関係代名詞です。EG24、EG26の続きです。前置詞と関係代名詞の組み合わせについてです。以下、見ましょう。
(1)John talked to a person. (ジョンはある人物に話しかけた。)
(1)の文の成り立ちは、「主語 (John)+自動詞 (talked)+前置詞 (to)+目的語 (a person)」ですね。この文をベースにして、関係節をつくりたいと思います。関係代名詞による関係節をつくる際の必須条件、「空家の条件」は、もう大丈夫でしょうか。
(2) a. a person [ who John talked to _ ]. (〇)
b. a person [ who John talked _ ]. (×)
(3) a. [ ジョンが _ に話しかけた ] 人物 (×)
b. [ ジョンが _ 話しかけた ] 人物 (〇)
(2a)では、‘to ~’「~ に」の後には、ポッカリと穴が空いていますね。これは、(1)の目的語である、‘a person’が、関係代名詞‘who’に変化して、カギカッコ内の先頭、つまり、関係節の先頭に移動することでつくられた空家ですね。これで、関係節が完成して、カギカッコの外にある、もう1つの‘a person’にかかることができるわけです。しかし、一方で、うっかり、前置詞‘to ~’を消してしまった(2b)は、アウトになっています。
そこで、(2a-b)の英語に対応している、日本語の関係節(3a-b)は、どうかというと、前置詞‘to ~’に、直接対応している表現、「~ に」の有無に関しては、全く逆の文法性を示しています。カギカッコ (関係節) 内に、「~ に」が残っている、(3a)はアウトですが、カギカッコ (関係節) 内に、「~ に」が残っていない、(3b)はOKです。
もちろん、日本語を母語としている人たちからすれば、(3a)がアウトであることは、ゴチャゴチャと考えるまでもなく、当たり前にわかることなんですが、(2a-b)と(3a-b)のような、英語と日本語の比較、という観点からは、なかなか、興味深い一般化につながる観察となります。
(4)英語の前置詞(to、at、of、etc.)は、例え、単独であっても残存することが
可能である。
(5)日本語の助詞(に、で、の、etc.)は、常に直前(左側)に名詞(類)をともなう
義務があり、それを無視して、単独で用いると、例外なく、アウトになる。
というわけで、日本語話者にとって、(2b)のような間違いが、よく見られるのは、(4)と(5)が対照的であることからすれば、当然のことと言えます。(5)に基づいた文法を、生まれつき習得している話者からすれば、新たに、(4)に基づいた文法をマスターするのは、容易なことではない、と言えるでしょう。
他に、(4)の特性が、顕著に表れている英語の例としては、受身文や、疑問詞を使った疑問文、それと、‘easy’など特定の述語がともなう不定詞の構文、といったものがあります。 (‘easy’構文は、EG23、受身文は、EG35、疑問詞の移動は、EG47、参照。)
(6) a. John talked to Mary. (ジョンはメアリーに話しかけた。)
b. Mary was talked to _ (by John). ((ジョンに)メアリーは話しかけられた。)
(7) a. Lucy is looking for something. (ルーシーは何か探してるね。)
b. What is Lucy looking for _ ? (ルーシーは何を探してるんだろね。)
(8) a. It is easy (for us) to talk about cars. (クルマの話題なんて(オレらにゃ)簡単よ。)
b. Cars are easy (for us) to talk about _ . (訳同上)
ところで、‘who’には、‘whom’という、目的格のカタチが存在します。この‘whom’は、それほど頻繁に、目にすることはなく、どちらかと言えば、話しコトバ向けの表現ではありません。しかし、文法のルール上、どうしても、この‘whom’を使わなければならないときがあります。それは、「前置詞の直後にある目的語となる場合」で、例えば、‘to whom’、‘with whom’、‘by whom’、等のときです。
そこで、(2a)の関係節を用いた表現では、前置詞が、カギカッコの末尾に位置していますが、(2a)の、もう1つのオプションとして、‘to whom’を用いた関係節もOKです。
(9)a person [ to whom John talked _ ]. (訳同(3b))
(9)を(2a)と比較してみて、気が付くのは、(2a)では、カギカッコ(関係節)内の末尾に位置していた‘to ~’が、(9)では、カギカッコ内の先頭に位置している、ということです。そのかわりに、‘who’が‘whom’に変わっています。これは、前置詞‘to ~’が、カギカッコの先頭に移動してきたことによって、結果的に、‘to ~’が、‘who’の直前に位置する、つまり、‘who’が前置詞の直後にある目的語になったためです。文法のルール上、前置詞‘to ~’が、直後に‘who’を目的語として取り、‘to who’になることは、不可能ですから、仕方なく、‘to whom’になったというわけです。
