エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

ペルピニャンとボルドー市の試み

2011-12-09 07:15:11 | Weblog
フランスの地方自治体の中でもっとも野心的な取組みを行おうとしているのが南仏のペルピニャン市と周辺23市町村です。ペルピニャンの計画では、年間消費電力を上回る再生可能エネルギー発電の拠点の設置を目指しています。環境・持続可能整備開発省は、この取組みへの支援を決定し、再生可能エネルギー生産の「世界の見本」とすべく、09年1月18日にペルピニャン市ならびに周辺市町村と枠組み合意を交わしました。
この「グルネル合意2015」は、太陽光、風力、排熱利用など、複数のエネルギー資源を利用しながら、100%再生可能エネルギーによって、地域の消費量を上回るエネルギーを生産することを目的としています。ペルピニャンのエネルギーは、風力発電機40基、太陽光発電所3基、市北部のカルス焼却施設の排熱利用、公共建物の屋根にソーラーパネルの設置を進めることで確保します。さらにサン=シャルル市場(地中海沿岸産の野菜や果物を扱うヨーロッパ流通拠点)の屋根に、総工費5,500万ユーロをかけて、7万㎡のソーラーパネルを設置する予定です。
計画では、地域全世帯の電力消費量43万6,000メガワット(MW)hに対して、再生可能エネルギーによる年間電力生産量は44万メガワット(MW)hになります。ここに産業用電力消費量30万メガワット(MW)hが加わります。ペルピニャン市は、さらに再生可能エネルギーによる生産量が消費量を上回る「プラスエネルギー都市」をめざすとしています。
ペルピニャン市ならびに周辺市町村と、環境・持続可能整備開発省の間で交わされた枠組み合意には、市町村境界付近の農業開発や、地元産の野菜や果物を地域に流通させる地産地消ルートの整備も盛り込まれています。
また、フランスボルドー市では、見本市会場の大駐車場の屋根(合計面積9万2000平方メートル)に、約6万枚の太陽光パネルがを設置する計画です。都市圏の建造物に併設される太陽光発電拠点としてはフランス国内最大となります。10年初に着工しており、同年末には完成、年間12メガワット時の電力を発電する予定です。 

フライブルグ市の「ソーラーシティ」

2011-12-08 06:02:40 | Weblog
ドイツの地域における再生可能エネルギーの動向として注目されるのは、世界屈指の環境先進都市として有名なフライブルグ市です。フライブルグ市は、30年までに1992年比40%CO2を削減することを目標として掲げて数々のイニシアティブを推進していますが、「ソーラーシティ」を標榜する同市は、太陽光発電と太陽熱に力を入れています。市内の太陽光発電設置量が10メガワット(MW)にも達し、環境全体で1500社の企業が活動し、人口22万人のうち1万人の雇用、年間5億ユーロの経済効果を生み出しているフライブルク市ですが、それでも太陽光発電からの発電割合は、市内の電力総消費量の1%程度でしかありません。
 30年までにこの割合を少なくとも3倍にしたい同市は、09年4月1日より新しい試みとして『フリーサン(FreeSun)』をスタートし、市内のソーラー発電、および太陽熱利用のポテンシャルを学術的に調査して、WEB上に公表しています。 WEB上では、太陽光発電に適している屋根を方角や傾きに応じてそれぞれ評価し、個別の屋根のポテンシャルを4段階で表示していますが、この基礎となった調査では、最大でフライブルク市内には電力総消費量の23%を太陽光発電でまかなうことが可能であるとの結論が導かれています。フライブルク市は、現在、太陽光発電設置を推進するキャンペーンを展開中です。市内のそれぞれの町内・住宅地区で説明会やコンサルティングを行っています。
 また、フライブルグ市には、太陽光発電の研究開発で世界的に名高いフラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(フラウンホーファーISE)があります。太陽電池には結晶シリコンタイプ、薄膜シリコン、化合物系、色素増感型などいろいろなタイプがありますが、このうち結晶シリコンタイプの変換効率は、理論的に25%といわれています。この限界に3層構造よりなる高効率太陽電池と集光レンズの組合せでチャレンジし、61%の変換効率を目指しているのがフラウンホーファーISEです。

