エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

進む「天津エコシティ」の開発投資

2010-04-21 06:34:25 | Weblog
 中国とシンガポールが共同で中国・天津市郊外に開発を進める環境配慮型都市「中国・シンガポール天津エコシティー」の建設が、10~15年後の完成を目指して着実に進んでいます。エコシティーは内外の投資を次々に獲得し、公共住宅の開発などシンガポールの都市づくりのノウハウも取り入れ、環境と経済成長の両立を図るモデル都市を目指しています。
 天津エコシティーは、天津市中心部から40キロ、天津濱海新区内の広さ30平方キロメートルの塩田跡に環境に優しい都市を開発するプロジェクトで、2008年9月に着工しました。シンガポールと中国の両国政府による都市開発共同プロジェクトは、蘇州工業団地に次いで2ヵ所目です。両政府は07年11月、天津市の政策立案、都市計画、環境保護、リサイクルなどで協力することに合意していました。
 環境保全と経済発展の両立を図る環境配慮型のモデル都市を目指しており、初期開発区(広さ4平方キロメートル)は13年に完成し、全体が完成する10~15年後には約35万人が居住する見通しです。
 開発を担当するのは、両国の政府系企業が折半出資して設立した中国・シンガポール天津エコシティー投資開発会社(SSTEC)。同社の最高経営責任者(CEO)は、シンガポール経済開発庁(EDB)役員のゴー・チャイブーン氏が兼任しています。
 両政府はこれまでに、環境都市としてあるべき姿を示した重要業績評価指標(KPI)を設定しています。KPIは、水道水はすべて飲用可能とする、エネルギーの20%以上を再生可能エネルギーとするなど、大気や騒音などの環境数値目標や、住宅、公園、自然保護などの方針を含む26項目からなります。
 SSTECは09年1月22日、シンガポールの建設会社センバワン・エンジニアーズ・アンド・コントラクターズとの間で、エコシティー北部の工業区「エコ・シリコンバレー」に太陽光電池用ポリシリコン工場を建設するためのフィジビリティー調査を行うことで覚書を交わしました。これを皮切りに、同年7月2日、台湾の大手不動産会社、遠雄(ファーグローリー)と提携して、初期開発区と周辺地区での住宅(計1万2,000戸)や商業施設を開発すると発表するなど、都市開発で各国企業と契約や提携関係を結んでいます。
 天津市の黄興国市長は同年8月24日、エコシティーが合計85件(総額140億元、当時は1元=約15円)の投資契約を獲得したと発表しました。
 その後も契約や提携の発表が相次いでいます。SSTECは10月29日、オランダの電子メーカー、フィリップスと一緒にエコシティー内で省エネルギーの照明器具やエレクトロニクス製品の実証実験を行うことで覚書に署名しました。12月1日には韓国のサムスン物産と、環境に配慮したビジネス地区の設計、開発で覚書を交わしています。
 このほかSSTECは7月13日、初期開発区内の川に面した土地に環境に優しい高級住宅群を開発することで、三井不動産と覚書を交わしました。三井住友銀行と日本総合研究所は11月16日、天津エコシティーに環境関連分野の日系企業を誘致する業務を受託するなど、日系企業も同都市開発に参画しています。
 計画では初期開発区に合計2万6,500戸の住宅が開発されます。このうち、シンガポール政府系複合企業ケッペル・グループが開発する民間住宅(約5,000戸)の第1期工事分(約1,760戸)の販売が、10年第2四半期に始まる予定です。SSTECによると、ショールームの近くにはエコカーの展示場も配置され、住宅購入者に環境に優しいライフスタイルを提示していくということです。KPIでは、域内移動手段の9割を徒歩や自転車、公共輸送などにするとしています。また、公共輸送車や一般車もハイブリッドカーなど環境に優しいエコカーの使用を目指しています。
 エコシティーには高級住宅だけでなく公共住宅も建設されまする。13年までに住宅の2割以上を公共住宅とするのが目標です。09年10月に初期開発区内の公共団地(約3,000戸)の建設が始まっており、11年5月には最初の住人が入居する予定です。公共団地の設計は、シンガポール政府系建設コンサルタント会社スルバナ・インターナショナル・コンサルタンツが担当し、シンガポール住宅開発庁も設計や公団住宅の政策立案にかかわる。公共団地の近くには公園やレクリエーション施設、職場を配置するなど、シンガポールの都市づくりのノウハウが活用される見通しです。

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