エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

政府の成長戦略でも強調されているスマートグリッド

2011-06-16 05:52:14 | Weblog
 政府の成長戦略の基本方針においては、環境エネルギー分野での「グリーンイノベーション」により、20年までのCO2「90年比25%減」とともに、①50兆円超の環境関連新規市場、②140 万人の環境分野の新規雇用を実現することを目標として掲げています。また、日本国内でのCO2削減に関する新中期目標にとどまらず、日本の民間ベースの技術を活かして世界の温室効果ガス削減量を13億トン(日本全体の総排出量に相当)以上削減するという目標を掲げていることも注目されます。
 「You Energy」のパラダイムをもたらすスマートグリッドに関しては、「日本型スマートグリッドにより効率的な電力需給を実現し、家庭における関連機器等の新たな需要を喚起することで、成長産業として振興を図る。さらに、成長する海外の関連市場の獲得を支援する」として、「グリーンイノベーション」の中核として位置付けるとともに、地方から経済社会構造を変革するモデル作りの有力なツールとしてもとりあげているのが特徴です。
 特に関心を引くのは、エコ住宅の普及、再生可能エネルギーの利用拡大、ヒートポンプの普及拡大、LED や有機ELなどの次世代照明の100%化の実現などにより、住宅・オフィス等のゼロエミッション化を推進するとしていること、家庭部門でのゼロエミッション化を進めるため、各家庭にアドバイスをする「環境コンシェルジュ制度」を創設するとしていることなどです。
 地方とスマートグリッドに関しては、かつて09年12月22日に発表された総務省の「原口ビジョン」の中で、地域におけるクリーンエネルギー資源の賦存量の調査とフィージビリティ調査、固定価格買取りの仕組みや住民共同出資の活用等も含めた事業化方策についての先行実証調査を全国的に展開(10年度第2次補正予算)、再生可能エネルギーの「地産地消」プロジェクトを全国50地域で創出(15年)、売電収入(ポイント)をエコ商品の購入、電気自動車への充電対価等にあてる「グリーン・コミュニティマネー」の全国展開完了(20年)が謳われていました。
 「原口ビジョン」のこの目標は、あまりにもアンビシャスすぎて撤回されたようですが、3・11以降の電力需給状況の下で、その復活を期待したいところです。

国民一人一人に響くメッセージ:「You Energy!」

2011-06-14 06:22:05 | Weblog
問題は、大規模に導入されようとしているスマートグリッドが、企業や産業のみならず、一般国民がスマートグリッド導入のメリットを実感できるようになるかということです。
現在、再生可能エネルギーの全量買い取り制度の導入を目指した法案が国会に提出されていますが、このことは、国民が売電収入を得る機会が増大することは確かですが、他方、買取りコストや系統安定化コストに対応して電気料金の引き上げなどが必要となります。トータルとしてのメリット提示や国民の意識喚起なしには、再生可能エネルギーの全量買い取りに伴う負担、ディメリットだけを感じてしまうことになりかねません。
15年前のIT革命勃興期には、電子商取引やテレワークなどの可能性が語られ、「自分自身の生活やライフスタイルが根本から変わるのではないか」という期待やわくわく感がありました。また、良し悪しは別として、渋谷のビットバレーに代表されるビジネスモデル百花繚乱状態によるベンチャー起業やそれへの投資というわくわく感も大きなものがありました。その結果、楽天に代表されるネットショップ、ネット証券、ネット書店、ネット広告会社などが次々と出現しました。
「スマートグリッド革命」を本格化させるためには、動画配信の「You Tube」に匹敵する「You Energy」という世界を創造し、おびただしい起業、イノベーションが起こる基盤を形成することが必要です。IT革命時の「誰もが情報発信できる」=「誰もが既存のしがらみをぶち破ってネット上で新しいビジネスができる」に相当する「You Energy!誰もがエネルギーを作れる」=「新しいビジネスを創造できる」というパラダイム変化が顕在化し、それが「経済成長&雇用創出」につながるというパラダイムを創造することが必要です。人々が新しいライフスタイルを自ら創り、その結果産業と雇用が生み出され、経済成長につながるという今までとは逆向きのイノベーション・プロセスです。
そのためには、一般国民に対するスマートグリッドのメリットを顕在化させ、わくわく感を与えなければなりません。スマートグリッド導入による一般国民のメリットとしては、まず、需要応答の徹底による電気料金の実質的な引き下げがあります。その上で、省エネによる発電(ネガワット)と太陽光発電等による創エネ(ポジワット)をトータルとして個人・法人による発電と捉えるエネルギーマネージメント・サービスにつなげ、発電収入やCO2削減分に対応したエコポイントを一般消費者に還元することが必要です。
家庭のエネルギーマネージメントであるHEMSやビルのエネルギーマネージメントであるBEMSはその発展形と言えますが、そうなれば、電力会社などは「賢い需要家」の省エネ・創エネに伴う各種のニーズに対応するために、サービスメニューを多様化せざるを得なくなります。HEMSやBEMSを基本にしたスマートグリッドを発展させ、「You Energy」のパラダイムをもたらすというのが「日本型スマートグリッド」のあるべき姿です。