アムステルダム市の「スマートシティ」

2011-12-02 07:07:25 | Weblog
欧州では地域単位でのスマートグリッドへの取組みも始まっています。その代表例がアムステルダム市のスマートシティです。アムステルダム市では、EU初のインテリジェントシティを目指して「アムステルダム・スマートシティ・プログラム」およびスマートグリッド関連プロジェクトが進められています。「アムステルダム・スマートシティ・プログラム」は、25年までにCO2排出量を40%削減するという目標を達成し、EUの気候変動・エネルギーに関する政策パッケージ「EU2020」で設定された目標の実現に貢献するために策定されました。
 事業主体は、アムステルダム市からスピンオフした官民共同出資会社のおよび社を主体とする企業コンソーシアムです。事業予算に関しては、詳細は明らかにされていませんが、プロジェクトの第1段階(09年から12年まで)への投資は110億ユーロとなる見込みです。
 具体的な対策としては、①持続可能な生活(スマートメーターの導入により消費電力の見える化を行う、市民の環境意識・電力利用利用方法・ライフスタイルの変革の促進)、②持続可能な労働(照明・冷暖房・セキュリティ機能を高めたスマートビルディングへの転換の促進、エネルギー使用量の抑制)、③持続可能な交通(港湾・船舶間の電力充電、電気自動車の普及、充電ポイントの拡充)、④持続可能な公共スペース(ごみ収集における電気自動車の利用、太陽光発電によるごみ圧縮機を店舗に導入)の4つで構成されています。
 第1期の具体的なプロジェクトは以下のとおりです。
① West OrangeプロジェクトとGeuzenveldプロジェクトに、それぞれ500住宅、700住宅にスマートメーターとディスプレイ装置を導入し、市民の環境意識・電力利用利用方法・ライフスタイルの変革の促進のための実験を行う
②アクセンチュア支社が入居しているITO Towerにおけるスマートビルディング技術の実証事業。プログラミング設定とデータの収集、解析。
③商業船舶・河川用クルーザー・はしけの停泊中に送電網に接続し充電を行う。プロジェクトでは約100箇所に充電ステーションを設置。
④人気ショッピング・レストラン街であるユトレヒト・ストラート(Utrechtstraat)地区の省エネルギー化を進める「気候ストリート」(Klimaatstraat)構想を推進する。太陽光エネルギーにより収集ごみを圧縮・コンパクト化する、路面電車の停留所、街路、ファサードにLED照明設置。市当局と店舗・レストラン経営者はスマートメーターとディスプレイ装置によりエネルギー消費量を管理。
 今後のプロジェクトとしては、①市内のバス停や広告看板にソーラーパネルを設置、②市内建築物へのソーラーパネルを設置数の拡大、③電気自動車の充電ポイントの拡充、④HEMSとBEMSの展開、⑤家庭用小型発電ユニット(太陽光発電、小型風力発電、小型熱電併給システムなどで構成される)を基本単位としたスマートグリッドの構築などが予定されています。

ヨーロッパの電力需要の15%をまかなうデザーテック計画

2011-12-01 07:10:11 | Weblog
欧州の12の大企業が協力して、ヨーロッパの電力需要の15%を太陽光等再生可能エネルギーでまかなう計画である「デザーテック計画 ( Desertec ) 」がスタートしています。太陽光発電700ギガワット、風力発電300ギガワット、水力発電200ギガワットという内訳です。
 デザーテック計画の構想は、03年に地中海周辺52カ国の科学者、政治関係者、産業界のメンバーからなる民間のシンクタンク「ローマクラブ」 ( Club of Rome ) で始まり、特に同クラブのドイツ支部が計画をまとめました。目的は、50年にヨーロッパ電力需要の15%を太陽光発電基本とする再生可能エネルギーでまかない、また発電所周辺諸国に需要電力の大半を供給するというものです。総事業費は4000億ユーロ ( 約50兆円) 。送電開始は10年後に見込まれています。
 具体的計画の第一歩は、ドイツ企業を多く含む12の欧州大手企業が計画実行のための研究機関創設に同意する議定書に調印したことです。その後、シーメンス、ABB、エーオン(ドイツ)、RWE(同)など欧州企業連合がアルジェリアの地場財閥セビタルと提携してデザーテック・インダストリアル・イニシアチブ(DII)を設立しました。09年7月に合意文書の調印が行われましたが、設立メンバー12社にはドイツ銀行、ミュンヘン再保険、HSHノルドバンクといった金融機関が含まれています。
デザーテック計画は、太陽光発電では世界最大規模です。この計画の課題の一つは、いかに電力を安全にヨーロッパまで送電するかということですが、ABBは2000キロメートルの送電をわずか10%の損失だけで行えるとしています。