EG117の続きです。強調構文です。以下、見ましょう。
(1)Mary saw John in the park. (メアリーはジョンに公園で会った。)
(2)It is John that Mary saw _ in the park. (メアリーが公園で会ったのは、ジョンだ。)
強調構文のカタチの上での特徴は、(1)のような文があると、その中の一部の要素 (ここでは、‘John’) が、(2)のように、‘it is’と‘that’の間に挟まれることで、残った要素は、全て、‘that’の後に後続させるということでした。ですので、必然的に、‘that’に後続する要素は、‘it is’と‘that’の間に挟まれているものが欠けていることになります。
一方、強調構文の意味的な特徴は、‘it is’と‘that’の間に挟まれたものに、焦点を当てる、つまり、際立ちを与えるということなので、例えば、(1)のような文では、どこに重要な情報があるのかが、特にわかりませんが、(2)を見れば、一発で、‘John’が重要なのだなとわかる仕組みになっているわけです。
(3)It is in the park that Mary saw John _ . (メアリーがジョンに会ったのは、公園だ。)
(3)では、(1)の‘in the park’を‘it is’と‘that’の間に挟んでいますので、やはり、‘that’に後続する文は、(1)の中から、‘in the park’が欠けたものになっています。こうして見ると、焦点が当てられるべき要素を、‘it is’と‘that’の間に挟むだけで済むわけですから、何でもこのやり方で通してしまえばOKだろう、と考えてしまいます。
(4)It is see that Mary did _ John in the park. (×)
(メアリーが公園でジョンにしたことは、会うということだ。)
しかし、何と、(4)のように、動詞に焦点を当てるような強調構文は、一般的に容認されない傾向にあります。さらに、単体の動詞だけではなく、動詞句になった場合も、やはり、容認度がかなり落ちます。 ((4)での助動詞‘did’の出現に関しては、EG20、参照。)
(5)It is see John that Mary did _ in the park. (×)
(メアリーが公園でしたことは、ジョンに会うということだ。)
(6)It is see John in the park that Mary did _ . (×)
(メアリーがしたことは、ジョンに公園で会うということだ。)
(5)では、‘see John’「ジョンと会う」という小さな動詞句が焦点であり、一方、(6)では、‘see John in the park’「ジョンと公園で会う」という大きな動詞句が焦点ですが、やはり、両方とも容認度が悪く、ほぼアウトであると言ってよいでしょう。 (動詞句の成り立ちに関しては、EG20、参照。)
つまり、動詞を中心とした表現である限り、いかなる要素であっても、強調構文を使って焦点を当てるというようなことは、ほぼ困難であると知っておく必要があります。このように、強調構文は、何にでも焦点を当てられるというような万能型の構文というわけではありません。
(7)It is John in the park that Mary saw _ . (×)
(メアリーが誰にどこで会ったのかというと、ジョンに公園で、ということだ。)
では、動詞を含まない、(7)のような‘John in the park’「ジョンに公園で」のみに焦点を当てた強調構文はどうかというと、これもアウトです。この場合は、少し考え方を変えて、「句」という単位が重要であると考えられます。つまり、「目的語‘John’+前置詞句‘in the park’」というつながりは、句ではない、ということに原因があると考えられます。
(8)John hit the robber with a stick.
(9) a. ジョンは、その強盗を棒で殴打した。 (〇)
b. ジョンは、棒をもったその強盗を殴打した。 (〇)
(8)は、その解釈があいまいであり、一般的に、2通りの解釈が可能です。まず、(9a)の解釈ですが、‘with a stick’を、「棒で」と解釈して、‘hit the robber’「強盗を殴打した」にかかるような解釈にした場合があります。そして、一方、(9b)のように、‘with a stick’を、「棒をもった」と解釈して、‘the robber’「その強盗」にかかるような解釈にした場合もあります。
(10)It is the robber with a stick that John hit _ .
(11)a. ジョンが殴打したのは、その強盗を棒で、だ。 (×)
b. ジョンが殴打したのは、棒をもったその強盗だ。 (〇)
そこで、(9)の‘the robber’と‘with a stick’を、強調構文の中で、共に焦点が当たる位置にもっていくと、その解釈が1つに決まってしまい、(11a)はアウトで、一方、(11b)のみがOKとなります。解釈(11a)は、解釈(9a)に対応していますが、一方、解釈(11b)は、解釈(9b)に対応しています。
もちろん、(9a)の解釈では、‘the robber’と‘with a stick’がつながって1つの句になっていませんが、一方、(9b)の解釈ならば、‘the robber with a stick’「棒をもったその強盗」は、1つのまとまりをもった名詞句という単位になりますので、そういったことが、(10)の解釈を(11b)に決定している要因と考えられます。
ここで、(7)に戻って考えてみると、やはり、(7)がアウトになるのは、(10)に対して、(11a)の解釈がない理由と同様であり、‘John’と‘in the park’が1つのつながりをもった句であるとは考えられないからだと判断できます。 (‘John’は固有名詞であり、最初から唯一的に指す人物が決定されているため、限定表現を受けつけず、名詞句になることは困難です。)
ここまで見て、強調構文のある特徴が明らかになりましたが、それは、焦点になれる要素は、文法的なカタチの上での制約として、「句」という1つにまとまった単位であることが条件である、ということです。ただし、(4)~(6)から明らかなように、動詞句 (動詞のみの場合も含む) はその対象とはされません。
「句」というカタチの上での文法上の単位は、同時に、1つの意味的なまとまりをも示すものなので、結局のところ、強調構文においては、その焦点となる表現が、1つの意味的なまとまりを成していることが重要だということになります。
(12)John was happy <because there were many girlfriends>.
