英語によく見られる、移動の性質についてです。以下、見ましょう。
(1)It seems [ that Mary hates John ].
([ メアリーは、ジョンを嫌っている ] みたいだね。)
(2)Mary seems _ to hate John. (訳同上)
(1)の文は、いわゆる、‘seem’の構文ですが、‘that’節内の主語を、‘seem’の主語位置に移動させることができますね。この場合、(1)の‘Mary’が、‘that’節内の主語ですから、それを‘seem’の主語位置に移動させると、(2)のようになります。 (‘seem’の構文については、EG62、参照。)
(3)John seems [ (for) Mary to hate _ ]. (×) (訳同(1))
ところで、(3)にあるように、(1)の目的語‘John’は、‘seem’の主語位置には、直接的には移動が不可能です。しかし、‘John’の移動が、全く不可能かというと、そうでもなく、「‘that’節内の主語」が移動の対象となる、という条件さえ守られていれば、移動は可能となります。以下を見ましょう。
(4)It seems [ that John is hated _ by Mary ]. (〇)
([ ジョンは、メアリーに嫌われている ] みたいだね。)
まず、(4)では、(1)の‘that’節内の能動文を、受身文にしてみました。受身文というのは、もちろん、能動文の目的語を、主語位置に移動させる変形です。(4)では、‘that’節内で‘John’が、目的語の位置から、主語位置に移動しています。 (受身文については、EG35、参照。)
(5)John seems _ to be hated _ by Mary. (〇) (訳同上)
そこで、(1)が、(4)の状態になった時点で、‘John’が、that’節内の主語位置にあることが確定していますので、(5)のように、‘John’を、‘seem’の主語位置まで移動しても、OKになります。つまり、この場合、受身文にする、という移動変形が、たまたま、‘seem’の構文における移動を可能にする状態をつくりあげた、と言ってもよいでしょう。
(6)It seems [ that it is easy to deceive John ]. ([ ジョンを騙すのは簡単 ] そうだな。)
今度は、(6)の文です。‘seem’の構文の‘that’節内が、いわゆる、‘easy’構文になっています。この‘easy’構文を、‘seem’の構文とからめて使った場合は、ちょっと、ややこしいことが起こります。 (‘easy’構文については、EG23、参照。)
(7)It seems _ to be easy to deceive John . (〇) (訳同(6))
(7)はOKです。(6)と比較して、パッと見た感じ、‘it seems’の部分には、何ら変化がないように見えますが、一方、(6)では‘that’節だった部分が、(7)では、‘to’不定詞に変化しています。そこで、‘seem’の構文は、‘that’節内の主語が、‘seem’の主語位置に移動した場合、‘to’不定詞への変化がある、と考えるわけですから、(7)の‘it seems’の部分は、実は、‘it is easy ~’の‘it’が、移動によって、‘seem’の主語位置に移ったと考えるのが、妥当であることがわかります。 (移動前と後のニュアンスの違いについては、EG90、参照)
そこで、(6)のようなカタチは、‘seem’と、その主語である‘it’の組み合わせを、予め知っておくことが肝要ですが、一方、(7)のようなカタチでは、‘it’と‘seem’の組み合わせではなく、むしろ、‘it’と‘easy’の組み合わせがもとにあるのを、予め知っておくべきで、‘it seems to be ~’というカタチを、ガッチリ固めて、暗記構文のようにして覚えていても、正しい英語を使えるようになる保証には一切ならず、何ら、本質的な理解に到達できないことは、明らかです。
(8)It seems [ that John is easy to deceive _ ]. (訳同(6))
(9)John seems _ to be easy to deceive _. (〇) (訳同(6))
そこで、今度は、(8)ですが、(6)との違いは、もちろん、‘deceive’の目的語である‘John’が、‘is easy’の主語位置まで移動している、ということです。そしてさらに、(8)があると、今度は、(9)のように、‘John’を‘seem’の主語位置まで移動させることが可能となります。
(10)John seems [ that it is easy to deceive _ ]. (×) (訳同(6))
