エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

5日民主党スマートグリッド推進議連の提言と今後の展開

2012-09-12 07:08:08 | Weblog
 9月5日民主党の「スマートグリッド推進議連」(会長;大畠元経産・国交大臣、幹事長;藤末健三議員、事務局長;高井崇志議員。私はアドバイザー)で、以下の提言が取りまとめられました。その後、経済産業部門会議および総務部門会議に報告され、7日に原発ゼロ社会を巡って議論の取りまとめを行った民主党「エネルギー・環境調査会」の提言にも反映されました。今週中には、政府として「エネルギー・環境会議」(議長;古川国家戦略担当大臣)で全体を決定することになっています。
 提言(1)の「公共施設と学校のEMS(PEMS)」の水平展開は、現在スマートプロジェクトが推進している足利市のプロジェクト(http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/souhatsuden.html)の水平展開であり、提言(2)のデマンドレスポンス(需要応答)&エコポイントは、現在スマートプロジェクトが推進している「家庭の節電行動」2012」(http://www.smartproject.jp/wp-content/uploads/pdf/120801_NewsRelease.pdf)の今冬、来夏への発展ということになります。(1)と(2)の両者を合わせて、「ネガワット取引」の拡大ということにもなります。
 また、提言(3)の民間資金を活用した日本版グリーンディールの導入は、民生家庭の初期投資負担軽減のためのスキームで、年末に向けて具体化していくこととしております。(4)推進体制の強化とロードマップの提示は、上記提言(1)~(4)を実行するために内閣官房に「スマートグリッド推進本部」を設置すること等を内容としています。
 今後とも日本新生のため努力していきたいと考えておりますので、ご協力、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

死線を越えて
加藤敏春拝

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2012年9月5日
民主党スマートグリッド推進議員連盟

「スマートグリッド革命」の実現に向けて
~ 第一次提言 ~

1 はじめに
2011年3月11日の東日本大震災・福島第一原発事故を受けて、わが国はエネルギー政策の大きな転換を余儀なくされている。現在、政府ではエネルギー環境会議において、原発依存度の3つのシナリオを議論しているところであるが、わが国のエネルギー政策の決定において、「スマートグリッド」が果たす役割は極めて大きい。
スマートグリッドは直訳すれば「賢い電力網」であり、狭義においては「電力ネットワークの改革」であるが、我々は、スマートグリッドとは、電力、ガス、石油などのエネルギー産業にとどまらず、電機、家電、自動車、情報通信、住宅、素材などあらゆる産業分野が変革を起こす「革命」であり、産業革命以来の、IT革命を超える、「スマートグリッド革命」と捉えている。
スマートグリッド革命は、日本全体の電力網を供給サイド主体から需要サイド主体へ大きく転換し、「モノのインターネット」(IOT=Internet
of Things)、クラウドコンピューティングなどの情報通信における革新が「エネルギーのインターネット」を作り出すものである。
 1970年代の石油危機後の官民をあげた努力が、わが国の自動車産業を世界レベルにまで押し上げたように、いま私たちが直面しているエネルギー危機は、新しいイノベーション、新産業創出のバネとなり、エネルギー構造改革、電力の自由化を実現すると共に、企業のビジネスモデルの革新と、「需要創出」型のイノベーションを創造し、日本型モデルをアジア・世界へと拡大するチャンスである。
 スマートグリッドによる世界市場は、2030年までに4000兆円を超えるとの試算もあり、スマートグリッドは日本経済復活・再生の「切り札」でもある。

2 スマートグリッドの目的
スマートグリッドの導入目的は、政府のグリーン成長戦略が目指す「家庭が主役となる社会変革」のツールとして機能することであり、そのためには「家計の負担極小化」と「市場の飛躍的な拡大」が必要となる。
 スマートグリッドの導入により、①ピーク電力需要を抑制できる(需要応答で平準化する)、②電力のムダの削減や省エネが可能、③再生可能エネルギーによる発電やコジェネなどの分散型電源の大量導入が可能、④プラグインハイブリッド車・電気自動車との接続などの新サービスの開発が可能となる。
特に、①と②による効果として、電気料金の実質的な値下げが可能となるほか、スマートメーターの普及により、30分ごとに柔軟な価格メニューをユーザに提示するリアルタイムプライシングが可能となる。
 また、これからのエネルギー政策の基軸は「エネルギー利用効率を上げること」であり、いまの大規模・集中型システムのエネルギー利用効率は非常に低く、原子力や火力などのエネルギー源のうち3分の1程度しか使えていない。発電と送電段階でのエネルギーロスをなくすためには、「エネルギーの地産地消」を目指すことが大切であり、国民一人ひとりが発電所となる「スマート国民総発電所」を目指すべきである。
現在4地域(横浜、豊田、けいはんな、北九州市)を中心に全国各地で行われているモデル事業は一定の成果を収めており、技術的な実証から、現実的な導入の段階にある。本年冬から来年夏にかけて電力需給が逼迫することが想定されるため、特に電力需給の逼迫が予想される地域を中心に導入を促進すべきである。

