呑んべぇ爺さん

呑んべぇ爺さん「音岳」の記録とつぶやき

御嶽山の正月登山(3)

2006年12月31日 | 中央アルプス等
【飛騨頂上から中央アルプス】


明るくなった7時前に起きる。天気は快晴で気持ちが良い。気温は昨夜と同じ-11℃だが寒くない。行動用の湯を作ったりして手間取り、8:45にのぞき岩を出発する。

夕べにトレースを着けて置いたので比較的楽に登れる。No29を過ぎてザックを置いて行動食を食べていると、声が聞こえる。耳を疑うが直ぐに3人パーティが現れた。

60歳前後の中高年の男性2名と女性1名のパーティだった。ワカンも着けておらず日帰りの装備だ。トレースだけをあてにして来たようだ。先行している私が居ると思っていなかったようで、下ってきたのかと尋ねられる。

それに後から4人パーティが登って来るとも言う。その4人パーティは途中までトレースをつけておいたと3人パーティに言ったそうだ。言っている意味が判らない。

ひとまず、私がつけたトレースはこの先100m程で終わっていて森林限界までには達していないとは言っておいたが、3人とも私がトレースをつけたのが信用できないようで、それ以上の説明はしなかった。

彼らは直ぐ通過する。いずれにしても、ラッセル要員が現れたのに喜ぶ。再び登り始めるとワカンを着けている男女の2人に直ぐに追いつく。

私が居た所までは今日歩いた跡で踏み固められていて、ワカン無しでも良かったが、その先になると深く潜る事が多いようで早くもワカンを着けたのだろう。しかしもう1人の男性はワカンを着けずに先に行ったようだ。よく判らないパーティだ。

2人を追い越して夕べの最終ポイントまで来ると、その先にルートが進んでいた。しかし先行したワカンを着けない男性が10m程の直ぐ先に居た。

私のつけた最終ポイントから先の道が判らなかったと言っている。ルートファインディング無しに進めると思っていたようだ。それにワカン無しに簡単に進める筈は無い。彼はワカンを持参して来なかったようだ。しかし手には森林限界までは役に立たないピッケルを持っている。

彼と話していると2人も追いついてきた。ワカンを着けている2人に一度先に行ってもらう事にする。森林限界の手前は雪も深くなってきており、たまに腹近くまで潜る事もある。

どちら方向に進むか議論しているので、面倒になって元々やろうと思っていたザックをデポして空身でラッセルを始める。森林限界を超えると積雪も浅くなる筈なので、森林限界の10m程手前で「交代」と言うと彼らはキョトンとしているので、はっきり「ラッセルを交代して下さい」と言って初めて通じた。

ザックを回収に戻っている間にどのくらい進んでいるか楽しみに戻る。3人に追い付くと森林限界から20m程進んでいた。しかし1人がずっと先行して交代していないようだ。早めにラッセルを交代して進むのに慣れていないようだ。

先頭は直登方向の真上に進んでいるので、今日の目的地を尋ねると「飛騨頂上」と言う。私と同じ方向なので、先頭を交代して軌道を右斜め上方向に修正する。

積雪はワカンを履いていればふくらはぎ程度までしか潜らない事が多いので
ザックはデポせず何回か交代しながら登り続ける。

森林限界から200m程登った頃、振り返ると若い男性らしい4人パーティが森林限界を出た所でザックを降ろして休んでいるのが小さく見える。いつまで経っても登り始める気配が見えない。

回り込んでもうすぐ彼らが見えなくなるかなと思う頃ようやく4人パーティは出発した。人数の多いほうが早く進むし楽だから早く追い付いてきて欲しい。しかし追い付いてラッセルに入ろうという気は無いパーティのようだ。

その内ワカンを着けた男性が、太ももが痙攣すると言い出して先頭を交代する。途中雪が深いところがあって、重いザックを背負っていては足が中々上に上がらず、トラバース気味になってしまう。

深いところを抜けると、私の後を付いてきた女性は後ろの男性2人に、もう引き返そうと言い始める。ワカンをつけておらず先頭を歩かなかった男性はもう少し登ろうと言って、1度だけ先頭に立って進む。暫く後を付いていた女性が再び12時になったので引き返そうと言う。

先頭になって締まったクラストした雪になり始める所を渡っていると、ここで引き返しますと後ろから声がかかる。ワカンの爪やストックが雪に利き難くなってきたので、私は足場の良いところまで進んでワカンをアイゼンに付け替える。
【斜度がきつくなったクラスト雪面】
彼女もアイゼンに付け替えると男性達に言っている。私がアイゼンに付け替えている間に4人パーティはかなり近づいて来た。私が出発する頃、女性は下りに弱いのかへっぴり腰で下り始めていた。
【下っていく3人パーティ】
そして3人パーティと4人パーティが出会って話をしているのが見えた。

アイゼンを着けるとクラストしている雪を気持ちよく噛んで進めるが、のぼりの斜度が次第にきつくなると、足首の柔軟性が弱いので蟹股登りになる。スリップすれば500m以上は滑落するような所を何度か通過する。このような所でもストックは効かないので慎重に進む。
【登りは足首にきつい】
4人パーティはどうしたのだろうかと、たまに振り返ると、アイゼンに付け替えていたのだろうか、時間が経ってから遠くで進んで来ているのが1度見えた。

最後のトラバース道に入る乗越しは重いザックを担いで挑戦するのは止めて、更に上にルートを捜して突破できた。後は気楽に小屋を目指すだけだ。
【飛騨頂上に近づく】
天気は最高に晴れていて風も殆ど無い絶好のコンディションだ。時々4人パーティは来ているのか振り返るが現れない。

五の池避難小屋に15:45に到着する。気温は-6℃でかなり高くなっている。小屋の入口扉に前回行ったカンヌキ用の雪塊がそのまま残っており、功を奏して殆ど雪の吹き込みは無かった。
【五の池避難小屋】
【避難小屋の入口付近】
先ず周辺の状況を見に回り、摩利支天の方向のコルから木曽駒・富士もくっきり見える。これだけで満足する。明日の御嶽山ピークへの挑戦が成功しなくても今日で充実感は十分ある。しかし未だ明るく風の無い折角のチャンスを逃がすまいと、先に偵察を進めようと思う。
【飛騨頂上からのパノラマ:写真をクリックすると大画像】
ザックを小屋に仕舞い込んでからすぐ出発する。
【摩利支天方向】
摩利支天の方向に登り始めて、来た方向を何度見ても4人パーティの姿は確認できない。
引き返したのだろうと思うが、理解が出来ない。

アイゼンを着けていれば快適に登れる。摩利支天から賽の川原方向への分岐にまで来て先が見通せたので満足して引き返す。
【摩利支天からのパノラマ:写真をクリックすると大画像】
引き返す途中でも4人パーティの影が見えないので引き返したとしか思えない。

今夜は独りの夜になりそうだ。何となく寂しい。山では色々事情があるのは判っている。ラッセル泥棒と決して言わないし、言われる事さえ知らない無頓着な若者であっても良いから来て欲しい気分だ。明日一緒にピークを目指せれば最高だったのに。

小屋に帰って気温は-6℃でかなり高くなっている。今日は風の無い快適な夜になる。明日は風次第だなと覚悟して、アルコールを飲みながら、燃料をたっぷり使ってスープ・食料を存分に味わう至福の時を過ごす。



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