「節電文明のつくり方」―節電による「闇」のかなたの「光明」へ

2011-06-13 06:23:20 | Weblog
 NHKのETV特集「暗黒のかなたの光明~文明学者 梅棹忠夫が見た未来~」<梅棹忠夫の未完の著『人類の未来』をテーマにしたもの>を見て、次のような詩を書いてみました。拙いもので恐縮ですが、アップいたします。

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「節電文明のつくり方」―節電による「闇」のかなたの「光明」へ    加藤敏春 
    
梅棹忠夫の未完の著『人類の未来』の最後の言葉は、「暗黒のかなたの光明」。
逆説的だが、節電による「闇」のかなたに「光明」があるかもしれない、と思った。
ヒロシマとナガサキでは「過ちは再び繰り返しません」と誓った。

しかし、今私たちが遭遇しているのは「人災」とも言えるフクシマ。
子供たちが日々放射能の恐怖にさらされている。
チェルノブイリでも、子供たちの甲状腺がんが急増したのは事故から4年後。
その子供たちが今、結婚適齢期を迎えている。

文明とは、科学技術により産み出される制度と装置。
一旦できれば、文明はそのほころびを自ら繕うことはできない。
原子力発電も同様だ。
梅棹は、それを「文明との競走」と表現。
「理性」によりひた走る文明は、地球の限界を超え、ときに地球や人類を破壊しようとさえする。

文明とは、「知的生命体」である人間の業としての科学技術が産み出す人類の活動の総体。
文明なき人類は存在しない。しかし、その「文明に未来はあるのか?」。
梅棹は、「理性」に代わる「英知」が必要としている。
40年以上にわたる思索の最後で梅棹が問いかけたと同じ命題に、我々は直面している。
私は、チェルノブイリを訪れた3年前に痛烈にそのことを認識した。

「英知」とは何か。ヒントになるのは「プロシューマー」。
生産活動は最も創造的な活動だ。
情報のみならずエネルギーについて、消費するのみならず生産もする「プロシューマー」。
「情報革命」に次いで必要なのは、「エネルギー革命」。真の「プロシューマー」は情報だけでは出現しない。
「英知」とは、情報とエネルギーの生産活動の過程で「プロシューマー」が陶冶するもの。

国民一人一人が発電所になる「スマート国民総発電所」は、「プロシューマー」が創り上げる社会。
バーチャルな「スマート国民総発電所」は、何十ギガワット=原子力発電所何十基分にも相当するエネルギーを草の根で産む。
電気だけではなく熱。再生可能エネルギーも必要だが、まずコジェネで6割捨てているエネルギーを利用することが必要。
しかも、対象となるのは、ポジワット(創エネ)のみならずネガワット(省エネ)。
「スマート国民総発電所」では、エネルギーが個人やコミュニティの間で相互融通される。それは、「ユーチューブ」の先にある「ユーエネルギー」の世界。

