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英語脳をつくる!~日本人はいかに効率良く英語を学べるか~

英語学習に関する事いろいろです。日本人がいかにすれば実用英語を身に付けられるか、その最短距離を考察!

英語学習法(101)

2005年10月28日 | 代名詞
EG100の続きです。代名詞です。以下、見ましょう。

(1)Mary lost her glasses. (メアリーはメガネをなくした。)

(1)の文では、‘her glasses’に、‘her’「彼女の」が使われていますが、この‘her’は、誰のことを指しているのか、というと、普通は、‘Mary’「メアリー」だと思います。しかし、別に、メアリー以外の他の女性を指している場合もあります。例えば、メアリーがスーザンからメガネを借りた場合、その後で、(1)のような文が続けば、‘her’は、スーザンを指すと解釈するのが普通になりますね。

つまり、(1)の‘her’が誰を指すか、などといったことは、状況に応じて、どうとでも変わるものですから、代名詞が指すべき対象は、文法的に決定することは不可能である、ということになります。つまり、結局のところ、代名詞が何を指すかなんて、取り立てて、文法的に説明できることなんてないんだから、わざわざ、代名詞について語るなど、しなくてもいいんじゃないか、という話になるわけです。

これは、確かに、その通りなんですが、しかし、そこから、代名詞は文法による制限は全く受けない、とまで断定することはできない、と思われる現象があります。以下を見ましょう。

(2)John respects himself. (‘John’=‘himself’) (ジョンは自分を尊敬している。)
(3)John respects him. (‘John’≠‘him’) (ジョンは彼を尊敬している。)

(2)は、再帰代名詞‘himself’、一方、(3)は、代名詞‘him’を目的語にとっています。そして、直感的に、意味の違いとして、(2)では、‘John’=‘himself’の解釈がOKですが、しかし、一方、(3)では、‘John’=‘him’の解釈は、まず、ないのではないか、という判断になると思います。つまり、直感的に、(3)の‘him’は、‘John’以外の別の男性を指して言っているのだな、と思うわけですね。

そこで、(2)では、‘John’=‘himself’の解釈は、予め決定されているもので、他の男性を指していると解釈することは、(2)をいかなる文脈に置こうとも、不可能なわけですが、一方、(3)の場合、文脈によっては、‘John’=‘him’と解釈することは可能かどうか考えてみたいと思います。

(4)No one can work harder than John.
  (ジョンよりも、せっせと働ける者など誰もいない。)

(4)の後に、(3)が続くと考えてみます。そこで、誰よりも働き者であるジョンは、故に、自分で自分のことを尊敬している、ということを表現した文 (つまり、(3)における、‘John’=‘him’の解釈) として、正しいかというと、そういった解釈は不可能で、やはり、‘him’を、(2)のように、‘himself’に変えない限り、アウトの解釈になります。

しかし、(3)の‘John’と、(4)の‘John’が、ただ単に名前が同じであるだけの別人として解釈し、(4)の‘John’と、(3)の‘him’を、イコール (=) 関係で結びつければ、OKの解釈になります。つまり、ジョン (A) は一番の働き者だから、それを見たジョン (B) は、ジョン (A) のことを尊敬する、という解釈は可能、ということです。

ですので、(3)は、(4)のような、かなり、もっともらしい文脈を与えても、なお、‘John’=‘him’と解釈することは不可能であることがわかります。つまり、文脈に左右されることなく、文そのものから、‘John’≠‘him’(‘John’=‘him’ではない) が決定できるということになります。

そこで、ここから言えることとして、代名詞の場合、「指すべき対象」は、文法による制限は受けないけれど、しかし、一方、「指してはならない対象」は、文法による制限を受けるのではないか、と思われます。

(5)He respects John. (‘he’≠‘John’) (彼はジョンを尊敬している。)

(5)は、(3)の主語と目的語が入れかわっているだけですが、やはり、どのような文脈を想像してみても、‘he’=‘John’とは、解釈できません。つまり、もともと、「文法」的に、‘he’≠‘John’は決定されている、とみてもよさそうです。そこで、(2)、(3)、(5)から、ハッキリ言えることは、「主語+動詞+目的語」のカタチでは、目的語が再帰代名詞でない場合、「主語 = 目的語」の解釈は不可能になる、ということです。

(6) a. John and Tom respect themselves. (〇)
    (ジョンとトムは、自分たちを尊敬している。)

   b. Themselves respect John and Tom. (×)
    (自分自身、ジョンとトムを尊敬している。)


(7) a. John and Tom respect them. (〇) (ただし、‘John and Tom’≠‘them’) 
    (ジョンとトムは、彼らを尊敬している。)

   b. They respect John and Tom. (〇) (ただし、‘they’≠‘John and Tom’) 
    (彼らは、ジョンとトムを尊敬している。)

ここで、再帰代名詞、(6a-b)と、代名詞、(7a-b)を比較して、それらの性質をまとめてみます。まず、(6a-b) です。(6a)はOKですが、‘John and Tom’=‘themselves’の解釈でなければなりません。一方、(6b)は、‘themselves’=‘John and Tom’が成り立たない、と言うよりも、もともと、(6b)自体がアウトです。

これは、再帰代名詞は、それ自体、現れる位置に対して、文法上の制限がある上に、その相手となる表現に対しても、文法的な位置制限があるためです。この場合、‘themselves’が主語になっている (「主格」を与えられている) ことや、イコール (=) 関係になるべき相手、‘John and Tom’が、適切な場所に位置していない、といった複数の理由が原因となります。 (詳しくは、EG95、EG96、参照)

