前回のブログで書いたように一人ドライブへと出掛けました。
部屋を出ると雨。しかも寒~い。最近洗車していないので黄砂まみれで濡れているGOLFに乗る。22時40分。
どこに向かおうか考えてみた。ここんとこ都心方面にはよく行ってるし、ちょいと離れてみるか。
「そういえば国道1号線って、どこまで続いてるんだ?」
国道1号線といえば東は日本橋から西は大阪までを繋ぐ、日本有数の一般道。日本橋なんて所にはどうせダーキシとshow先生の職場しかない。ここは西だ!西へ進路をとれ!俺が!
イチコクは仕事でもよく使う幹線道路ではあるけど、混むのであまり使わない。しかしこの時間であれば空いている。早速興味を惹かれる案内標識が。「静岡まで126キロ」。うむ~…惹かれますけどさ~、これは片道3~4時間かかるぞ。それでも行ってみるか。
「I'll give it a try.」(やってみますよ。)
「Try not. Do or do not. There is no try.」 (やってみるではない。やるかやらぬかじゃ。試しはない。)
そんなやりとりを遠い昔に遥かかなたの銀河系で聞いた気がする。
茅ヶ崎、平塚、大磯と通り過ぎる。
大磯にはこのブログを始めた日に紹介した北海道ラーメンのお店がある。あのとき食べた味噌バターコーンラーメンの写真を誤って削除してしまったし、これはもしかして再チャレンジできるかも~…さすがにこの時間には営業していない。
二宮を抜け小田原へ。右へ曲がれば小田原城、左へ曲がれば箱根、熱海方面。夜の小田原城もそそられるけど、ここは国道ルートをキープするために左。
小田原を抜けるとさすがに辺りも閑散としてくる。フロントガラスに当たる雨の音と、スターウォーズのサントラだけが車の中で聴こえる。
箱根。
箱根といえば温泉です。たいした観光地じゃあないと僕は思うが、ナビ画面に「箱根市湯本です」とか表示されると温泉は好きなので「あ~なんか聞いたことある~有名な温泉街だ~」と気持ちは高まる。
気持ち高まってもしょうがない。昼間なら日帰り温泉もありだけど、こんな時間だもんな~。人っ子一人歩いてねーズラ。
こういう温泉街って、夜でも観光客相手のパブやスナックがあって、奇妙な空気がときに魅惑的。(普段でも入らないけどね。)箱根はあまりそういう妖しいかんじがないな。
温泉街も過ぎて、とうとう箱根の峠にさしかかります。
「ゆっくり走ろう 天下の険」という電光表示がある。
北条氏はこの箱根の山々を天然の城壁として西への備えとしたが、結局は歴史にあるように豊臣の軍勢に敗れた。徳川家康は駿府に城を築いて、箱根を拠点とする風魔衆と手を組んで、やはり攻撃に備えたとかなんとか。
箱根に入ってから気がついたのだけど、側溝から湯気が昇っている。さすが温泉が湧き出る街だけあって、こんな所にもどこかから溢れた温泉の湯が流れてるんだな~なんて思う。(この湯気は警告だったのに、それに気がつかなかった自分。この先で思い知らされる。)
峠だけあって、ただ道がグネグネしていてひたすら登り。雨は強くなってきたけどイキオイにまかせて走る。さすがにここまでくるともうこの時間に車も走ってない。急カーブも多いし、見通しも悪いしで、ハンドルの握る手も汗ばむ。音楽もこころもち音を絞って運転に集中する。
と、GOLFから「ポーン」となにか聴こえた。この「ポーン」はサイドブレーキ降ろし忘れたり、ガソリンが減ってくると鳴る警告音なのだけど、もちろんサイド引きっぱなしなんてことないし、ガスもたっぷりあるよ。なんだろ?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/2c/8bddcb1e66a7dd393d0aa08afc206324.jpg)
(写真は以前に撮ったものです。)
メーター内の表示盤には走行距離はもちろんだけど、平均燃費、走行時間、一時間あたりの平均走行距離、それらが今日の分と総運転分と表示されるようになっている。そして外気温も。
「外気温摂氏4度」
