◇やじきた道中 てれすこ(2007年 日本 108分)
staff 監督/平山秀幸 脚本/安倍照雄 撮影/柴崎幸三
美術/中澤克巳 中山慎 視覚効果/橋本満明 特殊造型/原口智生
操演/岸浦秀一 衣裳/竹林正人 音響効果/小島彩
音楽/安川午朗 原曲/ジョージ・ガーシュウィン『ラプソディ・イン・ブルー』
cast 中村勘三郎 柄本明 小泉今日子 吉川晃司 鈴木蘭々 笑福亭松之助 松重豊
◇落語と戯作の合体
落語の『てれすこ』は出だしと終盤に登場するだけで、
あとは基本的には『やじきた』物が展開してる。
つまり、終盤のために『てれすこ』が用意されてるわけで、
謎の魚てれすこが物語にまんなかを泳いでるってわけじゃない。
ちなみに、てれすこが干物になったのは、すてれんきょうという。
このあたりは落語の話なんだけど、
揚げられた魚を「テレスコ」だという男の証言に不審を抱いた奉行が、
干物にした魚を「ステレンキョウ」だと男がいったことで、
「おなじ魚にも拘わらず別名をいうとは、そもそも嘘の名をいったにちがいない」
といって牢へぶち込むんだけど、男もさるもので、息子に向かってこういう。
「金輪際、イカを干したものをスルメといっちゃなんねえ」
これを聞いた奉行ははたと膝を叩いて男を許すんだけど、
それもなにも、男の妻が火の物(干物)断ちをしていたおかげだっていうオチがつく。
けどまあ、祈願のために火を通した物を断つってのは昔の話で、
前の時代だったら立派なオチになるんだけど、今の時代だとそうはいかない。
で、3代目三遊亭金馬の
「してみりゃあ、当たり目え(アタリメ)の話でございます」
ってオチができたそうなんだけど、
ここでいうテレスコもステレンキョウも元々はオランダ語で、
テレスコープ(望遠鏡)とステレン鏡(望遠鏡)のことらしい。
それを、シネマスコープにしたってわけだわね。
てなわけで、中身の話はすっ飛ばした感じになったけど、
とにもかくにも勘三郎がうまい。
いや、脱帽するほど、うまい。
たいした役者さんだわ。