(9)のような表現は、比較的フォーマルな感じのする表現ですが、だからと言って、会話英語で使われることはない、ということはありません。コトバ使いの丁寧な話者になるほど、よく、(9)のような表現を使う傾向がありますので、こちら側でも、積極的に使うことをお薦めします。なかなか品の良い、好印象を与える表現なので、お得感が強いです。
ただ、初心者の方が、(9)のような表現を使うのは、ちょっと、難しいかも知れませんね。と言うのも、ただでさえ、(2b)のような、間違いをやってしまう傾向がありますし、それがクリアできたとしても、普通は、‘talk to ~’「~ に話しかける」のような表現は、最初のうちは、どうしても、セット表現として、そのまま覚えている傾向があります。
そこにきて、やっと覚えたセット表現なのに、今度は、‘talk’と‘to ~’を切り離して、それぞれを、関係節の右端と左端に引き離して、遠距離に置くようなカタチになりますからね。これは、かなりシンドイかも知れません。
ここは、ひとつ練習になりますが、しかし、こういった練習は、他の文法的な側面を考慮しても、使いこなす上で、良い影響を与えるので、表現力の向上に一役かいます。決して、損にならないことは、保証できます。
(10)John talked <frankly> to Mary. (ジョンは<率直に>メアリーに話しかけた。)
(11)To nobody did John talk. (ジョンは決して誰にも話しかけなかった。)
(12)John talked、shouted、and whisperd to Mary.
(ジョンはメアリーに、(普通に) 話しかけることもあったし、
怒鳴ることもあったし、また、小声で話しかけることもあった。)
(10)~(12)の例は、全て、‘talk to ~’「~ に話しかける」において、‘talk’と‘to ~’が切り離された文です。(10)では、副詞<frankly>の割り込み、(11)では、否定語‘nobody’を含む、‘to nobody’の前倒し(倒置)、(12)では、‘talked’「話した」、‘shouted’「怒鳴った」、‘whisperd’「ささやいた」の全てに、本来、それぞれ付くはずの、‘to Mary’が、一括されて文の末尾に置かれています。
ここまで見てきて、英語の前置詞は、前のものにくっついてみたり、後のものにくっついてみたりと、とても浮遊感のある表現であることがわかったと思いますが、何としてでも、早いうちに、このパターンに慣れましょう。いくつか例をあげます。
(13)a. the chair [ which Tom is sitting on _ ] ([ トムが _ 座っている ] イス)
b. the chair [ on which Tom is sitting _ ] (訳同上)
(14)a. the park [ which John walked to _ ] ([ ジョンが _ 歩いていった ] 公園)
b. the park [ to which John walked _ ] (訳同上)
(15)a. the errand boy [ who we cannot do without _ ]
([ _ なしでは済ませられない ] パシリ君)
b. the errand boy [ without whom we cannot do _ ] (訳同上)
ここで、ちょっと発展的なことですが、こういったパターンの関係節には、ちょっとした落とし穴的なルールがあるのを、覚えておいてください。例えば、関係代名詞が‘that’である場合です。
(16)a. the chair [ that Tom is sitting on _ ] (〇) ([ トムが _ 座っている ] イス)
b. the chair [ on that Tom is sitting _ ] (×) (訳同上)
(16a-b)は、(13a-b)の‘which’を、ただ‘that’に置き換えただけなんですが、(16b)がアウトになっています。これは、「前置詞+関係代名詞」の語順になるパターンに限り、‘that’は使えない、というルールがあるためです。もちろん、これは、「前置詞+関係代名詞」の語順になる場合に限られるので、そうではない、(16a)はOKになります。
今回のポイントは、前置詞の浮遊グセです。この浮遊グセは、日本語話者にとっては、とてもやっかいであることが、(4)と(5)の対照的な一般化から明らかになりました。しかし、英語の様々な例を見る限り、英文法の中核的要因と見なさざるを得ないため、別に、マスターできなくとも、さして問題にはならない、などとは、とても申せません。
特に、前置詞と関係代名詞の関係は、ちょっとした、バリエーションがあるために、少しやっかいではありますが、残念ながら、実用英語においては、出くわす可能性が、とても高い部類の表現になりますので、避けては通れない項目ということになります。しかし、支払う代償に、必ずや見合うだけの価値ある、「必須の技」であることも事実ですので、是非練習して下さい。
●関連: EG23、EG24、EG26、EG35、EG47