4度になると路面に凍結の危険性があるとして「ポーン」と鳴るって、たしか説明書にあった。これだ。
神奈川在住のかたがたなら今日(昨日)はとても寒かったことはわかるよね。そういえば天気予報でも「1月下旬並みの気温となるでしょう」なんて言ってた。それでも俺が部屋を出て車に乗り込んだときは8度だったし、いくら夜だからって、そんなに気温が急激に下がることないでしょ…。
まったく間抜けな話だけど、オートエアコン快適~ってぬくぬくして、上り坂もものともしないエンジンで余裕かましてたけど、峠なんですよ。高度が上がれば気温が下がるって、たしか小学校で習わなかったか?でも水が凍る温度は0度とも習った。だからまだいけるでしょ。
他に車が走っていないわけだ。それでもまだ行けると思った。このときまでは。
夏タイヤなんだよね、思えば。急カーブで曲がりきれなかったら崖から落ちて「あ~れ~」だな。
試しにちょいとブレーキを強めに踏んでみる。うん、ちゃんと減速するし、滑らない。路面は黒く濡れてるから状態はよく把握できないが凍結はない。
ヘッドライトにモクモクとした湯気が反射しだした。「さすが温泉が湧き出る街だけあって…」って、これは霧じゃあないですか!そんなこと思う間もなくだんだんと、あっという間に霧は濃くなってきた。
(やっぱり遠い昔、遥かかなたの銀河系の日勝峠で。その日のうちに札幌に帰るつもりだった、本当に。困らせるつもりはなかった。だけどあまりに霧が濃くてもうほんの何メートル先も見えない中では走れない。…いや、そんなの言い訳か。霧が晴れる朝を待っておとなしく帰れば良かったのだから。)
そのうちライトに照らされるのが道路じゃあなくて、どこまでもただ白い霧になった頃、後続車と対向車がいないことを確認して路肩に寄せた。確認なんかしなくても誰もいない。
見れば外気温1度だし、ここらが潮時か。
暖かくなったら絶対に越えに来るからな~。今度は温泉グッズも持ってきてやるぞ~。
下りは下りで怖いが、麓まで降りて一安心。こんななんでもない日にどうしてこんな危険なことやってんだろ、俺。おとなしくしてろってことか。
来た時と同じルートで平塚まで戻る。部屋までたいした距離でもないが、道沿いのサンクスに車を停めて缶コーヒーを買う。息白い。そりゃあ寒いな。
僕が来る前からここの駐車場に泊まっていた軽自動車になんともなしに目をやると、エンジンかけっぱなしで室内灯がついたままの車内で若い女性が運転席で寝てる。そうとう深い眠りなんだろうな~、ミニスカートで足おっぴろげてよ~。
すみません。ガン見しておきました。
このまま帰るのももったいないな。平塚から北へ走る。伊勢原、厚木、相模原まで行ったとこで方向転換。もう一度厚木に入り、海老名、座間、大和、横浜市瀬谷区、青葉区と走ったところでようやくこのドライブの無意味さを悟って、帰ることにした。横浜市街地から鎌倉まで下りて、海沿いを藤沢まで。
今晩の走行距離186km。燃費はリッターあたり12.7km。およそ14.6Lのガソリンを消費したってことは、今のハイオクが138円だから…走行した距離をお金になおすと2021円分になる。
飲みに行くよりは安上がり、でも部屋でおとなしくしていれば発泡酒何本か飲んで寝ていたのだから、発泡酒は6缶パックで696円だから1本116円として、5本飲んで寝たとすればで580円。
お金に換算すればそういうことだけど、時間の過ごしかたはそんなことじゃあ計れない。
部屋に着いたら4時。買ってきたマックを食べながら少しだけビールを飲む。
一人ドライブには目的地もないし、真っ直ぐ走りたければ真っ直ぐいけばいいし、曲がりたければ曲がればいい。道はあちこち巡ってるし、ちょっと休憩してコーヒー飲んで、また走ってどこまでもいける。
イヤになればそこで終わり。
辿りつきたい場所はあるけど、どこを走ればいいのかわからない。困難にぶつかって引き返すのもいい。またきっとチャンスはある。それまでは諦めない。
別の道を行くのは本当にダメだと思ったときだけだ。
終わりはいつでもそばにある。