爺いのくせに使いきれない金を人を騙してまで溜め込む連中の話になった時、方法はともかく、あんたと違って人は金を残して死ぬものなのだ、といわれた。 幼い頃、図書室に入り浸り、伝記、人物伝の類を読みまくった。これが現在の下地になっているのは間違いない。中学、高校は小説。作家シリーズは主にこの頃の読書体験がネタ元である。引越し時、蔵書が何分の1になると同時に、もう充分だろう。本は制作の資料のみにし、小説も楽しみのためにはもう読まないだろう。貯め込むのはもう良い。残りの時間は吐き出すために費やしたい。 子供の頃から、といえばそうだが、興味や必要ないことは見ざる聞かざるで来た。自分に何が必要かは最初から知っている。技術は必要になってからで充分、余計な物を持っていると余計なことをしたくなるものである。おかげで眼高手低に陥らず、眼と手がほど良いバランスになっている。 というのはあくまで私の渡世上の話であるけれど、知識、技術、イメージと、あの世に持って行けないのは金だけではない。