夏の頃だったか、母がタンスの奥からクリスマスツリーを引っ張り出して、ベッド脇のテーブルに飾っていた。
「そんなとこに置いてると、落として壊れるよ!」
「それに、なんで季節が違うのに飾ったの?」
私の文句をものともせず、「きれいだからいいじゃない!」と、母は強気だった。
次の面会の時、クリスマスツリーは、粉々に砕けて、テーブルの下。
「ま、そんなこともあるさ」と、黙って片付けた。
「どうして壊れたのかしらねぇ?誰かがやったんじゃない?」
「まあ壊れた物は仕方がないわよ」「それより、今年のクリスマスには新しいツリーが買えるよ。ラッキーだわね!」
そんな会話をして、母の気を納めた。
クリスマスの時期が来て、いいのを見つけたら買って持っていこうと思いながら、なかなか適当なのと出会わない(一生懸命探したわけでもないけど…)。
そう思いながら、買い物に行ったら、なんとなく良さそうなのを見つけた。
これ。
クリスマスツリーは木製で、小さなカギにオーナメントを引っかけるようになっている。
サンタとシロクマも木製。
穏やかな顔が気に入った。
母の所へ早速持っていき、ツリーを組み立てて、オーナメントを飾ってもらった。
「こっちにこれを飾ると、赤ばっかりになるしねぇ」
「これは、ここの方が可愛いわよね」
あれこれ楽しみながら、ツリーを飾る母は子どものようだった。
満足げでしょう?
もちろん、ベッドへの昇降に近いこの場所では、また落としてしまうので、よく見える棚の奥に飾った。
「季節感が出ていいわねぇ~」
そうね。
今が12月だということを、これで理解していただければこれ以上のことはない。
まあ、この程度の置物で、そんなことは期待してはいけませんよね。