エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

韓国の「グリーン成長」国家戦略

2011-12-22 06:48:08 | Weblog
韓国のスマートグリッドの基礎にあるのが「グリーン成長」国家戦略です。09年7月、イタリアで開かれたG8拡大首脳会議で、韓国はスマートグリッド分野の先導国(リーディングカントリー)に選ばれました。韓国はグリーン成長プロジェクトに全力をあげており、首脳会議直前には「グリーン成長国家戦力および5カ年計画」を発表し、その後国会で「グリーン成長基本法」が成立しました。
 韓国政府の5カ年計画によると、GDPの2%にあたる額を毎年投入し、5年間で総額107兆ウォンの予算を投入する予定です。経済効果は182兆ウォンから206兆ウォン、156万から181万人の新規雇用を創出すると見込んでいます。投資先は主に、再生可能エネルギー、発光ダイオード(LED)、スマートグリッド、ハイブリッドカーなどのグリーンビジネスです。
 また、投資計画の一環として、政府が現代自動車起亜自動車などの自動車メーカーに対し、12年以降、平均燃費を1リットル当たり17キロメートル以上に引き上げるか、1キロメートル当たりの温室効果ガス排出量を140グラム以下に引き下げるかどちらかの措置を講じるよう求めるとしています。
 韓国は「グリーン成長」という国家戦略を通じて、一方で気候変動による環境リスクと資源枯渇という危機に備えつつ、他方で、低成長に悩む韓国経済に新しい成長動力を与え、経済成長のパラダイムシフトを起こすことを狙っています。 1970~80年代にかけて年間8%台の高度成長を遂げ、「アジアの4つの龍の中でも最高」と呼ばれた韓国経済の潜在成長率は3%台に低下していますが、グリーン成長プロジェクトが経済の潜在成長率を高め、韓国は20年には世界7位、50年には世界5位の「環境大国」になることを目標としています。
 このため韓国政府は、政府部内にグリーン成長プロジェクトを推進する機関を10カ所以上設置しました。大統領直属のグリーン成長委員会をはじめ、知識経済部、企画財政部、国土海洋部、環境部、農林水産食品部、金融委員会など、各省庁に推進部署が置かれています。
また、IT産業をグリーン成長の根幹と位置づけ、「グリーンIT国家戦略」も策定しています。Green of ITとGreen by ITの2本立てで、このうちGreen by ITにおいて、スマートグリッドにより国全体のエネルギー消費を30年までに6%削減するとともに、世界の市場の確保を目指すとしています。その他、ITによるオフィス環境の低炭素化(遠隔作業、テレワークなどによりCO2を315万トン削減。エネルギーマネージメント・システムの普及により13年までにエネルギー使用量を20%削減)、ITによる生活の対炭素化(遠隔教育による教育費用の10%削減、遠隔医療による医療機関訪問回数を20年までに30%削減。生ゴミ20%減量。新築住宅のエネルギー効率を13年までに20%向上)、ITによる製造部門の低炭素化(13年までにエネルギー効率を8%向上、CO2を172万トン削減)、スマートグリーン交通・物流体系への転換(交通渋滞を最小限にすることによりCO2を107万トン、物流の効率化によりCO2を172万トン削減)などが注目されます。