EG57の続きです。動名詞です。以下、見ましょう。
(1)John criticizes Tom severely. (ジョンは、厳しくトムを批判している。)
(2)John's criticizing Tom severely (ジョンが厳しくトムを批判していること)
(1)のような文から、(2)のようなカタチが派生されます。動詞‘criticize’「~ を批判する」は、‘criticizing’「~ を批判すること」のように、語尾に、‘-ing’を付け足した場合、その「動詞+‘-ing’」のカタチが、「動名詞」と呼ばれている、ということです。 (‘criticize’の場合、最後の‘e’を外してから、‘-ing’をくっつけます。)
そこで、理解のポイントですが、所有形は、名詞にかかる性質をもっていますが、(2)のように、所有形‘John's’が、‘criticizing’にかかるカタチを許している点で、‘criticizing’は名詞としての性質をもっていると言えます。しかし、一方、‘Tom’が、なおも、‘criticizing’の目的語として、その直後にくっついていても、OKであり、かつ、‘severely’「厳しく、容赦なく」という副詞がくっついていてもOKである点からは、‘criticizing’が名詞としての性質をもっているとは言えません。
(1)からわかるように、他動詞‘criticize’は、目的語を直後に取るわけですから、この「他動詞+目的語」の性質が、(2)の「‘criticizing’+‘Tom’」のカタチにも受け継がれているわけですね。ですので、この点、動詞としての性質が、‘criticizing’には残されているわけです。
そして、名詞ではなく、動詞にかかる、副詞‘severely’が許される点からも、やはり、同様のことが言えます。このように、動名詞は、動詞と名詞の両方の性質を、部分的に受け継いでいることに、その名前の由来があります。
(3)John's severe criticism of Tom (〇) (ジョンのトムに対する厳しい批判)
(4)John's severe criticism Tom (×) (訳同上)
(5)John's severely criticism of Tom (×) (訳同上)
(3)では、‘criticism’「批判」という名詞が使われていますが、‘criticism’も、やはり、‘criticize’という動詞から派生された名詞であり、この点、動名詞‘criticizing’と同じだと言えますが、‘criticism’の性質は、完全に動詞としての性質を失っていると言えます。
(3)がOKである一方、(4)がアウトであることからわかるように、‘criticism’は、前置詞‘of ~’の助けを借りなければ、‘criticize’の目的語に相当する‘Tom’をくっつけることができないわけです。そして、さらに、(5)からもわかるように、形容詞‘severe’「厳しい、容赦ない」を、副詞‘severely’に交換すると、アウトになります。
この‘criticism’のように、他動詞から派生した名詞であるにもかかわらず、前置詞の助けを借りなければ、その目的語に相当する名詞を取れず、副詞でなく、形容詞がかかることができるのならば、もはや、動詞としての性質は失われ、完全に名詞になったと言ってもよいでしょう。
(6)Mary cooks dinner. (メアリーは夕食を料理する。)
(7)Mary's cooking dinner (メアリーの夕食の料理)
(8)Mary's cooking of dinner (訳同上)
ところが、「動詞+‘-ing’」にも、「他動詞+目的語」といった、動詞的な性質が失われていると見なければならない場合があります。(6)をもとにして、(7)の「‘cooking’+‘dinner’」のように、直接、目的語を取る‘-ing’のカタチ以外に、(8)の「‘cooking’+‘of’+‘dinner’」のように、直接、目的語を取らずに、前置詞を介するタイプの‘-ing’のカタチがあります。
(9)Mary's cooking dinner well (〇) (メアリーが夕食を上手く料理すること)
(10)Mary's good cooking of dinner (〇) (メアリーの上手な夕食の料理)
(9)は、(7)に副詞‘well’「上手く」を付け足したものですが、OKですので、やはり、直接、目的語を取れる‘cooking’には、この点からも、動詞的な性質が残っていると言えます。一方、(10)は、(8)に形容詞‘good’「上手な」を付け足したものですが、こちらもOKですので、やはり、前置詞が必要になる‘cooking’の方には、この点からも、動詞的な性質は残っていないと言えます。
つまり、全体的に名詞としての性質しかもっておらず、もはや、動名詞とは呼べないような「動詞+‘-ing’」のカタチもある、ということなんですね。こうなってくると、一体、その違いは何なんだ、ということになってきます。そこで、以下を見ましょう。
(11)Mary's cooking dinner is surprising. (〇)
(メアリーが夕食をつくるなんて、ビックリですな。)
(12)Mary's cooking dinner is skillful. (×)
(メアリーの夕食のつくり方は、熟練している。)
(11)と(12)は、どちらも前置詞のない、「‘cooking’+‘dinner’」のカタチが使われています。そこで、(11)はOKですが、一方、(12)はアウトです。(11)は、その解釈が、メアリーが夕食を料理した、という「事実」を表現するものになっていますが、一方、(12)は、その解釈が、メアリーの夕食を料理する技術、という「行為」を表現するものになっています。
普通、動詞を用いた表現では、その行為が出来事として、実際にあったことなのか、それとも、ただ単に、実際に行われたかどうかとは関係なく、行為のみを表しているだけなのか、という問題が常に付きまといます。そこで、(11)と(12)のコントラストからは、どうやら、「‘cooking’+‘dinner’」のカタチが、実際の出来事とは関係のない、行為のみに焦点を当てるような解釈が、不可能であることがわかります。