次に、(7a-b)です。まず、(7a)の文そのものは、文法的であり、OKとなります。しかし、‘John and Tom’=‘them’の解釈は不可能で、‘John and Tom’≠‘them’の解釈でなければなりません。そして、一方、(7b)も、それ自体は、OKです。しかし、やはり、‘they’=‘John and Tom’の解釈であってはならず、‘they’≠‘John and Tom’の解釈でなければなりません。

ですので、代名詞の場合、それ自体、文法的な位置制限もなければ、イコール (=) 関係になるべき相手を、同一文の中に求める条件もありませんので、その点、(6b)のように、文そのものがアウトになる、ということはありません。しかし、イコール (=) 関係になってはならない相手に関しては、文法上の条件がありますので、その解釈に関しては、制限が付いてしまう、という特徴があるのがわかります。

今回のポイントは、実は、代名詞も、「文法」による制限を受けるということです。EG100では、代名詞は、現れる位置や、「指すべき相手」に対して、文法による制限は受けない、と述べたので、その点、再帰代名詞とは違って、言うべきことなど何もない、という印象がありました。しかし、逆に、「指してはならない相手」、という違った観点から見ると、文法によって制限を受けている、というべき根拠がありました。

実は、こういった観点から代名詞を見ていくと、実に複雑で、かなりわかりにくい側面があるのですが、今後、少しずつ、その特徴を明らかにしていきたいと思います。

■注 :今回、「主語+動詞+目的語」のカタチでは、目的語が、再帰代名詞でない場合、「主語 = 目的語」の解釈は、不可能になる、と述べていますが、(1)の目的語、‘her glasses’の中で、所有格となっている代名詞‘her’の場合は、‘her’が、目的語そのものではなく、「目的語の一部」である点に注意して下さい。

●関連: EG95EG96EG100

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英語学習法(100)

2005年09月07日 | 代名詞
代名詞の基本的な性質についてです。以下、見ましょう。

(1)He fell down. (彼は倒れた。)
(2)She touched it. (彼女はそれに触った。)

(1)も(2)も、代名詞を含んだ文です。‘he’「彼」、‘she’「彼女」、‘it’「それ」は、何かを指しているということはご存知のとおりですが、具体的に、「彼」とは、「ジョン」なのか、「トム」なのか、「ジャック」なのか、(1)の文のみからは不明です。

同様に、「彼女」とは、「メアリー」なのか、「スーザン」なのか、「キャシー」なのか、そして、「それ」とは、「リンゴ」なのか、「机」なのか、「時計」なのか、といったことも、(2)の文からは不明です。

(3)John felt dizzy. (ジョンはめまいがした。)
(4)Mary found an apple. (メアリーはリンゴを見つけた。)

しかし、(3)に(1)が続くと、普通、‘he’は‘John’だな、と思うし、一方、(4)に(2)が続くと、‘she’は‘Mary’で、‘it’は‘apple’だな、と思うわけですね。つまり、代名詞は、それ自体では、何を指すのかが決定できず、他の情報を手がかりにして、指すものが決定されるという性質をもっていることがわかります。

(5)John kicked Tom because Mary hated him.
  (ジョンはトムを蹴っ飛ばしたが、それはメアリーが彼を嫌っていたからだ。)

今度は(5)ですが、普通は、‘Tom’=‘him’かな、と思えます。と言うのも、メアリーに気に入ってもらうために、彼女が嫌いなトムをジョンが蹴っ飛ばす、という状況はありがちなことですからね。しかし、場合によっては、‘John’=‘him’であってもかまいません。メアリーに嫌われたジョンが、腹いせにトムを蹴っ飛ばした、ということもあり得るからです。

そして、さらによく考えると、(5)の‘him’は‘John’も‘Tom’もどちらも指さない、ということもあり得ます。例えば、ジャックがメアリーに好かれているか嫌われているか、という賭けをジョンとトムがしたとして、ペナルティーは勝った方が負けた方を蹴っ飛ばす、ということが前提になっている場合、(5)の文では、‘him’は、ジャックのことを言っているわけですから、‘John’も‘Tom’もどちらも指さない、という解釈が成り立ちます。

ですので、代名詞というのは、結局のところ、何を指すのかを単純に文法的な観点からは、決定することが不可能だということがわかります。ただ、状況的に考えると、ジョンを指すだろう、となったり、トムを指す方が適切かな、となったりするだけのことなので、あくまでも、指さすべき対象は、文脈などといった、文法以外の要因に求めるしかありません。

(6)Tom saw himself in the mirror (〇) (トムは、鏡で自分を見た。)
(7)Tom saw herself in the mirror (×) (トムは、鏡で彼女自身を見た。)

ここで思い出して欲しいのは、再帰代名詞の性質です。再帰代名詞も代名詞の一種であることに変わりありませんが、(6)では、明らかに、‘Tom’=‘himself’です。そして、それ以外に解釈の余地は許されていません。つまり、(6)にどのような文脈を与えようとも、それとは関係なく、‘Tom’=‘himself’の解釈は、予め決定されています。 (EG95、EG96、参照)

さらに、(7)のように、(6)の‘himself’を‘herself’に置きかえた文はアウトになります。つまり、これは、‘herself’が女性を指す再帰代名詞であるにもかかわらず、‘Tom’という男性の主語がきているからで、これは、‘Tom’という名前の女性にでも解釈しない限り、OKにはできないものです。

ですので、これを言いかえれば、再帰代名詞は、イコール (=) 関係になれる相手を文法的に位置指定する性質をもっている、と言えます。これは、(1)~(5)で見てきたような代名詞の性質とは大きく異なるものです。以下の例も、代名詞と再帰代名詞との違いを示しています。

(8)She shouted. (〇) (彼女は叫んだ。)
(9)Herself shouted. (×) (彼女自身、叫んだ。)

