田村写真で今週の土曜日にオイルプリントのワークショップが開かれる。なんと“石塚式オイルプリント”と銘打たれている。石塚式といっても私が選択した水彩画用紙を使い、塗布するゼラチンを厚くしただけである。だけではあるが、ここが単に廃れた技法を掘り起こしたにとどまっていないところである。 91年に野島康三のピグメント印画、特にブロムオイルに一目惚れしてしまった私であったが、大正、昭和初期の文献を元に調べてみると、現在の印画紙は硬膜処理されているので、ゼラチンが吸水しにくく、ブロムオイルは出来ない、と思い込んでしまった。そこで一段階さかのぼってオイルプリントをやってみることにした。 昔の処方通りやってみたが、なかなか画が出ず、出たところで諧調の幅がせまく中間調がでない。当時のオイル、ブロムオイリストは諧調を出すため、暗部、中間部、明部の三段階のネガを作り、プレス機による転写をして諧調を出す工夫をしていた。しかし私の性格上、そんな煩雑な作業をしていては集中力が保てない。そこで一度に諧調を出すため、ゼラチン層を厚くしていった。それが功を奏し、諧調が表現できるようになっていった。 オイルプリントが短命に終わった原因は感度が低いため、自然光による密着焼きになる。つまり作品大のネガが必用になり、使用するカメラは大型になる。そこで小型カメラで撮影し、引き延ばした印画紙を使用するブロムオイルにとって替わられていった。しかし現在はデジタルのネガを拡大することにより容易に拡大ネガが得られ、その欠点はクリアしている。ワークショップの参加者は“石塚式”により、大正時代の人々より容易に諧調が出せることであろう。
オイルプリント制作法
インキング映像↓
http://youtu.be/kZozcEqgKsE
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