エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッドの進化モデル」

2011-08-10 06:31:41 | Weblog
情報通信ネットワークにおいては、インターネットでの動画共有サービスを提供している「You Tube」に象徴されるように、「あなたが作るテレビ」という段階にまで発展して「個人が番組を作り、配信して楽しむ」というパラダイムが出現しています。新しいネットワークであるスマートグリッドにおいても、この方向、言ってみれば「You Energy」に向けた進化が起こることが予想されます。
図表(http://www.smartproject.jp/model)は、情報通信に限らずエネルギーを含めた公益事業ネットワークへの進化のパターンを示したものですが、縦軸は、消費者主導権が低いか高いか、ネットワークを供給側だけで管理するのか、供給側だけでなく需要側を含めて需給両面で管理するのか、横軸は、ネットワークの構造が集中型のものか、分散型のものなのかを表しています。これが、「スマートグリッドの進化モデル」です。この図において、現在の電力ネットワークはA象限にありますが、スマートグリッドの登場はこれがB象限(主としてアメリカの動き)またはC象限(主として欧州の動き)に移行しようという動きであると理解できます。
A象限は、従来型の公益事業市場構造が優勢であり、消費者は伝統的な供給者と消費者の関係を好んで選択しているかもしくは受け入れている領域です。これに対して、B象限は、消費者がさらなる主導権の確保に向けて着実に前進しているものの、規制または技術的な制約によりその影響力は一定の範囲に限られている領域、C象限は、進展する送配電グリッドおよびネットワーク技術の組合せがエネルギー利用に関する責任の共有化を可能にしているものの、消費者はそれほど主導権を発揮できず、利点の多くは公益事業者側に有利に働いている領域です。
この図表が端的に示すように、B象限またはC象限の行きつく先がD象限です。D象限は、多種多様な送配電グリッドおよびネットワーク技術によって責任の共有化が次第に可能になり、特定のエネルギー利用に関する目標に対する消費者の関心が新しい市場と新しい製品需要を生み出し、利点が消費者と公益事業者間でうまくバランスされている領域です。D象限へ移行しようという動きの典型は、後述する京都大学の松山隆司教授が提唱する「オンデマンド電力ネットワーク」構想と東京大学の阿部力也特任教授が提唱する「デジタルグリッド」構想です。ここでは、分散構造がネットワーク化されていることがポイントです。IT革命時の「誰もが情報発信できる」に相当する「You Energy !誰もがエネルギーを作れる」=「新しいビジネスを創造できる」という「You Energy」へのパラダイムシフトがD象限では起こります。
このD象限への移行が現実に起こりうることに関しては、IBMの07年6カ国調査(日本、ドイツ、オーストラリア、アメリカ、イギリス オランダ)でうかがい知ることができます。「IBM Institute for Business Value 2007」によると、6カ国の企業経営のトップにある人々にアンケート調査したところ、日本とドイツにおいて、D象限を選択した企業経営者の数がA象限を選択した企業経営者の数を上回っています。この調査結果は、一般の想定とは異なったものと言えますが、それだけ新しいビジネスモデルに対する期待が日本とドイツにおいて高いことの反映と言えるのではないかと思います。


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