ずっと私は、「情報革命」、「エネルギー革命」に続く「思想革命」の到来について考えてきた。
その「思想革命」は、ルター、カルヴァンなどによる宗教改革に匹敵するマグニチュードのもの。
「プロシューマー」は、「思想革命」の担い手ではないか。この1月、それを「美へのイノベーション」と呼んだ。
マイケル・サンデルの「正義」=「善」の世界を超えたものが「美」の世界。
日本人の美的感覚、善悪意識とも相通ずる。
「プロシューマー」が「美」の世界を創る。日本人の感性が活かされる。

梅棹は、『アマチュア思想家宣言』という小文を発表し、「思想」をもっと気軽に使おうと呼びかけている。
「思想」という言葉は、今は死語に近いが、本来「思想」はアマチュアのためにある。
アマチュアこそが「光明」である、アマチュアこそが文明を変えることができる。
梅棹はそう主張したかったのではないか。

梅棹のアマチュアを私なりに問題設定し直すと、「プロシューマー」。
東日本大震災と福島第一原発の事故の後、文明の舵を切るのは今しかない。
「暗黒のかなたの光明」を目指して。
歴史は、私たち自身が作るもの。「私たち自身が歴史」と梅棹は言っている。

節電こそが「光明」の始まりなのではなのか?
節電による「闇」の中に何を見るか。
「ユーチューブ」の先にあるのは「ユーエネルギー」。真の「プロシューマー」は情報だけでは出現しない。
「プロシューマー」による「思想革命」に期待したい。    

(2011年6月11日記す)


本日(6月10日)角川書店より『節電社会のつくり方:スマートパワーが日本を救う』を刊行しました

2011-06-10 06:52:56 | Weblog
角川書店より好評発売中!:お近くの書店またはネット書店(アマゾンなど)よりお求めください。

節電社会のつくり方―スマートパワーが日本を救う!加藤敏春著
定価:本体724円(税別) 角川ONEテーマ21版228ページ ISBN978-4-04-710292-7
日本の未来を照らす新しい電力の仕組み 電力会社の神話崩壊! 日本を蘇らせる“エネルギー革命”の方法とは!

★ 日本の電力網、実は7割がロスするだけ
★ 日本の電力システムは世界標準から取り残されている
★ 柏崎刈羽・チェルノブイリ原発事故が教えるもの
★ 日本型スマートグリッドの仕組み
★ “一億総発電所”で収入も増える
★ エネルギー革命はビジネスチャンスの宝庫

目次
はじめに
第1章 「節電社会」は待ったなし
 1 はじめて経験する「本当のエネルギー危機」
 2 電気エネルギーのあらましを知る
 3 いま「節電社会」に向けてなすべきことは?
第2章 節電社会のキーワードは「スマートグリッド」
 1 スマートグリッド登場の背景は
 2 スマートグリッドの働きと効果
 3 グリッドの主役はスマートメーターとHEMS
第3章 エネルギーと社会のスマート化は世界の流れ
 1 原子力から考えるエネルギーの未来
 2 原子力とどう接していけばいいか?
 3 スマートエネルギーへの各国のアプローチ
第4章 エネルギー革命が創る新しい社会とビジネス
 1 新しい社会基盤は「ハイブリッドな電力網」
 2 ゴールは「スマート国民総発電所」
 3 ユーエネルギーの進展でビジネスも変わる
 4 スマートグリッド環境で有望なビジネスは?
第5章 新しい国のビジョンを描こう
 1 日本の節目、歴史の門出に立つ
 2 縮み思考から抜け出そう
終章 本書のまとめと「スマート国民総発電所」実現へ
あとがき

