エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「エコポイント2.0」(シリーズ;消費にこそ着目した成長戦略のツール)

2010-12-04 06:34:32 | Weblog
以前は、「消費にも着目した成長戦略でなければ意味がない」として、政府の新成長戦略・グリーンイノベーション政策の盲点を指摘しましたが、今回は、「生産年齢人口の減少→就業者数の減少→消費の減退」が、日本経済が「失われた20年」を経験した本当の原因であり、「消費にこそ着目した成長戦略でなければ意味がない」ということを指摘してみたいと思います。この観点からも、消費の喚起のためには消費者に退蔵されるマネーではだめであり、有効期限があり、かつ、名目金利がゼロで貨幣の流通速度を格段に上げるエコポイント2.0を活用すべきだという結論になります。
日本では95年頃を境として生産年齢人口の減少がおこり「生産年齢人口の減少→就業者数の減少」が起こっています。この人口トレンドは中長期的に継続します。10~15年には、史上最大勢力の団塊の世代が65歳を超え、これからの5年間こそ日本が最大の「人口オーナス」を経験する時代です。さまざまなモノの価格が低下し、税収が落ち込み 住宅、オフィス、土地の供給過剰がさらなる価格低下を生むことになります。その先も生産年齢人口の減少と75歳以上の後期高齢者の増加し、25年に団塊の世代が75歳以上となっても、生産年齢人口の減少は続きます。そして、50年には団塊ジュニアまでもが75歳以上となり、生産年齢人口は今の6割程度となります。
年齢別の一人当たり消費を観察すると、どこの国でも40~50歳代の年齢で一人当たりの消費がピークになる「逆U字曲線」が観察されます。このため、「就業者数の減少→消費の減退」がおこります。政府の新成長戦略の基礎となっている経済理論では、GDPを成長させることができれば、いくら生産年齢人口や就業者数の減少が起ころうと、個人所得、個人消費、企業業績も良くなると教えていますが、これは事実と反します。96年から02年にかけての「戦後最長の好景気」の中では、輸出は伸び、GDPは回復しましたが、このことは起こりませんでした。国内新車販売台数、小売額、雑誌書籍販売部数、国内貨物総輸送量、自家用車による旅客輸送量、たんぱく質や脂肪の摂取量、国内酒類販売量、一人当たり水道使用量などは、96年から02年にかけての「戦後最長の好景気」の中でも減少しました。生産年齢人口の減少こそが日本経済を苦しませているデフレの真の正体です。
私が指摘したい正しい経済理論は、生産年齢人口の減少する経済においてはデフレが常態化し、個人所得、個人消費、企業業績が落ち込み、GDPの維持や成長は極めて難しいとするものです。たとえて言えば、生産年齢人口の波は潮の満ち引き 景気の波は普通の波であり、生産年齢人口の減少による大きなインパクトを補い、経済を成長させるためには、景気という小さな波では力不足です。よく、生産年齢の減少は生産性の向上でカバーできると主張されますが、生産性向上では「生産年齢人口の減少→付加価値額の減少」を原理的に補いきれません。それは、労働生産性=付加価値額(企業の利益+人件費などのコスト)÷労働者数であり、生産性をあげるために人を減らせば、分母のみならずその過程で分子も大なり小なり下がることになります。生産性をあげること時代が自己目的化すると、人員整理で逆に付加価値を下げてしまうことになりがちです。
政府の成長連略の中では、インフラ、スマートグリッド、原発、新幹線などのシステムを輸出して外貨を稼ぐことが対策として掲げてあります。しかし、を日本経済の問題は外貨を稼ぐこと自体ではなく、稼いだ外貨を国内で回すことなのです。日本には、優れた技術力のおかげで国債となっている分を除いても400~500兆円の個人金融資産が蓄積されています。また、毎年十数兆円の金利配当も流れ込んできます。

この状況の下で必要なのは、輸出に一層の目を向けるのではなく、バランスの取れた行動、つまり生産年齢人口の減少が引き起こす消費の減退という問題を直視し、消費を直接増加させるための対応です。以上の考察からも、エコポイント2.0を成長戦略として活用すべきだということになります。

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