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(1)John talked to a person. (ジョンはある人物に話しかけた。)
(1)の文の成り立ちは、「主語 (John)+自動詞 (talked)+前置詞 (to)+目的語 (a person)」ですね。この文をベースにして、関係節をつくりたいと思います。関係代名詞による関係節をつくる際の必須条件、「空家の条件」は、もう大丈夫でしょうか。
(2) a. a person [ who John talked to _ ]. (〇)
b. a person [ who John talked _ ]. (×)
(3) a. [ ジョンが _ に話しかけた ] 人物 (×)
b. [ ジョンが _ 話しかけた ] 人物 (〇)
(2a)では、‘to ~’「~ に」の後には、ポッカリと穴が空いていますね。これは、(1)の目的語である、‘a person’が、関係代名詞‘who’に変化して、カギカッコ内の先頭、つまり、関係節の先頭に移動することでつくられた空家ですね。これで、関係節が完成して、カギカッコの外にある、もう1つの‘a person’にかかることができるわけです。しかし、一方で、うっかり、前置詞‘to ~’を消してしまった(2b)は、アウトになっています。
そこで、(2a-b)の英語に対応している、日本語の関係節(3a-b)は、どうかというと、前置詞‘to ~’に、直接対応している表現、「~ に」の有無に関しては、全く逆の文法性を示しています。カギカッコ (関係節) 内に、「~ に」が残っている、(3a)はアウトですが、カギカッコ (関係節) 内に、「~ に」が残っていない、(3b)はOKです。
もちろん、日本語を母語としている人たちからすれば、(3a)がアウトであることは、ゴチャゴチャと考えるまでもなく、当たり前にわかることなんですが、(2a-b)と(3a-b)のような、英語と日本語の比較、という観点からは、なかなか、興味深い一般化につながる観察となります。
(4)英語の前置詞(to、at、of、etc.)は、例え、単独であっても残存することが
可能である。
(5)日本語の助詞(に、で、の、etc.)は、常に直前(左側)に名詞(類)をともなう
義務があり、それを無視して、単独で用いると、例外なく、アウトになる。
というわけで、日本語話者にとって、(2b)のような間違いが、よく見られるのは、(4)と(5)が対照的であることからすれば、当然のことと言えます。(5)に基づいた文法を、生まれつき習得している話者からすれば、新たに、(4)に基づいた文法をマスターするのは、容易なことではない、と言えるでしょう。
他に、(4)の特性が、顕著に表れている英語の例としては、受身文や、疑問詞を使った疑問文、それと、‘easy’など特定の述語がともなう不定詞の構文、といったものがあります。 (‘easy’構文は、EG23、受身文は、EG35、疑問詞の移動は、EG47、参照。)
(6) a. John talked to Mary. (ジョンはメアリーに話しかけた。)
b. Mary was talked to _ (by John). ((ジョンに)メアリーは話しかけられた。)
(7) a. Lucy is looking for something. (ルーシーは何か探してるね。)
b. What is Lucy looking for _ ? (ルーシーは何を探してるんだろね。)
(8) a. It is easy (for us) to talk about cars. (クルマの話題なんて(オレらにゃ)簡単よ。)
b. Cars are easy (for us) to talk about _ . (訳同上)
ところで、‘who’には、‘whom’という、目的格のカタチが存在します。この‘whom’は、それほど頻繁に、目にすることはなく、どちらかと言えば、話しコトバ向けの表現ではありません。しかし、文法のルール上、どうしても、この‘whom’を使わなければならないときがあります。それは、「前置詞の直後にある目的語となる場合」で、例えば、‘to whom’、‘with whom’、‘by whom’、等のときです。
そこで、(2a)の関係節を用いた表現では、前置詞が、カギカッコの末尾に位置していますが、(2a)の、もう1つのオプションとして、‘to whom’を用いた関係節もOKです。
(9)a person [ to whom John talked _ ]. (訳同(3b))
(9)を(2a)と比較してみて、気が付くのは、(2a)では、カギカッコ(関係節)内の末尾に位置していた‘to ~’が、(9)では、カギカッコ内の先頭に位置している、ということです。そのかわりに、‘who’が‘whom’に変わっています。これは、前置詞‘to ~’が、カギカッコの先頭に移動してきたことによって、結果的に、‘to ~’が、‘who’の直前に位置する、つまり、‘who’が前置詞の直後にある目的語になったためです。文法のルール上、前置詞‘to ~’が、直後に‘who’を目的語として取り、‘to who’になることは、不可能ですから、仕方なく、‘to whom’になったというわけです。