著者略歴

加藤敏春(かとう・としはる)
1977年東京大学法学部卒業、同年通産省(現経産省)入省,84年米国タフツ大学フレッチャー・スクールにて修士号取得。その後、在サンフランシスコ総領事館経済担当領事,通産省サービス産業課長,東京大学大学院客員教授,内閣審議官等を歴任。1994年から95年にかけてインターネットの民生利用,ベンチャービジネスに関するシリコンバレーの動向を日本に紹介。以来各種の提言活動を展開し、一般社団法人スマートプロジェクトを設立。「エコポイント提唱者」として政府が進める省エネ家電&住宅エコポイント事業に協力するとともに、節電、スマートグリッドの推進、CO2排出削減等に関する公益的活動を展開。 著書に『スマートグリッド革命』(NTT出版)、『エコマネー』(日本経済評論社)、『マイクロビジネス』(講談社)など多数。第17回東洋経済・高橋亀吉記念賞最優秀賞などを受賞。kato.toshiharu@gmail.com



HEMS・BEMS革命を進展させるスマートメーター&パワーメーター

2011-06-09 06:10:38 | Weblog
HEMSやBEMSの中で重要な役割を担うものとして注目されているのが、スマートメーターやパワーメーターです。スマートメーターやパワーメーターを介した双方向通信により、需要応答や負荷制御が可能になります。アメリカには、、電力ネットワークや家庭消費エネルギーのモニタリングによるエネルギーの効率化を推進する団体であるDemand Response and Smart Grid Coalition(DRSG)が活動しています。この団体には、ネットワーク化された電気メーターや、消費者と公益サービス企業との間で情報を共有するソフトウェアを作る会社などが加入しています
米調査会社ABIリサーチは、世界のスマートメーター設置台数は、14年には08年の3倍を上回る1億8000万台に達すると予測しています。地域別内訳は、EUが1億1500万台で1位、次いで、北米が4500万台で2位、アジア太平洋地域が3位、中南米が4位となると見込んでいます。主なスマートメーターの製造企業は、ITron、Landis+Gyr、Emeter、 Elster、 Sensus、GE(GE Energy)のスマートメーター大手6社れに加えて、スマートメーター・ネットワークを得意とするSilver Spring Networks、Trilliantなどです。

アメリカのBEMSは学校と病院から

2011-06-08 00:02:44 | Weblog
BEMSについて、先行しているのはアメリカです。アメリカでのBEMSの端緒となったのが、学校と病院のエネルギーマネージメントです。このうち学校のBEMSに関しては、08年に学校のスマ-トエネルギー化、グリーンスクール実現を支援する法律(Green Performing Public School Act)が制定され、5年間で2兆円規模の資金を投資して学校の省エネを推進しています。環境教育の推進とともに、モデルとして、1学校あたり年間1000万円の節約、これにより教師の増員、新しいPCの導入、図書の購入を促進するというものです。また、08年7月米エネルギー省(DOE)は、病院のエネルギーマネージメントを進めるというイニシアティブを発表しています。これは、病院のエネルギーコストが50億ドル、商用オフィスビルに比べて単位あたりのCO2排出量が2.5倍であることにかんがみ、既設の病院については20%、新設の病院に対しては現行基準より30%省エネを促進しようというものです。
さらにアメリカでは、最終エネルギー消費量のZEB(Net Zero Site Energy)を目指すZEB(Net-Zero Energy Buildings)への投資が政府を中心に行われています。08年8月米エネルギー省(DOE)は、「07年エネルギー自給・安全保障法 」(Energy Independence and Security Act of 2007:以下「EISA法」という)に基づき「Net-Zero Energy Commercial Buildings Initiative」を発表し、ZEBを目指したBEMSへの取組みを開始しました。その内容は、30年までに新築されるすべての業務ビルをZEB化する、2040年までに既存の業務ビルの50%をZEB化する、50年までにすべての業務ビルをZEBとするための技術・慣行・政策を開発・普及するというものです。また、アメリカ政府はARRA法に基づき、例えば45億ドルの連邦政府ビルの省エネ改修を予算に盛り込みました。
 またアメリカでは、アメリカグリーンビルディング協議会(USGBC)が自主評価システムであるLEED(Leadership in Energy and EnvironmentalDesign)の「Green Building Rating System」を運営管理しています。LEED評価システムでは、用地設計、室内環境の品質、エネルギー・建材・水の有効利用という大きく5つのカテゴリーについて、グリーン建築の指定基準を満たしているかどうかにより点数化されます。LEED評価が高いということは、優れたグリーンビルディング設計である証しで、州政府機関や地方自治体、さらには民間団体からさまざまな財政面、規制面の優遇措置を受ける資格が得られるようになっています。