代名詞は、指すものが、文脈などといった、文法以外の他の要因から決定できればよいので、(8)にあるように、文の中で独立して使用することが可能ですが、一方、再帰代名詞は、(9)にあるように、文の中で独立して使用することが不可能です。これは、同時に、(7)についても言えることで、つまり、独立して使用することが不可能だからこそ、‘Tom’という男性が主語であっては困る (女性の相手を主語に要求する)、ということになるわけですね。

(10)Mary thinks [ that she is beautiful ]. (〇) (メアリーは [ 自分が美人だと ] 思っている。)
(11)Mary thinks [ that herself is beautiful ]. (×) (訳同上)

さらに、もっと考えると、(10)の代名詞‘she’が‘Mary’とイコール (=) 関係になれるのとは違って、(11)の再帰代名詞‘herself’は、潜在的には、‘Mary’とイコール (=) 関係になる解釈であるはずなのに、実際はアウトであることから、そもそも、主語位置に生じてはならない、という位置制限まであることがわかります。

以上、見たように再帰代名詞は、現れる位置に対しても、イコール (=) 関係になるべき相手に対しても、「文法」によって制限される性質をもっていますが、一方、代名詞は、現れる位置的な制限もなければ、イコール (=) 関係になるべき相手に対しても、「文法」の制限は受けないことがわかります。

今回のポイントは、代名詞の基本的な性質です。特に、同じ代名詞として扱われている再帰代名詞との具体的な比較によって明らかになった違いは、代名詞の場合、指すべき相手は文法によって決定することができず、そして、使用環境を選ばずに文の中で独立して使用することが可能である、ということです。

こういった、代名詞と再帰代名詞、似たもの同士の実質的な相異点は、普段、あまり意識して考えることがないせいか、言われずとももわかっているつもりでいても、実は、どこがどう違うか、ハッキリとわかっていなかったりするものです。代名詞に関しては、また、別の視点から、その性質を考察する必要がありますが、またの機会です。

■注 :今回、再帰代名詞の生じる位置は、「主語」位置であってはならない、と述べていますが、本来、もう少し、詳しく定義すると、「主格」を与えられる位置に生じてはならない、ということになります。詳しくは、EG95を参照して下さい。

●関連: EG95EG96

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英語学習法(96)

2005年08月17日 | 代名詞
EG95の続きです。再帰代名詞のルールと、他の規則との連携性についてです。以下、見ましょう。

(1)Tom wants Mary to protect herself. (〇)
  (トムは、メアリーに自分の身は自分で守って欲しいと思っている。)

(2)Tom deceived Mary to protect himself. (〇)
  (トムは、自分の身を守るために、メアリーを騙した。)

(1)は、‘Mary’=‘herself’で、OKとなり、一方、(2)は、‘Tom’=‘himself’で、OKとなる文です。そこで、(1)と(2)のような、再帰代名詞の現れ方は、基本的には、以下のルールにしたがう、という特徴がありました。 (EG95、参照)

(3)再帰代名詞と、‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じては
   ならない (再帰代名詞のみ、所有格も、不可)、②・最も近い主語
   (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、2つの条件を、
   同時に満たしていなければならない。

そこで、(1)は、「‘want’+A (目的語)+‘to’不定詞 (A に ~ して欲しい)」の構文ですから、‘Mary’と、‘to’不定詞‘to protect herself’の間には、「主語・述語」の関係があります。そこで、‘protect’から、目的格を与えられた‘herself’は、最も近い主語として、‘Tom’ではなく、‘Mary’を選びますが、これは、ルール(3)の、①も、②もクリアしているので、‘Mary’=‘herself’は、正しい解釈だとわかります。 (「‘want’+A (目的語)+‘to’不定詞 (A に ~ して欲しい)」の構文に関しては、EG94、参照)

一方、(2)では、‘to’不定詞‘to protect himself’が、単純に、副詞的用法の‘to’不定詞なので、‘to protect himself’は、その主語として、‘Mary’ではなく、‘Tom’を選びます。そこで、‘protect’から、目的格を与えられた‘himself’は、最も近い主語として、‘Mary’ではなく、‘Tom’を選んでいるわけですが、これも、ルール(3)の、①と②を、両方ともクリアしているので、‘Tom’=‘himself’が、正しく決定されています。 (ここでの‘to’不定詞に関しては、EG42、EG93、参照)

(4)It seems to Mary [ that Tom respects himself ]. (〇)
  (メアリーには [ トムが自分で自分を尊敬している ] ように見える。)

(5)Tom seems to Mary _ to respect himself. (〇) (訳同上)

そこで、再帰代名詞と、移動による変形との関わりあいを見てみたいと思います。(4)では、‘that’節内で、‘Tom’=‘himself’がOKですが、一方、(5)でも、‘Tom’=‘himself’が、そのまま成り立っていて、OKです。(5)は、(4)をもとにした、「変形」と考えられていますので、(4)の解釈が、そのまま、(5)でも、成り立っているわけですね。 (‘seem’の構文については、EG62、参照)

(6)It seems to himself [ that Tom respects Mary ]. (×)
  ([ トムはメアリーを尊敬している ] と、彼自身、そう思える。)

(7)Tom seems to himself _ to respect Mary. (〇) (訳同上)

今度は、(6)から、(7)への変形となりますが、ここで注目すべきは、何と、(6)がアウトであるにも関わらず、(7)がOKになる、ということです。しかし、そのことが、(7)は、(6)からの変形ではない、ということを、意味するものではありません。

(8)It seems to John [ that Tom respects Mary ]. (〇)
  (ジョンには、[ トムはメアリーを尊敬している ] ように見える。)

(9)Tom seems to John _ to respect Mary. (〇) (訳同上)