(カノジョがたくさんいたので、ジョンは幸せだった。)
(13)It is <because there were many girlfriends> that John was happy _ .
(ジョンが幸せなのは、カノジョがたくさんいたからだ。)
(12)をもとにして、(13)の‘because ~’のように、「節」も強調構文の焦点になることができます。節も、句と同じく、カタチの上では、文法上の1つ単位であり、かつ、意味的なまとまりを成しているので、1つの焦点と見なせるからです。ですので、最終的には、「句」と「節」が強調構文の焦点の位置に来れるということですね。
今回のポイントは、強調構文における「句」や「節」といった文法上の単位の重要性です。焦点という概念は、他のものを差し置いて、あるものに際立ちを与えることにその意義があるわけですから、焦点が複数あると、その際立ちがボヤけてしまいますので、焦点は1つであることが望ましいということです。
「焦点」とは意味的な概念ですが、今度はそれを強調構文という文法上のカタチの中に収めなければならないわけで、そこから、当然のこと、カタチの上での区切りが必要になってきます。その区切りの単位として重要なのが、「句」や「節」という単位になるわけです。
英語では、「移動」や「消去」の単位も、大半が「句」や「節」といった単位に依存していますから、こういったカタチの上での単位を知っておくことは、結構重要であることがわかると思います。強調構文は、今回のカタチの上での制限が、最も基本となることですが、その他にも、様々な制約を受けています。また別の機会です。
●関連: EG20、EG117
★みんなの英会話奮闘記★ ★英語・人気blogランキング★
(1)Mary saw John in the park. (メアリーはジョンに公園で会った。)
(2)It is John that Mary saw _ in the park. (メアリーが公園で会ったのは、ジョンだ。)
強調構文のカタチの上での特徴は、(1)のような文があると、その中の一部の要素 (ここでは、‘John’) が、(2)のように、‘it is’と‘that’の間に挟まれることで、残った要素は、全て、‘that’の後に後続させるということでした。ですので、必然的に、‘that’に後続する要素は、‘it is’と‘that’の間に挟まれているものが欠けていることになります。
一方、強調構文の意味的な特徴は、‘it is’と‘that’の間に挟まれたものに、焦点を当てる、つまり、際立ちを与えるということなので、例えば、(1)のような文では、どこに重要な情報があるのかが、特にわかりませんが、(2)を見れば、一発で、‘John’が重要なのだなとわかる仕組みになっているわけです。
(3)It is in the park that Mary saw John _ . (メアリーがジョンに会ったのは、公園だ。)
(3)では、(1)の‘in the park’を‘it is’と‘that’の間に挟んでいますので、やはり、‘that’に後続する文は、(1)の中から、‘in the park’が欠けたものになっています。こうして見ると、焦点が当てられるべき要素を、‘it is’と‘that’の間に挟むだけで済むわけですから、何でもこのやり方で通してしまえばOKだろう、と考えてしまいます。
(4)It is see that Mary did _ John in the park. (×)
(メアリーが公園でジョンにしたことは、会うということだ。)
しかし、何と、(4)のように、動詞に焦点を当てるような強調構文は、一般的に容認されない傾向にあります。さらに、単体の動詞だけではなく、動詞句になった場合も、やはり、容認度がかなり落ちます。 ((4)での助動詞‘did’の出現に関しては、EG20、参照。)
(5)It is see John that Mary did _ in the park. (×)
(メアリーが公園でしたことは、ジョンに会うということだ。)
(6)It is see John in the park that Mary did _ . (×)
(メアリーがしたことは、ジョンに公園で会うということだ。)
(5)では、‘see John’「ジョンと会う」という小さな動詞句が焦点であり、一方、(6)では、‘see John in the park’「ジョンと公園で会う」という大きな動詞句が焦点ですが、やはり、両方とも容認度が悪く、ほぼアウトであると言ってよいでしょう。 (動詞句の成り立ちに関しては、EG20、参照。)
つまり、動詞を中心とした表現である限り、いかなる要素であっても、強調構文を使って焦点を当てるというようなことは、ほぼ困難であると知っておく必要があります。このように、強調構文は、何にでも焦点を当てられるというような万能型の構文というわけではありません。
(7)It is John in the park that Mary saw _ . (×)
(メアリーが誰にどこで会ったのかというと、ジョンに公園で、ということだ。)
では、動詞を含まない、(7)のような‘John in the park’「ジョンに公園で」のみに焦点を当てた強調構文はどうかというと、これもアウトです。この場合は、少し考え方を変えて、「句」という単位が重要であると考えられます。つまり、「目的語‘John’+前置詞句‘in the park’」というつながりは、句ではない、ということに原因があると考えられます。
(8)John hit the robber with a stick.
