今まで耐寒訓練に対する効果は疑問に思っていました。たまに周りの人に寒さに強いと言われる事はありますが、自分ではそうは思っていません。暑がりやで汗かきではありますが寒さに強い程では無い筈です。
今まで、耐寒訓練のつもりで冬山シーズン前には正月前まで午前中だけ半そでTシャツ1枚で過ごすようにしていて、冬山で手袋を脱いで冷たくなった手に再び手袋をつけると、訓練していない時には、なかなか手の暖かさが戻らなかったのが、訓練した年は早く手の暖かさが戻ったという程度の効果を多少実感したことはあります。
むしろ、耐寒訓練をすれば皮下脂肪をためるだけで、断熱の効果を高めるだけだという先輩諸氏の主張を聞くことがあって、どうなんかなと思っていました。
先日、海外登山集会で日本登山医学会理事の増山先生から、耐寒訓練は有効だとすごい知見を得ました。皮下脂肪の構成要素の白色脂肪細胞は断熱の効果を高める程度で発熱に寄与しません。発熱に寄与する脂肪は褐色脂肪細胞だそうです。普通発熱に寄与するのは運動時の筋肉で、寒い時の振るえでも筋肉の発熱がおきるのですが、それ以外に褐色脂肪細胞が発熱に寄与してくれるのです。
文献「寒冷と私達の体」では、南米のテイエラ・デル・フゴに棲むヤガン族等は零下数度に達する環境下でも,裸同様の生活を送っているそうです。この辺の人体のからくりの解明が進んできたようです。(褐色脂肪細胞の研究が進んでいない時期の文献で、褐色脂肪細胞の作用については書かれていません)
腹まわりの皮下脂肪は白色脂肪細胞でいくら貯めても発熱せず、せいぜい断熱に寄与する程度なのです。肥満の人ほど、高齢になるほど褐色脂肪細胞は作りにくくなるようですが、山屋にとって耐寒訓練(寒冷暴露)は褐色脂肪細胞作りに有効という事さえ判れば良いのです。
褐色脂肪細胞は,主に肩甲骨間,腎周囲にあり,血管が豊富で血流量が多いこととミトコンドリアに富んでいるために褐色であって,新生児で約100g,成人では着衣や暖房のために少なくなって約40gしか存在しないそうです。
褐色脂肪細胞の記事は「肥満の科学[ II ]肥満のメカニズム」のように肥満に関するものが多く、素人にも判り易い文献は中々みつかりません。根気よく調べると「健常男性において寒冷条件下で活性化される褐色脂肪組織」の文献が見つかりましたが、こちらの文献でも素人判りし易いようなメカニズムの解読はできませんでした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます