熱帯に位置する中米コスタリカでのこと。「日本の冬は雪が降る地域もある」というような内容の会話の文中で、教科書どおり、nevarという動詞を“nieva”と、不規則動詞の活用形を用いたのである。
ところが、「nevaというのだ」と訂正されたのである。「郷に入れば郷に従え」ということで、不本意ながら、コスタリカでは“neva”と言わざるを得なかった。その後、雪の話もあまりしなかったが、帰国後、越の国に居住するようになった。当然、動詞nevarの使用頻度が高くなったのだが、コスタリカ出身の女房殿は相変わらず、“neva”といって、決して、“nieva”と言おうとしないのである。スペインに行けば、誤用と言われるのだろうが。
ちなみに、nevarの過去分詞の女性形はnevadaで、アメリカの州の名前になっている。Sierra Nevadaは「雪が積もった山脈」という意味である。
また、「白雪姫」は英語では“Snow White”だが、スペイン語では“Blancanieves”という。nevarの名詞形はnieveで、複数形のnievesは姓にもなっている。もちろん、メジャーリーガーにも「雪」さんがいる。そういえば、Blanca(白)という女性名もあった。Blanca Nievesという、「白雪姫」のような姓名の組み合わせも十分ありうる。
ところで、聖徳太子が飼っていた犬の名前は「白雪丸」というそうで、これも“Blancanieves”ではある(出典:『和漢三才図会12』p. 224、東洋文庫504、寺島良安、平凡社)。
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