念のため、(10)のように、‘that’節内の目的語‘John’を、直接的に、‘seem’の主語位置に移動させてみましたが、やはりアウトになりました。そこで、今回の話の流れから、確実に言えそうなことは、ある構文における移動が、他の異なる構文においての移動を可能にする環境をつくりあげる、ということです。
これを言いかえると、ある移動が他の移動をうながすという、移動の「連鎖」とでも言うべき現象が英語にはあり、それは、ある一定の文法の法則にもとづいて保証されている、ということです。こういったことは、ある特定の構文における変形の特徴を知っておきさえすれば、あとは、ルールにしたがって各構文をつないでいくだけですから、でき上がった文が、正しい「連鎖」であるかどうかは、自分で判断することができます。
ですので、問題は、その各構文の変形の特徴を、予め知っておく、ということが、労力として支払うべき代償ではあるものの、組み合わせのやり方、つまり、比較的長い文をつくること自体は、それほど難しいことではない、ということなんです。
(11)It seems [ that everyone says [ that Mary hates John ] ]. (〇)
([ 皆は、[ メアリーはジョンを嫌っていると ] 言っている ] みたいだね。)
(12)It seems [ that everyone says [ that John is hated _ by Mary] ]. (〇)
([ 皆は、[ ジョンはメアリーに嫌われていると ] 言っている ] みたいだね。)
(13)It seems [ that John is said (by everyone) _ to be hated _ by Mary ]. (〇)
([ ジョンはメアリーに嫌われていると (皆から) 言われている ] みたいだね。)
(14)John seems _ to be said (by everyone) _ to be hated _ by Mary. (〇)
(訳同(13))
今度は、3回のステップで移動する例を見てみます。まず、(11)からスタートして、(12)では、最も小さな‘that’節内で、‘John’が、‘hate’の目的語から、主語位置に移動していますが、これは、単純な受身文ですね。次に、(12)から(13)ですが、やはり‘John’は、that節内の主語位置から、‘be said’の主語位置に移動が可能です。 (EG83、参照)
そして、もちろん、(13)から(14)では、‘seem’の構文における移動ですから、(13)で、‘seem’に続く‘that’節内の主語位置に‘John’があれば、‘John’は、‘seem’の主語位置に移動が可能なわけですね。このように、英語の移動には、順にステップを踏んで、最終的には、かなり遠くまで行くことができるという性質があります。
今回のポイントは、英語には、規則的な手順を踏まえて移動を繰り返すことで、1つの要素が、ある構文から他の構文へとまたがって、かなり遠くまで移動することができる、ということです。これを言いかえれば、どうしても正しい表現を身に付けるには、移動の出発地点から最終地点まで、どうやってたどり着いたのかをチェックできるだけの知識が必要、ということになります。
つまり、ある表現の上に、別の表現を、ただ単純に付けたすと考えるだけでは、豊かな表現力を身に付ける上では、片手落ちで、そのつながり方、つまり、「連鎖」も見ておかなければならないということです。
実は、英語では、大半の場合、こういったやり方で複雑な意味を表現する文がつくられているわけですから、「英語脳」的には、見たまんまそのとおり、文の丸暗記だけでやっつける方法では、かなりツライことがわかります。逆に今回のような法則性を見抜いてしまえば、複雑な意味をもった文を表現することは、案外やさしいことだな、とわかります。今回の話は、多様な表現力を身につける上では、かなり要に位置するものになりますが、まだ話すべきことはありますので、そのときまで。
■注 :(12)から(13)のような、‘say’の‘that’節内にある主語が、その外に移動する際に、‘that’節は、‘to’不定詞にならなければならないのですが、これは、‘seem’の構文と、共通した特徴であると言えます。この条件に関しては、EG83を参照して下さい。
●関連: EG23、EG35、EG62、EG83、EG90
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(1)It seems [ that Mary hates John ].