BEMSが続いた

2011-06-07 05:53:29 | Weblog
HEMSに続いて、ビルのエネルギーマネージメント、BEMSへの動きが活発化しています。日本では建築物のZEB(Net-Zero Energy Buildings)化について、20年までに新築公共建築物等でZEB化を実現するとともに、30年までに新築建築物の平均でZEBを実現することが目標となっていますが、その基になったのは、09年11月経済産業省の報告書です。報告書では、「30年までに新築建築物全体での実現」というビジョンと既築の省エネ改修の効率が大幅に高まる場合、30年の業務部門の一次エネルギー消費量は概ね半減すると見込んでいます。また、これに伴い、追加的に必要となる投資額は概ね年間8000億円程度と見積もっています。
 ビジョンを実現するための方策としては、省エネ法における建築物の現行基準を早急に引き上げるとともに、将来的には、基準達成を義務化の検討などの規制の強化のほか、固定資産税の軽減等税制上のインセンティブを与えること等の支援策・誘導策の強化、ビルの省エネ性能を評価するラベリング制度の整備等を提言していますが、注目されるのは、09年7月にビルオーナー、設備・機器メーカー、ビル管理システムのベンダー、ESCO事業者より構成される「省エネビル推進標準化コンソーシアム」の活動推進やアメリカとの連携強化の必要性を謳い、BEMSをスマートグリッド実現のための必要不可欠な環境整備と位置付けていることです。
これを受けて東京ガスは、横浜市港北ニュータウンにある自社ビルを段階的に改修して、30年までにZEB化する計画です。9月までに太陽光発電、ガスのコジェネレーションアドを組合せたシステムをスタートさせ、将来は近隣施設にもエネルギーを供給しようとしています。また三菱地所は、東京の丸の内、大手町などの5地区で段階的に地域冷暖房システムを改修し、10年後をめどに5地区におけるエネルギー効率を25%向上させ、地域冷暖房のエネルギー損失をゼロにする計画です。鹿島は、ビル設備の省エネ運転システム、太陽光システムと地中熱のエネルギーを組合せて使う冷暖房システムなどの技術開発を進めています。


アメリカのHEMSは「アーリーアダプター」(13.5%)段階

2011-06-06 00:00:01 | Weblog
この分野で先行しているのはアメリカで、様々な企業がHEMS市場に参入しています。従来のホームオートメーションというのは,高所得者層に対するサービス提供が中心でした。それがHEMSというキラー・アプリケーションの登場によって、一気にローエンドに降りてきています。このときに宅内で必要になるのが、HANを安価に実現するための低消費電力の通信方式です。今アメリカでは,無線ではZigBeeやZ-Waveそして電力線通信ではHomePlugなどに大きな関心が集まっており,関連するベンチャー企業の取組みも活発です。
さらに期待が高まっている企業としては、HEMSのサービス事業を請け負う「サービスプロバイダー」という形態があります。サービスプロバイダー事業とは,家庭へのシステムの導入から始まり,課金処理,マネージメント,そしてHEMSシステムといったもので,これらを一貫して提供する企業も出てきています。グーグルとマイクロソフトがHEMSの世界に参入し、グーグルのGoogle Power MeterとマイクロソフトのMicrosoft Hohmが覇権を競い合っていますが、それは、両社ともこのようなHEMS市場の発展可能性に着目しているからです。
さらに、ホームコミュニケーション(Home Communication)、ホームケア(Home Care)とHEMSの統合へと展開しているのが、今のアメリカの状況です。HEMSがキラー・アプリケーションとなつており、「イノベーター」出現の段階(全体の市場の2.5%)から「アーリーアダプター」出現の段階(全体の市場の13.5%)に入っています。その後は、「アーリーマジョリティ」の段階(全体の市場の34%)へと発展していくでしょう。コミュニティをターゲットにしたマーケティング戦略が展開されたり、新しいネットワーク型省エネ家電が市場に投入されています。
ここでは、テレビに代わってコミュニケーション端末となりつつあるスマートフォンがHEMSの端末として使われるという構図も見えてきています。Andoroidを搭載したスマートフォンを端末にしたサービスプロバイダーのビジネスモデルの構築も進んでおり、Andoroidは家電、車載などさまざまな形態の端末に利用可能となっています。


