エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

日産の電気自動車戦略と『リーフ』試乗レポート

2010-03-31 22:07:39 | Weblog
日経エコロミーに「リーフ試乗レポート」が掲載されていますが(こちらをご覧ください)、以下は、今後のpHEV、EVに関する私の観察、見解です。

『自動車革命』においては、あのトヨタでさえ、「21世紀において自分たちは時代が必要とする企業なのか」(豊田章夫社長)と自問自答し、苦悩する姿を映し出されました。2009年11月トヨタは、ガソリン車の自動車レースの最高峰であるフォーミュラ・ワン(F1)からの撤退を表明しました。直接的な撤退理由は企業収益上からの経費節減ですが、時代の変化を感じさせる出来事でした。さらに10年における全世界で700万台にも及ぶプリウスのブレーキのリコール騒動は、複雑化しすぎたガソリン自動車設計のあり方を浮き彫りにしました。
その中でトヨタと違った形で生き残り戦略を展開しているのが日産自動車です。日産自動車は2010年秋に電気自動車(EV)「リーフ」を5万台発売し、12年には20万台に拡大する計画です。11年には中国市場にも投入します。日産自動車は、Gridpoint,Idaho National Laboratoryなどとともに、米DOEから1億ドルの支援を受けて、アリゾナ、カリフォルニア、オレゴン、テネシー、ワシントンの5州で電気自動車や充電インフラを構築しようとしています。これはアメリカ最大の電気自動車普及プロジェクトで、ここではGridpointのソフトウエアSmart Charging 3.0が使用されます。
日産自動車は電気自動車(EV)を情報インフラにすることも構想しています。電気自動車(EV)は2次電池の状態を常にモニターする必要があり、自動車とデータセンターの間で24時間通信する仕組みを構築することになるためです。常時通信するようになれば、例えば車載カメラの映像をデータセンターに収集し,他のユーザに提供することで,カーナビなどの利便性を高めるという応用例が考えられています。日産自動車はこうしたデータを世界的に集めて集約化する「グローバル・データセンター」をも構築しつつあります。今や電気自動車(EV)は、未来の移動手段としてだけでなく、低炭素経済社会や新エネルギー社会システムの実現手段として、スマートグリッド社会の一翼を担うことになります。
また、日産自動車は、電気自動車(EV)の普及には自治体や国との連携が欠かせないとして,横浜市と「ヨコハマ モビリティ “プロジェクトZERO"」を推進しています。日産自動車は、こうした電気自動車(EV)の普及に向けた提携関係を,2009年12月末時点で30以上の国や都市と締結しています。
ここで、自動車各社の戦略を整理してみたいと思います。
電気自動車(EV)に積極的な日産自動車やGMは、先行者利益を確保すべく、自社に有利なような電気自動車(EV)に関する標準化の推進、業界先駆者としてのポジションも確立などを目指していると考えられます。他方、中堅メーカーである三菱自動車は、自社の限られた経営資源を電気自動車(EV)集中投下することで生き残りを図ろうとしているのでしょう。二次電池メーカーの中国の比亜迪(BYD)は、必ずしもその主戦場を電気自動車(EV)という「車両の世界」だけに限定せず、PC業界におけるインテルのような「基幹部品プレイヤー」として、業界の覇権を狙っていると見ることができます。
トヨタ自動車やホンダは、当面はプリウス、インサイトなどのハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー(pHEV)に集中し、電気自動車(EV)市場開拓には慎重な姿勢を見せていますが、こうした姿勢は、自社にとって現在の競争優位性を確保しながら、新しいビジネスモデルの構想・構築を慎重に見極めていると見ることができるのではないでしょうか。
激動の自動車業界においては、戦略の方向性をどのように見定めるか、状況の変化や進展に応じて、如何に機動的に戦略を転換するかが、生き残りのため必要不可欠となっています。

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