何らかの方法で求めます。

ですので、まず、‘each other’が、「主語」であってはならない、というよりも、むしろ、①・「主格」を与えられてはならない、という「格」の条件に修正する必要があります。加えて、②・相手となる (イコール (=) 解釈となる) ような名詞表現が、「目的語」ではなく、「最も近い主語」になっているか、という2点が、ポイントとなります。ここで言う、「最も近い主語」とは、カタチの上での主語も、解釈上の主語も、どちらも含んでいます。

(16)Tom and John want the people to help each other.
(17)a. トムとジョンは、その人々がお互いを助けあって欲しい、と思っている。 (〇)
   b. その人々に、トムとジョンは、お互いを助けて欲しいと思っている。 (×)

(16)の解釈としては、(17a)のように、‘each other’と‘the people’が結び付く (イコール (=) 解釈となる) ような場合、OKですが、一方、(17b)のように、‘each other’と‘Tom and John’が結び付く場合、アウトになります。ですので、②の、「最も近い主語」という定義が必要となります。

(18)Tom and John want to help each other. (〇)
  (トムとジョンは、お互いを助けあいたいと思っている。)

(18)はOKです。この文では、‘Tom and John’が、‘want’の主語であるのは、当然なんですが、同時に、解釈上は、‘help’の主語でもあるわけですから、 (16)のケースにおける、‘the people’のような、別解釈の主語ではないため、結果的に、最も近い主語は、やはり、‘Tom and John’であり、‘each other’とのイコール関係が成立します。

あと、①の、「主格」を与えられていない、という定義ですが、これに関しては、以下のようなケースに対応させる、という意味でも、有効です。

(19)Tom and John saw pictures of each other. (〇)
   (トムとジョンは、お互いの写真を見た。)

(20)Tom and John love each other's sisters. (〇)
   (トムとジョンは、お互いの妹を愛している。)

(19)は、OKです。そして、その‘each other’は、動詞から目的格を与えられているわけではありませんが、前置詞‘of ~’の目的語なので、やはり、「目的格」を与えられている、ということになり、「主格」ではありません。 ((3)と(6)も、あわせて確認して下さい。) 一方、(20)もOKですが、‘each other's sisters’の、‘each other's’は、もちろん、「所有格」なので、やはり、「主格」ではない、ということになります。では、以下に、‘each other’の要点をまとめてみます。

(21)‘each other’は、独立して使うことができず、同一文中に、
   相手となるべき (イコール (=) 解釈となるような) 名詞表現を
   必要とする。

(22)‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じてはならない、
   ②・最も近い主語 (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、
   2つの条件を、同時に満たしていなければならない。

以上、‘each other’の使用上の注意点を述べました。今回のポイントは、‘each other’の使用には、実は、文法上の位置制限がある、ということです。‘each other’の使用は、学校の英文法では、精々、代名詞だから注意しなさい、という程度のことしか教わらないため、割と軽視される傾向にあります。

しかし、実用英語においては、よく使われる表現だと思いますし、実際、なかなか上手く使いこなせていない、という印象が強い表現なのです。今回のやり方で、‘each other’の全てを言い尽くしたわけではありませんが、これで、初歩的な使用例としては、十分、実用的な領域に達していると思います。もう少し、詰めて考えなければならない問題もありますが、‘each other’に関する、トピックは、またの機会です。

■注1 :‘each other’は、「代名詞」である、とは言っても、本来の代名詞とは、違った振る舞い方をします。‘Tom and John saw each other.’「トムとジョンは、お互いを見た。」、の場合は、必ず、‘Tom and John’=‘each other’、の解釈でなければなりません。しかし、一方、‘Tom and John saw them.’「トムとジョンは、彼らをみた。」は、‘Tom and John’=‘them’、と解釈することは、不可能で、必ず、別の人を、指さなくてはなりません。また、本来の代名詞は、‘He loves Mary.’「彼は、メアリーが好きなんだよ。」、などが、OKですから、独立して使用することが可能で、同一文中に、イコール (=) 解釈となるような、相手となるべき名詞表現を必要とはしません。

■注2 :「主語」である、ということと、「主格」を与えられている、ということは、本来、別個の問題であり、常に同一視する、というわけにはいきません。その一例として、例えば、‘to’不定詞の「主語」が、「目的格」の姿をしていることについては、‘It is a waste of time for him to study English’「彼が英語の勉強なんて、時間のムダだよ。」、という文からも、明らかです。あわせて、EG43も、参照して下さい。


●関連: EG43

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英語学習法(90)

