エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

日本として見習うべきアメリカのグリーンジョブ創出策

2010-03-01 21:48:10 | Weblog
 アメリカ国内クリーンテクノロジー分野の被雇用者数(グリーンジョブ)は、全体に占める割合はまだ小さいものの、全体に比べて2倍以上のペースで増加しています。アメリカ政府は雇用創出策の一環として、景気対策法や気候変動対策法案にクリーンテクノロジー産業への支援策を多数盛り込んでおり、それら政府投資の実施状況が今後の雇用増加のカギとなります。
 アメリカ国内クリーンテクノロジー分野(注)の2007年の被雇用者数は約77万人で、被雇用者総数の0.5%です。ちなみに、ガス・電気事業などを含む既存エネルギー産業の被雇用者数は約130万人となっています。
 また、1998~07年にかけてクリーンテクノロジー分野の被雇用者増加率は年率約9%で、全米の平均増加率の約4%に比べ高くなっています。
 その中で特に被雇用者数の増加が著しいのは、太陽エネルギーで、続いてバイオ燃料・バイオマテリアル、省エネルギー、スマートグリッド、風力エネルギーの各分野です。
 地域別では、サンフランシスコ近辺がこの分野の雇用が最も活発で、続いてロサンゼルス近辺、ニューヨーク・ニュージャージー・ロングアイランド地域、ボストン近辺、ワシントンDC・ボルティモア近辺と続きます。
 アメリカのクリーンテクノロジー専業企業で最も従業員が多いのが、イリノイ州ナパビルに本社がある水処理企業のナルコで、1万1,700人を雇用しています。続いて、ワシントン州リバティーレイクのスマートグリッド企業アイトロン(8,700人)、アーカンソー州フォートスミスの省エネルギー型モーター製造ボルドーエレクトリック(7,800人)、カリフォルニア州サンノゼの太陽電池製造サンパワー(5,400人)。大手コングロマリットでは、クリーンエネルギー事業を積極的に進めているゼネラル・エレクトリック(GE)系のGEエナジーが約4万人を雇用しています。
 アメリカ政府の雇用創出策としては、クリーンテクノロジー産業に対する支援を強化しています。具体的には、米国再生・再投資法 (ARRA、通称景気対策法)による800億ドル以上のクリーンテクノロジー分野への助成や税控除をはじめ、連邦議会下院で可決された気候変動対策法案〔米国クリーンエネルギーおよびエネルギー安全保障法案 〕には、クリーンテクノロジー分野に対する多くの支援策が含まれています。
 ARRAによる雇用動向を記している政府サイト「Recovery.gov 」によると、同法により09年10月末時点で約64万人の雇用が創出または維持されたとのことです。このうち、同法に基づくエネルギー省(DOE)の助成措置で、約10万人の雇用が創出または維持されました。
 最も雇用効果を発揮した助成措置は、低所得者住居に対する省エネルギー改修プログラムで、09年10月末までに約4,000人の雇用が創出または維持された としています。
 バイデン副大統領は09年12月15日、「進捗状況報告:クリーンエネルギー経済への転換」と題した報告書をオバマ大統領に提出しました(既報)。
 その中で、ARRAによる政府投資やそれに伴う民間投資で、クリーンテクノロジー分野で88万4,000人分の雇用創出が図られたと報告しています。再生可能エネルギー発電・次世代エネルギー発電に対する230億ドルの政府助成と民間投資の雇用創出効果は、72万2,000人に及ぶということです。
 また、スマートグリッドに対する40億ドルの政府助成で、4万3,000人の雇用が創出され、同分野への民間投資による効果を含めると、雇用創出は10万4,000人に及ぶとしています。
 連邦議会下院で可決され、現在上院で審議されている気候変動対策法案は、ARRA以上にクリーンテクノロジー分野での雇用創出をもたらすと見込まれています。
 アメリカで省エネルギーを推進する非営利団体の米国エネルギー効率経済協議会(ACEEE)は、連邦議会下院で可決された気候変動対策法案に含まれている省エネルギー条項(Title II)が執行された場合、今後10年間に56万9,000人の雇用が全米で創出されるとしています。
 同条項に含まれている建物省エネルギー改修プログラム(Title II SEC. 202. BUILDING RETROFIT PROGRAM)の草案を作ったピーター・ウェルチ下院議員(民主党)は、省エネルギー改修に2年間で200億ドルの支援を政府が提供すれば、2年間で60万~85万人の雇用を創出できると指摘しています。
 この点に関して、オバマ大統領も09年12月6日の雇用創出関連のスピーチで、建物の省エネルギー改修を助成することで大きな雇用創出が可能と述べており、省エネルギー改修対策による雇用創出効果がにわかに注目を浴びています。
 さらに、気候変動対策法案には、スマートグリッド条項も含まれており、スマートグリッドの促進に伴う雇用の創出も期待されています。エネルギー系シンクタンクのKEMAは、スマートグリッドの実施が約28万人の雇用を創出するとの見通しを示しており、このうち約14万人は、全米にスマートグリッドが設置された後も雇用が維持されるとしています。

(注)クリーンテクノロジー分野とは、再生可能エネルギー技術、省エネルギー技術、廃棄物関連技術、再生可能材料技術などを指す。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