革命はHEMSから始まった

2011-06-03 05:47:13 | Weblog
日本では、家屋のZEH(Net-Zero Energy Buildings)化について、20年までにZEHを標準的な新築住宅とするとともに、30年までに新築建築物の平均でZEHを実現することが目標となっています。これにより、「スマートグリッド革命」の中核として、HAN(Home Area Network)の領域でのHEMS革命が進展しています。
HEMSが、華麗にして壮大なる「スマートグリッド革命」の第1幕です。今までは、ネットワーク化されているのはAV機器だけでしたが、今回ネットワーク化されているのはエアコンや冷蔵庫など、これまで家庭のネットワーク化の波から取り残されてきた白物家電が中心です。
この点に関して、日本ではこれまで家電メーカーが中心となって開発してきたため、自社の家電しかネットワークにつながらない方式になりがちで普及しませんでした。しかし現在では、家電メーカーが開発してきた技術を基に、住宅メーカーや大手建設業者などが中心となって、住宅やビル単位の電力管理システムの構築し、HEMSが開始されています。たとえば、大和ハウスは、通信規格に「エコーネット」を使い、家電などで通信しながら消費電力を見える化する家を開発しています。
さらに、太陽電池や蓄電池など複数の電源を制御する技術も実用段階になっています。この関連では、清水建設は、太陽電池とニッケル水素電池、電気2重層キャパシタ、ガス・エンジン2基の複数の電源を使って自社ビル内の電力制御システムを構築しています。09年からは、経済産業省が「スマートハウス・プロジェクト」を推進し、送配電網との双方向通信を視野に入れたシステム開発を支援しており、スマートグリッドへの急展開を見せています。

「グリーンカラー・エコノミー」の創造へ

2011-06-02 05:56:09 | Weblog
この関係で注目すべきは、オバマ政権の「グリーン・ニューディール」がトップダウンの政策スローガンから国民運動へと進化しつつあることです。この点で、『The Green Dollar Economy』(邦訳『グリーン・ニューディール』)は、アメリカの「グリーンカラー・エコノミー」(Green Collar Economy)への動きを迫力をもって伝えてくれます。著者のヴァン・ジョーンズは、アメリカではいち早く「グリーンカラー・ジョブ」(Grenn Collar Job)の重要性を訴え、わずか2年で一介の市民運動家から普遍的なグリーン・エコノミーを創出する国民運動の旗手に駆け上がった人物で、グリーン・エネルギー産業への職業訓練の強化を求める国際NGO「グーン・フォー・オール」(GREEN FOR ALL)を主宰しています。
ヴァン・ジョーンズは、①地球環境問題と②アメリカ経済の弱体化および格差の拡大を現在のアメリカの2大危機として捉え、この2つの危機を同時に解決するための国民運動を展開するとともに、環境負荷の少ないグリーン産業の発展とそれによる経済的恩恵をあらゆる社会的階層の人々が享受できるようにする「グリーンカラー・エコノミー」の実現を唱え、ロサンゼルス(エネルギー効率の向上)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(エネルギー効率の向上)、ペンシルベニア州(風力発電)、カリフォルニア州リッチモンド(太陽光発電)、シカゴ(食物)、ヒューストン(廃棄物)、ボルティモア(建設資材)などでの豊富な実例を紹介しています。アメリカのグリーン・ニューディール国民運動は、市民層の草の根型の参加により「グリーンカラー・ジョブ」(Grenn Collar Job)の創造を目指すというより明確な目標を実現するための合目的的な国民運動となっています。