(9) a. ジョンは、その強盗を棒で殴打した。 (〇)
b. ジョンは、棒をもったその強盗を殴打した。 (〇)
(8)は、その解釈があいまいであり、一般的に、2通りの解釈が可能です。まず、(9a)の解釈ですが、‘with a stick’を、「棒で」と解釈して、‘hit the robber’「強盗を殴打した」にかかるような解釈にした場合があります。そして、一方、(9b)のように、‘with a stick’を、「棒をもった」と解釈して、‘the robber’「その強盗」にかかるような解釈にした場合もあります。
(10)It is the robber with a stick that John hit _ .
(11)a. ジョンが殴打したのは、その強盗を棒で、だ。 (×)
b. ジョンが殴打したのは、棒をもったその強盗だ。 (〇)
そこで、(9)の‘the robber’と‘with a stick’を、強調構文の中で、共に焦点が当たる位置にもっていくと、その解釈が1つに決まってしまい、(11a)はアウトで、一方、(11b)のみがOKとなります。解釈(11a)は、解釈(9a)に対応していますが、一方、解釈(11b)は、解釈(9b)に対応しています。
もちろん、(9a)の解釈では、‘the robber’と‘with a stick’がつながって1つの句になっていませんが、一方、(9b)の解釈ならば、‘the robber with a stick’「棒をもったその強盗」は、1つのまとまりをもった名詞句という単位になりますので、そういったことが、(10)の解釈を(11b)に決定している要因と考えられます。
ここで、(7)に戻って考えてみると、やはり、(7)がアウトになるのは、(10)に対して、(11a)の解釈がない理由と同様であり、‘John’と‘in the park’が1つのつながりをもった句であるとは考えられないからだと判断できます。 (‘John’は固有名詞であり、最初から唯一的に指す人物が決定されているため、限定表現を受けつけず、名詞句になることは困難です。)
ここまで見て、強調構文のある特徴が明らかになりましたが、それは、焦点になれる要素は、文法的なカタチの上での制約として、「句」という1つにまとまった単位であることが条件である、ということです。ただし、(4)~(6)から明らかなように、動詞句 (動詞のみの場合も含む) はその対象とはされません。
「句」というカタチの上での文法上の単位は、同時に、1つの意味的なまとまりをも示すものなので、結局のところ、強調構文においては、その焦点となる表現が、1つの意味的なまとまりを成していることが重要だということになります。
(12)John was happy <because there were many girlfriends>.
(カノジョがたくさんいたので、ジョンは幸せだった。)
(13)It is <because there were many girlfriends> that John was happy _ .
(ジョンが幸せなのは、カノジョがたくさんいたからだ。)
(12)をもとにして、(13)の‘because ~’のように、「節」も強調構文の焦点になることができます。節も、句と同じく、カタチの上では、文法上の1つ単位であり、かつ、意味的なまとまりを成しているので、1つの焦点と見なせるからです。ですので、最終的には、「句」と「節」が強調構文の焦点の位置に来れるということですね。
今回のポイントは、強調構文における「句」や「節」といった文法上の単位の重要性です。焦点という概念は、他のものを差し置いて、あるものに際立ちを与えることにその意義があるわけですから、焦点が複数あると、その際立ちがボヤけてしまいますので、焦点は1つであることが望ましいということです。
「焦点」とは意味的な概念ですが、今度はそれを強調構文という文法上のカタチの中に収めなければならないわけで、そこから、当然のこと、カタチの上での区切りが必要になってきます。その区切りの単位として重要なのが、「句」や「節」という単位になるわけです。
英語では、「移動」や「消去」の単位も、大半が「句」や「節」といった単位に依存していますから、こういったカタチの上での単位を知っておくことは、結構重要であることがわかると思います。強調構文は、今回のカタチの上での制限が、最も基本となることですが、その他にも、様々な制約を受けています。また別の機会です。
●関連: EG20、EG117
★みんなの英会話奮闘記★ ★英語・人気blogランキング★