(8)と(9)は、‘seem’の直後が、‘to himself’ではなく、‘to John’となっていますが、 (8)から(9)への変形は、何の問題もなく、OKになります。ですので、(6)と(7)の間にある問題点は、むしろ、‘to himself’ の解釈が、正しく成り立つか否かにある、と見るのが正しく、‘seem’の構文における「変形」そのものと、再帰代名詞の解釈に関する問題は、それぞれ別個に独立している、と考えられます。

これを、もう少し、詳しく言うと、‘seem’の構文では、例えば、(4)から(5)の変形のように、‘that’節内の文法性は、そのまま、その一部である主語が‘seem’の主語位置に移動した変形後にも、影響を与える要因となりますが、一方、‘that’節の外にある要素は、もともと、‘seem’の構文における移動の対象ではないため、‘that’節内の文法性とは、直接的には、無関係です。

つまり、この場合、‘that’節の外にあり、かつ、正しい相手をもつことができずにアウトになる(6)の‘himself’は、(6)から(7)への変形によって、(7)のカタチになることで、偶然にも、ルール(3)に適合したために、救い出され、OKとなったと見るべきなので、やはり、‘seem’の構文における変形は、そのまま、保持した方がよい、と言えるでしょう。以下の例からも、この考えは支持される、と思われます。

(10)It seems to Mary [ that Tom respects herself ]. (×)
  (メアリーには [ トムが彼女を尊敬している ] ように見える。)

(11)Tom seems to Mary _ to respect herself. (×) (訳同上)

(10)と(11)は、両方とも、アウトです。これは、やはり、(10)がアウトになる原因が、that’節の外ではなく、‘that’節の中にあるからで、‘Tom’=‘herself’の解釈は、(‘Tom’という名前の女性、というケース以外は) 不可能です。

ですので、(11)がアウトである原因は、やはり、(10)の‘that’節内の文法性が、そのまま、(11)にも、持ちこされて、‘Tom’=‘herself’の解釈が不可能だから、というのが自然です。 そして、さらに、(10)と(11)は、両方とも、‘to Mary’があるにも関わらず、‘Mary’=‘herself’の解釈が成り立たない、ということが、ルール(3)の正しさを、同時に支持しています。

今回のポイントは、再帰代名詞の解釈と、特定の構文における「変形」との関わりあいです。再帰代名詞の解釈に関するルールは、‘seem’の構文のように、特定の変形が、正しく成立していると、それを基盤とした、密接なリンクによって、見通しのよいやり方で、比較的、広範囲にわたる説明を可能にします。

今回、示されたやり方が意味するのは、一見、複雑そうに見えて、何となく感覚的なフィーリングで理解する、という、どこにでも、ありがちではあるけども、しかし、どこか危なっかしい英語学習法が、実は単純な規則性とその連携性の理解において、飛躍的にステップアップする (精度を増す) ことを可能にするという、効率性の良さです。

コトバの学習は、何かと例外事項も多く、その扱いが面倒な側面もあるのですが、例外的なことを、極力、最小限に押さえ込み、実用性の高い部分ほど、秩序だった説明が可能になるならば、このやり方に依存しない手はありません。

実は、もっと複雑な例になってくると、再帰代名詞や‘each other’は、まだまだ、言うべきことがあるのですが、それは、かなり上級レベルの手法になってきますので、今後の機会を見計らい、改めて、ということにします。

●関連: EG42EG62EG93EG95

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英語学習法(95)

2005年08月13日 | 代名詞
今回、再帰代名詞です。以下、見ましょう。

(1)Tom saw himself in the mirror (トムは、鏡で自分を見た。)
(2)Mary saw herself in the mirror (メアリーは、鏡で自分を見た。)

(1)の‘himeself’や、(2)の‘herself’のように、‘-self’のカタチをもったものを、一種の代名詞と見なして、「再帰代名詞」と呼んでいます。今回、その基本的な特徴を、見てみたいと思います。

(3)Himself went there. (×) (彼自身、そこへ行った。)
(4)He went there. (〇) (彼は、そこへ行った。)

いきなり、(3)はアウトですが、一方、(4)はOKです。(3)は、‘himself’が主語になっているんですが、一方、(4)は、‘he’が主語です。どちらも、同じ代名詞なのに、この差は何なんでしょうか。もうちょっと、他の例も、見てみましょう。

(5)Tom believes [ that himself is popular ]. (×)
  (トムは [ 自分が人気者だと ] 信じている。)
(6)Tom believes [ that he is popular ]. (〇) (訳同上)

(5)はアウトで、一方、(6)がOKです。この場合も、やはり、(5)と(6)の違いは、‘that’節内の、‘himself’と‘he’でしかありません。ここでのポイントは、(5)は、(3)とは違って、同じ文中に、‘himself’の潜在的な相手として、‘Tom’があるのに、それでも、やはりアウトになる、ということなんです。じゃ、以下は、どうでしょうか。

(7)Tom believes himself to be popular. (〇) (訳同(5))

(7)のように、「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」の構文でなら、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKにできる、ということなんですね。ここで、注意すべきは、(7)は、「目的語+‘to’不定詞」の間に、解釈上、「主語・述語」の関係が成立していて、意味的には、(5)と、ほぼ同じである、ということです。 (「‘believe’+目的語+‘to’不定詞」の構文については、EG93、EG94、参照)

ほぼ同じ意味でも、カタチが違えば、文法性に差が出る。つまり、再帰代名詞の可否の問題は、単純に、意味の問題、というわけにはいかず、構文的な (つまり、カタチ的な) 問題が潜んでいる、ということになります。そこで、もう、気づいているヒトもいるかと思いますが、EG91と、EG92で扱った、‘each other’「お互い」、に関するルールを思い出して下さい。

(8)‘each other’は、独立して使うことができず、同一文中に、
   相手となるべき (イコール (=) 解釈となるような) 名詞表現を
   必要とする。

(9)‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じてはならない、
   ②・最も近い主語 (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、
   2つの条件を、同時に満たしていなければならない。