2005年08月07日 | 変形
一般には、「省略」として扱われている現象についてです。以下、見ましょう。

(1)It seems that Jack is a good teacher. (ジャックは良い教師のようだね。)
(2)Jack seems to be a good teacher. (訳同上)

(1)と(2)は、ほぼ同じ意味をもっていると思われます。加えて、(1)と(2)の関係は、(1)の‘that’節内の主語‘Jack’「ジャック」が、(2)では、‘seem’の主語位置に移動する、という、「変形」によって、結び付けられる表現であることも、確立されているものと思われます。 (EG62、参照)

(3)Jack seems a good teacher. (〇) (訳同(1))

ところで、(2)から、さらに、(3)のような文にすることもできます。見て、おわかりの通り、(2)から、‘to be’を消去しているわけですね。実は、英語には、特定の構文において、よく、‘to’不定詞が‘to be’の場合、その‘to be’を消去する、といったことがあるんです。しかし、日本語訳は、(1)~(3)まで、全て同じですから、ただ、カタチが変化しただけで、意味には、違いがない、ということになりますね。

じゃ、カタチばっかり変わっていて、意味に差がないなんて、英語はムダが多くて、エラく不経済なコトバだな、と感じるかも知れません。しかし、今回、英語は、こういったことに関しては、実際、そうでもなさそうだ、というお話をしてみたいと思います。まず、以下を見てみましょう。

(4)It seems that Jack is a teacher. (〇) (ジャックは教師のようだね。)

(5)Jack seems to be a teacher. (〇) (訳同上)

(6)Jack seems a teacher. (×) (訳同上)

(1)~(3)では、最後の表現に、‘a good teacher’を使っていたんですが、そこから、‘good’を消して、(4)~(6)では、‘a teacher’に変えてみました。すると、(4)と(5)は、OKのままなんですが、一方、何と、(6)がアウトになってしまいました。これは、どういうことなんでしょうか。

問題は、‘a good teacher’「良い教師」から、‘good’「良い」を消去したことで、発生したわけですから、もちろん、‘good’の有無に原因がある、と考えなければなりません。そこで、‘good’の有無には、どういった影響力が潜んでいるのか、ということですが、まず、以下の比較を見ましょう。

(7) a. very good teacher (〇) (とても良い教師)、
   b. pretty good teacher (〇) (かなり良い教師)、
   c. a little good teacher (〇) (ちょっと良い教師)

(8) a. very teacher (×) (とても教師)
   b. pretty teacher (×) (かなり教師)
   c. a little teacher (×) (ちょっと教師)、

(7a-b)の表現は、全てOKですが、一方、(8a-b)の表現は、対応する日本語に対しては、全てアウトです。 (違う意味でなら、OKになるものもあります。) ここから、明らかにわかるのは、「程度」の表現が適合するか、否か、です。‘good’は、どのくらい、「良い」といえるのか、‘very’「とても」や、‘a litttle’「ちょっと」、といった表現を付け足して、その「程度」を表すことが可能です。

しかし、一方で、‘teacher’「教師」という表現そのものは、「程度」を問題にすることが不可能で、「教師」でなければ、別の職種だな、となるだけのことなんですね。つまり、「教師」であるか否かは、誰が見ても一律に、「〇・×」式に、ハッキリと、判断が下せるわけです。つまり、‘teacher’は、「客観」表現と言ってもよいでしょう。

しかし、「程度」という概念は、誰が見ても、ハッキリとした明確な基準があり、線引きが可能な概念か、というと、そうでもありません。あるヒトからみれば、「とても良い」モノが、他人から見れば、何であんなモンが良いんか?となることは、よくあることですからね。つまり、‘good teacher’は、「主観」表現であると言えますね。

そこで、(3)と(6)に戻って、どうやら、(3)のような、‘seem’の直後に‘to be’がない文は、「主観」に依存する判断が好まれるようなのです。そこで、(6)がアウトである理由は、主観的な判断に依存しにくい文になっているためだ、と言えます。では、今度は、「客観」の側からの判断を考えてみます。

(9)It seemed that Jack was a good teacher、but it didn't seem
   that he was a good teacher. (×)
  (ジャックは良い教師に思われたが、そうではないようだった。)

そこで、今度は、(9)ですが、‘but’「しかし」を挟んで、前半と後半の文は、同じ、「‘it seems’+‘that’節」の構文を使っています。そして、(9)はアウトになっています。ここから、どういったことが言えるんでしょうか。その前に、以下の比較材料をみて下さい。

(10)It seemed that Jack was a good teacher、but he didn't seem
  (to be) a good teacher. (〇) (訳同(9))