(9)のような表現は、比較的フォーマルな感じのする表現ですが、だからと言って、会話英語で使われることはない、ということはありません。コトバ使いの丁寧な話者になるほど、よく、(9)のような表現を使う傾向がありますので、こちら側でも、積極的に使うことをお薦めします。なかなか品の良い、好印象を与える表現なので、お得感が強いです。
ただ、初心者の方が、(9)のような表現を使うのは、ちょっと、難しいかも知れませんね。と言うのも、ただでさえ、(2b)のような、間違いをやってしまう傾向がありますし、それがクリアできたとしても、普通は、‘talk to ~’「~ に話しかける」のような表現は、最初のうちは、どうしても、セット表現として、そのまま覚えている傾向があります。
そこにきて、やっと覚えたセット表現なのに、今度は、‘talk’と‘to ~’を切り離して、それぞれを、関係節の右端と左端に引き離して、遠距離に置くようなカタチになりますからね。これは、かなりシンドイかも知れません。
ここは、ひとつ練習になりますが、しかし、こういった練習は、他の文法的な側面を考慮しても、使いこなす上で、良い影響を与えるので、表現力の向上に一役かいます。決して、損にならないことは、保証できます。
(10)John talked <frankly> to Mary. (ジョンは<率直に>メアリーに話しかけた。)
(11)To nobody did John talk. (ジョンは決して誰にも話しかけなかった。)
(12)John talked、shouted、and whisperd to Mary.
(ジョンはメアリーに、(普通に) 話しかけることもあったし、
怒鳴ることもあったし、また、小声で話しかけることもあった。)
(10)~(12)の例は、全て、‘talk to ~’「~ に話しかける」において、‘talk’と‘to ~’が切り離された文です。(10)では、副詞<frankly>の割り込み、(11)では、否定語‘nobody’を含む、‘to nobody’の前倒し(倒置)、(12)では、‘talked’「話した」、‘shouted’「怒鳴った」、‘whisperd’「ささやいた」の全てに、本来、それぞれ付くはずの、‘to Mary’が、一括されて文の末尾に置かれています。
ここまで見てきて、英語の前置詞は、前のものにくっついてみたり、後のものにくっついてみたりと、とても浮遊感のある表現であることがわかったと思いますが、何としてでも、早いうちに、このパターンに慣れましょう。いくつか例をあげます。
(13)a. the chair [ which Tom is sitting on _ ] ([ トムが _ 座っている ] イス)
b. the chair [ on which Tom is sitting _ ] (訳同上)
(14)a. the park [ which John walked to _ ] ([ ジョンが _ 歩いていった ] 公園)
b. the park [ to which John walked _ ] (訳同上)
(15)a. the errand boy [ who we cannot do without _ ]
([ _ なしでは済ませられない ] パシリ君)
b. the errand boy [ without whom we cannot do _ ] (訳同上)
ここで、ちょっと発展的なことですが、こういったパターンの関係節には、ちょっとした落とし穴的なルールがあるのを、覚えておいてください。例えば、関係代名詞が‘that’である場合です。
(16)a. the chair [ that Tom is sitting on _ ] (〇) ([ トムが _ 座っている ] イス)
b. the chair [ on that Tom is sitting _ ] (×) (訳同上)
(16a-b)は、(13a-b)の‘which’を、ただ‘that’に置き換えただけなんですが、(16b)がアウトになっています。これは、「前置詞+関係代名詞」の語順になるパターンに限り、‘that’は使えない、というルールがあるためです。もちろん、これは、「前置詞+関係代名詞」の語順になる場合に限られるので、そうではない、(16a)はOKになります。
今回のポイントは、前置詞の浮遊グセです。この浮遊グセは、日本語話者にとっては、とてもやっかいであることが、(4)と(5)の対照的な一般化から明らかになりました。しかし、英語の様々な例を見る限り、英文法の中核的要因と見なさざるを得ないため、別に、マスターできなくとも、さして問題にはならない、などとは、とても申せません。
特に、前置詞と関係代名詞の関係は、ちょっとした、バリエーションがあるために、少しやっかいではありますが、残念ながら、実用英語においては、出くわす可能性が、とても高い部類の表現になりますので、避けては通れない項目ということになります。しかし、支払う代償に、必ずや見合うだけの価値ある、「必須の技」であることも事実ですので、是非練習して下さい。
●関連: EG23、EG24、EG26、EG35、EG47
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