ルール(8)と(9)にある、‘each other’を、それぞれ、「再帰代名詞」に置きかえて、考えてみましょう。まず、(3)は、同一文中に、‘himself’の相手となる、名詞表現がありません。そして、かつ、主格を与えられる位置に生じているので、ルール(8)、または、ルール(9)の①、どちらによってでも、正しくアウトにすることが可能です。

次に、(5)ですが、同一文中に、‘himself’の相手となるべき名詞表現‘Tom’をもっていますので、ルール(8)はクリアするものの、その一方で、‘himself’が、主格が与えられる位置に生じているので、ルール(9)の①が、クリアできず、やはり、正しくアウトになります。

今度は、OKになる(1)と(2)ですが、(1)の‘himself’は、同一文中に、‘Tom’があるし、一方、(2)の‘herself’も、同一文中に、‘Mary’があるので、共に、ルール(8)をクリアします。そして、‘himself’も、‘herself’も、共に、目的格を与えられる位置に生じていて、ルール(8)の①もクリアします。さらに、最も近い主語は、‘himself’に対して、‘Tom’であり、一方、‘herself’に対して、‘Mary’なので、ルール(8)の②もクリアし、めでたく、‘Tom’=‘himself’、そして、‘Mary’=‘herself’が、共に、正しく決定されます。

(7)に関しても、‘himself’は、同一文中に、‘Tom’があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じ、かつ、最も近い主語は、‘Tom’なので、ルール(8)、ルール(9)の①と②、全てを満たして、‘Tom’=‘himself’が、正しく決定されます。ついでに、他の例も、検証しましょう。

(10)a. Mary believes [ that Tom hates himself ]. (〇)
    (メアリーは [ トムが彼自身を嫌いだ ] と信じている。)
   b. Mary believes Tom to hate himeself. (〇) (訳同上)

(11)a. Mary believes [ that Tom hates herself ]. (×)
    (メアリーは [ トムが彼女を嫌いだ ] と信じている。)      
   b. Mary believes Tom to hate herself. (×) (訳同上)

(10a-b)は、共に、正しく、‘Tom’=‘himself’と解釈され、OKです。一方、(11a-b)は、共に、‘Mary’=‘herself’と解釈しようとしても、アウトです。 (ついでですが、(11a-b)は、‘Tom’=‘herself’ (トムという名前の女性) という解釈なら、OKになります。)

そこで、(10a-b)ですが、‘himself’は、同一文中に、相手となる名詞表現があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じています。ここまでで、ルール(8)と、ルール(9)の①を、クリアします。そして、最も近い主語は、‘Mary’ではなく、‘Tom’ ((10b)では、解釈上の主語) なので、ルール(9)の②もクリアして、‘Tom’=‘himself’が、正しく決定されますね。

しかし、一方で、(11a-b)ですが、もちろん、‘herself’は、同一文中に、相手となる名詞表現があり、かつ、目的格を与えられる位置に生じていて、ルール(8)と、ルール(9)の①を、クリアしてはいます。しかし、最も近い主語は、‘Mary’ではなく、‘Tom’ ((11b)では、解釈上の主語) なので、無理に、‘Tom’=‘herself’の解釈でなら、OKにできるのですが、‘Mary’=‘herself’の解釈では、ルール(9)の②をクリアできず、アウトになります。

(12)Tom likes pictures of himself. (〇) (トムは、自分の写真を気に入っている。)
(13)Mary was surprised at Tom's respect for himself. (〇)
  (メアリーは、トムの自尊心には、驚いた。)

あと、(12)でも、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKです。そして、(13)でも、‘Tom’=‘himself’の解釈が成り立ち、OKです。(13)の場合、所有格‘Tom's ~’「トムの ~」が、解釈上の主語として、はたらいているため、‘Mary’は、「最も近い主語」にはなれず、himself’のかわりに、‘herself’を置くことは、できません。では、以下、注意点です。

(14)Tom likes himself's pictures. (×) (訳同(12))

(15)Tom thinks [ that himself's pictures will be popular ]. (×)
   (トムは [ 自分の写真は人気が出ると ] 思っている。)

(16)Tom thinks [ that pictures of himself will be popular ]. (〇) (訳同上)

(14)と(15)は、アウトですが、これは、‘Tom’=‘himself’が成り立たない、というわけではなく、むしろ、再帰代名詞自体が、どんな場合でも、所有格のカタチになれないからで、(14)は、(12)のように、目的格を与えられる位置に、‘himself’を置けば、OKになりますし、一方、(15)の‘himself's pictures’も、同様に、(16)の、‘pictures of himself’なら 、OKになります。では、これまでの再帰代名詞に関する文法性を、‘each other’のルールと合併して、まとめてみます。

(17)再帰代名詞と、‘each other’は、独立して使うことができず、
   同一文中に、相手となるべき (イコール (=) 解釈となるような)
   名詞表現を必要とする。

(18)再帰代名詞と、‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じては
   ならない (再帰代名詞のみ、所有格も、不可)、②・最も近い主語
   (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、2つの条件を、
   同時に満たしていなければならない。

今回のポイントは、意外にも、再帰代名詞と、‘each other’は、その大部分において、ほとんど同じ文法性をもつ、ということです。再帰代名詞は、「~ 自身」という意味が付加されるだけで、あとは、通常の代名詞‘he’や‘she’などと、似たようなものだろう、という印象があるんですが、じつは、代名詞とは、決定的に違った点がある、ということです。

再帰代名詞は‘each other’のルールとあわせて、ここまでが基本的な理解、ということになります。とは言え、実用性という観点からは、今回のルール(17)と(18)で、十分に役立つレベルに達していると思われますので、再帰代名詞や‘each other’の表現の際には、ルール(17)と(18)を、意識して使ってみて下さい。

