前回に続き今回も搬入が当日に。昨日永井荷風だけ持っていったが、3人組のコーラスグループが間に合わず。当時、手指の補強にそれほど気を使っておらず、気になって手を新たに作ることにした。となると着彩も新たに、ということに。こんなことは前もってやっておけ、という話である。修正していると、今だったらやらないような風合いであるが、それを直したら味が変わってしまうので、できるだけあの頃調にした。自分の中からでてきた物には違いがないが、なんとも不思議な心持のするものである。楽器を作るのが嫌で、このシリーズを再開する気はまったくないが、架空のボクサーだけは未だ誘惑にかられる。しかし子供じゃあるまいし、発表の予定もないのにただ作りたい、という理由で作ることだけは固く戒めている。 荷風は私の作品の中でも、神奈川近代文学館、市川市文化会館、世田谷文学館、江戸東京たてもの園その他、、もっとも展示の機会が多かった作品であろう。そしてなにより、人形を鷲づかみして国定忠治が愛刀“小松五郎義兼”を奉げ持つようにし、片手にカメラを持って街中を撮り歩く『名月赤城山撮法』を開発する(というほど大袈裟なものではないが)きっかけとなった作品である。これは作品に責任のもてる作者にしかできない、という意味で特殊な撮影法といえるであろう。街歩きの達人荷風を撮影するには最適の方法であった。この方法で、荷風がカツドンを吐いて死んだ部屋で撮影したことも懐かしい。そんな私にとってエポックな作品であるが、いいかげん私の家で、いつまでもいるのは飽きたろう。開場早々コーラスグループと共に嫁ぎ先が決まる。
第7回『人・形展』9月26日~10月2日
午前9時~午後9時最終日4時まで
丸善・丸の内本店4Fギャラリー