昼下がりのコーヒー豆のあくび アーリーアフタヌーンコーヒー日記

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コーヒー豆屋のちょっとだけゆっくり流れる時間

スワンプマン

2023-10-10 07:58:29 | 日記
名立たる名匠が作った品と寸分たがわぬ色形、構成成分まで一緒だったらそれは同じものか?自分の死後、自分と全く同じ記憶と体を持つ存在スワンプマンが生まれたとしたら、自分なのか他人なのかという有名な哲学問題であるスワンプマンの様ですが。

1889.10.10に生まれたオランダの天才的贋作者ハンファンメーヘレン。自分を認めないオランダ美術界に復讐しようと贋作ビジネスに嵌っていきます。細部にまでこだわり、材質も研究分析し同じものを使用した彼の作品は、当時の最新鑑定技術では贋作と見破ることは困難でした。

古典作品を好み特にフェルメールに心酔していた彼は、彼のタッチを使いあまりフェルメールが描かなかった宗教的歴史的作品を制作。フェルメールの作品が見つかったとして高額で販売します。それはナチスドイツの高官たちにも売却され、後に「エマオの食事」を含む一連の絵画を自ら製作したと告白。贋作製造販売、フェルメールらの署名を偽造したなどとして詐欺師、売国奴呼ばわりされていた彼は、一転ナチスを騙した英雄になります。

本物と見分けがつかなければその価値は同じなのか。
視点により答えは分かれますし、唯一解などないのですが、個人的には人が携わる以上別物であると考えます。それは伝承、由来、歴史、ブランドといった物語的価値を持つからです。

論理的思考能力の束縛から離脱不可能な人である以上、物語がなくては生きていけません。

現状大勢を占める物質主義や、相対化した数字による比較により全てを網羅し、管理判定できるとする方式は根本的に破綻していると考えます。
虚実混然一体として成り立っているのが人の世ですから。