●関連: EG91EG92EG93EG94

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英語学習法(92)

2005年08月09日 | 代名詞
EG91の続きです。‘each other’「お互い」は、意外と難敵でしたね。以下、見ましょう。

(1)Tom and Mary love each other. (〇) (トムとメアリーは、お互いにホレてます。)

(2)Tom and John drive carefully、so Mary loves each other. (×)
  (トムとジョンは運転が抜かりないから、メアリーは、お互いにホレてます。)

まず、基本的な確認です。(1)は、OKです。‘Tom and Mary’=‘each other’の解釈が成り立ちます。しかし、一方、(2)は、アウトです。前半の文に、‘Tom and John’を置き、そして、後半の文に、‘each other’を置いても、‘Tom and John’=‘each other’が成り立たず、アウトになっていますが、これは、EG91で立てた、‘each other’に関するルールから、導き出されることです。再度、確認しましょう。

(3)‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じてはならない、
   ②・最も近い主語 (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、
   2つの条件を、同時に満たしていなければならない。

(2)に関しては、ルール(3)の②があるため、アウトになる、ということですね。(2)で、「最も近い主語」は、‘Tom and John’ではなく、‘Mary’「メアリー」ですから、ルール(3)の②によれば、‘Mary’=‘each other’となってしまい、正しく、‘Tom and John’=‘each other’と解釈されず、意味不明な解釈となって、アウトになります。

(4)Tom and John think [ that each other will be popular ]. (×)
  (トムとジョンは、[ お互いが人気者になるだろうと ] 思っている。)

(5)Tom and John think [ that pictures of each other will be popular ]. (〇)
  (トムとジョンは、[ お互いの写真が人気が出るだろうと ] 思っている。)

今度は、アウトである(4)と、OKである(5)の比較ですが、まず、(4)は、ルール(3)の①によって、アウトとなります。‘each other’が、助動詞‘will’の主語位置にあり、「主格」を与えられることになりますからね。しかし、一方、(5)では、助動詞‘will’の主語位置にあるのは、あくまで、‘pictures of each other’「お互いの写真」であり、‘each other’そのものではありません。

そこで、(5)の‘each other’の「格」は、何かと言うと、‘pictures of each other’の中で、前置詞‘of ~’から、「目的格」を与えられている、という見方が正しいので、ルール(3)の①は、クリアしていることになります。それから、「最も近い主語」を探すと、‘Tom and John’があり、ルール(3)の②によって、‘Tom and John’=‘each other’が、成立しますので、結果として、OKになるわけですね。

ここで、‘each other’に、「最も近い主語」は、‘pictures’ではないか、という反論もあるかと思いますが、あくまで、助動詞‘will’の主語は、‘of each other’も含めた‘pictures of each other’全体なので、「最も近い主語」の対象とはしないことになります。今度は、以下を見ましょう。

(6)Tom and John wrote a long letter to criticize each other. (〇)
  (トムとジョンは、お互いを批判し合うために、長い手紙を書いた。)

(6)の場合、OKですが、通常、‘to’不定詞は、主語が表面に表れていなくてもよい動詞表現です。しかし、いわゆる、「一般の人」、とでも解釈されない限りは、どこかに、その動詞の主語を求めなければなりません。そこで、(6)では、‘criticize ~’「~ を批判する」の解釈上の主語は、もちろん、‘Tom and John’であり、そこから、結果的に、「最も近い主語」は、‘Tom and John’となりますので、ルール(3)の②によって、‘Tom and John’=‘each other’が正しく決定されます。 (‘to’不定詞の主語が、「一般の人」と解釈される場合に関しては、EG77、参照。)

(7)Her parents decided to help each other. (〇)
  (彼女の両親は、お互い助け合うことに決めた。)

(8)Mary was glad about her parents' decision to help each other. (〇)
  (メアリーは、両親がお互いを助け合うように決めてくれて、嬉しかった。)

(7)では、やはり、‘to’不定詞の動詞‘help ~’「~ を助ける」が、解釈上、‘her parents’「彼女の両親」を主語として取っていて、結果的に、「最も近い主語」は、‘her parents’ですから、ルール(3)の②によって、‘her parents’=‘each other’と、正しく決定され、OKです。

そこから、発展的に、(8)のような文では、‘her parents' decision to help each other’「彼女の両親の、お互いを助け合うという決定」という、いわゆる、「‘decide’(動詞)→‘decision’(名詞)」の変形 (品詞転換) が起こっています。

この場合でも、所有格になった、‘her parents' ~’「彼女の両親の ~」が、そのまま、‘decision’に対して、「解釈上の主語」としてのステイタスを保っています。そこで、ルール(3)の②で補足されている、「解釈上の主語」は、こういったケースにも、対応していることに注意して下さい。ですので、「最も近い主語」は、‘Mary’ではなく、‘her parents'’が選ばれ、‘her parents’=‘each other’と正しく決定されます。 ((7)のような、「動詞 → 名詞」の変形 (品詞転換) については、EG52、参照)

(9)Tom and John think [ that it is natural [ that pictures of each other will
   be popular ] ]. (〇)
  (トムとジョンは [ [ お互いの写真が人気が出るのは ] 当然だと ] 思っている。)

ここで、ちょっと、ルール(3)の②に関して、注意すべき問題点がありますので、補足しておきたいと思います。(9)はOKですが、その解釈は、‘Tom and John’=‘each other’です。しかし、‘each other’に対して、「最も近い主語」は、何かと言うと、実は、‘Tom and John’ではなく、‘it’なんですね。ですので、ルール(3)は、誤って、‘it’=‘each other’を予測してしまいますので、(9)は、ルール(3)の②に対する反例になります。

