単体作品だから、早く終わらせよう、とずっと思っている布袋尊、そのノホホンとした顔を見ていると、つい後回しにしてしまう。 作中に三人登場する『虎溪三笑図』の一人慧遠法師は、三十年は山を降りないと決めておきながら陶淵明と陸修静が尋ねてきて、帰りに送って行ったが話に夢中になり、つい虎溪の石橋を超えてしまい、それに気付いて三人で笑う話だが、慧遠法師に着彩した。 計画性に難のある私が、ただでさえ初めてのモチーフを手掛け、曲がりなりにもここまで来たのも、この『虎溪三笑図』を自分への戒めかのように制作を決めた事が大きいかもしれない。とんだおっちょこちょいだ、と作った私が虎渓三笑の轍を踏む訳にはいかないだろう。そう考えると被写体制作に未着手の『四睡図』はスケジュール的に今回は無理と判断した。寒山拾得に関しては今後も手掛けたい場面は多い。当初イメージしていたのは寒山拾得だけの個展だったが、中国土産の拓本が、掛け軸仕立てで飾られていた時代と今は違う。他のモチーフに手を広げたのはかえって良かった。