エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(政策;電気をデジタル化す「デジタルグリッド」構想)

2011-03-03 07:00:28 | Weblog
D象限へのスマートグリッドの進化に関して、東京大学大学院工学系研究科の阿部力也特任教授は「デジタルグリッド」という構想を提案しています。アメリカのスマートグリッドは、電力ネットワークはほぼそのままにして、情報系を双方向に切り替えていくという発想に基づいたシステムですが、阿部教授の「デジタルグリッド」は、電力ネットワーク自体の切り替え、デジタル化を行おうというものです。

 阿部特任教授によると、電力信頼性の高い日本でさえ、太陽光などの再生可能な発電所が日本全国に設置されると、天候によって発電量が左右されるため、大電力の潮流が起きてしまいます。そこで、阿部特任教授は、従来の同期送配電システムを基幹送電線と非同期分散のマイクログリッドに分離しようと提案しています。例えば基幹系統下流の変電所以下を独立したマイクログリッドにし、電力貯蔵装置と分散電源でそれぞれ独自に周波数調整を行って変動を吸収しようというものです。周波数調整範囲を少し拡大すれば、電力貯蔵装置の負担を緩和できます。また、小さなマイクログリッドの電力貯蔵容量に余裕を持たせるため、阿部特任教授の考案した「デジタルパワールーター」を用いて、他のマイクログリッドや基幹系統から必要に応じて電力を融通するようにして、貯蔵容量を少なくできるようにします。 電力を融通し合うルートがマイクログリッドの数の2乗に比例して増えるため、インターネットのように、さまざまなルートから安定的に電力を供給できるようになります。

 これにより、電力を大量に消費する産業部門は基幹送電線から電力を受け取り、民生用の電力は再生可能エネルギーを主体としたマイクログリッドの電力を受け取るという2層構造を構築することができます。マイクログリッド間の融通電力量を調整するには、電力線通信(PLC)により電力網を情報網としても活用します。このため、各マイクログリッドの通過ポイントにIPアドレスを付与しておき、電力を融通し合う問い合わせのプロトコールを定めます。そして、電力を融通する電力量そのものにヘッダーとフッター情報を付けて、そのアドレス情報に従って電力の不足しているところへ配電します。

 こうすれば、電力融通を予約・確定・実施するプロセスが可能となり、新しい電力融通の形態が可能となります。阿部教授は、これを「デジタル電力」と呼んでいますが、この考え方を家庭単位にまで発展させることができると指摘しています。阿部教授は、この新電力系統システムとビジネスモデルを日本国内から世界市場へと輸出していきたいとしています。