しかし、この場合は、‘it’が、「それ」という代名詞の意味ではなく、特に意味内容をもっていない、「形式主語」と呼ばれる‘it’であることからして、無視できる対象として扱ってもよいかと思われます。と言いますのも、大体のケースにおいて、‘be natural’のような構文では、本来的な主語は、‘that’節 (この場合、‘that pictures of each other will be popular’) であり、そのように考えるならば、やはり、「最も近い主語」は、‘Tom and John’になるからです。 (形式主語に関しては、EG84、参照)

今回のポイントは、EG91で定義した、‘each other’に関するルールを、さらに、他の例を加えることで、その確からしさを検証してみたわけです。変則的な例も含めて見ましたが、かなり、幅広い例を説明できるルールなので、‘each other’に関する実用英語を習得する上で、大いに役立つことは、間違いありません。是非、お試し下さい。

●関連: EG52EG77EG84EG91

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英語学習法(91)

2005年08月07日 | 代名詞
ちょっと変わった小ネタですが、‘each other’です。以下、見ましょう。

(1)トムとジョンは、お互いに話しかけた。

(1)の日本語は、「お互いに」、という表現を含んでいますね。これを英語にすると、普通、‘each other’という表現が、当てはまります。では、早速、この‘each other’を使って、(1)を英語にしてみましょう。

(2)Tom and John talked each other. (×) (訳同(1))
(3)Tom and John talked to each other. (〇) (訳同(1))

ん?(2)はアウトですね。そのかわりに、(3)ならば、OKにできるということなんですが、どうやら、これは、‘talk’「話す」が、自動詞であることに、注意しなければならないようです。(2)では、‘talk’の直後に、‘each other’が続いて、アウトになっている一方で、(3)では、「自動詞+前置詞」である、‘talk to ~’の直後に、‘each other’が続いて、OKになっています。

ですので、‘each other’は、実は、名詞なんですね。そこで、日本語で覚える際は、「お互いに」、ではなく、「お互い」、と覚えた方が、間違いがないものと思われます。こういった間違いは、よくあることらしく、‘each other’を、あたかも、副詞のようなものとして、「~ に」まで含めて使っているヒトは、結構、多いですね。これは、基本的な注意点です。

(4)Tom and Susan love each other. (トムとスーザンは、お互い愛しあっている。)
(5)They hate each other. (彼らは、お互いを憎みあっている。)
(6)They speak ill of each other. (連中は、お互いを罵りあっている。)

ところで、(4)~(5)の例を見ても、わかる通り、「お互い」という意味から、思い浮かぶのは、‘Tom and Susan’「トムとスーザン」や、‘they’「彼ら、連中」といった、何らかの複数のものが、前もって存在していることを要求する表現だな、ということです。

ですので、‘each other’は、そういった複数のものが、予め存在していて、初めて使えるのではないか、と思われます。そうなると、‘each other’は、見ようによっては、「代名詞」のようなもの、とも言えるでしょうね。

(7)Each other cannot be seen in the fog. (×) (霧の中では、お互いが見えない。)

(8)Tom and John thought [ that each other could not be seen in the fog ]. (×)
  (トムとジョンは、[ 霧の中では、お互いが見えない ] と思った。)

(7)は、文中に、‘each other’が指すと思われる表現がなく、アウトであることからは、やはり、‘each other’は、何らかの複数のものが、前もって存在していることを要求する表現だとわかります。しかし、今度は、(8)を見る限り、‘each other’に対して、‘Tom and John’がありますから、例え複数のものが、前もって存在していても、アウトになる場合がある、ということです。これは、どういうことでしょうか。

(9)Tom and John will criticize each other. (〇)
  (トムとジョンは、互いを批判しあうだろうね。)

(10)Each other will be criticized by Tom and John. (×)
  (トムとジョンに、お互いが批判されるだろうね。)

(11)Tom and John will be criticized by each other. (〇)
  (トムとジョンは、お互いから批判されるだろうね。)

そこで、今度は、OKである、能動文(9)から、受身文(10)をつくってみましたが、アウトです。(9)では、‘each other’が、目的語だったのですが、一方、(10)では、主語になっていますね。そして、(11)では、受身文のまま、‘Tom and John’を主語にして、‘each other’を、後に追いやったのですが、 OKになりました。

というわけで、ここから、アウトである、(7)、(8)、(10)を、トータルで考えて言えそうなことは、どうやら、‘each other’は、「主語」自体になれない、ということではないでしょうか。((8)も(10)も、アウトですから、‘Tom and John’と、‘each other’の前後関係、つまり、順序の問題が原因である、とは言えません。)

(12)Susan wants him to help Mary.
  (スーザンは、彼にメアリーを助けて欲しいと思っている。)

ところで、(12)のような、「‘want’+A+‘to’不定詞」のような構文では、Aが、カタチの上では、目的格‘him’になっていますので、‘want’の「目的語」なんですが、それと同時に、一方では、解釈上、‘to’不定詞‘to help Mary’の「主語」でもあって、ちょっと、Aが、「カタチ」と「解釈」の関係のはざまで、中途半端なステイタスを与えられているという構文です。 (「彼がメアリーを助ける、ということを、スーザンは望んでいる」、と解釈すれば、わかりやすいと思います。)

(13)Tom and John want each other to help Mary. (〇)
  (トムとジョンは、お互いがメアリーを助けて欲しいと思っている。)

そこで、(13)のように、「‘want’+A+‘to’不定詞」の構文のAに、‘each other’を置いてみましたが、OKになります。これは、どうやら、‘each other’が、主語になれない、とは言っても、「‘want’+A+‘to’不定詞」のような構文においては、解釈上ではなく、目的語としての (カタチとしての) ステイタスの方が優先されて、OKになるようなんです。

