肖像画に関する本を読んでいたら、昔は写真館とは別に肖像画屋がけっこうあったそうである。店頭には、有名人の似顔絵が掲げられ、中にはこんなにそっくりに描けてます、とばかりに、参考にした小さな写真も並べていたらしい。今どうなのか知らないが、上野に行くと、そんな作例を並べた似顔絵描きがいた。それらは単に写真をそのまま写すだけのものだが、肖像画は内面を描くことが肝腎で、第二番目に大事なのが似ていることだという。鏑木清方についても出てきた。清方のエッセイに書かれていることだが『若いときには肖像画ほど面白くないものはないと思っていた鏑木清方が肖像を描くようになったのは、1930年の『三遊亭円朝像』からである。画道に入れと勧めてくれた恩人(円朝)に建碑の代りに故人が勧めてくれた仕事でこの人の職分の姿を写し、世に残そうと思ったという。この制作に苦心したために古画の肖像を見直して、次第に肖像が、精魂をまことにうちこめる第一の仕事と思い込むようようになったようである。円朝は、よくその人を知っていたので始めから見通しがついていたが、樋口一葉を描いたときは、小説をよく読んでいたので、充分知っているつもりが、本人にあったことがないので、見通しがつかなかったという。』 思えば清方の円朝像に興味を持ったのは、写真に残されている円朝と、清方の円朝像が似ていなかったからだが、そのために、昨年来ブログで書き連ねて来たように、私の知り得ない円朝が居るのではないかと疑心暗鬼になりながら文献を彷徨い、円朝像に取り組んでみた結果、この筆者が書くように、写真より清方作の方がより円朝だった。という結論を得、とても大事なことを教わった。これはそろそろ作りたい人物がいなくなってきた私に対するはなむけ、のような気がしている。
※『拝啓つげ義春様』
(後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)『ゲンセンカン主人』展示
ビリケンギャラリー
住所:〒107-0062 東京都港区南青山5-17-6-101
TEL:03-3400-2214
営業時間:12:00 ~19:00(月曜休)
ホームページ:http://www.billiken-shokai.co.jp/
※『タウン誌深川』25日“明日できること今日はせず”連載5回「芭蕉の実像」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。
HP
| Trackback ( 0 )
|
|