([ メアリーは、ジョンを嫌っている ] みたいだね。)
(2)Mary seems _ to hate John. (訳同上)
(1)の文は、いわゆる、‘seem’の構文ですが、‘that’節内の主語を、‘seem’の主語位置に移動させることができますね。この場合、(1)の‘Mary’が、‘that’節内の主語ですから、それを‘seem’の主語位置に移動させると、(2)のようになります。 (‘seem’の構文については、EG62、参照。)
(3)John seems [ (for) Mary to hate _ ]. (×) (訳同(1))
ところで、(3)にあるように、(1)の目的語‘John’は、‘seem’の主語位置には、直接的には移動が不可能です。しかし、‘John’の移動が、全く不可能かというと、そうでもなく、「‘that’節内の主語」が移動の対象となる、という条件さえ守られていれば、移動は可能となります。以下を見ましょう。
(4)It seems [ that John is hated _ by Mary ]. (〇)
([ ジョンは、メアリーに嫌われている ] みたいだね。)
まず、(4)では、(1)の‘that’節内の能動文を、受身文にしてみました。受身文というのは、もちろん、能動文の目的語を、主語位置に移動させる変形です。(4)では、‘that’節内で‘John’が、目的語の位置から、主語位置に移動しています。 (受身文については、EG35、参照。)
(5)John seems _ to be hated _ by Mary. (〇) (訳同上)
そこで、(1)が、(4)の状態になった時点で、‘John’が、that’節内の主語位置にあることが確定していますので、(5)のように、‘John’を、‘seem’の主語位置まで移動しても、OKになります。つまり、この場合、受身文にする、という移動変形が、たまたま、‘seem’の構文における移動を可能にする状態をつくりあげた、と言ってもよいでしょう。
(6)It seems [ that it is easy to deceive John ]. ([ ジョンを騙すのは簡単 ] そうだな。)
今度は、(6)の文です。‘seem’の構文の‘that’節内が、いわゆる、‘easy’構文になっています。この‘easy’構文を、‘seem’の構文とからめて使った場合は、ちょっと、ややこしいことが起こります。 (‘easy’構文については、EG23、参照。)
(7)It seems _ to be easy to deceive John . (〇) (訳同(6))
(7)はOKです。(6)と比較して、パッと見た感じ、‘it seems’の部分には、何ら変化がないように見えますが、一方、(6)では‘that’節だった部分が、(7)では、‘to’不定詞に変化しています。そこで、‘seem’の構文は、‘that’節内の主語が、‘seem’の主語位置に移動した場合、‘to’不定詞への変化がある、と考えるわけですから、(7)の‘it seems’の部分は、実は、‘it is easy ~’の‘it’が、移動によって、‘seem’の主語位置に移ったと考えるのが、妥当であることがわかります。 (移動前と後のニュアンスの違いについては、EG90、参照)
そこで、(6)のようなカタチは、‘seem’と、その主語である‘it’の組み合わせを、予め知っておくことが肝要ですが、一方、(7)のようなカタチでは、‘it’と‘seem’の組み合わせではなく、むしろ、‘it’と‘easy’の組み合わせがもとにあるのを、予め知っておくべきで、‘it seems to be ~’というカタチを、ガッチリ固めて、暗記構文のようにして覚えていても、正しい英語を使えるようになる保証には一切ならず、何ら、本質的な理解に到達できないことは、明らかです。
(8)It seems [ that John is easy to deceive _ ]. (訳同(6))
(9)John seems _ to be easy to deceive _. (〇) (訳同(6))
そこで、今度は、(8)ですが、(6)との違いは、もちろん、‘deceive’の目的語である‘John’が、‘is easy’の主語位置まで移動している、ということです。そしてさらに、(8)があると、今度は、(9)のように、‘John’を‘seem’の主語位置まで移動させることが可能となります。
(10)John seems [ that it is easy to deceive _ ]. (×) (訳同(6))