(14)Susan wants each other to help Tom and John . (×)
  (スーザンは、お互いがトムとジョンを助けて欲しいと思っている。)

(15)Susan wants Tom and John to help each other . (〇)
  (スーザンは、トムとジョンがお互いを助けあって欲しい、と思っている。)

じゃ、‘each other’が、‘want’の目的語なら、(14)にあるように、‘to’不定詞内にある、‘Tom and John’が指せるのか、というと、これがダメで、アウトになってしまうんですね。これは、ちょっと厄介ですね。

そこで、(14)の ‘each other’と‘Tom and John’の関係を、正しく結び付けられる位置は、(15)にあるように、それぞれ、逆の位置にもっていく、つまり、‘Tom and John’を、‘want’の目的語 (つまり、‘help’にとって解釈上の主語) にして、一方、‘each other’を、‘to’不定詞内にもっていかなくてはなりません。

まあ、ややこしい話なんですが、つまり、‘each other’を正しく使うには、その相手となる表現‘Tom and John’との、相対的な位置関係も考慮しなければならない、ということなんですね。「‘want’+A+‘to’不定詞」のような構文では、‘want’以外に、もう1つ、‘to’不定詞という、動詞が含まれます。そして、動詞は、普通、主語を何らかの方法で求めます。

ですので、まず、‘each other’が、「主語」であってはならない、というよりも、むしろ、①・「主格」を与えられてはならない、という「格」の条件に修正する必要があります。加えて、②・相手となる (イコール (=) 解釈となる) ような名詞表現が、「目的語」ではなく、「最も近い主語」になっているか、という2点が、ポイントとなります。ここで言う、「最も近い主語」とは、カタチの上での主語も、解釈上の主語も、どちらも含んでいます。

(16)Tom and John want the people to help each other.
(17)a. トムとジョンは、その人々がお互いを助けあって欲しい、と思っている。 (〇)
   b. その人々に、トムとジョンは、お互いを助けて欲しいと思っている。 (×)

(16)の解釈としては、(17a)のように、‘each other’と‘the people’が結び付く (イコール (=) 解釈となる) ような場合、OKですが、一方、(17b)のように、‘each other’と‘Tom and John’が結び付く場合、アウトになります。ですので、②の、「最も近い主語」という定義が必要となります。

(18)Tom and John want to help each other. (〇)
  (トムとジョンは、お互いを助けあいたいと思っている。)

(18)はOKです。この文では、‘Tom and John’が、‘want’の主語であるのは、当然なんですが、同時に、解釈上は、‘help’の主語でもあるわけですから、 (16)のケースにおける、‘the people’のような、別解釈の主語ではないため、結果的に、最も近い主語は、やはり、‘Tom and John’であり、‘each other’とのイコール関係が成立します。

あと、①の、「主格」を与えられていない、という定義ですが、これに関しては、以下のようなケースに対応させる、という意味でも、有効です。

(19)Tom and John saw pictures of each other. (〇)
   (トムとジョンは、お互いの写真を見た。)

(20)Tom and John love each other's sisters. (〇)
   (トムとジョンは、お互いの妹を愛している。)

(19)は、OKです。そして、その‘each other’は、動詞から目的格を与えられているわけではありませんが、前置詞‘of ~’の目的語なので、やはり、「目的格」を与えられている、ということになり、「主格」ではありません。 ((3)と(6)も、あわせて確認して下さい。) 一方、(20)もOKですが、‘each other's sisters’の、‘each other's’は、もちろん、「所有格」なので、やはり、「主格」ではない、ということになります。では、以下に、‘each other’の要点をまとめてみます。

(21)‘each other’は、独立して使うことができず、同一文中に、
   相手となるべき (イコール (=) 解釈となるような) 名詞表現を
   必要とする。

(22)‘each other’は、①・主格を与えられる位置に生じてはならない、
   ②・最も近い主語 (解釈上の主語も含む) を相手に選ぶ、という、
   2つの条件を、同時に満たしていなければならない。

以上、‘each other’の使用上の注意点を述べました。今回のポイントは、‘each other’の使用には、実は、文法上の位置制限がある、ということです。‘each other’の使用は、学校の英文法では、精々、代名詞だから注意しなさい、という程度のことしか教わらないため、割と軽視される傾向にあります。

しかし、実用英語においては、よく使われる表現だと思いますし、実際、なかなか上手く使いこなせていない、という印象が強い表現なのです。今回のやり方で、‘each other’の全てを言い尽くしたわけではありませんが、これで、初歩的な使用例としては、十分、実用的な領域に達していると思います。もう少し、詰めて考えなければならない問題もありますが、‘each other’に関する、トピックは、またの機会です。

■注1 :‘each other’は、「代名詞」である、とは言っても、本来の代名詞とは、違った振る舞い方をします。‘Tom and John saw each other.’「トムとジョンは、お互いを見た。」、の場合は、必ず、‘Tom and John’=‘each other’、の解釈でなければなりません。しかし、一方、‘Tom and John saw them.’「トムとジョンは、彼らをみた。」は、‘Tom and John’=‘them’、と解釈することは、不可能で、必ず、別の人を、指さなくてはなりません。また、本来の代名詞は、‘He loves Mary.’「彼は、メアリーが好きなんだよ。」、などが、OKですから、独立して使用することが可能で、同一文中に、イコール (=) 解釈となるような、相手となるべき名詞表現を必要とはしません。

■注2 :「主語」である、ということと、「主格」を与えられている、ということは、本来、別個の問題であり、常に同一視する、というわけにはいきません。その一例として、例えば、‘to’不定詞の「主語」が、「目的格」の姿をしていることについては、‘It is a waste of time for him to study English’「彼が英語の勉強なんて、時間のムダだよ。」、という文からも、明らかです。あわせて、EG43も、参照して下さい。


●関連: EG43

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