私の作る人形は関節でポーズが替えられるわけではないので、あるポーズが必要なら、その度作らなければならない。その場合は頭部一つにポーズを変えた身体を作るが、『貝の穴に河童の居る事』(風濤社)の主人公河童の三郎は、泣いたり笑ったり一人でジタバタするするので、4種の身体と5、6パターンの頭部を用意した。それは短編とはいえ一つの作品をビジュアル化するには必要であった。それでも足らず、人間の出演者に動いてもらって、人形の不自由さを補ってもらう必要がある。そこで日頃飽きるほど眺めている河本の常連客から役者を選抜させていただいたが、この役者の評判が良い。河本の常連には、内容はともかく、見た目に使えそうな役者がまだまだ揃っているが、谷崎作品など手がけようとすると問題は女性である。多少の露出は必要になるし、そろそろ探さないとならない。
朗読ライブで最もどよめいたといわれるカット。河童が人間どもをこうやって懲らしめてくれ、と姫神様に懇願するが、人手不足で実現しなかった場面である。大魚は鏡花の指名通りイシナギを使用している。
石塚公昭HP
『タウン誌深川』“常連席にて日が暮れる”第5回