念のため、(10)のように、‘that’節内の目的語‘John’を、直接的に、‘seem’の主語位置に移動させてみましたが、やはりアウトになりました。そこで、今回の話の流れから、確実に言えそうなことは、ある構文における移動が、他の異なる構文においての移動を可能にする環境をつくりあげる、ということです。
これを言いかえると、ある移動が他の移動をうながすという、移動の「連鎖」とでも言うべき現象が英語にはあり、それは、ある一定の文法の法則にもとづいて保証されている、ということです。こういったことは、ある特定の構文における変形の特徴を知っておきさえすれば、あとは、ルールにしたがって各構文をつないでいくだけですから、でき上がった文が、正しい「連鎖」であるかどうかは、自分で判断することができます。
ですので、問題は、その各構文の変形の特徴を、予め知っておく、ということが、労力として支払うべき代償ではあるものの、組み合わせのやり方、つまり、比較的長い文をつくること自体は、それほど難しいことではない、ということなんです。
(11)It seems [ that everyone says [ that Mary hates John ] ]. (〇)
([ 皆は、[ メアリーはジョンを嫌っていると ] 言っている ] みたいだね。)
(12)It seems [ that everyone says [ that John is hated _ by Mary] ]. (〇)
([ 皆は、[ ジョンはメアリーに嫌われていると ] 言っている ] みたいだね。)
(13)It seems [ that John is said (by everyone) _ to be hated _ by Mary ]. (〇)
([ ジョンはメアリーに嫌われていると (皆から) 言われている ] みたいだね。)
(14)John seems _ to be said (by everyone) _ to be hated _ by Mary. (〇)
(訳同(13))
今度は、3回のステップで移動する例を見てみます。まず、(11)からスタートして、(12)では、最も小さな‘that’節内で、‘John’が、‘hate’の目的語から、主語位置に移動していますが、これは、単純な受身文ですね。次に、(12)から(13)ですが、やはり‘John’は、that節内の主語位置から、‘be said’の主語位置に移動が可能です。 (EG83、参照)
そして、もちろん、(13)から(14)では、‘seem’の構文における移動ですから、(13)で、‘seem’に続く‘that’節内の主語位置に‘John’があれば、‘John’は、‘seem’の主語位置に移動が可能なわけですね。このように、英語の移動には、順にステップを踏んで、最終的には、かなり遠くまで行くことができるという性質があります。
今回のポイントは、英語には、規則的な手順を踏まえて移動を繰り返すことで、1つの要素が、ある構文から他の構文へとまたがって、かなり遠くまで移動することができる、ということです。これを言いかえれば、どうしても正しい表現を身に付けるには、移動の出発地点から最終地点まで、どうやってたどり着いたのかをチェックできるだけの知識が必要、ということになります。
つまり、ある表現の上に、別の表現を、ただ単純に付けたすと考えるだけでは、豊かな表現力を身に付ける上では、片手落ちで、そのつながり方、つまり、「連鎖」も見ておかなければならないということです。
実は、英語では、大半の場合、こういったやり方で複雑な意味を表現する文がつくられているわけですから、「英語脳」的には、見たまんまそのとおり、文の丸暗記だけでやっつける方法では、かなりツライことがわかります。逆に今回のような法則性を見抜いてしまえば、複雑な意味をもった文を表現することは、案外やさしいことだな、とわかります。今回の話は、多様な表現力を身につける上では、かなり要に位置するものになりますが、まだ話すべきことはありますので、そのときまで。
■注 :(12)から(13)のような、‘say’の‘that’節内にある主語が、その外に移動する際に、‘that’節は、‘to’不定詞にならなければならないのですが、これは、‘seem’の構文と、共通した特徴であると言えます。この条件に関しては、EG83を参照して下さい。
●関連: EG23、EG35、EG62、EG83、EG90
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