明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



鴎外はフリーペーパーのために制作した作品である。背景は特集される都営地下鉄駅近辺に限られる。それはどういうことかというと、必ずしも画になる背景ばかりではないということである。この人物と駅の組み合わせで、4年間にわたり毎号頭を悩ませたわけである。 当初は人物像を作り、指定の特集場所に直接持って行って撮れば良い、と考えていたのだが、そんなことでは、時に違和感のある人物と特集場所の組み合わせで表紙として成り立たない、と気づいたのは早くも3号目の『チャップリンと日本橋を歩く』であった。なにしろチャップリンと日本橋の縁といったら、来日時に天ぷら屋で、エビの天ぷらを何十本だかを食べた。ただそれだけである。その天ぷら屋が残っていればまだしも、廃業してしまっていた。そこでせめて画として面白くしようと背景を撮影して、それに合わせて造形することを始めたわけである。おかげで以後、展示ができない人物像が増えていくことになる。 鴎外の場合は、ただ普通に文豪とするのは面白くない。小石川植物園内に移築されている、鴎外が卒業した医科学校を背景に、陸軍軍医のトップ、軍医総監姿で立たせようと考えた。見切り発車で始めたが、結局使用許可は下りなかった。理由は前例がない。ということなのだが、前例がないことばかりをし続けなければならない私は、しばしばこれに悩まされることになる。 私の思惑とすると、文豪にベルサイユの薔薇みたいな格好させたら面白かろう、と企んだのだが、偉い人を、偉い人だと判らせる目的で作られた服である。結局偉い人になった。 これから約一ヶ月。東大内に立ち続ける訳だが、ウチに居るより間違いなく立派に見える。

 

『鴎外の書斎から-生誕150年記念 森鴎外旧蔵書展-』10/18~11/16(東京大学 附属図書館)

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