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血を吸う薔薇

2014年09月09日 03時06分12秒 | 邦画1971~1980年

 ◎血を吸う薔薇(1974年 日本 83分)

 staff 監督/山本迪夫 製作/田中文雄 脚本/小川英、武末勝 撮影/原一民 美術/薩谷和夫 助監督/小栗康平 音楽/眞鍋理一郎

 cast 黒沢年男 望月真理子 太田美緒 荒牧啓子 桂木美加 田中邦衛 竹井みどり 麻理ともえ(阿川泰子)

 

 ◎特撮とボク、その51

 中学3年生のとき、田舎の東宝系封切館はもはや閑古鳥が鳴いてて、かろうじて『日本沈没』は行列ができていたものの、ほかの作品はいつ出かけていっても楽勝で入れた。そんな時代、洋画は『エクソシスト』が世の中を席捲してて、ご多聞にもれず、ぼくも都会のどでかい銀幕に観に行った。けど、わざわざ邦画のために県庁まで出かける気にはなれず、観てもいいかなとおもうものがあれば、地元の封切館に出かけてた。この作品もそのひとつだ。

 当時はちょいとばかり生意気になってたものだから、岸田森がヴァッと牙を剥いても「ぷっ」とか反応してたけど、実はそれなりに怖かった。というより、けっこうおもしろかった。で、あらためて観直せば、要するに娯楽映画としてちゃんとできてるんだよね。いや、八ヶ岳をのぞむ長野県字魔ヶ里村の駅へ黒沢年男が降り立つ冒頭からして、いかにも映画然としてる。きわめてオーソドックスな撮り方で、山本迪夫という監督は前作でもそうだったけど、カット割りが実に落ち着いてる。後に2時間ドラマをたくさん撮ったらしいけど、わかりやすい撮り方が好まれたんだろね。

 物語の展開は、前作『血を吸う眼』よりも巧妙で、前作のように湖のほとりと能登半島っていう距離がない分、恐怖が集中されてて好ましい。ただ、200年前に流れ着いた宣教師とかっていうんなら海辺の町にしないとあかんのじゃないの?とかおもうんだけど、それはまあ置いておこう。この200年前の棺を前にして田中邦衛が伝説を語り始めるあたりから話はだんだんおもしろくなる。なんだか洋画みたいな導入で、ぼくとしては好みだ。

 それにしてもみんな若いこと。

 邦さんもなんとなくぎらぎらしてていい感じだし、岸田森はやっぱり吸血鬼をやらせたら右に出る役者はいないし、学長夫人の桂木美加も綺麗だったし、竹井みどりも吸血鬼の最初の奥さんにさせられちゃう農家の娘ながら存在感はそれなりにあった。でも、なんといってもヌードにさせられることを怒った麻里ともえ、じゃなくて望月真理子(眞理子)だ。当時、ぼくは望月真理子が好きだった。ていうか「どことなく薄幸そうなんだけど可憐で健気なお嬢さまタイプ」が好みで、それは今も昔も変わらないんだけど、まあ、この時代の憧れのお姉さんだった。それがテニスとかしてて、女子寮に入ってて、しかもちょいと渋めの年上男を好きになっちゃったりするんだから、あ~あとかいう溜め息をついて銀幕を眺めてた。

 ところで、プロデューサーの田中文雄さんなんだけど、この後『惑星大戦争』でとんでもない企画に参加するものの、どうにも恐怖映画が好きだったみたいだね。小説も『魔術師の棺』だったか、いろいろと書いてるし、ある意味、当時の邦画界では特異な存在だったんじゃないかしら。

 ただ、恐怖映画はどんどんと映像がエスカレートして、恐怖というよりもゲテモノ志向っていうか、白塗りや血糊ばかり目立つようになってきてる気がしてならないんだけど、そんなことないのかしらね。まあ、この作品は、たしかに古色蒼然とした怪奇映画ではあるんだけどさ。

 岸田森を継げる役者って、誰なんだろね?


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