私が中学生の頃、まだフランス映画にも勢いがあり、男優では育ちが悪いのに綺麗に生まれてしまった感じが魅力のアラン・ドロン。女優ではカトリーヌ・ドヌーブのファンであった。3本立て150円で毎週のように映画を観ていたが、客席は一杯であった。ドヌーブが上半身を一瞬はだけるシーンをもう一度観るため3本立てをもう一回観るという、ビデオなどない時代の中学生の執念には我ながら呆れる。 中学一年で観た作品でドヌーブ主演、フランス・イタリア合作映画、ルイス・ブニュエル監督作品『昼顔』(1967)がある。貞淑な妻が、昼間だけ売春婦になる、という話しで、映画の1シーンが表紙に使われた文庫本まで読んだ。映画では東洋人の客が、ドヌーブに意味あり気に小箱を開けて見せ部屋に消える。というシーンがあるのだが、当時、あれは何が入っていたんだ、と一部同級生と話しになった。大方が大人の玩具的なものだろう、という中で、一人虫じゃないか、という奴がいて、他の連中は何を馬鹿なと笑ったが、私はレベルの違う、何かいいようのないものを感じ、敬意を表して谷崎潤一郎やヘンリー・ミラーの文庫本を貸したが、読みもせず返して来た。どうやら私の買いかぶりだったようで、今思うと小箱に虫は、単に昆虫採集的発想だったらしい。そんな話しを2009年8月22日のブログにも書いている。 昔それを私から聞いたのを憶えていた人から『昼顔』の40年後を描いた『夜顔(2006)というマノエル・デ・オリヴェイラという監督の続編を観たと電話を貰った。そこにもまた小箱を開けるシーンがあったそうだが、開けた時「ブーン」という“羽音”が聴こえたという。
※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。
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