明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



嘘を付くにはホントを混ぜるのがコツだが、私の場合、虚実をどうブレンドするか、そこが工夫のしどころである。数年前、いずれは寒山拾徳を手掛けることになるだろう、と思っていた時、豊干の乗る虎は普通に本物を使おう、と思っていたが、実物を見たことがない絵師の描く虎の味を出すために猫を虎に変えたらどうだろう、と思い付いた。そう思ったら止められない、虎に竹林は付き物だろう、と区内にあるほんの申し訳程度の竹林を撮り、八百屋に筍が出るのを待ち店先で撮った。青木画廊は個展における陰影のない石塚式ピクトリアリズムの初披露であったが『月に虎図』は私が見ても唐突さ違和感で浮いていた。 昔、オイルプリントを初披露した頃、瞳に明かりが灯らない来廊者であったが、今回も同じことが起きるに違いない、と写真家でただ一人オイルプリントを面白がっていただいた須田一政さんなら、と10年ぶりくらいにお知らせしたら体調が悪いが面白そうなので行きます、といっていただいたが、間に合わなかった。須田さんのチャレンジ魂には感銘を受けた。 ところでマタタビを用意してもらって撮影したトラ猫だったが、思ったようには撮らせてくれない、そこで寒山拾得、豊干の虎が眠る『四睡図』はぐうたらな動物園の虎を撮り、今度は逆に、虎みたいな猫にしようと考えている。

 



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