エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

3段階で進む米国の需要応答への国家的取組み

2011-03-29 06:34:07 | Weblog
アメリカのスマートグリッドの進化は、国家的需要応答への取組みに端的に表れています。アメリカの需要応答とは、発電事業者と小売事業者との間で電気が取引される卸売市場の需給の変化に基づき、小売事業者が需要家に電力消費量を変化させるインセンティブを提供することを意味しています。アメリカの電力業界に対しては、振興に関するものはエネルギー省(DOE)、規制に関するものは、卸売市場については連邦エネルギー規制委員会(FERC)、小売市場については州の公益事業委員会(Public Utility Commission)というように関係部署が分かれていますが、連邦政府により巨額の導入支援策が講じられているスマートメーターを活用した需要応答に関しては、これら組織を挙げて国家的取組みを進めています。
アメリカにおけるスマートメーターを活用した需要応答は、自動車の電動化、すなわちV2Gとの関係づけを明確に意識しています。前述のように、アメリカ政府はプラグインハイブリッド車を15年までに100万台普及させる計画を有しています。そうなると、大量のプラグインハイブリッド車が家庭などの電力ネットワークから充電することになりますが、そうなった場合でも電力ネットワークの安定化を図る必要があります。その際に、充電の開始時刻など需要側の負荷を制御する仕組みとして、発電側でも消費側でもリアルタイムの電力を監視するセンサ網や通信ネットワークの構築が必須であると考えており、その一部をスマートメーターに担わせるという考えです
 現行のアメリカの電気料金体系はこのような考慮がなされないフラットレートが通常ですが、05年エネルギー政策法は、DOEに対して需要応答を行うことの国家的な利益を数量的に特定すること等を求めました。これがアメリカの需要応答に対する取組みの最初です。
 これを受けて、06年2月に「電力市場における需要応答の利益とそれらを達成するための勧告」(Benefit of Demand Response in Electricity Markets and Recommendations for Achieving Them)と題する報告書がDOEによりまとめられました。これによると、需要応答 には「価格型需要応答」(Price-based Demand Response)(時間帯別に供給費用の違いを反映した電気料金を設定すること)と「インセンティブ型需要応答」(Incentive-based Demand Response)(プログラム設置者が需要家と契約を締結し、卸電力料金の高騰時または緊急時に、需要家に対して負荷制御を要請ないし実施する)の2種類があるとされており、日本の大口需要家との需給調整契約や家庭向けにも提供されている時間帯別料金といったものも含まれる非常に広い概念内容となっています。
 07年EISA法は、3段階で需要応答 を推進することを政府に求めています。第1段階は、州ごとに需要応答 の可能性をアセスメントすることで、この段階は09年6月に終了しました。第2段階は1年以内に推進計画を策定することで、すでに同年10月にドラフトが公表されています。第3段階は、これを受けて連邦エネルギー規制委員会(FERC)とエネルギー省(DOE)が議会に対して、具体的な実施提案を提出することになっています。
 またFERCは、NEPOOL(ニープール:ニューイングランド地域の市場)やPJM(ピージェーエム:東海岸州と中西部の州が加わるアメリカ最大の電力卸売市場)などの全米6つの卸売市場において、小売市場における需要応答の動向を反映して電力卸売市場での価格形成(オークション方式)が進み卸売価格の低下につながるように、卸売市場を管理するRTO(Regional Transmission Operator)やISO(Independent System Operator)によるオープンで透明な価格形成が進むよう環境整備を行っています(07年の指令890など)。
 現在アメリカの各地域ではスマートメーターの導入やそれを活用したスマートグリッドの実証事業が急速に進んでいますが、それらの積極的な動きは、FERCや州の公益事業委員会のコミッショナーの全国団体であるNARUC(National Association of Regulatory Utility Commissioners)による競争的な市場環境整備とあいまって、需要応答というシステムを社会に構築しようという試みであると言えます。日本では、このようなアメリカの国家的な動きはほとんど注目されていませんが、いずれ日本にもインパクトを与えてくるものと思われます。

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