ジャズ・ブルースシリーズ時代の作品を久しぶりに出してきた。このシリーズの最後となった96年の個展では、始めて写真を出品するにあたり、実在したミュージシャンを中心に作って撮影したが、それまでは主に架空の人物で、実在した人物は数えるほどしか作ったことがなかった。もともと何かを参考に作るということが得意でないこともあったが、人間をデッサンしたり、観察してしまうと、その情報が入ってきてしまい、入ったらもう出て行かないだろうと思っていた。自分のイメージが実際のことと違っていたとしても、誤解するには何か理由があるに違いない。たとえば人間の鼻はこうだ、と実際と違って思い込んでいても、それが訂正されてしまうと個性がなくなってしまう。と、かたくなに思っていた。独学者の思い込みであった。よって今の私には同じようには作れない。 探し物があったので、ごそごそしていたら、作りかけの首が出て来た。じっと見てもいったい誰を作ろうとしたのか判らない。そんな物をとっておいてもしかたがない。人心地ついたのでK本へ。10代からの知り合いであると、恥ずかしいところを見せ合っているし、今更かっこをつける必用もない、というところが良いわけであるが、常連席でこれだけ同じような人達と顔を合わせていると、女将さんがグラスから注いでくれる表面張力で盛り上がった、精一杯の亀甲宮のせいもあって、ついよけいな部分を披露することになってしまい、ここまで持ってくるのは結構大変だろう、という知り合いとなっている。よって連休明けに顔を出す時などは、夏休み明けに小学校に登校するような心持ちである。しかも最近は二次会に流れることも多い。本日もT千穂へ。そこでああだこうだいっていて、作りかけの首がストラビンスキーだったことを思い出した。
『世田谷文学館』展示中
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