エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

福島原発事故に思う「国難をいかに乗り切るか」(その2)

2011-03-14 00:37:42 | Weblog
(今回の地震に罹災された方々に心よりお見舞いを申し上げます)

今回の大震災の罹災者は一刻も早い水、食料、エネルギーの提供を求めています。水、食料、エネルギーのライフラインの問題は、14日以降、幸いにして罹災しなかった人々の生活にも影響を与えます。東京電力管内の需要は4100万キロワット、供給は3100キロワットで、14日から会社設立以来初めて計画停電に踏み切ります。50kHz(東日本)と60kHz(西日本)の2つの周波数があり、周波数変換所の変換能力が120万kWしかない構造上のぜい弱性も露呈されました。

その中で福島原発の事故は、過去のスリーマイルアイランド原発事故(79年)、チェルノブイリ原発事故(86年)後の状況に鑑みると、国内的のみならず、世界的にも「原子力ルネッサンス」の下で原子力推進を図ろうとしていた新興国、途上国、先進国の動きに対して、見直しの気運が起こる可能性があります。その意味で、原子力先進国である日本が今回の福島原発の事故をうまくマネージできるかどうかは、世界の環境エネルギー政策の動向を左右することになるでしょう。それほど福島原発の事故はインパクトのあるものだと思います。

ここでは、従来の原発反対派と賛成派の対立とは別の次元で、問題の真の所在を考えて見たいと思います。実は、国民の生活の質の維持・向上、地球温暖化防止・エネルギーセキュリティの確保、原子力の推進は、原子力というエネルギーをどう考えるかによって、ある種のトリレンマの関係にあります。この世の中には絶対安全ということはありませんが、原子力の安全性やセキュリティの確保に関しては、かなりな程度解決されてはいるものの、高レベル放射性廃棄物などいまだ解決策を持ち得ていないものがあります。原子力アレルギーは別として、日本において一般の人々は、このようなエネルギーとしての原子力に真正面から向かい合おうとはしなかったのです。

トリレンマに対するわれわれ日本の選択は、生活の質の維持・向上を前提として、地球温暖化防止・エネルギーセキュリティの確保、原子力の推進をも図るというものでした。ご承知の通り、チェルノブイリ原発事故の後「脱原発」という別の道を選択したドイツは、その後選択の重みに苦悩しています。ここ数年では「脱原発」を軌道修正して原発の稼働期間の長期化などを行ってきていますが、最近では、環境保護派との妥協から原発の稼働期間の延長を認める代わりに税金を徴収し、その税収を再生可能エネルギーの開発に充てるという新しい方針を出しました。

仮に原子力に見直しの気運が起こったとき、日本はどのような選択をするのかが問われます。そのときは、国民の生活の質の維持・向上と地球温暖化防止・エネルギーセキュリティの確保という解決困難なディレンマに直面することになります。「スマートなソリューション」という私の発想(http://www.smartproject.jp/wp-content/uploads/pdf/100820_141340_001.pdf)は、こうしたトリレンマ、ディレンマという袋小路に入り込むことなく、エネルギーの地産地消、ユーザの視点と選択、技術エンジニアリングのみならずソーシャルエンジニアリングという別の次元で、周波数問題への対応、原子力の活用を含めた全体最適を追求する道を構築しようというものです。
ただし、民主主義のあり方とも関係する問題ですので、転換には時間がかかることを忘れてはなりません。必要なことは、全体最適を追求するグランドデザインの構築は早期に行い、それに基づいて国民の合意の下に中長期的なロードマップを作成し、ステップ・バイステップで着実に新しいエネルギーのライフラインを構築していくことだと思います。