(13)Mary's cooking of dinner is surprising. (〇) (訳同(11))
(14)Mary's cooking of dinner is skillful. (〇) (訳同(12))
(13)と(14)は、どちらも、「‘cooking’+‘of’+‘dinner’」のカタチが使われています。そこで、今度は、(13)と(14)の両方が、OKになります。つまり、「‘cooking’+‘of’+‘dinner’」のカタチならば、事実としての実際の出来事を表現できるし、一方、実際の出来事とは関係のない、行為のみに焦点を当てるような解釈も可能である、ということになります。
(15)John pays attention to his boss. (ジョンは、上司の言うことを注意して聞く。)
(16)John's paying attention to his boss (〇) (ジョンが上司の言うことを注意して聞くこと)
(17)John's paying of attention to his boss (×) (訳同上)
(15)では、イディオム表現である‘pay attention to ~’「~ に注意を払う」が使われています。そこで、(16)のように、前置詞なしで、‘paying attention to ~’と表現するのは、OKですが、一方、(17)のように、前置詞を補って、‘paying of attention to ~’と表現するのは、アウトです。
つまり、単語の集積が、ある1つのまとまった意味概念を感じさせるような、各単語の結束力が強いと思われる動詞表現に対しては、完全な名詞化となる「‘-ing’+前置詞+名詞」のカタチは不向きで、多少なりとも、動詞的な性質が残っているような表現方法が好まれる傾向にあるようです。
今回のポイントは、さらなる動名詞の性質についてです。動名詞は、‘-ing’のカタチをしていますが、その正体は、動詞と名詞の両方の性質を、部分的に受け継いだ合の子である、と考えられます。しかし、その一方で、同じ‘-ing’のカタチをしている割には、その性質が、全体的に名詞的であるようなものも存在します。
ですので、ややこしい話になってくるわけですが、これも、英語は、表現可能なカタチが貧困であることの1つの例となります。同じカタチのものを使いまわしながらも、わずかな違いをつけることで、その場を何とか凌ぐのが、英語というコトバのやり方なんですね。
■注: (11)は、実際の出来事としての「事実」ではなく、「メアリーの夕食のつくり方は、驚きものだ」というように、「行為」のみに焦点を当てた解釈の場合、もちろん、アウトになります。
●関連: EG57
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(1)John criticizes Tom severely. (ジョンは、厳しくトムを批判している。)
(2)John's criticizing Tom severely (ジョンが厳しくトムを批判していること)
(1)のような文から、(2)のようなカタチが派生されます。動詞‘criticize’「~ を批判する」は、‘criticizing’「~ を批判すること」のように、語尾に、‘-ing’を付け足した場合、その「動詞+‘-ing’」のカタチが、「動名詞」と呼ばれている、ということです。 (‘criticize’の場合、最後の‘e’を外してから、‘-ing’をくっつけます。)
そこで、理解のポイントですが、所有形は、名詞にかかる性質をもっていますが、(2)のように、所有形‘John's’が、‘criticizing’にかかるカタチを許している点で、‘criticizing’は名詞としての性質をもっていると言えます。しかし、一方、‘Tom’が、なおも、‘criticizing’の目的語として、その直後にくっついていても、OKであり、かつ、‘severely’「厳しく、容赦なく」という副詞がくっついていてもOKである点からは、‘criticizing’が名詞としての性質をもっているとは言えません。
(1)からわかるように、他動詞‘criticize’は、目的語を直後に取るわけですから、この「他動詞+目的語」の性質が、(2)の「‘criticizing’+‘Tom’」のカタチにも受け継がれているわけですね。ですので、この点、動詞としての性質が、‘criticizing’には残されているわけです。
そして、名詞ではなく、動詞にかかる、副詞‘severely’が許される点からも、やはり、同様のことが言えます。このように、動名詞は、動詞と名詞の両方の性質を、部分的に受け継いでいることに、その名前の由来があります。
(3)John's severe criticism of Tom (〇) (ジョンのトムに対する厳しい批判)
(4)John's severe criticism Tom (×) (訳同上)
(5)John's severely criticism of Tom (×) (訳同上)
(3)では、‘criticism’「批判」という名詞が使われていますが、‘criticism’も、やはり、‘criticize’という動詞から派生された名詞であり、この点、動名詞‘criticizing’と同じだと言えますが、‘criticism’の性質は、完全に動詞としての性質を失っていると言えます。
(3)がOKである一方、(4)がアウトであることからわかるように、‘criticism’は、前置詞‘of ~’の助けを借りなければ、‘criticize’の目的語に相当する‘Tom’をくっつけることができないわけです。そして、さらに、(5)からもわかるように、形容詞‘severe’「厳しい、容赦ない」を、副詞‘severely’に交換すると、アウトになります。
