エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

COP15後のアメリカの温暖化対策の行方

2010-01-30 17:46:41 | Weblog
 09年12月10日上院気候変動対策法案の妥協案を探っているケリー外交委員長(民主党)ら超党派の議員がこれまでの検討内容をまとめた書簡をオバマ大統領に提出していますが、COP15後のアメリカの対応を占ううえで参考になる点が多いので、解説してみたいと思います。

1 削減目標値は17%に
 この書簡を上院環境・公共事業委員会を通過した法案の内容と比べると、短期のGHG排出削減目標値を20%ではなく17%としている点が異なります。このほか、沖合の石油・天然ガス掘削、原子力発電やクリーンコールの促進を特に強調していることや農業従事者の削減努力に対する支援を盛り込んでいることが特徴的です。
 書簡が提案している今後のアメリカの温暖化対策の枠組みの主な内容は、次のとおりです。
①投資や雇用を創出するためには施策の予見性が重要で、州政府や地方政府ごとのパッチワーク的なGHG排出削減対策ではなく、連邦全体にまたがるシステムの構築が重要だ。
②排出削減の方法は、規制によるよりも、市場に委ねるシステム(キャップ・アンド・トレード)とすべきだ。
③短期的な削減目標は05年比で17%とすることが、達成の可能性が高く適正だ。また、長期的な削減目標は05年比で約80%とすべきだ。
④税金や国の予算を使わないかたちで企業や消費者、特に収入に占めるエネルギー費用の割合が大きい低・中所得者層の支援を図る。
⑤企業の費用効果的な手段による削減義務履行を助けるため、クリーンエネルギー技術の開発や普及を積極的に投資する。
⑥エネルギー安全保障の観点から、陸上・沖合の石油・天然ガス掘削を促進する。また、国内の石油精製能力を維持する。
⑦エネルギー効率向上に対する投資を促進する。
⑧炭素価格の安定化を図るため、価格の上下限の設定や排出枠の戦略的留保などの多様なメカニズムを導入する。
⑨原子力発電を積極的に促進する。米国が失った原子力発電建設技術を取り戻すため、次世代の作業員のための職業訓練を助成する。また、安全性と環境問題を踏まえつつ、小型原子力発電を含む原子炉の許可審査の効率化を図る。使用済み核燃料の最小化のための新規・安全な方法の研究開発を支援する。
⑩クリーンコール技術の早期開発・普及を図る。また、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術の普及を促進する。
⑪カーボンリーケージ(注)を防ぎ、米国製品の競争力を維持するため、製造業に対する積極的な支援を行う。
⑫農業関連のGHG排出は規制対象としないが、削減を行った農業従事者が利益を得るような新たなシステムを導入する。
⑬排出削減努力が十分ではない国の輸出から米国の競争企業を保護するため、WTO協定上の義務に沿った強力な措置を講じる。

2 環境保護庁単独の排出規制を警戒
 環境保護庁(EPA)は12月7日、大気汚染防止法に基づき、GHGの危険性について、「6種のよく混合されたGHG(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、六フッ化硫黄)の大気中の現在および将来見込まれる濃度は、現在および次世代の人々の健康と生活を脅かすものだ」と発表しました。
 EPAは発表の際、「オバマ大統領とジャクソンEPA長官は、気候変動問題の立法による解決とそれに向けた議会の努力を支持している。しかし、気候変動は今でも国民の健康や生活を脅かしている。GHGを大気汚染防止法の汚染物質だと認めた07年の最高裁判決に応えるため、EPAが自身の義務を履行することが重要だ」として、議会の気候変動対策法案審議の進捗次第では、EPAが単独で大気汚染防止法に基づく自動車排ガス規制強化などの対策を講じる可能性を示唆しています。
 書簡はこの点に触れ、EPAが行動を起こす前に議会が行動を起こすことが重要だと、議会側の早期進展を促しています。
 上院の気候変動対策法案審議は、年明けに持ち越されることとなりました。リード院内総務(民主党)は、ヘルスケア法案の審議などを考慮すると、気候変動対策法案の審議は早くても10年春になるだろうと発言しています。
(注)京都議定書の枠組みの中でGHG削減義務を持つ国の企業が厳格な環境規制を免れるため、削減目標を持たない国に生産設備をシフトすることなどにより、相手国でのGHG排出量が増加すること。

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