3 スマートグリッドの課題
 スマートグリッドに対する取組みは、上述するような総合的・戦略的な視点が不可欠であり、単なる「電力網の改革」「技術実証」にとどまってはならない。
具体的には、以下の点に留意しながら取り組むべきである。

① 「点」にとどまらず、「面」の拡がりをめざす
② 「技術」に偏らず、「制度」「市場」との関連の議論を深める
③ 「ビジネスモデル」を明確にする(市場を確定する)
④ ICT(エネルギーのインターネット)の視点を重視する
⑤ 電力受給の逼迫している地域から先行的に実施する
⑤ ロードマップを明確にする(スピード感をもって)
⑥ タテ割り行政とならないよう、政府における司令塔を明確する

4 当面取り組むべき事項
こうした課題を解決するために当面取り組むべき事項(特に、平成24年度補正・平成25年度予算要求に盛り込むべき事項)を以下のとおり提言する。

(1)「公共施設と学校のEMS(PEMS)」の水平展開
現在4地域で行われているモデル事業は一定の成果を収めつつあるものの、今後PDCAサイクルを更に強化するとともに、この成果を全国に水平展開すること、及びビジネスモデルを確立することが重要である。
現在、足利市では、市内の52公共施設(学校を含む)に太陽光発電を含むBEMSを設置し、ネットワークで結ぶことにより、ICTを活用して公共施設の節電を図っており、その電気代の節電分を原資として、家庭でのHEMS構築や、需要応答に対するエコポイントとして交付する取組みが開始されている。こうした「公共施設と学校のEMS(PEMS)」モデル事業を全国に推奨するために、100箇所程度を目標に拡大すべきである。
さらに、公共施設のエネルギーマネジメントとICT環境等に関する実態とポテンシャルに関する調査研究の実施(現状の把握)や、地域活性化総合特区の活用等による地域エネルギーマネジメント等のビジネスモデル調査研究の実施(推進プランの策定)を行い、上記の成果を活用しつつ「導入ガイドライン」を作成し、全国に展開することが求められる。

(2)デマンドレスポンス(需要応答)&エコポイント
電力需要、特にピーク時の需要に対応してユーザが電力使用を削減したり、ピーク時以外の時間帯にシフトできるようする仕組みである「デマンドレスポンス(需要応答)」は、需要の価格弾力性を活用することで需要を抑制するものであり、ユーザの選択を通じて電気料金価格の抑制にもつながる。
深刻化する原発危機と石油危機を乗り切るためには、短期的には、家庭やオフィスの省エネや節電貢献度に応じてインセンティブ(奨励金)を付与する「エコポイント」を活用して、エネルギー需要の3分の2を占める家庭やオフィスを巻き込んだ省エネ・節電行動を広げていくことであり、中長期的には、省エネ・節電社会を構築し、エネルギー需要構造を作り変えなければならない。
 さらに、複数のHEMS、BEMS事業者と連携可能な「プラットフォーム」を構築し、電力会社等のエコポイント原資提供者との仲介機能を提供するほか、多様なアプリケーションの実証を行うことが必要である。

(3)民間資金を活用した日本版グリーンディールの導入
スマートグリッドで様々なサービスが提供される際に最大の障害になるのはユーザの初期投資の負担である。2011年度第3次補正予算で2000億円規模の「節電エコ補助金」が実施されたが、補助率が3分の1であり、依然として民間の資金的負担が大きい。そこで、米国や英国で実施されている「グリーンディール」の仕組みを取り入れ、導入費用を電気料金、ガス料金等から返済される仕組みを検討すべきである。具体的には、都道府県・市町村などの公的主体が国の債務保証の下に債券を発行して資金を調達し、それにより造成された基金から、家庭やオフィスの省エネ・創エネ・蓄エネの設備の導入や省エネリフォームの導入実施の段階で必要な資金を全額無利子融資し、その償還を電力会社などと連携し、エネルギー経費が節約される受益者から一定の期間にわたって電気料金、ガス料金等から回収する。当面、総合特区制度等を活用して先行実施し、その後、立法措置を講じて、全国一律で推進する環境を整えるべきである。

(4)推進体制の強化とロードマップの提示
 現在、スマートグリッド推進を任務とする府省は、内閣官房(国家戦略室)、経済産業省、総務省、環境省、国土交通省、復興庁と多岐にわたっている。前述したとおり、スマートグリッド革命は、エネルギー産業のみでなく、あらゆる産業分野にまたがる産業革命に匹敵する「革命」であり、政府として強力な推進体制が必要である。
 したがって、内閣官房に「スマートグリッド推進本部」を設け、専任の副大臣又は政務官を置き、各府省や民間企業等から広く人材を集め、政府の司令塔を明確にすべきである。
 さらに民間企業365社で構成される「スマートコミュニティ・アライアンス」等の団体等とも緊密な連携を図り、官民あげて取り組むことが重要である。
 また、スマートグリッド革命の達成目標年次を明確にし、それまでの間のロードマップを明確に示すべきである。