エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「原発9基の新増設」の実現性に関して、関係者の猛省と再検討を促す!

2010-08-06 06:55:47 | Weblog
 環境省の「中期目標実現のためのロードマップ」作りのための作業が行われており、12月までに中央環境審議会の意見具申が取りまとめられる予定です。この作業は「20年までに9基の原発を新増設。稼働率を85%に(現状60%台)」ということが前提となっていますが、原発9基の新増設の実現性に関しては、関係者の猛省と再検討を促したいと思います。
 すなわち、原発9基の新増設に関しては、日本での原発の新増設に関しては、国の安全審査等が終了したとしても、地元都道府県・市町村との安全協定上、地元との合意がなければ新増設できないという日本特有の事情があり、20年までの10年間という短期間のうちに9基もの原発を建設・稼働させるのはほぼ不可能ではないかという疑問があります。
 さらに、原子力のエネルギーとしての特性を十分考慮に入れた計画なのかという根本的な疑問があります。
 すなわち、原子力発電はベースロード電力という役割を担っています。深夜、最も電力が必要とされない時でも発電しているため、そう呼ばれています。原子力発電は、一度稼働すると一年以上連続して発電することになります。構造的に柔軟な発電が不可能なのが原子力発電の特徴です。仮に、CO2排出削減のため火力発電所の代替として原子力発電を増設すれば、膨大な量の電力が夜間に余ることになります。この夜間使わない電力をどうするかが問題となります。
 フランスの場合は、負荷追従運転を実施したり、余った電力を陸伝いに他国に送電することにより対処していますが、このうち負荷追従運転に関しては、プラントに熱応力が働くことから補修点検の頻度が増加する、安全性だけではなく発電効率が大きく低下する、火力発電に比べて燃料費の割合が小さいことから経済的なディメリットも大きいなどの問題があります。また、後者の他国への送電に関しては、日本はフランスのような地政学的な利点がありません。
 残った手段は、揚水発電所をあわせて建設し、夜間に余った電力を揚水発電に使うということですが、相当の数の揚水発電所の立地適地があるのかという問題に加え、そもそも膨大なコストをかけて原発と揚水発電所をセットとして建設することの費用対効果の問題があります。電力自由化が進み、電力会社の経営環境が厳しくなってきている状況下では、電力会社は、発電所を建設するのであれば、原発よりも初期投資が少なく立地問題も比較的少なく、温暖化問題への対処ともなるLNG複合発電のほうを選ぶのではないでしょうか。
 したがって、老朽火力発電所の後継のために原子力発電所を建設するという従来の路線は踏襲するとしても、温暖化対策として原子力発電所を新増設することには、疑問があります。現在日本の原子力発電所の設備利用率は、約60%。中越沖地震の影響で大半が停止したままの柏崎刈羽原子力発電所だけでも、総発電量が821.2万キロワットあります。このように設備容量が余っている原子力発電所について、さらに増設する必要はありません。むしろ、世界レベルからみて異常に低い現在の設備利用率を、世界標準の80%以上のレベルにまで引き上げることが、温暖化対策としては有効です。韓国やアメリカでは、設備利用率90%以上が当たり前です。
 安全性をないがしろにしなくても、現在の設備利用率を20%程度は引き上げることができます。さらに、近年欧米で精力的に取り組まれている出力増強(パワーアップレート)するということも可能です。出力増強に対する日本の取り組みはまだ初期段階で、今後本格的な取り組みが必要です。設備利用率の20%上昇だけで、年間6千万トン(09年8月総合エネルギー調査会需給部会に提出されたデータ)のCO2排出削減を行うことができます。出力増強でも数千万トンのCO2排出削減を実現することも可能なはずです。

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