私の場合、最初に浮かんだイメージに修正を加えるのが難しいところがある。イメージスケッチをしないのはこの為である。うかつに描いてしまうと最初に描いたその通りになってしまうからである。ファーストインプレッションで決まる。というと聞こえは良いが、問題もある。悩まされたのは私が鏡花の文章を誤読している場合である。あとでそれが判ると、すでに頭に浮かんでしまったイメージが焼き付いてしまっており、変更するのが実にやっかいなのである。 潔癖症の鏡花は、実際こんな生臭い河童がそばにいたら嫌だが、描くぶんには平気、とばかりに嬉しそうに筆を飛ばしている。鏡花作品の中でも鏡花の幼児性が炸裂した作品であろう。完成度については頓着せず、筆に任せて一気書いたような作品である。そのせいかどうか、クライマックスに向けて急激にテンポがはやまり、急転直下の大団円を迎える。このくだりは正直いって、あまりな展開に、どう描いてよいか解決策が浮かばないまま追いつめられた。ようやく策を見つけた時には、寝不足も加わり、そうとうなハイテンションで、道ばたをヒョコヒョコ這い出して来た小ネズミを撮影し、お前も出演したいの?とすぐそのシーンに加えてしまった。そろそろ展示が始まるであろう金沢の泉鏡花記念館には、河童のカットとともに、この大団円シーンを選んだ。 こうやって拙著の内容について書き続けていると、当ブログをお読みの方は、いったい何のことを書いているのだ?とつい『貝の穴に河童の居る事』(風濤社)を注文してしまわないものであろうか。
※作者として書店に並んでいるところをまだ観ていない、というのも悪いのであるが、本当に売っているの?という気がしないでもない。読んだ方がいらしたら、ご意見ご感想をコメント欄やメールで、是非いただきたいものである。
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ビジュアルも装丁もよかったです。
泉鏡花の作品への印象までも変化しそうです。久しぶりに他の作品も読んでみようと思います。