建長寺には、開山蘭渓道隆の立体像といえば、これ、という木像があり、昨日も建長寺で催事のポスターに使われているのを見た。私が作ったのは、だいぶ面立ちの違う国宝の肖像画をもとに作った。お墨付きともいえる本人の賛が書かれた生前の作である。木像は死後の作だというし、レントゲン写真で度重なる修正の痕跡があり、頬がこけ垂れ目は共通だが、頭の形が違う。十一代住職を務めた京都建仁寺の後年作られた木像の内部から、禅師生前の作と思われる顔の部分が体内に収まっているのが発見され、そのレントゲン写真を見ると、頭の形が明らかに肖像画に近い。これにより、肖像画が蘭渓道隆の実像に近いと判断し、立体化した。つまり建長寺の蘭渓道隆像とは恐れ多くも趣きの違う像を作っている訳である。もし肖像画が実像に近いとするならば、それに正面を向かせれば七百数十年、誰も見たことがない禅師の正面図ということにならないだろうか?