(10)では、(9)の後半の文を、‘seem (to be) ~’の構文に変えて、OKになりました。つまり、(9)と(10)の可否から、「‘it seems’+‘that’節」の構文は、主観に強く依存する判断を好まない、と結論づけてよい、と言えます。

と言うのも、もし、「‘it seems’+‘that’節」の構文が、「主観・客観」の判断に対して、割と無頓着な構文であるなら、(9)は、前半の文と後半の文を、自由に、「主観的判断+‘but’+客観的判断」というようにしたり、逆に、「客観的判断+‘but’+主観的判断」というように、それぞれ、別々の解釈を与えれば、矛盾なく解釈できるはずだからです。

しかし、後半に主観的判断が好まれる、‘to be’消去タイプの‘seem a good teacher’を使った(10)の場合、OKになるわけですから、「‘it seems’+‘that’節」の構文は、客観的判断が好まれる、とするよりありません。

そして、さらに、‘seem to be ~’のタイプも、(10)では、OKであることからは、「‘it seems’+‘that’節」の構文と、矛盾を起こさない程度には、主観的である、と言えると思います。(もちろん、‘to be’消去タイプの方が、主観依存度が強いのは、(5)と(6)のコントラストから、明らかです。)

つまり、(10)の詳しい状況解釈は、ジャックの教師としての仕事ぶりに関して、何らかの調査が成されて、提出された調査結果を資料として見て、ジャックは良い教師である、と思っていたのに、実際、現場に出向いて、ジャックの仕事ぶりを見ていると、自分には、そうは思えない、という、「資料」という客観性の強い判断と、「自分の印象」という主観性の強い判断との間に、食い違いが起こっているような場面です。

今回のポイントは、(1)~(3)のような、関連性が高いと思われる構文には、「客観・主観」の段階性という、一連の流れがある、ということです。(1)は、客観性の強い判断であると思われるような場合に好まれ、一方、(3)は、主観性の強い判断であると思われるような場合に好まれます。

意味的には、どれも同じである、とは言っても、その「使用環境」に関しては、同じではない、ということなんですね。こういったことは、英語の様々な側面から見受けられることなので、また機会を改めて、いろいろと見ていきたいと思います。

●関連: EG62

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英語学習法(89)

2005年08月07日 | 変形
今回、変な英語をやっちゃう前に、その予防策です。以下、見ましょう。

(1)a picture of Mary (メアリーが写っている写真)

(1)のように、‘a picture of ~’「~ の写真」は、普通、「~ が写っている写真」、というような意味で、表現することができます。ですので、意外と単純で、あまり、ゴチャゴチャ考える必要がなくて、便利ですね。さらに、以下を見ましょう。

(2)John's picture of Mary (メアリーが写っているジョンの写真)

(2)では、所有格である、‘John's ~’「ジョンの ~」が、(1)の冠詞、‘a’に、置きかわっています。そして、その意味としては、「ジョンが持っているメアリーが写った写真」、とか、少し、余計に意味が付加されて、「ジョンが撮影したメアリーの写真」、というくらいの意味になります。

(3)Tom saw a picture of Mary. (トムは、メアリーが写っている写真を見た。)
(4)Tom saw John's picture of Mary. (トムは、メアリーが写っているジョンの写真を見た。)

そこで、(1)と(2)を使って、(3)と(4)のような、ごく普通の文にしてみたんですが、もちろん、全く問題なく、OKになります。ここまでは、大したことはありません。ところで、以下の日本語を、英語で表現すると、どうなるんでしょうか。

(5)トムは、誰が写っている写真を見たの?
(6)トムは、誰が写っているジョンの写真を見たの?

これは簡単。もう、おわかりでしょうが、まず、(3)を手掛かりにして、(5)を考えれば、よいわけですね。そして、同様に、(4)を手掛かりにして、(6)を考えれば、よいわけですね。どうやら、‘Mary’「メアリー」が、疑問詞‘who’になるような疑問文をつくってやれば、よいみたいです。では、最初に、(5)を、英語にしてみましょう。

(7)Who did Tom see a picture of _ ? (〇) (訳同(5))

(7)は、(3)の‘Mary’を、‘who’に変えて、文の先頭まで移動しました。こういった、疑問詞を使った疑問文は、英語では、日本語とは違って、その移動がルールとして決まっているので、それに従って、そのまま、(7)のように、文の先頭まで‘who’「誰」を移動しただけです。そして、それは、何も問題ありません。では、今度は、(6)を、英語にしてみましょう。 (疑問詞の移動に関しては、EG47、参照)

(8)Who did Tom see John's picture of _ ? (×) (訳同(6))

ん?アウト?何でデスカ?そうですね。やっぱり、(8)は、アウトなんだそうです。これは、かなり悪い英語なんだそうで、もう諦めるより仕方ありません。そこで、(7)との比較になるんですが、その違いは、‘picture’の前にある、‘a’か、‘John's’か、でしかないわけで、そこに原因を求めるしか、他に方法はありません。ところで、以下もあわせて、比較してみましょう。

(9)Tom saw the picture of Mary. (〇)
  (トムは、メアリーが写っているその写真を見た。)

(10)Who did Tom see the picture of _ ? (×)
  (トムは、誰が写っているその写真を見たの?)

OKである(9)から、(10)の疑問文をつくってみましたが、(10)は、ちょっと、おかしく感じるらしく、アウトです。そこで、(3)は、‘a picture ~’、(4)は、‘John's picture ~’となっていましたが、一方、(9)では、‘the picture ~’というように、定冠詞‘the’になっていますね。

そこで、(8)と(10)を比較してみて、両方とも、アウトになってはいますが、実は、(8)が、かなり悪い、と判断される一方で、(10)は、おかしく感じられる、といった程度の判断を受けるので、アウトである、とは言っても、同じ程度でアウトになる、とは言えません。ですので、(10)は、(8)ほどには、悪くはない、と言えそうです。そこで、さらに、以下の比較材料を、見てみましょう。

(11)Tom saw that picture of Mary. (〇)
  (トムは、メアリーが写っているあの写真を見た。)

(12)Who did Tom see that picture of _ ? (×)
  (トムは、誰が写っているあの写真を見たの?)

今度は、(11)ですが、‘that picture ~’「あの ~ 写真」としてみました。ここでも、やはり、‘Mary’を、‘who’に変えてから、文の先頭に移動させて、(12)のようにしてみました。そこで、(12)も、結果はアウトですが、その判断の中身としては、(8)よりは、マシだが、(10)よりは悪い、ということになるようです。では、以下に、(7)、(8)、(10)、(12)の文法性に関する要点を、まとめてみます。

(13)不定冠詞‘a’ > 定冠詞‘the’ > 指示代名詞‘that’ > 所有格‘John's’

(13)では、‘a’>‘the’>‘that’>‘John's’の順番に、単語を並べてありますが、最も左がOKで、そこから右に行くにしたがって、悪いと判断される度合いが、強くなっています。そこで、ハッキリ言えるだろうこととして、「定・不定」の度合いに、強弱がある、ということですね。

つまり、不定冠詞‘a’よりも、定冠詞‘the’の方が、名詞を特定する力が強いのは、もちろん、当たり前なんですが、一方で、その‘the’よりも、‘that’の方が、特定する力は強いのです。例えば、ただ、話の中に出てきた、「その写真」、よりも、具体的に、目で見て、指差しながら、「あの写真」、という場合の方が、特定している感じが強い、と言えますね。

そして、これが、‘John's’、ともなると、直接、そのまま、誰であるか (何であるか) を指していますから、「特定」感が、最も強い、ということになるわけですね。つまり、こういった「特定」感が、強ければ強い名詞ほど、その中からの要素の移動に対して、障壁となりやすい、というようなことが、英語にはあるんです。 (「特定」の詳細は、EG72、参照)

今回のポイントは、英語の疑問詞の移動と、「特定」の概念との関わり合いです。英語の疑問詞は、移動しなくてはならない、というルールがあるクセに、その一方で、それを妨げるような要因も、同時に内在しているという、何だか、ヘソ曲がりなところのあるコトバなんですが、学校では習わない、こういったことは、実用英語の世界では、重要と思われます。

英語の名詞は、不定冠詞‘a’が付いたり、定冠詞‘the’が付いたりして、よく、「不定」か「定」か、を問題にしやすい傾向がありますので、面倒ではありますが、多少は、こういったことにも、注意しておかなければならない場合があります。

特に、英語に特有の、「疑問詞の移動」は、意外にも、そういった、「特定」感の強さに影響を受ける、といった側面があることが、今回、明らかになりました。疑問詞を使った文を練習する際には、こういったことも考えながら、変な文にならないように、注意して下さいませ。

●関連: EG47EG72

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チョット気になる英語(か?)・2005年08月05日(金)

2005年08月04日 | その他

【チョット気になる英語(か?)(^^;】 2005年08月05日(金)
「アルミニウム」って、イギリス発音だそうで、‘aluminium’ですけど、アメリカでは、綴りも発音も違っていて、‘aluminum’「ァルーミナム」だそうです。

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