個展会場で作品を改めて見る、というのは、ほとんど被写体制作に費やした私としては、つい最近出来たばかりの作品で、会期残り数日にしてようやく反芻するように眺められる。今回は勝算もないのに、早々に風景を実景を使わずに作ることにしてしまった。ようやく着手したのは1ヶ月前。それが気が付いたら山深い中国風景が出来ている。私がもっとも熱中したアルト奏者チャーリー・パーカーは、演奏中に自分の指を見て、今演奏しているのは自分なんだ、と驚いたそうだが、難関の霧深い深山制作を後回しにしたことを後悔していた一月前の私に、無事に完成した、と教えてやりたい。〝窮鼠火事場で馬鹿力で猫を噛む” 私の外側にレンズを向けず眉間にレンズを当てる念写作品は、ほとんどの時間粘土での被写体作りに費やしている限り、デジタル作業が上手くなろうと深山を覆う霧の如く、手描きアナログ感は拭い難く漂い続けるだろう。 それにしても入手した武器は使いたくなるのが人情である。寒山拾得は元より、世を捨てた仙人が住む風景を作りたくて仕方がない。
Don't Think, Feel! 寒山拾得展
人形作家・写真家 石塚公昭 作家活動40周年記念
10月13日(木)〜11月6日(日)
石塚HP