この‘criticism’のように、他動詞から派生した名詞であるにもかかわらず、前置詞の助けを借りなければ、その目的語に相当する名詞を取れず、副詞でなく、形容詞がかかることができるのならば、もはや、動詞としての性質は失われ、完全に名詞になったと言ってもよいでしょう。
(6)Mary cooks dinner. (メアリーは夕食を料理する。)
(7)Mary's cooking dinner (メアリーの夕食の料理)
(8)Mary's cooking of dinner (訳同上)
ところが、「動詞+‘-ing’」にも、「他動詞+目的語」といった、動詞的な性質が失われていると見なければならない場合があります。(6)をもとにして、(7)の「‘cooking’+‘dinner’」のように、直接、目的語を取る‘-ing’のカタチ以外に、(8)の「‘cooking’+‘of’+‘dinner’」のように、直接、目的語を取らずに、前置詞を介するタイプの‘-ing’のカタチがあります。
(9)Mary's cooking dinner well (〇) (メアリーが夕食を上手く料理すること)
(10)Mary's good cooking of dinner (〇) (メアリーの上手な夕食の料理)
(9)は、(7)に副詞‘well’「上手く」を付け足したものですが、OKですので、やはり、直接、目的語を取れる‘cooking’には、この点からも、動詞的な性質が残っていると言えます。一方、(10)は、(8)に形容詞‘good’「上手な」を付け足したものですが、こちらもOKですので、やはり、前置詞が必要になる‘cooking’の方には、この点からも、動詞的な性質は残っていないと言えます。
つまり、全体的に名詞としての性質しかもっておらず、もはや、動名詞とは呼べないような「動詞+‘-ing’」のカタチもある、ということなんですね。こうなってくると、一体、その違いは何なんだ、ということになってきます。そこで、以下を見ましょう。
(11)Mary's cooking dinner is surprising. (〇)
(メアリーが夕食をつくるなんて、ビックリですな。)
(12)Mary's cooking dinner is skillful. (×)
(メアリーの夕食のつくり方は、熟練している。)
(11)と(12)は、どちらも前置詞のない、「‘cooking’+‘dinner’」のカタチが使われています。そこで、(11)はOKですが、一方、(12)はアウトです。(11)は、その解釈が、メアリーが夕食を料理した、という「事実」を表現するものになっていますが、一方、(12)は、その解釈が、メアリーの夕食を料理する技術、という「行為」を表現するものになっています。
普通、動詞を用いた表現では、その行為が出来事として、実際にあったことなのか、それとも、ただ単に、実際に行われたかどうかとは関係なく、行為のみを表しているだけなのか、という問題が常に付きまといます。そこで、(11)と(12)のコントラストからは、どうやら、「‘cooking’+‘dinner’」のカタチが、実際の出来事とは関係のない、行為のみに焦点を当てるような解釈が、不可能であることがわかります。
(13)Mary's cooking of dinner is surprising. (〇) (訳同(11))
(14)Mary's cooking of dinner is skillful. (〇) (訳同(12))
(13)と(14)は、どちらも、「‘cooking’+‘of’+‘dinner’」のカタチが使われています。そこで、今度は、(13)と(14)の両方が、OKになります。つまり、「‘cooking’+‘of’+‘dinner’」のカタチならば、事実としての実際の出来事を表現できるし、一方、実際の出来事とは関係のない、行為のみに焦点を当てるような解釈も可能である、ということになります。
(15)John pays attention to his boss. (ジョンは、上司の言うことを注意して聞く。)
(16)John's paying attention to his boss (〇) (ジョンが上司の言うことを注意して聞くこと)
(17)John's paying of attention to his boss (×) (訳同上)
(15)では、イディオム表現である‘pay attention to ~’「~ に注意を払う」が使われています。そこで、(16)のように、前置詞なしで、‘paying attention to ~’と表現するのは、OKですが、一方、(17)のように、前置詞を補って、‘paying of attention to ~’と表現するのは、アウトです。
つまり、単語の集積が、ある1つのまとまった意味概念を感じさせるような、各単語の結束力が強いと思われる動詞表現に対しては、完全な名詞化となる「‘-ing’+前置詞+名詞」のカタチは不向きで、多少なりとも、動詞的な性質が残っているような表現方法が好まれる傾向にあるようです。
今回のポイントは、さらなる動名詞の性質についてです。動名詞は、‘-ing’のカタチをしていますが、その正体は、動詞と名詞の両方の性質を、部分的に受け継いだ合の子である、と考えられます。しかし、その一方で、同じ‘-ing’のカタチをしている割には、その性質が、全体的に名詞的であるようなものも存在します。
ですので、ややこしい話になってくるわけですが、これも、英語は、表現可能なカタチが貧困であることの1つの例となります。同じカタチのものを使いまわしながらも、わずかな違いをつけることで、その場を何とか凌ぐのが、英語というコトバのやり方なんですね。
■注: (11)は、実際の出来事としての「事実」ではなく、「メアリーの夕食のつくり方は、驚きものだ」というように、「行為」のみに焦点を当てた解釈の場合、もちろん、アウトになります。
●関連: EG57
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